身代わりの魔法少女   作:ウォール教

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未プレイ勢で二次創作小説読んでるやつ、いますかっていねーか、はは
今日のTwitterの会話、篠澤広の胸を盛るな とか 棗イロハに新衣装を実装しろ とか
ま、それが普通ですわな
かたや俺は牢屋敷で少女の絶望を見て、呟くんすわ
it'a true wolrd 狂ってる?それ、褒め言葉ね。

好きな音楽 愛の残滓
尊敬する人物 シェリハン(介錯殺人はNG)
なんつってる間に4時っすよ(笑)あ〜あ、牢屋敷生活の辛いところね、これ


身代わりの魔法少女

命を奪い取りにくるような冷たさと鼻につくカビの匂いの中で、黒髪の少女は目を開く。

 

15歳になった少女のうち、世界に厄災をもたらす魔女因子を持つ者を幽閉する【牢屋敷】。信じている人間の方が少ないだろう陳腐な都市伝説は実在した。そして、そこに収監された少女の一人が自分である、と黒髪の少女は理解する。

 

周囲を見渡すと、牢屋敷と呼ぶにふさわしい監房は四方をほぼ全て石壁に囲まれ、窓のない部屋の唯一の出口は鉄格子で固く閉ざされており、閉塞感を感じさせる。壁には太い鎖の手枷と、部屋の雰囲気にそぐわない大きめのモニターが埋め込まれていた。

 

「ねえ、ここどこなのかな!?」

 

ほかの少女達も段々と目を覚ましたようで、気味の悪い冷たさの空気の中に温もりを孕んだ活気が広がっていく。

 

とは言っても、聞こえる声の大半は困惑と恐怖の色をしていた。無理もない、新生活に夢を抱き目覚めた先が牢屋敷という状況で、恐れるなというのは15歳の少女には無理難題にほかならない。もちろん、それは黒髪の少女当人も例外ではない。

 

「だけど、私は恐れない。どんなに怖くても……守るって決めたから」

 

震える両手で胸を締め付ける恐怖を押さえつけ、二段ベッドから降りる。

 

同室には、官能的なドレスを身にまとった、呑まれてしまいそうになる紫紺の瞳を持つ少女が居た。挨拶代わりとでも言うように、値踏みするような視線を向けてくる少女に、黒髪の少女はにこやかに敵意の無いことを伝えるような笑顔で返す。

 

「あ……もしもし……映像って見えてます……?何せ古くて故障が多いので……やれやれ」

 

数秒間の沈黙はモニターから聞こえてくる間の抜けた声で終わりを迎える。

 

「私、ゴクチョーと申します。詳しい説明がしたいので、ラウンジに集合してください。監房の鍵を開けますので、看守のあとについてきてください。……抵抗とかは自由なんですが……命とか無くなっちゃうので……はい……」

 

モニターが暗くなるのと同時に監房のロックが解除されたらしい。鍵の開く音がした。

 

何か金属を引きずったような音が聞こえ、廊下を見ると黒衣を纏った機械のような巨大な影が監房の入口を通り過ぎる。おそらくは先程の放送で触れられていた【看守】という存在だろう。両手に凶器を携え、命を奪うというのが脅しやハッタリでは無いということを黒髪の少女は実感する。

 

看守が通り過ぎたのを確認して廊下へ出ると、やはり何人か少女が居たようで別の部屋から続々と着飾った少女たちが出てきた。

 

皆が劇中から出てきたかのような奇怪な装いをしており、より一層と夢の中の出来事のように感じさせられる。

 

「よく分からないのだけれど、わたしは行くわ。良ければご一緒にどうかしら?可愛らしいお嬢さん?」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

どうやら監房は地下にあるようで、廊下に出ても変わらず古めかしい石造りの壁は嫌な冷気を発している。

 

看守の命を簡単に刈り取るであろう【暴力】と生気を全て吸い取ってしまいそうな石壁のせいで、誰も口を開こうとしない。処刑台へと送られる様な面持ちで看守の後ろへ着いていく。

 

大仰な階段を登りラウンジへ入ると、既に到着していた数人の少女がこちらを向く。空気は重く、冷たい無言が空間を支配していた。黒髪の少女もぞろぞろと入ってくる少女たちと同様に、居心地の悪い空間で少しでも存在を消すように座った。

