【悲報】ピッケル100本折ったアホ、神ハンターに暴言を吐いて人生をチェックメイトされる   作:翔田美琴

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第8話 レッド君の借金

「……ピッケル104本、1本あたり基本仕入れ値と孤島への輸送コストを鑑みて計12,480ゼニー。さらに、村の限られた金属備蓄を急激に枯渇させたことによる経済的損失、道具屋への営業妨害、およびギルド特級認定者であるレム様への名誉毀損。これらをドンドルマ法第4条に基づき算出した結果――」

 

美琴は淡々と手帳の頁を指先で弾き、冷たい声でその数値を叩きつけた。

 

「損害賠償請求額、金48万ゼニーです」

「は……? よんじゅう……?」

 

レッドの思考が完全に凍りついた。

10を超える計算すら指を折らなければ理解できない彼にとって、それは天文学的な数字であり、同時に現実味を帯びない単なる音の羅列にしか聞こえなかった。

 

「な、何言ってんだテメェ! 48万だぁ!? たかが棒っきれが折れたくれぇでそんな金あるわけねぇだろ! 払えるかバカ!」

「ええ、あなたに支払能力がないことなど最初から織り込み済みですわ」

 

美琴は眉ひとつ動かさず、事務的な筆致で追記事項を書き足していく。

 

「ギルド規定に基づき、未成年かつ自立認定を受けていない登録ハンターの債務は、その身元引受人――すなわち、あなたを無学のまま野に放ったオクレマセ村の『父母』へ全額請求されます」

「……は? お、オヤジと……お袋……?」

 

レッドの顔から、急速に血の気が引いていった。

粗暴で他責思考の彼であっても、オクレマセ村の貧しい農作業で48万ゼニーという大金が何を意味するか、本能的な恐怖で悟ったのだ。文字通り、家と田畑をすべて差し押さえられても足りない。一家が離散し、路頭に迷う額だった。

 

「ちょ、待てよ! なんで親父たちが関係あんだよ! 俺がやったことだろ!」

「あなたが法的な責任を負えない無能だからです」

 

美琴は手帳をパチンと音を立てて閉じた。

 

「教育を施さず、道理も教えず、他人の財産を損壊するだけの獣を育てて放流した親の過失責任。すでにドンドルマのギルド連絡船を通じて、オクレマセ村の村長およびあなたのご両親へ召喚状と仮差押えの通達を送る手続きを取りました。早ければ今月末には、あなたのご両親がこのモガの村の土を踏むことになりますわ」

「う、嘘だろ……おい、嘘だと言えよ美琴ォッ!」

 

喚き散らすレッドの叫びは、もはや広場の誰の同情も引かなかった。

道具屋の老女も、村長も、冷え切った目で取り乱すレッドを見下ろしている。

その横で、レムは手元の片手剣を軽く鞘に納め、カチリと澄んだ音を響かせた。

銀髪を潮風になびかせ、取り乱す愚者へ静かに視線を落とす。

 

「道具の使い方を学ばず、数式から逃げ、他人の警告を侮辱で返した。……学ぶことを怠った代償としては、いささか高くついたね、レッド君」

 

怒るでもなく、嘲笑うでもない。ただ絶対的な断絶を告げるレムの穏やかな声が、レッドの耳の奥に絶望として突き刺さった。

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