湯の国に作られた大蛇丸の隠れ里、音隠れの里。
湯の国というだけあって、あちこちに温泉が湧いていて、音隠れの里にももちろんそれはあった。
大蛇丸の好みで、露天ではなく洞窟温泉になっているが。
「ああぁ~…… 少しばかりヌルいわねえ……」
日々ノルマ()に追われながら、全力で駆け抜けるように研究に没頭している大蛇丸も、疲れはする。
いつの間にか身体の芯にこびり付いていたその疲労が、浸かった湯に溶けていく。
控えめな光源に照らされた、音の良く反響する広い大浴場を独り占めにして、大きく身体を伸ばしながら、大蛇丸は独り言を言った。
そしてふと、思考が妙な所へと跳んだ。
「そう言えば、元々この国にいた忍びってどうしたかしら?」
大蛇丸が音の里を作る前にも、一応は湯の国にも隠れ里はあった。
湯隠れの里。
通称は「戦を忘れた里」で、口が悪い者は「ぬるま湯隠れの里」とすら呼んだ。
大蛇丸は湯のヌルさからその悪口を連想して、彼らの事を思い出したらしい。
湯の国は温泉が豊富で、それを生かした観光だけでも食えるのに、火山もある=地下資源が豊富という利点もあって、豊かな国なのだ。
そんな豊かな国は、普通は狙われてしまう。しかし立地が良かった。
火の国と雷の国の間にあるが、侵略思考の雷の国側にもうひとつ霜の国を挟んでいるおかげで、平和を謳歌してこれたのだ。
これまでは。
はたして、これからもずっとそうだろうか?
気付けば平和にどっぷり浸かりすぎて、いざ防衛という時のための忍びの隠れ里まで、平和ボケしまくっている。
その事に気付いた一部の権力者は改革を試みたが、平和ボケした他の大多数には、言葉が通じなかった。
「考えすぎですよ、大げさな」
「手間も、予算も余計にかかるじゃないですか」
「心配しないで大丈夫ですよ。これまで通りで」
本気でどうにもならなかったらしい。
そこへ大蛇丸のエントリー。
もう「これが最後のチャンスだ!」とばかりに、必死に受け入れ工作に走ったらしい。
「ようこそわが国へいらっしゃいました! さあ、どの土地がよろしいですかな?」
「とりあえず首都の近くの空いた土地と、あと各地に小さな隠し砦などもご用意できますぞ!」
「えぇ……?」
さすがの大蛇丸も予想外だったので、大変困惑したとか。
まずはちょっと打診して、これから情報収集して、根回しと交渉と脅迫と…… と考えていたのに、大歓迎されたら、それはそう。
歓迎しなかった権力者たちは、とりあえず様子見に回った。自称保守派は、だいたいいつも動かない。
彼らは音の里を排斥するでもなく、湯隠れの里を支援するでもなく、本当に何もしなかった。
そして音の里が結果を出すにつれ、徐々に承認、味方する方向へと回る者が増えていった。
うちは一族と同盟したり、木ノ葉の里に打撃を与えたり、運送業を立ち上げて税収に大いに貢献したり。
他にも(研究に使う)紙の大量生産やら、(研究の成果や副産物の)各種薬の開発に、温泉でも治らなかった患者の受け入れ(治療の研究)。
稀に賊などが出たら「ヒャッハー貴重な生の実験体だー!」と素早く回収、もとい逮捕して連行していく。
何と言うか。認めない理由が、無かった。
おかしいな。大蛇丸の里なのに(表向きは)すごくキレイだぞ。
怪しいけど尻尾がつかめない…… とか、そういうのが持ち味のはずなのに。
まあ、イメージはともあれ、だ。
こうなってくると、まだ存続していた湯隠れの里の立場は、悪化する一方なわけで。
そんな彼らの打った一手は、というと……
「え~~っと、どうだったかしらねえ?」
つらつらとここまでを思い返していた大蛇丸は、湯に浸かりながら、のんびりと記憶を探る。
別に思い出せないでも、問題は無いわけだし。ただちょっと思い出せそうで思い出せない感覚に、ちょっともにょるだけだ。
そして幸い、取っ掛かりは思い出せた。
「確か、彼らを最後に見たのは…… うちの里の入り口の前で「他所者は出て行けー!」って大勢で叫んでた時?」
どうやら、抗議デモを行っていたらしい。この世界では先進的と言えるかもしれない。
しかし先進的すぎて、法律で規定していない。つまり保護する法律も無い。
「うっとうしかったから、下忍たちが蹴散らしちゃったのよねえ。あれから見ないけど、どうしてるんだか」
ま、どうでもいいわね。
風呂のリラックスタイムに、過去回想をキメた大蛇丸は、そろそろ出るかと腰を上げた。
しかし風呂上りの冷たい飲み物を持ってきたカブトに一応聞いてみると、そのどうでもいい謎は即座に氷解した。
「ああ、湯隠れの連中なら、うちでバイトしてます」
「えぇ? 下忍の代わりに忍任でも下請けしてるの?」
それはあまりにプライドが無くない?