 

「みんな初対面だと思うから、良かったら自己紹介をしていかないか?先に名乗らせてもらうよ。私の名前は蓮見レイア」

 

重苦しい空気を切るように1歩前へ出た金髪の少女、レイアが名乗りをあげる。腰に下げた細剣と英国騎士のような装いに恥じない堂々とした立ち振る舞いだ。その中性的な美しい見た目とスラリと伸びた高身長に不思議と視線が縫い付けられる。

 

「……ふんっ、遠野ハンナですわ。お見知りおきあそばっ……お見知り置きあそばせせ?」

 

次に口を開いたのは豪奢な緑色のドレスを纏ったツインテールの少女、ハンナだ。一見、良家の令嬢のような雰囲気だが、強気な態度とは裏腹に虚勢を張っているのは明白で、握った手が不安そうに震えている。

 

「ちょっとお先によろしいかしら?あなた、レイアさんと言ったわね。いきなり人のことを笑うのは失礼じゃなくて?」

 

どうやら既に一悶着あったようで、ハンナがレイアへ食ってかかる。

 

「す、すまない。そんなに気にしてるなんて思わなかったんだ。お手柔らかに頼むよ」

 

「きっ、気にしてないし……っ」

 

「その話し方は、ご両親に教わったのかい?」

 

「もう突っ込まないでいいから!ほっとけ〜〜っ!!ですわ!!」

 

ハンナは苛立ちから拳を震わせ、下がっていく。しかし、緊張はほぐれたようで横の少女に愚痴をこぼしている。

 

「えーっと、私は黒部ナノカ。よろしく」

 

一層重苦しくなった空気を変えるため、黒髪の少女が【ナノカ】と名乗る。

 

「ナノカくんだね。以後、よろしく頼むよ。何かあったら遠慮なく私を頼って欲しい」

 

「ええ、よろしく頼むわ」

 

場の雰囲気もレイアを一応のリーダーと認めたようでその後も一人、また一人と自己紹介を続けていく。

 

青髪の探偵少女シェリー、桜モチーフの服を纏った少女エマ、シスター服の治癒能力者メルル、猫耳配信少女ココ、豊満な身体を自信なさげに抱いた金髪の少女ミリア、ナノカと同室の紫紺の瞳の少女マーゴ、この世の全てを敵視した黒マスクの少女アリサ、言を発さずスケッチブックで会話をする少女アンアン、エマに対して苛立ちを隠さずにいる少女ヒロ、ほかの少女に一切関心を向けずに絵を描き続ける少女ノア。

 

全員が自己紹介を済ませたところで、羽ばたきの音と共に通気口からフクロウが降りてくる。

 

「あっ……人がいっぱい……。えっと、改めまして……この屋敷で管理を任されているかわいいフクロウ、ゴクチョーと申します……」

 

場の全員が怪訝な表情を浮かべ、ゴクチョーへと視線を向ける。あまりにも非現実的な様子であったが、皆が懐疑的な視線を向けるだけで行動を起こせないでいる。

 

その理由はゴクチョーの後ろに立つ異形の怪物にあった。両手に西洋剣をナイフのように持ち、黒づくめのコートに仮面をつけた3mほどの怪物。彼、もしくは彼女は無機質な仮面をつけ微動だにせず棒立ちしているだけで、場の全員の行動の自由を奪える暴力を有していた。

 

「……定時とかもあるので……さっさと説明をしていきますね……」

 

周りの様子を確認し、やる気の無さそうにゴクチョーは説明を始める。都市伝説は事実であるということ。いずれこの屋敷で殺人事件が起こるということ。裁判を開廷し、殺人犯を処刑しなければならないということ。その全てを淡々と説明し終え、質問は無いかと確認するように辺りを見回す。

 

「間違いです。私は悪ではない。この国に災厄をもたらす危険因子はこの子の方だ」

 

ヒロが一歩前へと進み、桜の髪飾りの少女、エマを指さす。

 

一触即発の雰囲気を感じ、ナノカはヒロから離れ、部屋の隅の暖炉横へと移動する。

 

対するエマは怯えた様子でメルルと身を寄せあっている。

 

「はぁ〜〜……、あの、頼みます。悪者を受け入れてください。私は残業したくないですし、みんな平和に楽しくがいいので……」

 

