龍驤との演習を終えたあと、私は観戦場所へ戻った。
「お疲れさまです、土佐さん」
赤城が迎える。
「ああ」
「どうでした?」
「面白かった」
答えると、赤城が少しだけ笑った。
「負けたのに、ですか?」
「負けたからだ」
まだ分からないことがある。
なら、次にやることも分かる。
「もう一度やれば、今度はもう少し見える」
「……そうですか」
赤城の声が柔らかくなる。
隣では、龍驤が呆れたようにこちらを見ていた。
「ほんま、切り替え早いなぁ」
「反省はしているぞ」
「ほんまか?」
「ああ。どこが悪かったかも分かった」
「ほな?」
「次に試せばいい」
「…………」
龍驤が黙った。
「なんだ?」
「いや」
小さく息を吐く。
「ええわ」
「?」
「そのままでおり」
意味は分からなかった。
◆◆◆
昼を挟み、再び演習海域へ出る。
次の対戦カードが告げられた。
川内。
神通。
「お」
川内が楽しそうに笑う。
「神通とかぁ」
「姉さんですか」
神通は対照的に静かだった。だが、嫌そうには見えない。
「夜戦じゃないのが残念だけど」
「昼間ですから」
「知ってるよ」
「なら言わないでください」
「相変わらず真面目だなぁ」
二人が所定の位置へ向かう。
私は海上を見る。神通とは何度か一緒に戦った。川内とは、まだない。
姉妹。互いのことをよく知っているはずだ。
なら、どう戦う。
開始の合図。
先に動いたのは川内だった。
速い。
神通は追わない。砲塔だけを向ける。
川内が射線を切る。神通が撃つ。外れる。
もう一度。
川内が動き、神通が撃つ。今度は、川内が撃たれる前に進路を変えた。
「読んでいるな」
隣で長門が頷いた。
「ああ」
神通は川内の動きを。
川内は神通の狙いを。
互いに知っている。
だから、動く前から次を見ている。
川内が大きく右へ動く。神通の砲塔が追う。
その瞬間、川内が反転した。
「……違う」
神通の砲撃を川内が避ける。
だが、その先にはすでに神通の次の射線が向いていた。
「うわ」
川内が笑う。
「やっぱりそこまで読む?」
「姉さんなら、そうすると思いました」
「妹に読まれるの、複雑だなぁ」
それでも川内は止まらない。
次は左へ。神通が追う。
川内が一度だけ神通を見る。神通の砲塔が僅かに動く。
その直後、川内は前へ出た。
「……?」
神通の反応が、ほんの僅かに遅れた。
砲撃。
川内の演習弾が神通の近くへ落ちる。
「今のは?」
思わず口にする。神通なら、読めたように見えた。
「読めなかったんじゃないよ」
蒼龍が言った。
「読んだから外したの」
「?」
「神通ちゃんは、川内ちゃんが何をするか知ってるでしょ?」
「ああ」
「川内ちゃんも、それを知ってる」
海上では、再び二人が交差する。
「だから」
蒼龍が笑った。
「知ってることを利用できるんだよ」
相手を知っているから読める。
だが、相手もそれを知っている。
なら。
読まれることまで使える。
「難しいな」
「でしょ?」
また、川内が大きく動く。神通が読む。
今度は、神通が撃たない。
「え?」
川内が僅かに目を見開いた。
そこへ神通が撃つ。
「うわっ!」
判定。
川内に一発。
「今度は神通が、読まれることを使ったのか」
「そういうこと」
見る。
二人の戦いを。
自分が戦っているわけではない。
それでも、分かることがある。
「観るのも、面白いな」
長門がこちらを見る。
「今頃気づいたか」
「今までも見てはいた」
「それとは違うか」
「ああ」
自分ならどうする。
なぜ、今そうした。
相手は何を見ていた。
そう考えながら見ると、同じ戦いでも見えるものが違う。
海上では、川内がまた大きく動いた。神通が警戒する。
右か。左か。反転か。