そう思った大蛇丸だったが、事実はもっと下方向だった。
「いえ。忍びの仕事じゃなくて、クロヘビ運輸の方です。しかも配送じゃなくて仕分けや受付ですね」
「なんで? いや、ホントなんでなのよ。ちょっと教えなさいカブト」
ちょっと例の男っぽいアトモスフィアを感じつつ、まさか関係して無いだろうな? と恐る恐る確認する大蛇丸。
「だからバイトです。普通にお金目当ての、生活費稼ぎのためのバイトだそうですよ。応募の面接でも言っていました」
「えぇ……」
いや、忍者だからって、忍者としてしか稼いじゃいけないわけじゃないっていうのは、私もたどり着いた答えだし。
ウチがバイトを募集していて、急速な拡大で人手が足りなくて、時給を高めに設定して集めているのも事実だけど。
あんたたち、それでいいの?
うちは一族に何度か抱いたツッコミが、湯隠れの連中相手に湧いてきた。
しかし言いに行くのは止めておいた。わざわざ相手する価値も無いし「だって仕事だし」とか返されても困るし。
「……まあ、問題無いならいいわ」
大蛇丸は湯隠れの里の事を再び記憶の底に沈めて、これ以降あまり思い出す事も無かった。
また別の日。
大蛇丸は今度はサウナに入って、やはり溜まった疲労を汗と共に体の外へと流していた。
温泉の岩風呂とは違って、総ヒノキ作りのオーソドックスなタイプで、照明も明るめ。
何より前回とは違って、ひとりではなく、若干の人数が一緒に入っていた。
「ぼくサウナってはじめてだけど、息が苦しいね」
「へっ、オレはだいじょーぶだぜ!」
という、少しはしゃいでいる幼げな子供たちと、それを微笑ましく見守っている重吾。
その重吾が暴走した時の抑えを兼ねる、ぼーっとしているうちは一族のクローンたち。
みんな、それぞれに見目が良く、大蛇丸の精神も存分に癒されていた。
ああ、里を作って良かった。
自分は間違っていなかった。大蛇丸の心は、そんな自己肯定感で満たされた。
そんな彼にも、気がかりなことはあった。
チラ、とうちは一族のクローンたちを見て、それを思う。
「いい加減に、借りを返させて欲しいんだけどねえ……」
ふう、とサウナの熱気を軽くかき混ぜるほどの重いため息。
そして傍らにいた側近に、一応の進歩状況を聞く。
「ねえ、カブト。うちはの里だけど、最近、いいネタあったかしら?」
端的な質問だったが、カブトも慣れたもの。意図を間違えることなく、質問に答えた。
その内容は、大蛇丸の望みを裏切るものだったが。
「そうですね。うちの里への警戒心が、そろそろ危険水域に達してしまうかと」
「えっ」
「えっ」
大蛇丸にとって、意外な答えだった。
うちはの里には、初期の創設期には度々援助物資を贈って、法律関係の知識や、技術支援も行ってきた。
それを優に上回る例の男からのアレコレの返しもあるし、友好関係にあると認識していたのだ。
それが警戒されている? 大蛇丸にはワケがわからなかった。
一方のカブトも、そんな大蛇丸の反応を意外に思った。
「あの、ボクが言うのも何ですが。あれだけ厳重に監視体制を敷いていれば当然の反応では?」
「監視?」
ピンときていない様子の大蛇丸に、カブトは悟った。
(あっ、これ人の心がわからなかった案件だ)
大蛇丸は、単に借りを返したかった。それだけで、他意は無かった。
しかし、だ。
そのチャンスはないか? 何か必要そうな、足りていない物は無いか?
虎視眈々と、忍びの里に探りを入れ続けたらどうなるかと言えば……
「カブト、あなたやりすぎたわね」
(こっちのせいにしてきやがった!)