ゴクチョーの心底面倒くさそうなため息を無視し、ヒロは続ける。

 

「間違っている。私は悪じゃない。この世界を正すことができるのは私だけだ。私はこの世の悪を排す」

 

そう言ってヒロはナノカとは反対の壁、そこに掛けられているクロスボウへと向かっていく。

 

一瞬でナノカの脳内に最悪のシナリオが浮かぶ。先程のゴクチョーの説明にあった殺人衝動、それが暴走し取り返しのつかないことになるかもしれない予感がした。

 

ふと視界の端に映った火かき棒をバレないように手に取り、固く握りしめる。

 

「待ちたまえ!今はそんなことをしている場合では無いと思うが?」

 

幸いにも、レイアがヒロとクロスボウの間に立ち、その腰のレイピアを抜きながら牽制する。

 

「……何か勘違いをしているようだが、私がそこのエマを殺そうとしていると考えているならそれは間違いだ。確かにそこのエマは生かしておくべき存在ではないが、今はそれよりも優先すべきものがある。私はそこの木偶の坊を倒そうとしたまでだ」

 

そう言ってヒロはゴクチョーの後ろの看守を指さす。

 

「だとしてもだ。周りの皆を危険に晒す行為は慎んで欲しい。お願いするよ」

 

そう言って剣を収め、頭を下げるレイアにこれ以上は意味ないと判断したのか、ヒロは舌打ちをして自分の立ち位置へ戻っていく。

 

「……あ〜、終わりましたかね?私としてはどうでもいいんですけど、抵抗はオススメしませんよ。……えっと、殺さなきゃいけないので……」

 

三度、ゴクチョーの面倒くさそうな声がラウンジへと響く。

 

「質問は特に無さそうですね。……では、私はこれにて」

 

そう言うとゴクチョーは重苦しい空気を残して、バサバサと翼をはためかせ通気口へと消えていった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「みんな、聞いてくれ!先程もヒロくんには伝えたが、輪を乱し全員を危険に晒す行為は得策ではない。ゴクチョーや看守に思うところがある者もいるだろうが、ひとまず従って欲しい」

 

ゴクチョーが去ってからの沈黙を破ったのはまたしてもレイアだった。場の雰囲気もレイアをリーダーとして異論は無いようで、反対意見は出てこない。

 

「あの〜、私のポケットにスマホみたいなものが入っていたんですけど、これって私だけですか?」

 

青髪の少女、シェリーがスマホを片手に手を挙げる。急いで自分のポケットを確認すると確かにスマホが入っていた。

 

「……本当だね。外部との連絡は取れないみたいだが、【魔女図鑑】というルールブックは確認できるみたいだ。牢屋敷のマップや規則、我々の囚人情報が書かれているね」

 

「【魔女図鑑】によると、今は外出禁止時間みたいですね!それぞれの監房に居なければ懲罰房行きらしいですよー」

 

「なんでそんなに呑気なんですの!早く戻りますわよ!いつこの化け物が殺しにくるか分かりませんわ……」

 

そんなシェリーとハンナの掛け合いを聞いて、ほかの少女もぞろぞろと自分たちの監房へと戻っていく。

 

 

 

◇◇◇

 

 

ナノカが自分の監房に入ると、マーゴは既に着いていたようで部屋の探索をしていた。ナノカに気づくと入口の方へ向き直り、再び無遠慮にこちらを値踏みするような視線を向ける。彼女の瞳は深く濁っており、見つめられると蛇に巻き付かれているような錯覚に陥る。

 

「あら、おかえりなさい。お風呂にする?ご飯にする?それとも、フフフ……」

 

「あのさ、その警戒心マックスでこっちを見るのやめてもらえる?私は貴女と仲良くしたいと思ってるし、利用しようとか危害を加えようとかそんなつもりないから」

 

「あら、ごめんなさい。でも私が貴女を見ていたのは警戒心からじゃないわ……。ナノカちゃん、とっても可愛いから……食べちゃいたくなっちゃうのよ」

 

そう言って舌なめずりするマーゴに、ナノカは悪寒が走るのを感じる。

 

冗談なのだろう、と受け流し、部屋の探索に取り掛かる。見た目通り年季の入った建物のようで、部屋の角には埃が積もりベッドの下には蜘蛛の巣がかかっていた。気づけば探索というより掃除という格好でナノカは備え付けの雑巾で床を拭いている。

