【悲報】ピッケル100本折ったアホ、神ハンターに暴言を吐いて人生をチェックメイトされる   作:翔田美琴

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第40話 モンスターに慈悲はない

冷たい夜風が泥臭い血の匂いを運ぶ中、レムはグラスを軽く揺らし、底に残った氷をカランと鳴らした。

 

「モンスターに慈悲はないよ……」

 

その呟きは、絶叫と獣の唸り声がこだまする狩場の喧騒の中にあって、妙に透き通るように響いた。

 

「野生の獣にとって、目の前の獲物はただの『栄養』か『排除すべき脅威』でしかない。人間に媚びを売ることもなければ、相手の泣き言に同情して手加減してやるなんていう甘っちょろい感情も持ち合わせていないのさ。……だからこそ美しいし、信頼できるんだよね」

「まったくその通りですわ」

 

美琴は手帳のページに冷酷な筆致を走らせ、冷ややかに頷いた。

 

「人間の情けや情操教育を期待するからこそ、あのペテン師一家のような甘えた寄生虫が育ってしまったのです。容赦なく、一切の私情を挟まず、ただ生存の理に従って肉体を解体していくモンスターの厳格さこそが、この腐り切った者たちへの唯一にして最高の処方箋ですわね」

 

背後では音楽家が奏でる『The ruins of Love』の冷徹な旋律が、慈悲の存在しない完全なる狩りの世界を讃えるように、鋭く気高いフィナーレの音色を夜空へと響かせ続けていた。

 

高台の手すりから、レムは冷え切った視線を下の修羅場へと向けたまま、乾いた笑いを漏らした。

 

「ホント、ドスジャギィの方が貢献してるよ……」

「まさにその通りですわ」

 

美琴は手帳のページに冷酷な筆致を走らせ、眼鏡の奥の瞳でその惨状を見据えた。

 

「モガの村に数々の負債と迷惑を垂れ流し続けた挙句、誰一人として生産的な活動を行わなかったペテン師一家。それに比べて、ドスジャギィとその群れは、厄介な害虫を完璧に駆除し、この土地の生態系と経済の循環に最高のかたちで寄与しています」

 

泥濘の中で逃げ場を失い、次々とその肉体を削ぎ落とされていくレッド一家の姿を眺めながら、レムはグラスを傾けた。

 

「口を開けて待っていれば誰かがどうにかしてくれると本気で信じていた連中が、最後になってようやく『自分たちが他の生き物の栄養としてしか価値がない』という事実を身体で理解させられているのさ。……実に、正しい資源の回収作業だね」

 

背後では音楽家が奏でる『The ruins of Love』の冷徹な弦の調べが、完全なる因果応報のフィナーレを告げるように、美しくも残酷な余韻を夜空へ響かせ続けていた。

 

泥濘を揺らしていた咆哮と足音が引き、狩場を包んでいた喧騒が嘘のように静まり返った。

 

「――おや、終わったようだね」

 

高台の手すりから、レムはグラスの氷を転がし、完全に静まり返った下の闇へと冷ややかな視線を落とした。

そこに広がっていたのは、無駄な肉と見栄をすべて削ぎ落とされた、綺麗に片付けられた泥の地面だけだった。ペテン師一家の姿は影も形もなく、ただドスジャギィの群れが満ち足りた足取りで暗闇の森へと消えていく。

 

「見事なまでの完了ですわ」

 

美琴は手帳パタンと音を立てて閉じ、冷徹な眼鏡の奥で微かに微笑んだ。

 

「余計な感情や無駄な抵抗を一切挟まず、ただ『害虫の駆除』という役割を完璧な機能美で遂行してみせた。あのペテン師一家が人生で一度たりとも成し得なかった『社会への生産的な貢献』を、ドスジャギィはわずか数分で見事にやり遂げましたわね」

 

背後で音楽家が奏でていた『The ruins of Love』の弦の調べも、完璧な終止符を打つようにスッと消え去り、モガの村の夜には冷たく澄んだ空気が戻ってきた。

 

「さあ、これで村の無駄な重荷も綺麗に清算された。……私たちも、この冷え切った一杯を飲み干して引き上げるとしようか」

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