「ええ、どうやらそのようです。申し訳ありません」
どうやら問題の構造を理解したらしく、即座に「秘書が勝手に」という解決を図る大蛇丸と、それを瞬時に理解して受け入れるカブト。
どちらもかなり高いレベルでかみ合っている、いい主従だった。
そうなると、さっそくそういう方向でうちはの里までワビを入れに行かないとな…… と、サウナをひとり出て行くカブト。
(頼んだわよ。私はもうすこしここで癒されていくから)
さすがに口には出さず、その後ろ姿を黙って見送る大蛇丸だった。
また別の日。大蛇丸は今日も癒されていた。
足湯というのがですね…… と例の男からの入れ知恵で作ってみた、実験的な施設を自ら試験する、という建て前で独占している。
「たまには環境を変えてみるのも、いい刺激かもね」
いつもは屋内の管理された環境で、人工的な光の下で簡素な椅子に腰掛け、無機質なスチールの机に乗った書類と向き合っていた。
今は柱と屋根だけの東屋の中で、自然の光と風の中、木製のベンチに腰掛け、足元を流れる温かな湯に足首まで浸かっている。
目の前のテーブルに乗っている書類は同じだが、気分は全然違っていた。
毎度これだと、慣れて何も感じなくなって、刺激が欲しくなるんだろうけど。
ホント、人間というのは度し難い。
などと大蛇丸が自分の感性を勝手に「人類全て」に適応して、自分のヤンチャ好きを免罪していると。
その刺激が、向こうの方から秘書の形をしてやってきた。
「大蛇丸さま。ご報告です。
「……経緯を、くわしく聞かせなさい」
まだだ。まだ慌てるような時間じゃない。
大蛇丸は自分にそう言い聞かせて、動揺を押さえ込み外には出さなかった。
「はい。何でも小国の黙の国で、数年前に大名から国を乗っ取った男がいるらしい、と特別顧問が耳にしたそうです」
「それで自分で調べに行って、消息不明に?」
「はい」
片目だけとはいえ、神威が使えるようになって以来、ますますフットワークが軽くなったな。
例の男の悪癖を思い、しょうがない男だな、という思いを共有する社長と秘書。
「まあ、どうせ死んじゃいないでしょう。誰か…… そうね。とりあえずヨロイとか潜入に向きそうなの何人か見繕って向かわせといて」
お任せで。みたいな注文で、部下の誰を、何人派遣するのかを丸投げする大蛇丸。
襲われたとか、浚われたとか、いつの間にか消えていたとかの緊急案件ではないと分かったので、もうあからさまにやる気が無い。
この居心地の良い足湯空間から離れて、指示出しのための書類とか取りに行きたくないのだ。
(あとは任せたわよ、カブト)
視線でそう命じると、あとは書類へと視線を固定して、これ以上は話も抗議も聞くつもりは無いとポーズで示した。
そんな上司に黙って頭を下げて、カブトは大人しく引き下がった。
絶対、めんどくさい報告書上げてやる。そう心に誓いながら。
上に政策あれば下に対策ありとはよく言ったものだ。いい主従であった。
あと例の男は、うちはの里の人間なのに、音隠れの里が捜索と救助にナチュラルに動くあたり、もうだいぶアレだった。
以前は大蛇丸だけは外部の人間だと認識していたはずなのだが、いつの間にか忘れてしまったらしい。
例の男の所属問題はいつか爆発する、かもしれない。
案外、うちはが「どうぞどうぞ」とサクッと放出する可能性も割りと有るが。
そしてそんな問題に、第三の道が。
「大蛇丸さま。特別顧問が見つかりましたが、なぜか黙の国を乗っ取っていまして……
しばらく大名暮らしを楽しむとかホザ…… もといおっしゃっているのですが、どうしますか!?」
「即座に回収してらっしゃい」
第三の道、大名コースは現れたが、すぐに消えた。
この大蛇丸の即断は、間違いなくうちは一族からも「よくやってくれた」と感謝されるだろう。
忍びによる国の乗っ取りとか、大問題にしかならないからだ。
「やるなら、裏からコッソリやんなさいよ! いつもの暗躍好きはどうしたの!?」
「いやあ。大名からじゃなくて、大名を廃した独裁者からならセーフかな、と」
回収された例の男に説教する大蛇丸と、例の男の間で、そんなやり取りがあったとか。
なお余裕でアウトである。
「ああ、もう、しょうがないわねえ。裏から支配しなおして、そうね。職業訓練校でも作って、クロヘビ運輸とうちは建設の従業員と影響力を確保して……」
「人口はそこそこありました。消費地として市場化しましょう。物資の行き来のための道路工事で、うちはにも仕事が出来ますし。ただ一方通行だと続かないので、何か特産品をですね」
(うわぁ。思った以上に面倒な事になっちゃったぞ)
お説教が終わると、した側とされた側の2人は一緒に事後処理を考え出した。
それが小国とはいえ、一国の采配という思った以上の大事なのでカブトは引いていた。
「絶対、めんどくさい報告書上げてやる」と誓っていたが、誰もここまでやれとは言っていないのだ。
だって絶対巻き込まれるし。
「ちょっとカブト! あなたも手伝いなさい!」
ほら来た。
特産品って言ってたな。となると、その生産で子会社がまた一つ増えるな。任せられる一族ってまだあったかなあ……?