川内は、そのまま真っ直ぐ突っ込んだ。
「…………」
神通が一瞬、固まった。
「姉さん」
「なに?」
「今のは、何を考えていたんですか」
「行けそうだったから?」
「…………」
「楽しそうだったし」
「…………」
神通が深く息を吐いた。
「姉さんは時々、考えなしに動きますから」
「ひどくない!?」
観戦していた艦娘たちから笑い声が上がる。
私も少しだけ笑った。
考えているから、読める。
考えているから、読まれる。
だが、全ての動きに同じだけの意味があるわけではない。
覚えておこう。
演習は続き、最後は神通の砲撃が川内を捉えた。
判定。
神通の勝利。
「負けたー!」
川内が頭を抱える。
「だから真っ直ぐ来ないでください」
「でもあれ当たってたら格好良かったじゃん」
「当たっていません」
「神通厳しい!」
二人が戻ってくる。
「お疲れ」
声をかける。
「ありがと、土佐!」
神通も小さく頭を下げた。
「何か参考になりましたか?」
「ああ」
答える。
「知っている相手でも、全部は読めないんだな」
川内が笑う。
「私なんて特にね!」
神通が姉を見る。
「それは少し違うと思います」
「え?」
「なんでもありません」
◆◆◆
陽が傾き始める。
一日目。
最後の対戦。
私は演習海域へ出た。
向かい側では、金剛が艤装を展開している。
「Finally!」
楽しそうだ。
「待ってたデース、Tosa!」
「私もだ」
主砲を確認する。
金剛型戦艦。
高速戦艦。
長門とも。
大和とも。
武蔵とも違う。
どんな戦い方をする。
「午前中は負けたみたいデスね?」
「ああ」
「それでも楽しそうデース!」
「面白かったからな」
金剛が笑う。
「Good!」
所定位置につき、距離が開く。
「では」
金剛の主砲がこちらを向く。
「本気で行きマース!」
「望むところだ」
開始。
ほぼ同時に砲撃。海面が弾ける。
転舵して回避。照準を戻し、金剛を見る。
肩。
腰。
重心。
進行方向。
砲塔。
「そこだ」
撃つ。
金剛が加速した。
「……速いな」
砲弾が後方へ落ちる。
修正して次弾。金剛がまた動く。
外れる。
長門とは違う。
重い動きの中から次を読むのではない。
見えてからでも、金剛は変えられる。
金剛が撃つ。回避して、こちらも撃つ。
また外れる。
次の砲撃を一発、装甲で受ける。
判定は軽微。
「まだだ」
返す。
外れる。
距離を取られる。詰めれば、また離れる。
当たらない。
正確には、読めていないわけではない。
読んだ先から、さらに動かれる。
「なるほど」
面白い。
だが、このまま撃ち続けても、こちらが先に消耗する。
午前。
龍驤との戦いを思い出す。
右から来た航空隊。
左へ避けた。
前から来た。
後ろへ下がった。
私は避けていた。
だが。
選んでいたわけではなかった。
龍驤と同じことはできない。
艦載機はない。
同時に、幾つもの方向から攻撃することもできない。
私は戦艦だ。
なら。
戦艦のやり方で。
主砲を金剛へ向ける。
照準。撃つ。
金剛が右へ避けた。
外れ。
次。砲塔を動かして撃つ。
金剛が左へ。
また外れる。
もう一発。
着弾を見た金剛が進路を変える。
◆◆◆
side 長門
「……あれ?」
長良が首を傾げた。
「どうしたの?」
由良が聞く。
「土佐さんの砲撃」
長良が海を見る。
「さっきから、外してばっかりだけど」
「金剛さん、速いからね」
「ううん」
長良が首を振った。
「そうじゃなくて」
また、土佐が撃つ。金剛が避ける。
長良の目が少しずつ見開かれる。
「もしかして、土佐さん」
海を見る。
「当てようとしてない?」
「いいえ」
赤城の声。
長良が振り返る。
加賀も海上を見ていた。
「当てようとしていない訳ではありません」
