清掃ボランティアの帰りの途中、なんと会長達に出会った。
辺りはもうかなり暗くなっているのに、小さなバッチ付けているのに気付く会長。流石の観察力である。
「はい!
ボランティア手伝ったらもらったんです!」
実際、チハの左胸にはバッチがついている。
青リンゴの、金属製のバッチだ。
「……。
チハちゃん、一応それ校則違反になっちゃうから、陣羽織とかの後ろに付けといたほうがいいかもよ?」
「わかりました!」
いそいそとバッチを付け直すチハ。
「これからどこ行くの?」
柚子が聞く。
「戦車倉庫です!
色々と準備したいので!」
そう返して、チハは駆けていった。
めちゃくちゃな速度である。もう見えない。
「砲身掃除やら、履帯運搬やら、砲弾運搬やら、勝手にやったのはあいつだな」
「鋭いね〜河島〜」
会長はそう言いつつ、姿に見えなくなったチハに目を向けた。
同じようにして、柚子は言う。
「……大丈夫かな、チハちゃん」
「無理してるよね、絶対にさ」
チハにとって、そこは懐かしい場所かもしれない。
試合会場は陸上自衛隊の演習場。
チハの孫や曾孫たちの場所だ。
「んー、おかしいなぁ
弾詰めした弾倉どこやったかな?」
最終調整中の出来事である。チハは失くした弾倉を探していた。
「ちょっと!
陣羽織を着た髪の長い子っている!?」
そんな声が聞こえ、チハは車内から頭を出す。
声の主は、どうやら肩車をされた金髪のようだ。
「なんでしょうか?」
車両から降り、近づくチハ。
相手とあまりにも身長差があるので、かなり見上げている。首が痛くなりそうだ。
「ノンナ、下ろして」
「はい」
肩車から金髪が下りると、何も言わずにチハの目を覗き込んだ。
目の位置は、僅かに相手のほうが上だ。
「うちの隊員が、「銃で脅されたー」とか言ってるから、どんな奴がやったんだって見に来たんだけど……」
ジィ、と目を見つめる金髪。
瞳は冷たい。まるで吹雪のような、激しいけれども、何処か落ち着いた雰囲気がある。
一方、チハの目は色こそ明るい赤色っぽいが、意思や思考を感じられない。相変わらず無機質な目だ。
「……やっぱりヤバイ人じゃ無いじゃない。
アイツラはあんなに騒いでたのに、相手は普通ね」
目を外す金髪。
「じゃあカチューシャはあなたの隊長に会いに行くから。
ピロシキ〜」
何か変なことを言い残して去る二人。
終始無言だった身長の大きいノンナという人と、チハよりは少し背の高い、一般的に見れば小さめな金髪。
不思議な組み合わせだったな、とチハは思う。
「……そうだ、弾倉探さなきゃ」
ーーーー
両校の生徒が整列して、礼を済ます。
戦力的には20対9。絶望的な数値である。
だが何も悲観しない。
チハは車内に入ると、各武装の点検を始めた。
それが終わると、車外に出て履帯の点検を始める。
チハはこれまでに2度、戦闘中に履帯が切れている。もう二度と同じ轍は踏みたくないのだ。
予備履帯も、車内に載せている。これである程度大丈夫なはずだ。
そうして、試合は始まった。
各車両が全速力で進んでいく。
途中、プロのような無線が入り、チハの心を引き締めてくれた。
「ん?」
キューポラから頭を出して、チハは森の方を見た。
見間違いかもそれないが、何か黄色いものが動いたような気がしたのだ。
IV号やほかの車両は気づいていないらしい。
報告するべきと判断し、無線をつなごうとした瞬間、衝撃と共に土煙が上がった。
砲撃である。
見間違いなどではなかったのだ。
『各車ジグザグに動きながら、前方の森へ入ってください!』
指示を受け、チハはそれに従う。
蛇行運転である。
チハは少し後悔した。
本当の戦車の戦い方を見せてやると、銀髪に言ったことを思い出したのだ。
むしろ、相手のほうが本当の戦車として戦っている。
チハは、少なくともそう感じた。
この小説(モドキ)じゃ思いっきりカットしてるんですが、原作でカツを食べるシーン、素敵でしたよね。私あのシーン大好きなんです。
みんなの思いが繋がってるって風の噂で聞いたんですが、なんというか「おお……!」ってなったんですよ。
……語彙力ゥ!。
ちなみに、チハをカチューシャより小さくした理由は特に無いです。
精神的に小さいから物理的に小さいってことはありませんしね。(初期案はそれだったけどやめた)