「特別顧問。現地にいたんですよね? 何か使えそうな組織や一族ってありましたか?」
思うところはあれども、あのどうしようもない人生の詰んだ袋小路から、拾ってもらった恩がある。
だから今日も笑顔で、無茶ブリに応え続けるカブトだった。
「自分は何者なのか?」
自分で自分の人生に価値の見出せない悩みから生まれた、その解けない疑問に苦しむ彼は、もういない。
その笑顔は決して、ただの記号でも作り笑いでもない。
また別の日。
この日は癒しなど無く、大蛇丸はただただ困惑の中に置かれていた。
「待って。待ってちょうだい」
情報量が多い。
長年忍者と研究者と、最近は社長業もこなしてきた大蛇丸といえども、限界はあった。
そんな弱った主に密かに愉悦を覚えながらも、カブトは秘書としての勤めを果たそうとした。
「まずはうちはオビトが生存していました。四代目火影の直弟子で、はたけカカシ、のはらリンの同班で、かつて神無毘橋の戦いで戦死したと思われていました」
既知の情報の確認。カブトはそこから説明を再開した。
情報量が多いなら、分けて一つ一つ説明するしかない。難しい問題は分解して解くのだ。
「生存していた理由は、何者かによる改造。それも柱間細胞の大量投入によるものです。しかものはらリンの死亡を目撃したらしく、万華鏡写輪眼にも開眼。
ただし、ここで木ノ葉を離脱。以降木ノ葉と霧隠れを相手に敵対。暗躍を続けていたそうです」
「???」
(改造だけだと、柱間細胞の件もあって、そっちに興味が行きそうだったので、駆け足で情報を叩き込んだけど。
案の定、わかっておられないか。まあ、そうだろうけども。ボクも正直分かってないんだよね)
どうしてそうなるの? という、うちは理論全開での木ノ葉への敵対に、戸惑う大蛇丸。
そうなるよう誘導したカブトだったが、そこはうまく説明できないので、ここで少し会話は止まった。
「…………まあ、理解できないけど、そういう事もあるでしょう。うちはだし。説明を続けてちょうだい」
「そうですね、うちはですし」
ご近所さんになったのと、例の男のせいとで、うちは一族への理解が深い二人の主従は、この問題を棚上げした。
理解を諦めたとも言う。そうしておいて、次の話題へと移った。
「それでそのうちはオビトですが。だいぶ大物になっていたようで」
「そうみたいね。さっき一度聞いたけど、正直信じられなかったもの。九尾事件の犯人で、四代目水影と乗っ取った、霧の裏の支配者ですって?」
「他にも暁という雨の国にあった組織を乗っ取って、そこに各国のS級の抜け忍を集めていたようです。ちょっと前に壊滅しましたが」
「戦場でまともにあの万華鏡の集団とやりあったら、そうなるわよねえ……」
聞けば、あの忍者が!? と驚くような面々しかいない。自分の里で大暴れしたり、一国を落としたり、初代火影の時代から生き抜いていたり、クーデター未遂だったり。
そんな連中を、どうやってか集めた上で、纏め上げたのだ。
並々ならぬカリスマだ。きっと大変な苦労と幸運と、労力があったに違いない。
それが戦場で、一瞬で……
自分だったら、どうだろうか。今、もしこの里が一瞬で失われてしまったら……
大蛇丸はガラにも無くしんみりとしてしまって、死んだと聞いた時もしなかった黙祷を、オビトへ捧げた。
「そう。そこでオビトも死んだのね……」
「いえ、違います。そこから逃げ延びて、特別顧問が仕留めました」
「あっ、それで情報がこっちに回ってきたのね」
うちは一族としては伏せておきたかっただろう、都合の悪い情報がゴロゴロ入ってきたなと思ってはいたけども。
そうか、あいつのせいか。例の男案件だったのか。
超速の理解が、しんみりとしていた感情を吹き飛ばしてしまった。妙に深い納得が、代わりに心を満たす。