「……当てようとしてない訳では無い?」
長良が聞く。
赤城は答えず、土佐を見る。
砲撃。
金剛が回避する。
その先へ、また砲弾が落ちる。
龍驤が目を細めた。
「あいつ……」
「午前中と同じ?」
加賀が言う。
「いいえ」
赤城が静かに首を振った。
「龍驤さんと同じことはできませんから」
艦載機はない。幾つもの方向から同時に攻撃することもできない。
戦艦の主砲には装填時間があり、一発が重い。
だから、土佐は全部を塞いでいない。
一発。
金剛が避ける。
一つ、進路が削られる。
次。
別の方向へ。
また一つ。
安全な場所を全て消すのではない。
金剛が一番選びたくなる場所を残している。
加賀の目が細くなる。
「……選ばせている」
「はい」
赤城が微笑んだ。
「土佐さんなりの使い方です」
「……せや」
龍驤が腕を組む。
「ウチがやったんは、逃げ道を作って、そこへ追い込むことや」
砲声。
金剛が動く。
「でも、あいつには艦載機がおらん」
また砲声。
「せやから、主砲でやっとる。少しずらしてな」
長門は、海上の土佐から目を離さない。
午前、龍驤に負けた。
そこで見たものを覚えただけではない。
自分が使える形へ、もう変え始めている。
「使える形に変えたか」
隣で陸奥がこちらを見る。
「長門?」
「いや」
目を離さない。
「何でもない」
砲声。
金剛が動く。
だが、先ほどまでより僅かに動く方向が限られている。
金剛も、それに気づいた。
◆◆◆
side 土佐
「……Tosa!」
金剛が笑っている。
「それ!」
砲撃を避ける。
「Ryūjōから教わったデスね!?」
「違う」
遠くで、龍驤の声が聞こえた気がした。
「龍驤と同じことは、私にはできない」
砲撃。
金剛が避ける。
「私は戦艦だからな」
次弾を狙う。
金剛が残した方へ動く。
「だから」
撃つ。
金剛が大きく転舵した。
「私にできるようにした」
「……!」
金剛の笑みがさらに深くなる。
「Excellent!」
次の瞬間、金剛の動きが変わった。
今までなら、避けやすい方へ動いていた。
だが今度は違う。
私が避けてほしくない方へ、敢えて入る。
「気づいたか」
「Of course!」
金剛が笑う。
「なるほど。そういうことデスか」
その笑みが、少し変わった。
金剛の主砲がこちらを向く。
砲撃。
正面ではない。
私の進行方向。
このまま進めば、その砲撃へ入る。
避ければ。
金剛は、その間に距離を取れる。
「…………」
龍驤との戦いが頭を過ぎる。
当てるためだけの砲撃ではない。
私を。
動かしたい。
「そう来るか」
転舵して避ける。
その瞬間、金剛が加速した。
距離が開く。
分かっていても、全てを無視できるわけではない。
金剛の砲撃には、それだけの威力がある。
こちらも主砲を向ける。
撃つ。
金剛が避ける。
今度は、私が前へ出る。
距離を詰める。
「Tosa?」
「このままでは当たらない」
「諦めるデスか?」
「逆だ」
もう一度、主砲を向ける。
「当たりやすくする」
砲撃。
金剛が大きく回避する。
その間に。
前へ出る。
また撃つ。
また避ける。
また、詰める。
「……近づくデスか!」
「ああ」
「高速戦艦に!」
「ああ」
金剛が楽しそうに笑う。
「面白いデース!」
それでも、金剛は簡単には近づかせない。
私の横へ回り込み、進行方向へ砲撃を置く。
避ければ距離が開く。
追えば、さらに外へ回られる。
速い。
そして。
上手い。
金剛もまた、私を動かしている。
だが。
一度、された。
なら。
今度は、全部には付き合わない。
進行方向へ落ちる砲弾を、速度を落としてやり過ごす。
そのまま主砲を向ける。
金剛本人へ。
