感想や誤字脱字のご報告もありがとうございます。
とても励みになっています。
ゆっくりでもコツコツ完結させますので、テレビの再放送が終わる前には…なんとか…(吐血)
遊郭突入より数日前の事。
(よし、誰も居ないな)
早朝、日が昇りかけの頃。
いつものように俺は約束の場所に向かっていた。
何かあった時の連絡手段が欲しいと、猗窩座と別れ際に俺は手紙でやり取りする事を提案した。直接手渡しが確実だけど、会っている所をもし鬼殺隊の誰かに見られたら不味い。だから手紙の隠し場所を俺の方から、猗窩座にも分かるよう指定し、そこに何かあれば互いに手紙を置く形にした。そうすれば俺の鎹鴉にも、鬼とやり取りしている事まではバレないだろう…という苦肉の策だった。
俺は約束の場所に着くと、周囲を確認してから手紙の隠し場所を探る。
(…手紙だ!何かあったのか)
そこには新しい手紙が置いてあった。
内容が気になるけど俺はすぐにそれを回収し、代わりに俺からの手紙をそこに置いて…
「よう」
「うわ!?」
背後から突然声をかけられた。
誰だ、いやまずい見られていた?
兎に角ここは上手く誤魔化すしかない!
俺は極力平静を装って振り向いた。
「ど、どうかしまし…」
「あぁそういうのは要らん。つぅか地味に全部知ってるから隠そうとすんな。お前は嘘が派手に下手糞っぽいしな」
「え?え!?」
こ、この人は…確か柱の一人…!
「竈門炭治郎、だったか…柱合会議以来だな?俺は音柱の宇髄天元様だ。ここ暫く、俺の鎹鴉にお前を監視させていた。俺はこう見えて元忍びでな、お館様ほどじゃねえがその勘が言ってた。お前は何か握ってる、と」
「うっ……」
矢継ぎ早に話される内容に、俺は言葉を詰まらせる。
「するとどうだ、地味な場所でやたら人目を気にして、何かを隠したり持ち出したり…この前ちょいと先回りしてこっそり見せて貰ったが、あいつに似た字の手紙が出てきた時は派手に驚いたぜ」
まずいまずいまずい、手紙まで見られているなんて…猗窩座は字が読めるけど書くのは苦手と知ってからは、手紙は全て煉獄さんが書いている…!
「じゃあその手紙の主は?こんな明け方に置いてあるって事は、夜しか動けない理由があるのか…もしかして、ってな。探してみたら、山奥の洞窟で鬼同士が派手にお喋りしてるじゃねえか」
何か反論を………だめだ、言い訳が思いつかない…!
白状するしか、ない…。
「…申し訳ありません。お、俺は打ち首でしょうか」
宇髄さんは腕を組み、考えるような素振りをした。俺を即斬るつもりはないらしい。
「普通なら当然そうなるな。鬼と通じてる隊士なんざ鬼殺隊の害でしかねえし、お前が何を弁明しようと信じる奴は居ないだろう。お前の妹も、もしかしたら我妻と猪頭も同罪ってことに…」
「お願いします!俺はどうなってもいいです…けど禰豆子とあの二人は助けて下さい!これは俺の独断です。煉獄さんが鬼になるのを見逃した事も、密かにやり取りしている事も全部、俺が勝手に…!」
他の皆は関係ない、俺が巻き込んだだけだ!あの場に居合わせた善逸も伊之助も、もちろん猗窩座と煉獄さんのことは知っている。けど黙っているように頼んだのは俺だ。ならその罰は俺が一人で受けるべきだ!