「どうもはたけカカシが、うちはオビトの墓参りとして慰霊碑へと通っては、色々と語りかけていたそうなんです。その、なぜか機密とかも込みで」
「ナンデ?」
その納得は、即座に疑問で埋められてしまったが。
なんでだろうね。
「里の中なんで、油断してたとか? それでそれをなぜかオビトが聞く機会があったらしくて、それ以降ちょくちょく通っていたらしくて」
「ナンデ? というか「なぜか」が多すぎない?」
「それをなぜか特別顧問が知ったらしくて、待ち伏せして仕留めたそうです」
「あの子なら、やりかねないわね」
それまで「なぜか」という言葉に納得がいかず、なぜなぜ期の幼児のように噛み付いていた大蛇丸が、この「なぜか」だけは即座にスルーした。
もう聞いてもしょうがないんだという理解が、精神に定着するほどに染み付いていた。
それはカブトも同じだった。「ですよね」と軽く流して、説明に戻る。
都合よく、それまでの「ナンデ?」という大蛇丸の疑問も一緒に斬り捨てて。
「その時、少し面白い現象が発見されたようです。神威空間同士が、反応して一部くっついたとか」
更に大蛇丸の興味を惹くだろう小ネタも混ぜて「ナンデ?」に戻られるのを予防するカブト。だって聞かれても答えられなくて困るだけなのだ。
大蛇丸もそれを分かっているのか、素直に誘導に乗っかる。
「へえ? 誰の神威でもそうなるのかしら? 空間にも波長や座標とかあるのかしらねえ? 異空間に作られた遺跡とか、どこかにありそう。
で、そこから乗り込んでうちはオビトを仕留めたってわけ?」
「いえ、睡眠薬を流し込んで、こん睡状態まで追い込んでから首をはねて、死体もその場で焼いたそうです」
「えぇ……」
あまりのガチな手段にドン引く大蛇丸。
どちらかというと、彼も忍ばないNINJYAであって、忍者ではないのだ。こういう普通の暗殺とかは、あまり経験が無い。
「それは人としてどうなの?」
だから、こんな事も言ってしまうのだが。オイ、あんた原作で黒幕の一人でマッドサイエンティスト。
「いえ、場所が木ノ葉の里内の慰霊碑のすぐ傍です。戦闘無しでの確殺という条件下では、理想的手法かと」
一方で、同じ原作で黒幕のひとりだったカブトは、こう返した。ダンゾウの配下だった時代の、闇を感じる。
「名は記号。眼鏡は道具。ボクは最初から何者でもなかった」とか言い出しそうだ。
自分は悪意や嫉妬や猜疑など感情バリバリのくせに、部下には感情を廃した、忍務と自分への忠実さを要求するクソ上司。
その被害者という、ブラック企業だらけの忍者社会でも上位の闇。
「そ、そうかもね。で、特別顧問はどうなったの?」
その闇を感じた大蛇丸は、別の話題へと素早く移行しようとした。
そして叫んだ。
「うちはの里で、査問会に掛けられたそうです」
「ナンデ?」
「オビト追撃は、独断だったかららしいです。あとうちはオビトの情報を、そこで一気に開放するつもりだったとか」
「相変わらず、どこまで計算してるのか分からない子ねえ。突発的な事態に反応しただけにも見えるのに」
「ボクはもう、深く考えたら負けだと思っています」
ため息一つ吐いて出したグチめいた評価に、カブトが切れ味のいい返しを入れた。
その通りだと共感しながら、大蛇丸はこれで話は終わりかと確認した。もうそろそろお腹いっぱいだったのだ。
「そうね。そうだと思うわ。それで、話は以上でいいのよね?」
「いえ、なぜか特別顧問が「アポロ計画」という月へ到達するためのロードマップを……」
「だからナンデ!?」
この日。大蛇丸はこれまでの生涯で、最も多くの「ナンデ」を叫んだ日になったとか。
その記録、更新されないといいね。