「撃て!」
金剛が避ける。
当たらない。
だが。
それでいい。
高速にするために、金剛は私ほど厚い装甲を持っていない。
まともに受ければ。
確実に中破まで持っていかれる。
だから。
避ける。
なら。
その回避を使う。
砲塔ごとに、僅かに照準をずらす。
一基。
金剛本人へ。
二基目。
回避した先。
三基目。
その足元。
「――撃て!」
轟音。
金剛が一発目を避ける。
その先。
二発目が海面を叩く。
水柱が上がる。
金剛がさらに身を翻す。
三発目。
足元。
艤装のすぐ脇へ着弾する。
海面が大きく揺れた。
金剛の姿勢が、僅かに崩れる。
「Oh!」
その一瞬。
前へ。
一気に距離を詰める。
「Oh! 搦手もイケる口デスカー!」
「正面からだけでは、お前には追いつけないからな」
「Excellent!」
金剛が笑う。
だが、その目は先ほどより鋭い。
すぐに体勢を立て直し、また外へ回る。
砲撃。
今度は私の足元。
海面が弾ける。
姿勢が揺れる。
そこへ、もう一射。
避ける。
距離が、また少し開いた。
「…………」
やはり。
簡単には捕まらない。
こちらが一つ奪えば。
金剛も一つ、取り返す。
砲撃。
回避。
前進。
金剛が側面へ回る。
追う。
また撃つ。
避ける。
その間に。
また。
少しだけ。
近づく。
「離れるな」
「壁が近づいてきたら逃げマース」
「壁ではない」
「似たようなものデース!」
金剛が笑いながら距離を取る。
私も主砲を向けたまま追う。
撃つ。
避ける。
詰める。
金剛が撃つ。
進路を曲げられる。
その隙に離れられる。
また撃つ。
また、詰める。
均衡する。
速さで逃げる金剛。
火力で避けさせる私。
互いに。
動かし。
動かされる。
それでも、距離は少しずつ縮まっていた。
金剛が避けるたびに、私は前へ出る。
金剛が私を動かすたびに、金剛は射線を作り直す。
どちらも、決定打にはならない。
なら。
もう一つ。
金剛本人へ。
砲撃。
回避。
その先の海面へ。
もう一射。
水柱。
さらに。
足元。
艤装。
「――撃て!」
金剛が大きく身を翻す。
砲弾は直撃しない。
だが。
着弾の衝撃が足元を揺らす。
金剛の速度が。
ほんの一瞬。
落ちた。
そこへ。
前へ。
一気に距離を潰す。
「……!」
金剛がこちらを見る。
近い。
ここまで来れば。
速度を全ては使わせない。
主砲を向ける。
金剛が避ける。
その直後には。
もう、私がいる。
◆◆◆
side 長門
「……近い」
陸奥が呟く。
「ああ」
砲撃。
金剛が避け、土佐が追う。
だが、金剛も逃げているだけではない。
土佐の進路へ砲撃を置き、側面へ回り、距離を取り直す。
そのたびに土佐の砲塔も、身体も、僅かに振られる。
「どちらも、相手を動かしているのね」
陸奥が海を見たまま言う。
「ああ」
龍驤が腕を組む。
「せやけど、土佐の方は逃げ道を塞いどるんやない」
砲声。
金剛が避ける。
その隙に土佐が前へ出る。
「避けさせた時間を、距離に変えとる」
赤城が頷いた。
「土佐さんは、ずっと金剛さんへ主砲を当てようとしています」
加賀が海を見る。
土佐。
金剛。
距離。
さらに縮まる。
加賀が小さく言った。
「刀を使うために、近づいているのではないわね」
「ええ」
赤城が頷く。
「主砲を当てるためです」
砲撃。
金剛が避ける。
だが、先ほどより近い。
避けた直後には、もう土佐がいる。
速度差は消えていない。
金剛も、その速度で何度も距離を取り直している。
それでも、土佐は火力で回避を強制し、その時間を一歩ずつ距離へ変えていた。
土佐の左手が刀へ触れた。
加賀の視線が鋭くなる。
刀が抜かれる。
だが、加賀は何も言わなかった。
あの時とは違う。
