【悲報】ピッケル100本折ったアホ、神ハンターに暴言を吐いて人生をチェックメイトされる 作:翔田美琴
夜風が吹き抜ける高台のテラスから、レムは手すりに体重を預け、冷酷極まりない提案をいっそ軽快に放った。
「別にモンスターの肥やしになって良いからさぁ、キノコとか砥石とか採取しなよ」
慈悲も配慮も完全に削ぎ落とされた、純然たる消耗品としての宣告。
広場の冷え切った空気の中に、その言葉が鋭く染み渡る。
「生きて戻る計算も、傷の手当てをする知恵も要らない。ただ森へ飛び込んで、手当たり次第に地面の石ころやキノコを掴んで、死ぬ直前にゲートへ放り投げる。……頭を使えない君たちの肉体でも、それくらいの単純作業なら成立するんじゃないかい?」
「ひ、ひぃぃ……ッ!」
父親が顎をガチガチと鳴らし、レッドは泥を握りしめたまま血走った目を剥いた。
生き残ることすら前提に含まれていない。48万ゼニーの負債の端数を埋めるためだけに、文字通り使い捨ての肉塊として森の闇へ放り込まれようとしているのだ。
「レム様の仰る通り、極めて合理的ですわね」
美琴が一歩歩み寄り、冷淡に手帳を指先で弾いた。
「どうせ社会的な適性は全てゼロ。ならば、大型モンスターの爪や牙に引っかかって内臓を撒き散らすまでの数秒間に、砥石の原石を一つでも多く村へ転がしなさい。……それだけが、あなた方がこの世界に遺せる唯一の償いです」
広場を取り囲む漁師たちが、無言で打ち上げタル爆弾Gの導火線に火を近づけ、パチパチと不穏な火花を散らす。
逃げ場を完全に断たれたペテン師一家の眼前には、飢えたモンスターたちの咆哮が渦巻く、漆黒の森の入り口だけがぽっかりと口を開けていた。
高台のテラスから、レムはふと思い出したように、指先を顎に当てて涼やかな声を落とした。
「……ああ、そうだ。かーちゃんには調合のイロハを学べば、光明が見えるかもねえ」
その一言に、泥まみれで震えていた母親が、すがるような目で顔を跳ね上げた。
父親も「ほ、本当ですかい、お嬢様……!?」と色めき立ち、レッドすら息を呑む。一家の脳裏に、都合のいい「許し」の幻想が一瞬だけよぎった。
だが、レムの口元に浮かんでいたのは、底知れぬ悪意のない嘲笑だった。
「だって、息子の顔にトゲのあるイラクサを躊躇なく擦り付けられる度胸と雑さがあるんだ。薬草とアオキノコをすり鉢で混ぜるだけの簡単な調合なら、猿真似でも覚えられるかもしれないじゃないか」
「レム様、買い被りすぎですわ」
美琴が冷酷に割り込み、手帳を胸元でパチンと鳴らして母親の浅ましい期待を粉砕した。
「調合とは、素材の配合比率と薬理作用を正確に理解して初めて成り立つ技術です。分量を量る『数字』が読めず、素材の名称という『文字』すら識別できない者に、薬効のある調合薬など作れるはずもありません。せいぜい鍋を爆発させて、一家仲良く毒煙で窒息するのが関の山ですわ」
「ひっ……!」
母親は青ざめ、再び泥水の中へ顔を沈めて縮こまった。
光明など最初から用意されていない。提示されたのは、学びを捨てた人間には「簡単な調合」という初歩の初歩すら、絶望的な断崖絶壁であるという残酷な現実だけだった。
「まあ、文字も読まずに適当に混ぜて『劇毒の塊』でも精製してくれたら、大型モンスターへの毒餌くらいには買い取ってあげてもいいけれどね」
レムはグラスを傾け、夜風に銀髪を揺らしながら、冷たく笑った。
知性の扉を自ら閉ざした一家に、差し伸べられる救いの手など、この村のどこにも存在しなかった。