【悲報】ピッケル100本折ったアホ、神ハンターに暴言を吐いて人生をチェックメイトされる 作:翔田美琴
レムは手元の銀器を整えると、石畳に額を擦りつけていた父親へ、穏やかな眼差しを向けた。
「ところで、お父さん。少し気になっていたのだがね。……レッド君は、故郷のオクレマセ村では一体どんな様子だったんだい?」
ただの世間話のような、気のないお気楽な問いかけ。
だが、その声音には抗いがたい絶対者の気品が宿っており、父親はびくりと背中を跳ね上げ、脂汗を拭いながら恐る恐る口を開いた。
「へ、へぇ……! レム様、お恥ずかしい話でして……! あいつは昔っから、村の連中がいくら『少しは作物の育て方や道具の手入れを覚えろ』と言っても、『身体を動かせばなんとかなる!』『小難しい理屈をこねる奴は臆病者だ!』と喚いて、何一つ覚えようとしねぇガキでして……!」
父親の口から語られたのは、想像を絶する無学の生態だった。
文字への敵意: 村の長老が善意で文字を教えようとした際、「紙の上の虫けらなんぞ見てたら目が腐る」と本を引き裂き、薪にして焚き火にくべた。
道具の破壊神: クワやスキを与えれば「もっと深く刺せば土が早く耕せる」と力任せに岩盤へ叩きつけ、初日で刃を粉砕。「鍛冶屋が手を抜いている」と逆ギレして鍛冶屋の納屋に石を投げ込んだ。
数字の完全放棄: 収穫物の数を数えられず、籠に山盛りにした芋を「たくさん」としか認識できないため、近隣の交易商人に毎回足元を見られて買い叩かれ、その度に「商人が魔法を使って芋を消した」と騒ぎ立てて村八分寸前になった。
「……終いには『こんなケチな村にいたら俺の才能が腐る! ギルドで一旗揚げて、頭でっかちのインテリどもを腕力で全員土下座させてやる!』と喚き散らして、家財道具をひったくって飛び出して行ったんでさぁ……! まさか、モガの村の皆様にまでこんな大迷惑をおかけするとは……!」
父親が情けなく涙をこぼし、母親は顔を覆ってしゃくり上げる。
広場を取り囲んでいた村人たちは、開いた口が塞がらないといった様子でドン引きしていた。
「……筋金入りの救いようのなさじゃないか」
「教育がない村って聞いてたけど、教育を拒絶して暴れてただけだね」
「本を燃やして鍛冶屋に石投げた……? それ、ただの害獣じゃないかい」
美琴は手帳にペン先を走らせる手すら止め、氷のように冷え切った眼差しを、地面に突っ伏すレッドへ落とした。
「……なるほど。無学なのではなく、知性を憎悪し、自ら進んで野蛮に退行した『知的破綻者』というわけですわね。教育機関がないのではなく、あなたが教育を焼き捨てていたとは……これ以上ない滑稽劇です」
レッドは耳まで真っ赤にし、親の暴露に歯を食いしばって震えていた。
「お、親父……ッ! 余計なこと喋ってんじゃねぇよッ!」と喚こうとするが、喉が引きつって掠れた声しか出ない。己のルーツが、ただの身勝手な怠惰と暴力の歴史であったことを、衆人環視の白日の下に晒されたのだ。
レムは銀髪を潮風に撫でられながら、深く、心底おかしそうに息を吐いた。
「ふむ……『頭でっかちを腕力で土下座させる』、か。ずいぶんと威勢のいいお題目を掲げて村を出たものだね。……で、その結果が、ピッケルを百本へし折って父親を土下座させ、爆薬の前で震える哀れなペテン師というわけだ」
レムの口元に浮かんだのは、怒りでも嘲笑でもなく、ただ哀れな実験動物の観察を終えた学者のような、穏やかで絶対的な諦念だった。
「学ぶことを憎んだ人間が辿り着く、これ以上なく綺麗な見本だよ。……レッド君、君のその輝かしい経歴、実に勉強になったよ」