「…くくく、俺は煉獄の名なんて出しちゃいないぜ?手紙にも誰かを示す名は一切書かれていなかったしな」
「へ?…あっ」
「しかし、やっぱりあの片方は煉獄だったか…さすがに姿までは確認できなかった。結局は勘づかれてトンズラした訳だが…」
「あ、あの…宇髄さん…?」
なんだ、意図が読めない…なにかに納得したような感じの含みがあるけど…。
「この馬鹿野郎が!」
「あイタッ!?」
いきなり拳骨をされた。凄く痛い。
「いかにもクソ真面目な石頭ですってデコに書いて歩いてるような奴が、んな似合わねえ真似してんじゃねーよ」
「うっ、いっ、づっ!」
ビシっビシっと俺の額をつつきながら宇髄さんは詰め寄る。
「妹の為なら…大切なものの為なら、柱に頭突きもかませるお前の事は、俺も結構買ってるんだ。ならこれにも余程の理由があったんだろうが。…話してみろ、何があった?」
「……う、宇髄さん…!」
元忍びだからなのか、宇髄さんは感情の匂いが分かりにくい。けど、ただの隊士でしかない俺に真剣に向き合ってくれている…それだけは分かった。この人には見透かされている。いや、きっとお館様も薄々気づいているだろう。煉獄さんの為に、この事は絶対に秘密にしたかった。秘密のうちに人間に戻す薬が完成すれば…と淡い期待があった。
けど俺は、心のどこかで打ち明けたかったのかも知れない。こうして白状するきっかけが欲しかったんだと思う。煉獄さんは禰豆子と同じように、自分と戦っている。まだ鬼殺隊として生きているんだ、って。
俺はこれまでの事、これから起こるであろう事、知る限りの全てを話した。
-----
「……未来を知る鬼、か。中々ド派手にぶっ飛んだ話だな」
一通り黙って話を聞き終えた宇髄さんは、俺の話した内容を咀嚼するように唸った。
「はい…俺自身、いまだに半信半疑な部分もあるんですが…」
「まあ当前だな…だが少なくとも遊郭についての話は信憑性が高い。なんせこの俺が今まで調べてきた事と合致する」
俺と宇髄さんは、先ほど回収した煉獄さんの手紙に目を落とした。内容は奇しくも遊郭に潜む上弦の陸・堕姫と妓夫太郎について。その技や特徴、普段は一体化しており二人に別れる事、倒すには同時に頸を斬る必要があるであろう事などが書かれていた。
「特にこの鬼の情報は値千金だ。本当なら、の話だが」
その通りだ。とても嘘とは思えないような具体的すぎる情報だけど、真偽を確かめるには結局この鬼と対峙するしかないだろう。
「そこでこの俺が考えた作戦だ!…竈門、責任を感じているんだろ?ならこの情報も何もかも武器にするぐらいの気概で、派手に鬼殺隊の役に立ってみせろや」
その言葉に俺は強く頷いた。
-------
遊郭突入〜五分前〜
「はぁぁ!?ぜんっぜん余裕で出来るし!」
伊之助は宇髄さんに煽られていた。『遊郭の敷地外から、中の鬼と人質の気配を探る…なんて、さすがに山の王でも無理だろう?』と。
【獣の呼吸・漆ノ型-『空間識覚』!!】
伊之助も無限列車の時から鍛錬を重ねた。前に那田蜘蛛山で見たその技は、更に範囲と精度が磨かれているようだ。
「…捉えたぜ!あそこの目立つ屋敷に、やべえ鬼の気配がビンビンしやがる!その屋敷の一階…いや、もっと下か?人間が妙にギュウギュウ詰めになってるぜ!」
「そいつが上弦の鬼で、人質は地下ってことか」
「すごいぞ伊之助!」
「グワハハハどうだ見たか俺様の力を!」
「え?え?待って上弦がいるの!?無理無理無理ぜったい死んじゃうってぇぇ!!」
宇髄さんの言う作戦はこうだ。
『俺様が鬼を派手に引きつける!その間にお前らと隠で、人質の救出と住民の避難を終わらせろ。以上だ!』
「善逸、俺は万が一逃げられた時の為に、鬼の匂いを覚えるよ。場所さえ分かればここからでも何とかなると思う。善逸は人質の居る地下にどう行けばいいか、伊之助と一緒に音を頼りに探してみてくれないか?人質はほとんどが女の人らしくて」
「伊之助!ボサっとしてないで死ぬ気で助けに行くぞさぁ行くぞ!!」
「隠の奴らは手分けして住民の避難だ。地味に静かにな」
『御意!!』
「それじゃあ俺は上弦の顔を拝みに行ってくるわ。出来るだけ時間を稼ぐから、手筈通り頼むぜ…竈門」
「はい…!やれるだけ、やってみます!」
-------
〜遊郭潜入開始〜
隠は闇に紛れながら、目立たぬよう一人一人に声をかけて走る。
「夜分遅くにすみません。この遊郭内に爆弾が仕掛けられたという情報が入ったので、急ぎ避難してください」
「え!?」
「騒がずに、静かに。犯人に勘付かれては今すぐ爆破されるやも知れません。別の仲間が他の人たちも避難させています。避難完了後は犯人と爆弾を捜索しますので…さあ、こちらへ…」
いかにもな理由で町民を説得し、鬼の屋敷から可能な限り離れた遊郭内の外周部へと、隠の人海戦術により避難を順調に進めていった。
「…間違いない。この先から沢山の音が聞こえる」
屋敷のとある部屋、その床に耳を当てると確かに人の心音などが聞き取れた善逸。だが侵入経路が分からないでいた。
すると部屋の入口から何者かの気配。
振り返れば柔らかい何かで顔を塞がれ。
「しーっ!キミたち、鬼殺隊ね?」
「ふごっ!んー!んー!!」
「お?誰だお前は!」
「私は雛鶴、天元様の妻よ。今日の作戦は密書で把握しているわ。こっちの天井裏から人質の部屋へ行ける抜け道があるみたいなの。けど道が狭くて……えっ?」
「……ガクッ」
単に騒がれない為の措置だったのだが、その豊満な胸に顔を包まれているという事実に気づいてしまった善逸。
鼻血と共に彼は気を失い、そして目覚める。
【雷の呼吸・壱ノ型-『霹靂一閃』】
タン、と壁や天井を軽やかに蹴り、だが敵の居城ゆえに極力音は立てないという神業の加速で、居合による一閃。
その狭き道を、文字通り切り開いていく。
「やるじゃねえか紋逸!俺様ほどじゃねえけどな!」
善逸に同行していた伊之助もまた負けじと関節の柔らかさを駆使して追随する。
二人はその勢いのまま、地下で帯の中に捕らわれた人質の救出を無事に成し遂げる。
なんだかよく分からないけど頼れる二人だった、とは雛鶴の談である。
(宇髄さんは上手く引き付けているみたいだ…)
上弦の鬼が潜む屋敷。そこに宇髄さんはなんと武器を持たず客として、堂々と乗り込んでいった。今まで調べたその鬼の性格などから、行けると判断したらしい。
鬼と宇髄さん、二人が居る部屋のすぐ外に俺は潜んでいた。
(確かに、この鬼はとてつもなく強い…!)
