【悲報】ピッケル100本折ったアホ、神ハンターに暴言を吐いて人生をチェックメイトされる 作:翔田美琴
高台の手すりから、夜風に乗せて澄んだ嘲笑がこぼれ落ちた。
「ホント、ペテン師が何故ハンターを目指したのかなぁ?」
レムは銀髪を軽く払うと、石畳に這いつくばるレッドを心底不思議そうに見下ろした。怒りも苛立ちもなく、ただ出来損ないの標本を眺めるような、淡々とした声音だった。
「文字も読めず、数も数えられず、道具の使い方も学ばない。獲物の弱点も、調合の比率も、天候や風向きの計算すら頭に入らない人間が、どうしてギルドの看板を掲げて生きられると思ったんだい?」
レッドは地面に額を押し付けたまま、脂汗で泥だらけの顔を歪めた。
大金が稼げる。デカい獲物を倒せばチヤホヤされる。腕力さえあれば、頭のいい連中を力づくで見返せる――オクレマセ村の安酒場で膨らませた浅はかな妄想の残骸が、喉元まで出かかって、しかし一言も形を成さない。
「ええ。まさに身の程知らずの極みですわ」
美琴が一歩前に進み出て、手帳を胸元に抱えたまま、絶対零度の視線をペテン師親子の後頭部へ突き刺した。
「ハンターとは、知性と準備を研ぎ澄まし、自然の摂理と向き合う高度な専門職です。それを『暴れれば稼げる博打』と勘違いした愚者が、己の矮小な見栄と怠惰の逃げ場として看板を汚しただけのこと。動機から結末に至るまで、一片の志すら存在しません」
広場を取り囲む漁師たちからも、乾いた失笑が漏れる。
「『一旗揚げて仕送りする』だっけか? 自分のケツも拭けねぇガキが、看板掲げりゃ英雄になれると本気で信じてたんだから笑えるぜ」
「知恵のない筋肉バカが一番行っちゃいけねぇ場所に、一番行っちゃいけねぇ頭で飛び込んだわけだ」
レムは冷えた紅茶のソーサーを指先で弄び、小さくため息を落とした。
「夢を見るのは自由だが、現実はその鈍重な頭で想像できるほど甘くはない。……ペテン師の適職は、せいぜい誰からも相手にされない泥溜めの見張り番くらいじゃないかな」
宵闇に紛れて森から吹き付ける冷風が、知性を持たぬ偽物ハンターの背中を、容赦なく凍えさせていた。
レッド一家の適性審査結果
農業(不適)
土壌の酸度計算、種まきの深度調整、日照時間の管理をすべて「力いっぱい埋めれば育つ」と誤認。
モガ農場の貴重な改良種をただの雑草と見誤って踏み荒らし、肥料の配分すら理解不能。
農場長アイルーの判定:「畑の害虫より役に立たないニャ。土の養分を吸い取るだけの粗大ゴミニャ」
漁業(不適)
潮流の読み、風向きの計算、底引き網の巻き上げタイミングを一切把握できず。
船の上で足元をふらつかせ、魚群探知の合図すら叫び声で散らす始末。
漁師頭の判定:「足手まといどころか沈没の引き金だ。海に落としたらサメのエサにすら苦情が出るぜ」
養蜂家(阿呆を言うな)
蜜蜂の生態管理、巣箱の温度調節、燻煙器の扱いなど、繊細な手先の作業と観察眼がゼロ。
素手で巣箱をひっくり返し、ハチの大群に顔面を刺されてパニックで暴れ回る未来しか存在しない。
加工屋の親方の判定:「蜂の一刺しで喚き散らして巣を全滅させるのがオチだ。阿呆を抜かすのも大概にしろ」
囮・肉壁(脆すぎる)
怒り狂う大型モンスターの視線誘導には、正確なヘイト管理と回避フレームの把握が必須。
アプトロスの尻尾の一撃で肋骨を軋ませ、ケルビの蹴り足で鼻血を噴いて卒倒する脆弱な肉体。
美琴の論理的評価:「モンスターが一口噛む前に自滅しますわ。囮としての機能維持時間、推定コンマ三秒。時間稼ぎの計算式にすら組み込めません」
高台からその無残な判定書を見下ろし、レムは呆れ果てたように吐息をこぼした。
「生産も、採取も、専門職も、命を捨てる役回りでさえ使い道がない。……文字通り、この生態系における純度百パーセントの余剰物資だね」
美琴は手帳をパチンと閉じ、泥濘に這いつくばる一家へ、救いのない結論を叩きつける。
「あらゆる社会活動において適性値ゼロ。……あなた方に残された役割など、もはやこの地上には存在しませんわ」