【悲報】ピッケル100本折ったアホ、神ハンターに暴言を吐いて人生をチェックメイトされる 作:翔田美琴
ペテン師一家が夜の捕食者たちの牙に晒される柵の向こう側で、モガの村の広場は奇妙な熱気に包まれていた。
「へいへい! 賭け金の上限はなしだ!」
「レッド一家の生存タイム、誰が一分以上に賭ける!?」
酒場の看板娘・アイシャの満面の笑みの横で、漁師たちと村の職人たちが手元のゼニーをジャラジャラと台の上に積み上げていく。一家の阿鼻叫喚と命乞いの絶叫は、安全な柵のこちら側ではただの「余興のBGM」として消費されていた。
モガの村・特設オッズ表
1分未満でドスジャギィの餌(1.2倍)
「大本命だ! アプトロスの尻尾で肋骨折るような軟弱な肉、一噛みでミンチだぜ!」
リオレイアの火炎ブレスで消滅(2.5倍)
「あの空の女王が、あんな騒がしい害虫を見逃すはずがねぇ。まとめて黒焦げに1000ゼニー!」
母親の毒キノコ誤食による自家中毒死(4.0倍)
「モンスターに届く前に、顔面パンパンのかーちゃんが泡吹いてくたばる方に賭けるね!」
奇跡のキノコ納品・生還(万馬券・9999.9倍)
「そんなもん賭ける奴はいねぇよ! 文字も読めねぇ連中が特産キノコ見分けられるわけねぇだろ!」
「ひどい……! あんまりだべぇぇッ!」
父親が柵の隙間から、積み上がる金貨の山を見て血の涙を流しながら叫ぶ。
自分たちの命が、48万ゼニーの借金を帳消しにするどころか、村人たちの退屈しのぎの賭けの対象に成り下がっている。
「無責任ですって? 笑わせないでいただきたいですわ」
美琴は柵の上から冷ややかに帳簿を繰り、手にした羽ペンで台座を軽く叩いた。
「自力で1ゼニーも稼げず、他者に損害と迷惑しか撒き散らせない粗大ゴミです。せめてその無様な死に様を娯楽の種として換金し、村の経済を微小なりとも循環させることこそ、あなた方が提供できる唯一の社会的価値ではありませんこと?」
高台のテラスでは、レムが手元のコインを一本の指で軽やかに弾き、チャリンと澄んだ音を響かせた。
「ボクは『ジャギィのタックルで気絶して、リオレイアの着地風圧で森の奥へ吹き飛ばされる』に1万ゼニー。……誰も助けに来ない賭け場で、せいぜい自分のオッズを引き上げるために逃げ回ってみなよ」
銀髪を揺らす麗人の冷笑と、村人たちの下品な歓声。
知性を捨てて信用を失ったペテン師一家は、助けを求める人間としてではなく、ただ数字と配当に換算される「使い捨てのチップ」として、夜の森へと完全に呑み込まれようとしていた。
広場の中央には、即席で殴り書きされた「第1回 モガの森杯 サバイバル記念」の看板が掲げられ、松明の火に照らされて赤々と揺れていた。
公式エントリー枠と実況速報
出走者: ペテン師一家(レッド、父、母)
装備: 破れたシャツ、泥まみれの素手、ゼロの知性
現在オッズ:
30秒以内リタイア(胃袋行き):1.05倍
奇跡の泥水すすり生還:9999.9倍(投票者ゼロ)
「さあさあ盛り上がってまいりました! 記念すべき第1回大会、出走直後から一家全員が泥濘に足を取られて大転倒! 母親選手、早くも毒キノコの胞子で視界ゼロの単独スピンです!」
アイシャの軽快な実況が響くたび、酒場の男たちからドッと下卑た歓声が上がる。
柵のすぐ外では、ドスジャギィの統率された包囲網が狭まり、上空からはリオレイアが威嚇の低空飛行で暴風を叩きつけていた。大木が軋み、破片が降り注ぐ中、レッドは腰を抜かした父親の襟首を掴んで喚き散らしている。
「走れ親父ッ! 記念杯だか何だか知らねぇが、見世物にされてたまるかァッ!」
「無理だべぇぇ! 足がすくんで動かねぇ! 誰か助けてくれぇぇッ!」
高台の手すりから、レムが手元のグラスを軽く掲げ、乾杯の仕草を作ってみせた。
「無様に逃げ惑う姿だけは、歴代のどの大会よりも見応えがあるね。……知性を捨てて筋肉だけを頼りに生きてきたんだ、せめて足腰の頑丈さくらいは証明してごらんよ」
銀髪を潮風に遊ばせながら、冷え切った双眸で一家の醜態を見下ろす。
「ええ。記念すべき第一回にして、最初で最後の最終回になりそうですけれど」
美琴が冷酷に手帳を指先で弾き、柵の向こうの阿鼻叫喚を冷ややかに切り捨てた。
「逃走経路の計算すら放棄し、捕食者の足元へ自ら転がり込む姿は、サバイバルというよりただの粗大ゴミの自動投棄ですわ。……せいぜい、オッズに賭けた村人たちを退屈させないよう、派手に宙を舞いなさいな」
ドスジャギィの鋭い爪先が泥を蹴り、リオレイアの喉奥で真紅の火炎が爆ぜる。
モガの村の住人たちが手にしたジョッキを打ち鳴らす乾杯の音と、一家の絶望的な悲鳴が重なり合い、夜の森に最も残酷な祝祭の幕が上がっていた。