ミルコの個性「兎(キレネンコ)」   作:鷹稀朧

3 / 3
尚、物間が変に煽ったせいで大惨事になる模様


雄英高校1年ヒーロー科vsミルコ

雄英高校の広大な演習場「グラウンドβ」。この日の特別授業は、A組とB組の総勢40名が合同で一人のプロヒーローに挑む大規模戦闘訓練だった。

その相手は、No.5ヒーロー・ミルコ。

「いいかガキども! あたしの個性は『兎』! 兎っぽいことが色々できるだけだ! だがな、日々の筋トレとウサギの野生パワーを舐めんなよ! 全員まとめてかかって来いッ!」

訓練開始の合図とともに、生徒たちは一斉に襲い掛かった。爆豪の爆破、轟の氷結、御剣の如き鉄哲の突撃、そして出久の「フルカウル」。しかし、ミルコはその驚異的な脚力で戦場を跳びまわり、全員の攻撃を軽々と足蹴にして互角以上に立ち回っていた。どれだけ強力な“個性”をぶつけられても、ミルコの肌にはかすり傷一つ付かない。本人は「まあ、ウサギの皮膚は鍛えればこれくらい頑丈になるからな!」と無邪気に笑っていたが、明らかに物理法則が崩壊していた。

そんな中、調子に乗り出したのがB組の物間寧人だった。

物間は高台に立ち、独特のくねくねとしたポーズを取りながら、腹の立つ高笑いを響かせた。

「ハッはー! 何がプロヒーローだ! 何がウサギの野生だ! 結局はただの脳筋ウサギじゃないか! 数の暴力とB組の洗練された連携の前には、足踏みするのが関の山かい!? A組の引き立て役にしかなれないプロなんて、ウサギのシチューにでもなってしまえばいいんだ!」

ピキッ。

静寂が走った。ミルコがピタリと動きを止める。自慢の長いウサギ耳がピクピクと激しく跳ね上がり、その瞳から光がスーッと消えていった。

「あ?」

地底から響くような低音ボイス。その瞬間、出久の「危機感知」が脳味噌を焼き切らんばかりの警報を鳴らした。爆豪の野性的な直感が全身の毛穴を開かせ、轟の冷徹な思考が即座に「死」を予感させた。

「退けぇぇぇぇッ!! 全力で距離を取れッ!!」

「クソが、死ぬぞ!! 逃げろ!!」

「氷壁何重でも張る!! 隠れろ!!」

3人は訓練など完全に放棄し、全力を超えたスピードで遥か後方へと退避。轟が分厚い氷の城塞を何重にも構築し、その陰に隠れ潜んだ。

次の瞬間、ミルコの「一足払い」が空気を切り裂いた。

ドバババババババッ!!!!

音速を超えた衝撃波だけで、前線にいた切島、鉄哲、拳藤、飯田、常闇たちが一瞬でまとめて吹き飛んだ。安否を気遣う余地すらない圧倒的な暴威。しかし、高台にいた物間は奇跡的に直撃を免れ、瓦礫に首まで埋まりながらも、その煽りスキルを留めることを知らなかった。

「ふ、ふん! 乱暴なだけのウサギめ! 効いてないね! 君の単細胞な脳みそじゃ、僕の知略には勝てな——」

出久、爆豪、轟の3人は、氷の陰で頭を抱えながら、静かに目を閉じた。脳裏に浮かぶのは、走馬灯と辞世の句であった。

(お母さん、今まで育ててくれてありがとう……僕のヒーローアカデミア、完……)

(クソが……遺言を遺す暇すらない……『死にたくねぇ』……以上だ……)

(親父……俺の遺体は焼き払わずに、冷やしたまま埋めてくれ……)

「ギガガガガガガガッ!!!!」

空気が爆発した。ミルコから噴き出した赤黒いオーラが演習場全体を飲み込む。血管が浮き出た顔面は凶悪な悪魔——「スーパーキレネンコ」へと完全変貌を遂げた。

ズドンッ!!!!

ミルコの一踏みで、グラウンドβの地盤が丸ごと跳ね上がった。物間は声すら出せずに遥か上空へと打ち上げられ、残りのA組・B組の生徒たちもまとめて空中へ放り出される。ミルコは音速を超えた連続蹴りを空中の全員へと叩き込んだ。手加減という概念は消滅していた。

ドカッ! ボコッ! バギャッ!

それだけに留まらず、怒り狂ったスーパーキレネンコは、出久たちが隠れていた何重もの氷壁をデコピン一発で粉砕。悲鳴をあげる出久、爆豪、轟をもまとめて空の彼方へと蹴り飛ばした。

さらにミルコは「この敷地全体がムカつく」とばかりに、雄英高校の本校舎に向かって巨大なガレキをジャイアントスイングで投げつけ、バリア機能を誇る防衛システムを素手でバキバキに折り砕き、補強された巨大壁を蹴り一発で瓦礫の山へと変えた。

ドォォォォォン…………!!!!!

数分後。

かつて雄英高校の演習場および校舎の一部だった場所には、深さ数テンメートルにおよぶ巨大なクレーターが広がっていた。

その真ん中で、白目を剥いて転がる生徒40名と、巻き添えを食らって埋まっている相澤先生。

全身を覆っていた赤黒いオーラがスッと消え、いつもの褐色肌に戻ったミルコが、スッキリとした顔で汗を拭っていた。

「呼ぅ〜っ! いい汗かいたぜ! やっぱり『兎』の個性は、限界を超えて鍛え上げれば校舎くらい簡単に壊せるようになるんだな! みんなももっと筋トレ頑張れよ!」

爽やかに親指を立てるミルコ。その足元で、かろうじて意識を保っていた出久、爆豪、轟、そして全身ギプス確定の物間たちの心が、完全に一つになった。

(((((どこがウサギだ教えろッ!!!!!!)))))

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。