【悲報】ピッケル100本折ったアホ、神ハンターに暴言を吐いて人生をチェックメイトされる   作:翔田美琴

41 / 44
第39話 機能美の狩り

泥濘を取り囲む村人たちの中から、興奮と感嘆が入り混じった野太い声が夜気に響いた。

 

「やっぱりモンスターはすげえよ……! あの無駄のない動き、一瞬で獲物を追い詰める殺傷力……見惚れちまうぜ!」

 

高台の手すりから、レムはグラスの氷を転がしながら、その歓声に冷ややかな賛同の笑みを向けた。

 

「まったくその通りだね。人間が何年かけても身につけられない本能の洗練を、あの獣たちは生まれながらに極めている。無駄な感情も、言い訳も、見栄えの悪い諍いもなく、ただ『生きるためのシステム』として完璧に機能しているのさ」

 

美琴は手帳に冷酷な筆致を走らせ、冷ややかに相槌を打った。

 

「感嘆するのも無理はありませんわ。私利私欲のために周りに寄生し、愚痴と見苦しい言い訳しか吐き出さないペテン師一家とは違い、モンスターは生態系の中で自らの役割を全うし、村の経済や資源の循環にまで見事に貢献しているのですから」

 

背後では音楽家が奏でる『The ruins of Love』の冷徹な旋律が、モンスターの圧倒的な機能美と、それに熱狂する村人たちの歓声を完璧なレクイエムとして昇華させていく。

 

「さあ、見事な機能美の前にすべてを削ぎ落とされる断末魔を、村の娯楽として最後までたっぷりと味わうといいさ」

 

高台の手すりから見下ろす視界の先で、すでに狩場は壮絶な様相を呈していた。

 

泥濘は鮮烈な赤黒い色に染め上げられ、群れを統率するドスジャギィの鋭い咆哮と、周囲を駆け巡るジャギィたちの爪音が不気味な合奏曲のように響き渡っている。逃げ場を完全に失ったペテン師一家は、もはや人間の原型をとどめないほどの蹂躙を受け、その肉体は次々と容赦なく削ぎ落とされていく。

 

「――まさに、地獄絵図とはよく言ったものだね」

 

レムはグラスの氷を転がし、冷え切った瞳でその凄惨な光景を眺めやった。

 

「命乞いも、言い訳も、あんなに威勢よく吐いていた虚勢も、すべてあの泥の中に塗り潰されていく。生き残るための資格を持たない者が、生態系の底辺でいかに無惨に処理されるか……見事なまでの因果応報さ」

「壮絶、という言葉すら生ぬるいほどの完全な解体ショーですわ」

 

美琴は手帳に冷酷な筆致を激しく走らせ、眼鏡のブリッジを指で押し上げた。

 

「無能と怠惰の果てに積み上げた負債を、その身を切り刻まれることでしか返済できない。モガの村の経済を回すための『生体資源』としての回収作業は、いまや一分の狂いもなく最高潮に達しています」

 

背後では音楽家が奏でる『The ruins of Love』の弦が、最高潮に達した修羅場の空気と完全に同調し、乾いた夜空へ残酷で美しいフィナーレの旋律を響かせ続けていた。

 

泥まみれの荒野に、使い物にならなくなった肉体から絞り出されるような情けない叫び声が、冷たい夜陰へと虚しく響き渡った。

 

「ぐあぁっ……! 嫌だ、助けてくれぇ……ッ!」

「――何度聞いても、実に味わい深い絶叫だね」

 

高台の手すりから、レムはグラスを傾け、氷の鳴る音とともに冷ややかな笑みをこぼした。

 

「自分の身に降りかかっている惨状が、すべて自らの愚行の報いだと理解できないまま、ただ痛みに泣き叫ぶ。その矮小さが、この夜の闇の静けさをいい具合に引き立ててくれているよ」

 

美琴は手帳のページに冷酷な筆致を走らせ、眼鏡の奥の瞳でその醜態を観察した。

 

「叫び声の周波数にすら、知性の欠落と哀れな依存心が滲み出ていますわ。命乞いをするだけの喉の筋肉だけは、一人前に発達しているようですけれど」

 

背後では音楽家が奏でる『The ruins of Love』の冷徹な旋律が、情けない絶叫を完璧なコーラスとして取り込み、容赦のない断末魔の夜想曲を奏で続けていた。

 

「さあ、村中に響き渡るその情けない声を最後の置き土産にして、一滴残らずモガの村の肥やしにおなりなさい」

 

泥の底へと引きずり込まれた父親と母親は、全身を鋭い牙と爪に引き裂かれながら、もはや言葉にならない泥臭い命乞いを夜陰へとわめき散らした。

 

「た、助けて……! 金なら……必ず返す、だから見逃してくれぇ……っ!」

「いやだ、死にたくない、誰か……誰か慈悲を……っ!」

「――今更、何を担保に『金を返す』と言うんだい?」

 

高台の手すりから、レムは氷の溶けたグラスを傾け、冷え切った失笑を零した。

 

「モガの村に48万2,300ゼニーの負債を押し付けておいて、自分たちの肉片以外に差し出せる価値がどこにある。命乞いをするその口すら、ただの無駄な二酸化炭素の排出源でしかないのさ」

 

美琴は手帳のページに冷酷な筆致を走らせ、吐き捨てるように言い放った。

 

「命乞いという名の雑音ですわね。責任を放棄し、他人にすがり続けてきた人間が、最後の最後に発する言葉もまた他力本願とは、どこまでも救いようのない欠陥品ですわ」

 

背後では音楽家が奏でる『The ruins of Love』の弦楽器が、醜悪な命乞いの声を冷徹な伴奏として飲み込み、静かに最終楽章へと雪崩れ込んでいく。

「さあ、その聞き苦しい叫び声ごと、モガの村の経済を回すための貴重な資源として完全に沈黙しなさい」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。