【悲報】ピッケル100本折ったアホ、神ハンターに暴言を吐いて人生をチェックメイトされる 作:翔田美琴
潮の香りと波音が満ちるモガの村の桟橋に連絡船が接岸した瞬間、出迎えた村人たちの視線は、降り立った三者三様の異様さに釘付けとなった。
村長の息子
「うわ、すっげえ……! 親父、見ろよあの銀髪の人! ギルドの紹介状にあった『バルバレの凄腕』ってあの人だろ!? なんていうか、立ってるだけで貴族みたいだし、背負ってる太刀の刃紋がヤバすぎる……! でも、あの赤髪のやつは何だ? 船から降りるなり桟橋の杭を蹴っ飛ばして『海が揺れてて歩きにくぃんだよ!』って怒鳴り散らしてるぞ……?」
モガの村長
「……ほほう。ギルドマスターから事前に届いた親書通りじゃな。かの銀髪の紳士――レム殿か。歴戦の猛者と聞いておったが、纏う空気は海風のように穏やかで、一切の角が取れておる。あれは極限を極めた者だけが持つ『本物』の佇まいじゃ。隣の黒髪の淑女殿も、歩く姿勢ひとつにドンドルマの高度な学教が滲み出ておる。……だが、もう一人の赤髪の若造は……ううむ、手紙に『厄災の荷札』と書かれておった意味が、船を降りて三歩で理解できてしもうたわい」
雑貨屋のお姉さん
「いらっしゃー……い……? えっ、何かしらあの男の子。うちの店の看板をジロジロ睨みつけながら『ミミズが這ったような落書きしやがって!』って威嚇してきたんだけど……文字が読めないのかしら? 一方で、あちらの銀髪のダンディな旦那様は、うちの品揃えを一目見ただけで『山菜引き換えのレートと資材配分が実に合理的だ』って、ものすごく上品に微笑んでくださったのよ……! 同じ船から降りてきたとはとても思えないわ……」
加工屋の竜人族の親方
「……おいおい、見ろよあの赤髪の背負ってるナマクラを。刃先が欠けてるどころか、峰まで叩き潰されて鉄クズ同然じゃねえか。どんな無茶な使い方をすりゃあんな無惨な姿になるんだ? ……それに引き換え、あの銀髪の旦那の腰の片手剣とランスの手入れ具合はどうだ。研ぎ澄まされた刃線、寸分の狂いもない装飾の噛み合わせ……あんな芸術品のような業物、この田舎じゃ滅多にお目にかかれねえぞ。道具を見りゃ、使い手の頭の中身まで全部透けて見えるってもんさ」
ギルドの看板娘(アイシャ)
「ふふっ、新しいハンターさんたちが一度に三人も! でも、なんだか物凄く凸凹な組み合わせですね〜。銀髪のレム様は、登録手続きの書類にサインする仕草すら絵画みたいに優雅ですし、美琴様はモガの森の生態系マップを瞬時に読み解いてらっしゃいます! ……え? 赤髪のレッドさん? ……あの、登録用紙の『氏名欄』にバツ印を力任せに殴り書きして、羽ペンを真っ二つにへし折られたんですけど……これ、弁償してもらえるんでしょうか……?」
波の穏やかな孤島の集落に漂い始めたのは、本物の達人への畏敬の念と、知性を放棄した粗暴者への底知れない不安の視線だった。