【悲報】ピッケル100本折ったアホ、神ハンターに暴言を吐いて人生をチェックメイトされる 作:翔田美琴
高台の手すりから、レムは手首を返してグラスの氷をカランと鳴らし、絶対零度の眼差しを父親へと向けた。
「親父さん、オクレマセ村でどういう教育してきたの?」
夜風に乗って届いた冷ややかな問いかけに、柵に縋り付いていた父親の肩が跳ね上がった。
「教えを乞う知性もなく、計算もできず、文字を見れば逃げ出し、都合が悪くなれば怒鳴り散らす。……こんな見事な粗大ゴミ、一日二日で完成するはずがない。親であるキミが、一体どういう環境でこの筋肉だるまを育て上げたらこうなるのか、単純に教育のプロセスに興味があるよ」
「ひ、教育だなんて……ッ! 俺はただ、男なら腕っぷし一つで生きていけって……!」
泥に塗れた父親が言い訳を口にしようとした瞬間、美琴が柵の上から冷酷に割り込み、手帳の角で父親の鼻先を指し示した。
「要するに『親自身が文字も計算も教えられない無学な無能だったため、教育という義務から逃走し、都合よく男らしさという言葉で誤魔化して放置した』……そういうことですわね」
美琴の手記にカリカリと刻まれる絶望的な査定音。
「子が文字を読めないのは親の怠惰。子が算術を解けないのは親の無知。そして、子が他者の知性を『ペテン』と蔑むようになったのは、家庭内で親が日常的に吐き捨てていた妬みと逆恨みのコピー。……見事なまでの悪伝播ですわ」
背後ではリオレイアの威圧的な足音が地響きを立て、ドスジャギィの群れが涎を垂らしながら一家の足元へ忍び寄る。
「教育の敗北、いや、教育の放棄かい」
レムは呆れたように小さく息を吐き、潮風に銀髪をなびかせた。
「自分自身が知性を捨てて生きてきたから、子供に教える頭もなかった。……キミが与えたその貧弱な筋肉と浅ましい思想のせいで、今こうして息子が夜の森で噛み砕かれようとしているんだ。父親として、最高の子育ての結末じゃないか」
高台の手すりから、レムはグラスを卓上に置き、ふっと目を細めて氷のように冷たい笑みを浮かべた。
「建設的なことを話そうか? 親父さん、お袋さん」
「け、建設的……!? た、助けてくれるんか!?」
泥まみれの父親が、縋り付くような目で柵の上を見上げる。顔面を毒胞子でパンパンに腫らした母親も、塞がりかけた目を必死に開けて柵へ寄ろうとした。
「話の前提を履き違えないでおくれよ」
レムは細い指先を一本立て、夜風に銀髪をなびかせながら冷徹に告げた。
「ボクが言っているのは『どうやって生き残るか』なんて不可能な話じゃない。キミたち二人の『今後の責任の分配』についての建設的な議論だよ」
「な……責任の分配……!?」
「そうさ。文字も教えず、計算も教えず、力こそ全てだと歪んだ思想を叩き込んでこんな筋肉だるまに育て上げた『教育者としての親父さん』。そして、知識を軽視し、毒の選別すらできずに猛毒キノコを口にして即座に戦力外となった『生活能力ゼロのお袋さん』」
レムは潮風を吸い込み、どこまでも清々しい声で言葉を続けた。
「48万2,300ゼニーの負債と、この息子を作り出した元凶として、どちらが先に上位モンスターの囮となって時間を稼ぐべきか。……親として最後の義務をどう果たすかという、実に生産的な相談だよ」
美琴が柵の上で手帳を開き、淡々と羽ペンを走らせる。
「素晴らしい提案ですわ、レム様。親としての罪の重さを数値化し、息子の延命時間へとダイレクトに換金する……これ以上なく建設的かつ論理的なソリューションです」
「ひ、ひぃぃッ! 俺を……俺を肉壁にしろってのかよッ!?」
「嫌だべぇぇ! お父ちゃんから先に喰われてくれぇぇッ!」
危機に直面した瞬間、真っ先に始ま meたのは親同士の醜悪な責任のなすりつけ合いだった。互いを押し倒し、ジャギィの爪の前に差し出そうと泥の中で暴れ回る。
「謝罪はポーズ、窮地になれば醜い擦り付け合い。……やっぱり、建設的な議論なんて知性の欠片もない二人には早すぎたようだね」
レムの冷ややかな嘲笑が響く中、背後の闇から解き放たれた捕食者の牙が、絶叫する一家の背後へと雪崩れ込んでいった。