将棋、それは兵に見立てた駒を操り王将、或いは玉を取り合うボードゲームである。現世において最も複雑なボードゲームの一つとされており、ここ尸魂界においても職位に関わらず広く嗜まれている。そのルールの関係上、自らの王を守り続ければ決して負けることは無い為、様々な守りの囲いが存在している。
「つまり、僕が何を言いたいのかわかるかい?春水。・・・将棋において最強の囲いであるこの穴熊囲いを完成させた時点で君の敗北は確定しているのだよ。さぁ、参りましたと、榊花副隊長には勝てませんと、口にすると言い。何、敗北を認めるのは恥ではないさ」
「・・・・・どうして飛車角桂香とられてそんな自信満々なんだい・・・?後、今は君の手番だよ」
「ふ、パスだ」
「無いよ、将棋にパスは」
おかしいぞ?前に山爺とやった時は山爺の穴熊囲いを崩せず、一方的にボコボコにされたんだけどなぁ・・・。さてはイカサマしてやがったなあのジジィ!
「もうやめよっか、つまんないやこのゲーム」
「君がやりたいって言いだしたんじゃないか、絶対に勝てる方法を見つけたって・・・。相変わらず自由だねぇ、羨ましい限りだよ」
へへへ、褒められちゃった。
ここは八番隊舎。京楽次郎総蔵佐春水が隊長を務めている。長いよ名前。
いつもの様に勇音ちゃんから書類を届ける仕事を奪い取り、どこかサボれる所はないかとブラついていたところ、同じように仕事をサボっていた春水と偶然遭遇し一緒にサボろうとなった次第だ。・・・にしても珍しいこともあるもんだね、春水が仕事をほったらかすなんて。
「聞いたかい?現世で旅禍の子、黒崎一護君が怪我したらしいよ」
「怪我?あの子が?なんでさ、寝ぼけた山爺が現世で始解でもしたの?」
「あははは!それを怪我で済ませられるなら今すぐにでも護廷に入ってほしいねぇ」
・・・酷くない?それ現世の子にとっては早く死ねって言ってるのと同じだよ?
「戦闘中にけがをしたらしいんだけどね。・・・・その相手がどうやら
「・・・それはまた・・・、珍しいのが出てきたね。何時ぶりだろうか、その呼び名を聞いたのは」
「そんなヤバい
「ああ、そうみたいだよ。異常を察知した蒲原喜助と四楓院夜一が
おちゃらけた様に、或いはくたびれた様に、春水は、京楽隊長は、手近な草を千切り口に咥える。何それかっこいい、僕もやろ。
「ってことは、藍染は虚の仮面を剥ぐ方法を編み出したわけだ。厄介だねぇ、たしかギリアンを従えてたんだろう?」
「そうなんだよ、おそらくは現世に現れた
「ははぁ、現世は大変そうだねぇ。・・・・・まさか僕に現世に行って旅禍の子たちを守ってくれ、なんて言わないだろうね?嫌だよ僕は、卯ノ花隊長が寂しがっちゃうもん」
「寂しいのは君だろうに・・・。大丈夫だよ、現世へ送る援軍は既に決まってるからね。日番谷隊長を筆頭とした十分な戦力を送る手筈になってる」
わお、まさかの日番谷隊長。いくら旅禍の子達に恩があるとはいえ、尸魂界の最高戦力の一人を現世に送るなんてね。山爺の癖に随分と太っ腹じゃないか。
或いは現世に、あの空座町に関係する何か重大な情報が見つかったか・・・。考え過ぎと思いたいけど、偶然にしては重なり過ぎだよなぁ・・・。
「けどねぇ、日番谷隊長まで居なくなってしまうと尸魂界としてもねぇ・・・、少し不安になっちゃうよね、ただでさえ隊長が三人も離反したばっかりなのにさぁ。・・・どこかに隊長を務められる人材はいないかなぁ?・・・榊花副隊長は心当たりとかあったりしないかい?」
「ありません」
「そっかぁ。・・・ああ、そういえば!榊花副隊長は僕や浮竹が隊長に就任する前から副隊長を務めてたじゃあないか!・・・それなら卍解とか・・・」
「できません」
おのれ春水・・・!さては仕事をサボってたんじゃなくてこの話をする為に僕を探してやがったなぁ・・・?僕は絶対に隊長なんかやらないぞ!!少なくとも卯ノ花隊長が副隊長をやってくれない限りはなぁ!!