『竈門、お前は上弦の鬼のもう一人を暴け』
宇髄さんは言った。鼻の効く俺なら、鬼である禰豆子と長い時間を共にしている俺なら、潜んでいるであろうもう一人の鬼も見極められるのではないか、と。
俺は目を閉じて集中する。
(でも、猗窩座はこんなものじゃなかった。同じ上弦でも差があるだけかも知れないけど……いや、これは…!)
上弦の鬼、その体内…微かに別の違う匂いが混ざっている。もっと集中しろ…襖で姿は見えないけど、匂いで輪郭が少しずつ浮き彫りになる。…どこだ…腹のあたり…腰?…いや背中か!
「見えた…!」
いま宇髄さんの目の前に居る鬼よりも、遥かに濃い鬼の匂い…多分強さも…!
「炭治郎!人質は全員無事だ…!」
「善逸!よかった無事で…」
何故か鼻血の跡がある善逸が合流した。他にも鬼がいて戦闘になったのかもしれない…でも怪我は無さそうだ。宇髄さんがかなり時間を稼いでくれたお陰で、どうやら鬼に気づかれずに救出できたようだ。
「伊之助は?」
「向こうの物見櫓の上で敵が来ないか見張るってさ、ホラあれ。宇髄さんに煽られて余程アタマに来たんじゃない?ありんこ一匹見逃さねえってさ」
「はは、頼もしいな。…よし、住民の避難も大分できたみたいだし、宇髄さんに合図しよう!」
「この曲は…金毘羅船舟?…あの糞柱、俺たちが必死に頑張ってる時に、鬼と座敷遊びしてたのかよ…しかもあんな美人の嫁さんが…男の敵め…!!」
「どうした善逸?…あ、宇髄さん!」
「よう竈門。うまく行ったみたいだな」
「はい!もう一人の鬼は多分、奴の背中に…それも恐ろしく強そうです!」
「よし、なら後は先手必勝だ。いっちょ派手に行くか!」
宇髄さんは瞬きのうちに着替えると、格好よく鬼へ名乗りを上げた。善逸は別にそれ要らないんじゃないかなと言ったけど、士気を上げるのに必要なんだろう。ちなみに楽器はさっきまで演奏をしていた女の人に借りて、隠に避難を頼んだ。
ここまでは作戦通りに進んでいる。
あとは鬼が戦う体制になる前に倒すだけだ。
ずるい気はするけど、折角ある情報を活かさない手はないし、被害が出ないに越したことはない。正々堂々なんて考えるな、とは宇髄さんの言葉だ。
「おにいちゃああああん!!」
あれが上弦の鬼、堕姫か…お兄ちゃんが居る、のか。恐らく背中に潜む鬼のことだろう。鬼にも兄弟が…那田蜘蛛山の下弦の鬼がふと脳裏によぎる。
「名乗ってすぐで悪いが、何もさせねえぜ」
宇髄さんは隠していた武器を構えたかと思ったら、言い終わる前に堕姫の首を落としていた。
「え…」
堕姫は驚きのあまり泣き止む。
更に宇髄さんは堕姫の身体を、背中を中心に何度も微塵切りのように切り刻んだ。
「お、お兄ちゃん!!」
堕姫は叫んだ。さすがに不味いと思ったのかも知れない。首だけで床に転がったまま、胴体に向かって呼びかけている。
「…て、てめぇ〜…」
だが堕姫の細切れの胴体から、なんと声が聞こえた。別れた胴体はみるみる繋がり、ぬるりと異形の鬼がそこから現れた。
「チッ、これでも駄目か」
「いイヤァァァァ!?化け物ぉぉ!!」
宇髄さんは舌打ちしながらも油断なく追撃を仕掛けるが、その鬼は瞬時に移動していた。全然見えなかった…なんて速さだ!
