【悲報】ピッケル100本折ったアホ、神ハンターに暴言を吐いて人生をチェックメイトされる 作:翔田美琴
広場を包んでいた重苦しい沈黙は、やがてパラパラとした乾いた失笑へと変わり、急速に嘲笑の渦となってレッドを取り囲んだ。
「ぷっ……48万ゼニーだってよ」
「おいおい、ピッケルの使い方も知らねぇで調子こいて100本も折った挙句、親を呼び出されるのかい?」
「バルバレから威勢よく怒鳴り込んできたと思ったら、ただの文字も読めないお坊ちゃんじゃないか」
漁師たちも、畑仕事の手を止めた女たちも、肩を揺らして吹き出していた。
そこにあるのは怒りや恐怖ではなく、分不相応な暴言を吐いて自滅した愚か者に対する、純粋で残酷な見下しだった。
道具屋の老女は呆れたように鼻を鳴らし、散らばった鉄クズを足先で払う。
「あれだけ威張り散らしておいて、ツケを払うのは故郷の親御さんかい。みっともないったらありゃしないね。最初から『すいません、掘り方を教えてください』の一言でも言やあ、タダで教えてやったものをさ」
「全くだ。村長にまで噛みついておいて、最後は泣きっ面かよ」
「オクレマセ村だっけ? 親御さんも不憫だねぇ、こんなのが自分の息子だなんて」
村人たちのヒソヒソ声と、隠す気すらない嘲りの笑い声が、容赦なく四方八方から突き刺さる。
レッドは真っ赤だった顔を今度は屈辱と恐怖で青白く染め上げ、膝を震わせて立ち尽くしていた。
力でねじ伏せられるなら、まだ暴れて反抗することもできた。だが、今自分に向けられているのは、圧倒的な「格の差」を前にした失笑と憐憫、そして社会的な死の宣告だった。
誰も自分を恐れていない。誰も自分を一端のハンターとして見ていない。
ただの「無学ゆえに自滅し、親に莫大な負債を背負わせる哀れな猿」として、見世物のように笑われているのだ。
「あ……あ……」
喉から引きつった声が漏れる。
視線の先では、美琴が事務的に書類の控えを懐へ収め、レムはすでにレッドへの興味を完全に失った様子で、穏やかな海風に銀髪を揺らしながら歩き出していた。
逃げ場のない嘲笑の檻の中で、レッドはただ、冷たい石畳の上にへたり込むことしかできなかった。
大人たちの嘲笑に混じって、背後から無邪気で残酷な子どもの甲高い声が飛んだ。
「なーんだ、嘘っぱちおじちゃんなんだ! 最悪ー!」
「大剣持ってるから強いのかと思ったのに、ただのツルハシ壊しじゃん!」
「字も読めないんだってー! オクレマセ村のオクレ兄ちゃんだー!」
広場の木陰で見ていた村の子どもたちが、指を差してゲラゲラと笑い転げていた。悪気すらなく、目の前で起きた滑稽な事実をそのまま口にして囃し立てている。
その無垢な軽蔑は、大人たちの冷ややかな視線よりも深く、鋭くレッドのプライドを抉り取った。
「が、ガキ共……テメェら、誰に向かって口利いてやがる……!」
レッドは血走った目で子どもたちを睨みつけ、威嚇するように立ち上がろうとした。だが、膝に力が入らない。全身が小刻みに震え、足元に散らばる104本のピッケルの残骸が、まるで己の無様さを嘲笑う鉄の墓標のように見えていた。
「見苦しい虚勢はそこまでになさい」
美琴の冷え切った声が頭上から降る。
「子どもたちですら、道具の用途と分相応という道理を弁えています。己の無知を棚に上げて幼子を睨みつけるなど、恥の上塗りにすらなりませんわ」
子どもたちは美琴の背後に隠れながら、べーっと舌を出してレッドをからかう。
「嘘っぱちおじちゃん! 親呼出しー!」
「ばーか! ばーか!」
大人の冷笑、子どもの嘲弄、突きつけられた48万ゼニーという天文学的数字、そして遠ざかるレムの完璧で優雅な背中。
レッドは反論の言葉すら喉に詰まらせ、ただ口をパクパクと動かしながら、嘲笑が渦巻く広場の真ん中にへたり込むしかなかった。