「それじゃあしょうがないねぇ・・・、ま、安心していいよ。そもそも隊首会で、山爺も卯ノ花隊長も君が隊長に就任するのは反対していたからね」
まって、今さらっと僕のことを隊首会で隊長に推薦したっぽいこと言わなかった?何してくれてんのさ、このおっさん。
「なんでも君が隊長を務めたら、隊を私物化して女の子だけの隊を作ろうとするだろう・・・、だってさ。いくら君でもそんなことはしないだろうにねぇ」
「あっ、その手があったか」
「・・・どうやらまずいことを言っちゃったみたいだね・・・」
副隊長が卯ノ花隊長で三席が勇音ちゃん・・・、砕蜂隊長でもいいな。にすれば僕の仕事なんて隊首会に出るくらいだろうし・・・。
「ちょっと山爺に隊長にしてくれるよう頼んでくる」
「やめてね」
「隊長、またこんなところで昼寝して、いつまでサボってるんですか?・・・榊花副隊長まで・・・、虎徹三席がさがしてましたよ」
「やぁ七緒ちゃん、今日もかわいいねぇ」
「やぁ眼鏡ちゃん、今日もかけてるねぇ」
「何ですかそれ・・・、取り合えずさっさと起きて仕事してください。ただでさ抜けた隊長分の仕事が回ってきているんですから」
「そうしたいのは山々なんだけどね、咥えてた草に毒があったみたいでねぇ・・・」
「起きようにも体が痺れて動けないんだなぁこれが・・・」
「何してるんですかっ!!!!」
いやぁ驚いた、まさか瀞霊廷内にここまで毒性の高い植物が自生してるとは。眼鏡ちゃん改め伊勢副隊長が来なかったら隊長格がまた減るところだったよ。
「取り合えず僕の斬魄刀を抜いて手に握らせてくれないかい?後は自分で治せるからさ」
「本当に四番隊所属ですか貴男は・・・、はいこれでいいですか?」
「ありがとねぇ。『繋げ』『
ふー、危なかった。流石にこんなくだらない理由で死ぬわけにはいかないからね。後世の教科書に死因、道草。なんて書かれたら死んでも死にきれないよ。
「それじゃあ隊長も治していただけますか」
「・・・まぁそう焦らないでよ、伊勢副隊長」
「・・・なぁんか嫌な予感がするんだけど・・・、あの?榊花副隊長、なんか怒ってらっしゃる・・・?」
よくも僕の知らないところで隊長に推薦何てしてくれたねぇ、春水さんよぉ・・・。
「実はね、伊勢副隊長。偶々、偶然、図らずも、ここに水じゃあ落ちないちょっと特殊な炭と筆があるんだ・・・、後はわかるね?」
「・・・なるほど、お手伝いさせて頂きます」
「あれ・・・?七緒ちゃん?榊花副隊長?ちょ、誰か!誰かいないのかい!?だれかぁぁぁ・・・・・・・・・!」
悪は滅びた。
「おはようございます、フフッ。京楽隊長。先日はうちの榊花がウフッ、ご迷惑をおかけした様で・・・フフッ」
「ああ、卯ノ花隊長・・・。こりゃどうも・・・」
「フッ・・・、おはよう、今日はクッ。早いな京楽・・・・・・、あははははは!!」
「・・・本当に・・・、参ったね・・・・」
でも眼鏡を掛けてなくても素敵なんだ。