あれ、善逸は…って気絶してる!?
「よくも不意打ちしてくれたなぁ〜。卑怯だよなぁ〜許せねえなぁ〜?」
不気味な出で立ちの鬼は俺たちを睨み、そう罵る。だけど流石にあそこまで斬られて再生したためか、最初に感じた匂いよりも濃度が薄く思えた。
「お兄ちゃん!無事でよかった…」
「当たり前だろぉ?ほら首くっつけてやるからなぁ〜。お前は仕方のねえ奴だなぁ〜」
しまった!いつの間に堕姫の首を…!
【雷の呼吸・壱ノ型-『霹靂一閃』】
鬼の兄、妓夫太郎が首を繋げようとした時、善逸が飛び出した。だがそれは攻撃ではなく、堕姫の身体を攫うための動きだった。
「な、てめぇ…!」
「おおっと!お前の相手は俺だ。そのまま行け我妻!」
堕姫の身体を取り返そうと追いかける妓夫太郎を、宇髄さんが阻止する。善逸はそのまま堕姫を抱え屋敷外へ走り去った。
「ちょ、ちょっと!あたしの身体!」
「あとはお前の頸を切ればお終いだろ?」
「てめぇら…なんで俺たちの秘密を知ってやがる?それを知った奴らは生かしちゃいねえはずなんだがなぁ〜?」
「おっと、ただの勘だったんだがなぁ〜?まさか正解だったとはなぁ〜!?」
「本ッ当にムカつく奴だなァ〜!!?」
宇髄さんの刀と妓夫太郎の鎌が激しくぶつかり合う。
相手は堕姫の首を抱えて片手なのに、二刀流の宇髄さんとそれでも互角に渡り合っている。
(ぐっ…と、とてもじゃないけど割って入れない…!)
無限列車の悔しさから俺も相当に鍛錬したはずなのに、この二人は別次元の強さだ。だけど猗窩座と煉獄さんの戦いとは違い、今は辛うじて動きは目で追える。
俺も加勢できれば一気に倒せるかも知れない。
なのに何故だ…足が、動かない。
「ほらほらどうした!言っとくが毒も効かねえぞ?派手に対策済みだからなぁ!」
「クソっ、この野郎、がぁ…!」
【血鬼術・飛び血鎌!!】
【音の呼吸・伍ノ型-鳴弦奏々!!】
俺が迷っている一瞬、妓夫太郎は無数の飛ぶ斬撃を繰り出し、それは俺にも向かってきた。だが宇髄さんの技により全て迎撃され、そのまま敵へ惜しい一撃を与え距離を取らせる。
「竈門!お前の仕事は終わりだ、我妻を追え!」
「はっ…!」
庇われた、と気づいた。今俺はあのままなら死んでいただろう。何を呆けているんだ炭治郎…!あいつらは何人もの罪もない人を喰ってきた鬼だろう。倒すべき敵だろう。
「お兄ちゃん!負けないで!」
「あぁ見てろよぉ〜。お兄ちゃんは強えからなぁ〜!」
劣勢の兄、それを励ます妹、
駄目だ…重ねるな、自分と禰豆子を…!
俺たちとあいつらは違う!
憎むべき、沢山の誰かの仇だ!
動け俺の足!敵意を燃やせ!
「竈門!逃げろー!!」
しまった、また敵の攻撃が来る。
宇髄さんは体制が悪い、間に合わない。
避けろ、避けないと!
血飛沫が舞った。
「…うぅ…!」
「--ね、禰豆子!?」
背負っていた禰豆子が箱から飛び出し、俺を庇ってくれた。ずっと眠っていたのに。
「なんだぁ〜?人間のくせに鬼なんか背負いやがって…変な野郎だなぁ〜?」
「そこの女!なんで鬼なのに人間を庇って…まさか、無惨様が言ってた鬼…!?」
「禰豆子!禰豆子…大丈夫か!?」
コクンと頷くと、また眠ってしまった。
傷が深かったのかも知れない…そのぐらいの攻撃だった。
俺が情けないから、庇ってくれたんだな。
ありがとう禰豆子…もう、迷わないよ。
「…上弦の鬼め!覚悟しろッ!!」
【ヒノカミ神楽・壱ノ型-『円舞』!!】
そして戦いは更に激しさを増していく。
糞柱で煽り柱で女の敵って、酷すぎるよなぁ〜?
宇髄さんファンの方ごめんなさい(今更)
それと宇髄さんの嫁たちは、このお話の突入時点ではまだ捕まっていない(本誌よりも少し時期が早い)事になっています。これも未来知識による改変ですね。