【悲報】ピッケル100本折ったアホ、神ハンターに暴言を吐いて人生をチェックメイトされる 作:翔田美琴
泥濘の中で吹き飛ばされた母親は、錯乱したように辺りを手当たり次第に掻きむしり、生い茂っていた毒々しいイラクサの束を引っこ抜いた。
「こ、これでも喰らえぇぇッ! 痛い思いしてやるべぇ!!」
泣き叫びながら、トゲだらけのイラクサをブンブンと文字通り風を切るように振り回す母親。しかし、その必死の威嚇は、厚い外殻と発達した鱗を持つジャギィノスにとって、ただの不快な虫の羽音同然だった。
高台の手すりから、レムはグラスを傾け、冷え切った声で鼻を鳴らした。
「――はあ? イラクサをぶん回して何になるんだい。雑草で肌をかぶれさせるのが、キミの人生最大の一撃かい?」ー
ジャギィノスは飛来するイラクサの葉をわずかに首を傾けてかわすと、そのまま鬱陶しいと言わばかりに分厚い尻尾を大きく一閃させた。
「がっ……!?」
強烈なテールスウィープが母親の胴体を直撃し、手から千切れたイラクサごと地面へ叩きつける。
「防御力も攻撃力もゼロの素人が、その辺の雑草を振り回したところで、モンスターの毛髪一枚すら傷つけられませんわ」
美琴は冷徹に手帳へペンを走らせ、あきれ果てた調子で言い放った。
「武器を正しく選定し、鍛錬を重ねたハンターが扱うからこそ素材に意味が生まれるのです。ただの現実逃避で雑草を拾い集めて暴れる姿は、生存闘争ではなく、ただの末期の狂乱劇にすぎませんわね」
背後では音楽家が奏でる『The ruins of Love』の低音が、無様な抵抗の無意味さをあざ笑うかのように、一層乾いた不協和音を響かせていた。
泥まみれの地面で這いつくばっていた父親は、血走った目をさらに剥き、近くに転がっていた錆びついた粗末な農具――農業用の鍬の柄を狂気的な執念で掴み取った。
「こうなったら……これでもくらえぇッ!」
生き残るための訓練も、武器の扱いを学ぶ気力すらなかった男が、ただの暴力と恐怖に駆られて錆びた鍬を振り上げる。しかし、その足元はすでにジャギィの群れによって完全に囲まれており、全身のバランスは崩れ切っていた。
高台の手すりから、レムは氷の溶けたグラスを軽く傾け、冷え切った失笑を零した。
「――は? 錆びた農具で何をしようってんだい。畑を耕すことすらロクにできなかった手で、モンスターを相手に一揆でも起こすつもりかい?」
ドスジャギィは、その鈍重で無様な一撃の軌道を、まるで動体視力の訓練にもならないと言わばかりに、ただ一歩だけ後ろへ退いて軽々と見切った。刃先が掠めることすらなく、父親の身体は遠心力に耐え切れず前のめりに大きく傾ぐ。
「攻撃の軌道も、重心移動も、すべてが素人のそれ以下ですわ」
美琴は冷酷に手帳を指で叩き、吐き捨てるように言い放った。
「適切な装備と訓練を積んだハンターが扱う武器と違い、ただの生活用具を振り回したところで、凶暴化したモンスターの厚い装甲の前には紙屑同然の威力しか持ちません。現実から目を背け、その場しのぎの道具に縋る姿は、哀れを通り越して滑稽ですわね」
バランスを崩して泥のなかに顔から突っ込んだ父親の背後へ、ドスジャギィは容赦なく重い踏みつけを浴びせた。
背後では音楽家が奏でる『The ruins of Love』の弦が、哀れな抵抗が完全に打ち砕かれる滑稽な現実をあざ笑うかのように、一段と冷酷で乾いた旋律を響かせ続けていた。
泥濘の中で立ち上がろうともがくレッドの周囲へ、死の包囲網が音もなく収束した。
「――おや、いよいよフィナーレの集中砲火だね」
高台の手すりから、レムはグラスの氷を転がしながら、どこか退屈そうに冷ややかな声を漏らした。
ドスジャギィの統率された咆哮を合図に、周囲を取り囲んでいたジャギィの中から選りすぐりの3体が、同時にその鋭い牙を剥き出しにして跳びかかった。
一匹目は正面から死角を潰すように跳躍し、レッドの肩口へ深々と牙を突き立てる。
二匹目は死角となる左側から回り込み、逃げ場を失った腕の関節を容赦なく噛み砕いた。
そして三匹目は、バランスを崩して宙ロに投げ出されたレッドの腹部へ、全体重を乗せた強烈な体当たりと連続のひっかきを叩き込む。
「ぐぁあぁぁっ……!? い、痛い、助けて……っ!」
「集中砲火という言葉の正しい使い方だね。ただ数が増えればいいわけじゃない。連携の取れた狩りとは、こういう無駄のない効率的な屠殺のことを言うのさ」
レムは冷え切った瞳で、三匹の猛獣に引き裂かれるレッドの無様な姿を見下ろした。
美琴は冷酷に手帳を開き、羽ペンを走らせる。
「見事なまでの多方向からの集中攻撃ですわ。回避の余地すら与えず、急所を的確に削ぎ落していく。知性のない害虫の群れと違い、本能に基づいた洗練された連携プレーは、見ていて実に清々しいものがあります」
背後では音楽家が奏でる『The ruins of Love』の弦が、最高潮のクライマックスへと突入し、三匹のジャギィに蹂躙されるレッドの絶叫を完璧な伴奏として包み込んでいった。