【悲報】ピッケル100本折ったアホ、神ハンターに暴言を吐いて人生をチェックメイトされる 作:翔田美琴
夕刻、村の中央にある資源管理所の前には、モガの村の住人たちが幾重にも人垣を作っていた。
掲示板に張り出された初日の資源納品記録を前に、ざわめきが波のように広がっていく。
【モガの村 資源納品記録】
レム: 20,000 pt(初日一括納品)
レッド: 1 pt(拾得した石ころ1個)
「に、2万……!? 桁を三つ見間違えたんじゃないかい!?」
「特産キノコや化石の最適ルート回収、さらにチケット運用による換算で、初日にして村の半年分の備蓄を一人で叩き出したんだとよ……!」
「神様だ……! レム様は本当にバルバレから来てくださった本物の神ハンター様だ!」
村長の息子が興奮で声を上ずらせ、村長はパイプを取り落としそうになりながら深々と頭を下げていた。
レム本人はといえば、仕立てのいい上着の埃を軽く払い、お気楽そのものの穏やかな笑顔を浮かべている。
「なに、事前に資材の換算レートと最短手順を頭に入れておいただけだよ。これで村の設備強化が進むなら何よりだ」
その優雅で完璧な姿に、村の女たちや漁師たちから惜しみない称賛と畏敬の眼差しが注がれる。まさに「本物の知性と実力」がもたらした奇跡だった。
――そして、人々の視線は、記録板の最底辺へと向けられた。
「……で、あっちの赤髪は……『1』?」
「ぶっ……! 1ポイントって何だい!?」
「森の入り口で拾ったただの『石ころ』を放り込んで、大声で『これで肉食わせろ!』って喚いたらしいよ」
広場の空気が一瞬で凍りつき、次の瞬間、嘲弄の笑いが爆発した。
「104本のピッケルを粉砕して村の鉄を枯渇させておいて、納品が石ころ1個の1ポイント!」
「マイナスどころの騒ぎじゃないよ! 48万ゼニーの損害を出して1ポイントの貢献って、どんなお笑い草だい!」
「嘘っぱちのペテン師はお前の方じゃないか、レッド君!」
子どもたちが腹を抱えて地面を叩き、大人たちは憐れみと軽蔑が入り混じった冷たい目をレッドに突き刺す。
道具屋の老女も、漁師たちも、もはや怒る気すら失せていた。そこにいるのはハンターですらなく、ただの「害悪な穀潰し」だった。
「ひ、ひと……!? なんで……なんで俺が1で、あの銀髪野郎が2万なんだよッ! インチキだ! 絶対裏で細工してやがるッ!」
レッドは膝をガクガクと震わせ、血走った目で喚き散らした。
だが、その見苦しい遠吠えに耳を貸す者は、広場に一人もいない。
美琴が手帳を閉じ、氷のように冷徹な視線を足元にへたり込むレッドへ落とした。
「知識を持つ者が数理に基づき導き出した『20,000』と、学ぶことを拒絶した獣が力任せに撒き散らした『1』。これが、あなたとレム様の埋めようのない絶対の落差です。己の無様さを他人の不正のせいにする前に、その1ポイント分の石ころでも齧っていらしたら?」
圧倒的な現実の数字、村中の嘲笑、そして神ハンターとの絶望的な格差。
レッドは顔を真っ青に染め上げ、モガの夕暮れの下で、完全に言葉を失って打ち震えていた。