【悲報】ピッケル100本折ったアホ、神ハンターに暴言を吐いて人生をチェックメイトされる 作:翔田美琴
夜の闇に沈むモガの森の泥濘の中で、絶叫するレッドの足元へと、漆黒の包囲網が音もなく縮まっていく。
群れの主であるドスジャギィが低く威嚇の喉を鳴らし、その背後から無数のジャギィたちが蜘蛛の子を散らすように、しかし寸分の狂いもない連携で位置取りを変えた。
「――始まるよ」
高台の手すりから、レムはグラスの氷を転がしながら、どこか冷ややかな感嘆の声を漏らした。
ドスジャギィが鋭く甲高い遠吠えを夜空へ撃ち上げる。それを合図にしたかのように、左右を固めるジャギィの群れが一斉に跳躍した。
一匹目がレッドの視界を遮るように跳びかかり、怯えて頭を抱えたレッドの腕を鋭い爪で浅く切り裂く。バランスを崩して泥に膝をついた瞬間、すかさず二匹目が背後から飛び込み、纏わり付くように足首を噛み砕いた。
「ぐぁっ……! 足がっ……動か……!」
「連携の概念すら理解していない脳味噌じゃ、ただのトカゲの挟み撃ちすら『不可避の超絶技巧』に思えるだろうね」
レムは乾いた笑みを零し、美琴は手帳のページを冷酷にめくった。
「見事な統率力ですわ。知性の欠片もないペテン師一家を前にして、モンスターのほうがよほど高度な社会性と役割分担を理解しています」
追い打ちをかけるように、ドスジャギィ自身が巨体を躍らせて突進してきた。
その圧倒的な質量と剥き出しの牙が、絶望に染まったレッドの眼前を完全に塞ぐ。ジャギィたちが的確に退路を断ち、主の一撃が確実に急所へ届くよう完璧な足場を作り上げている。
背後では音楽家が奏でる『The ruins of Love』の弦が、最高潮の緊迫感を描き出し、断末魔の伴奏として夜気に響き渡っていた。
「さあ、見ごたえのある連携プレイだ。……一滴残らず、村の餌として回収されおしまいなさい」
高台から見下ろす冷徹な舞台の上で、泥に塗れた父親が息子を見捨てて這いずり逃げようとしたその瞬間――。
「ギィッ……!」
音もなく背後に回り込んだ2匹のジャギィが、まるで「こんな醜態を見せられる同情すら惜しい」とでも言いたげな冷ややかな目つきで、一斉に鋭い牙を父親の背中へと突き立てた。
「ぎゃあっ!? なんだこいつら……! 俺を狙うな、あっちの息子を……っ!」
「同情という言葉の意味を履き違えているね。モンスターですら『あまりに愚かで醜い存在をこれ以上生かしておくのは生態系への侮辱だ』と察して、慈悲の処刑を執行してくれているのさ」
レムは手すりからグラスを傾け、冷え切った声でその自業自得の断末魔を嘲笑った。
美琴は手帳のページに冷酷な筆致で記録を書き加える。
「素晴らしい判断力ですわ。人間としての尊厳をとうの昔に捨て去った寄生虫には、肉食獣による効率的な解体処分こそが唯一の救済措置です」
背後では『The ruins of Love』の弦楽器が、身勝手な親子の絶望と、それを淡々と処理する狩りのシステムを美しく描き出し、乾いた夜空へ消えていった。
夜の泥濘が広がるモガの森の深部へと、さらに重々しい地響きが近づいてきた。
漆黒の群れを割って現れたのは、通常のジャギィよりも一回り巨大な雌の巨躯――ジャギィノスだった。
我が子を庇うどころか、恐怖のあまり失禁してその場にへたり込んでいる母親の姿を認めるやいなや、ジャギィノスは低い威嚇のうなり声を喉の奥底で爆ぜさせた。
「……おや、大物の登場だね」
高台の手すりから、レムは氷の溶けかけたグラスを軽く揺らし、冷ややかな感嘆の声を漏らした。
「同性の雌から見ても、あの母親の生き様は耐えがたいほど醜悪に映るらしいよ。『同じ雌を名乗ることすら生態系への冒涜だ』って顔をしているじゃないか」
ジャギィノスが鋭い爪を泥に突き立て、冷酷な眼光で母親を射抜く。
次の瞬間、まるで「雌として、そして親としてあまりに恥ずべき存在を自らの手で粛清する」とでも言いたげな猛然たるタックルが、母親の巨体を容赦なく吹き飛ばした。
「ひっ……! 嘘でしょ、なんで私ばかり……っ!」
「何を驚いているんだい? 巣を守り、生きるために必死で群れを統率する雌の獣と、ただ欲望のままに周囲に寄生し、窮地に陥れば我が子を盾にして泣き喚くだけのメス豚。どちらがより『生物として恥ずべきか』、モンスターのほうがよほど正しく判別できているのさ」
美琴は手帳に冷酷な文字を素早く走らせ、鼻で笑った。
「見事な同族処刑ですわ。生存のための矜持も責任感のかけらもない害虫には、同じ雌としてのプライドを持った獣による徹底的な教育的指導がお似合いですわね」
背後では音楽家が奏でる『The ruins of Love』の低音が、救いようのない母親の絶望と、それを冷ややかに断罪するジャギィノスの咆哮と美しくシンクロしていく。
「さあ、雌としての尊厳もプライドも、その泥水と一緒にきれいに削ぎ落としてもらいなさいよ」
泥まみれの地面で這いつくばりながらも、レッドは血走った目を剥いて錆びついた剥ぎ取りナイフを大きく振り上げた。
「この野郎……舐めやがって……! 一刺しくらいくれてやるよォッ!!」
渾身の力を込めた捨て身の一撃。しかし、その鈍く重い軌道はあまりにも単調で、予測する価値すらなかった。
高台の手すりから、レムは呆れたように冷ややかな失笑を漏らした。
「――遅い、浅い、そして無駄に大きい。三拍子揃った見事な空振りだね」
レッドの腕が空を切るより早く、ドスジャギィはまるで滑るように軽やかに身を翻した。その動きは余裕綽々で、刃先が掠めることすらない。ただの重心移動だけで、レッドの必死の反撃を完全に無慈悲にいなしてみせる。
「当たらないのは、キミの攻撃が当たるに値しないからですわ」
美琴は手帳のページに冷酷な筆致を走らせ、冷ややかに言い放った。
「動体視力も、距離感の把握も、すべてのスペックが欠損している。モンスターからすれば、ただの的の外れた置き物に向かって木偶の棒を振っているようなものですわね」
バランスを完全に崩して泥の中へ前のめりに倒れ込むレッドを、ドスジャギィは冷酷な冷笑を浮かべるかのような瞳で見下ろした。
背後では音楽家が奏でる『The ruins of Love』の弦が、無様な抵抗が完全に打ち砕かれる瞬間を嘲笑うかのように、皮肉なほど軽快かつ残酷なリズムを刻み続けた。