土佐は。
刀に逃げたのではない。
主砲で戦い続け。
距離を詰め。
その果てに。
刀の届く距離まで来ただけだ。
「……来るぞ」
◆◆◆
side 土佐
抜く。
踏み込む。
刀を振る。
金剛の目が見開かれた。
「来るデスか!」
金剛が身を捻る。
刃が。
軍装のすぐ前を抜けた。
外れ。
だが、金剛は下がらない。
逆。
前へ出た。
「――!」
速い。
刀を避けた勢いのまま。
私の懐へ入る。
近い。
刀を振るには近すぎる。
金剛の主砲も、私の主砲も使えない。
「Got you!」
金剛の判断は正しい。
刀の間合い。
その内側。
なら。
右手。
右脇腹。
短剣。
抜く。
金剛の目が大きく開いた。
「What!?」
そのまま腹部へ。
寸前。
判定。
『――演習終了』
止める。
短剣の切っ先。
金剛の腹部。
数センチ。
「……勝ったな」
「…………」
金剛が短剣を見る。私を見る。また短剣を見る。
「Tosa!」
「なんだ」
「それ聞いてないデース!!」
「短剣だ」
「それは見れば分かるデース!!」
観戦場所から、大きな笑い声が聞こえた。
◆◆◆
side 長門
一瞬、静かだった。
そして。
「ぶっ……!」
龍驤が吹き出した。
「なんで持っとんねん!」
「元から持っていたでしょう」
加賀が言う。
「いや、知っとるけど! 今使う!?」
赤城が口元へ手を添えている。
「まあ」
「『まあ』やない!」
金剛の声が海上から響く。
『それは見れば分かるデース!!』
龍驤がとうとう腹を抱えた。
「ははははは!」
加賀は短剣を収める土佐を見て、少しだけ目を細めた。
「……土佐らしいわ」
赤城が隣で小さく笑った。
◆◆◆
side 土佐
演習を終え、戻る。
「いやぁ……」
龍驤が腕を組んでいる。
「なんだ」
「今日教えたん、ウチやぞ」
「ああ」
「午前中やぞ」
「ああ」
「なんで今日のうちに別の使い方しとんねん……」
「使えそうだったからだ」
「そういうとこやぞ!」
隣で蒼龍が笑っている。
「土佐ってすごいねぇ」
「そうか?」
「うん」
「なら、ありがとう」
「ほら、そういうとこ」
「?」
少し離れたところでは、金剛がまだ楽しそうに笑っていた。
「One on oneだからこその勝ちデス!」
「ああ」
頷く。
「私もそう思う」
実戦なら、金剛一人だけを見ることはできない。敵も味方も、もっと多い。
今日のように、一人の逃げ道だけを考えていればいいわけではない。
「本当の戦場なら、こうはいきまセン!」
「そうだな」
考える。
それなら。
「今度は、艦隊でやりたいな」
金剛が一瞬、止まった。
龍驤も、蒼龍も、こちらを見る。
「なんだ?」
金剛が笑った。
「Tosa!」
「うん」
「やっぱり面白いデース!」
「そうか」
◆◆◆
side 赤城
少し離れた場所。
戻ってきた土佐さんを見る。
龍驤さんに何か言われ、蒼龍さんに笑われ、金剛さんにはまた何か大きな声で話しかけられている。
加賀が隣に立つ。
「どうしたの?」
「いいえ」
赤城は微笑む。
「今日の土佐さんを相手にしてはいけませんね」
加賀が視線を向ける。
「?」
「今日、龍驤さんに負けた土佐さんと」
海を見る。
「今、金剛さんに勝った土佐さんは、もう同じではありませんから」
加賀も土佐を見る。
赤城が静かに続ける。
「明日の土佐さんを考えないと」
◆◆◆
side 土佐
空を見る。
陽はかなり低くなっていた。
一日目。
龍驤に負けた。
神通と川内の戦いを見た。
金剛に勝った。
勝ったことは嬉しい。
だが、それ以上に。
朝より見えるものが増えている。
まだ、知らない戦い方がある。
明日も演習は続く。
そう思うと、少し楽しみだった。
金剛、かわちい