 

しばらくすると、スマホの通知と共に鉄格子の鍵が音を立てて閉まった。人見知りはしない方だが、殺人事件が起こると言われた後に初対面の人間と密室で二人きりというのは想像よりも神経を使うもので、お互い距離を取り警戒を隠さない。

 

「やっぱり同室って仲良くすべきだと思うんだけど、もう一度自己紹介しない?私は黒部ナノカ。妹が一人いて、好物はレモンケーキよ。よろしく」

 

部屋を見回り始めて20分ほどだった頃、掃除が進むだけで何の成果も得られず、気まずい雰囲気に耐えかねてナノカが口を開く。

 

「ええ、もちろん……。私は宝生マーゴよ。趣味は占いで、好物は……そうね、暖かい物と可愛い女の子かしら。よろしくお願いね」

 

マーゴも気まずさを覚えていたようで、探索の手を止め自己紹介を始める。

 

「私は絶対に死にたくない。もしゴクチョーの言うことが本当で殺人事件が起こるとしても、絶対に」

 

「それは私もというか、皆同じじゃないかしら。何人か危うい雰囲気の子はいたけれど……」

 

「ヒロちゃんとアリサちゃんの事だよね。こんなところに連れてこられて緊張してるだけならいいんだけど」

 

マーゴの言葉でナノカの頭の中に二人の少女の顔が浮かび上がる。黒セーラーの少女とマスクとパーカーで顔を隠した少女。

 

「ヒロちゃんはエマちゃんにご執心だから、私たちは安全かもしれないわね。でも、殺意も立派な感情表現よ。エマちゃんも少し羨ましいわね……」

 

「アリサちゃんも、私はそんなに悪い子じゃないと思うなー。進んで人を傷つける子には見えなかったというか、その逆で傷つけたくないから遠ざけてるようにも見えたわ」

 

探索兼掃除に手を動かしながら、2人の少女はその後も他の少女の印象について語り合う。

 

探索から掃除、掃除から会話へと目的が変化し、素の笑顔も見られるようになった頃、再びスマホが震え監房が解錠される。どうやら夕食の時間のようで、他の少女たちも続々と食堂へと向かっている。ナノカとマーゴも掃除の手を止め、空腹を訴え始めたお腹を抱えて食堂へと向かう事とした。

 

 

◇◇◇

 

 

食堂へ着くと、数人を除き少女たちは揃っており、いくつかのグループに別れて食事が始まっていた。

 

どうやら食事はビュッフェ形式のようで、長机の上には食事と呼べるのか怪しいレベルのディストピア飯が並べられている。その中でも多少マシそうなペーストと、リンゴをトレーの上に取り、周りを見渡す。

 

少し悩んだ後、ナノカはマーゴと別れ、青髪の少女シェリーのグループの机に腰を下ろす。

 

「ここ、座ってもいいかな?」

 

「ええ、もちろんです!確か……ナノカさん、と言ったかしら?」

 

声をかけると歓迎してくれたようで、もう少し警戒されると思っていたため拍子抜けしながらも、受け入れてくれたことに感謝しながら席に着く。

 

シェリーのグループはナノカを入れて5人で食事をしており、ハンナ、エマ、メルルが構成員のようだ。

 

チラリと横を見ると、マーゴはレイアのグループと食事をしているようで楽しそうな会話が聞こえてくる。

 

「貴女もあいつが気にいらないのでして?わたくしもですわ!あいつ……魔法を使ってるにちげーねーですわ」

 

どうやらレイアに不満を持っているらしいハンナが悪態をつく。ナノカとしては皆をまとめてくれるレイアには好感を持っているほうだが、ハンナは完全に敵視しているようで、その口からはどんどんと不満が溢れ出す。

 

「女子を誘惑する魔法なんか使って……しかも芸能人だからって、囲いを作って偉そうに!」

 

別に魅了の魔法とは限らないんじゃないか?と思いながらも口にはしない。実際、レイアの中性的な美貌には視線が向いてしまうし、皆を率いるリーダーシップもカリスマもある。

 

「魔法っていえば、メルルさんの魔法もすごかったですね!いや現実に魔法があるっていうので私はもうびっくりなんですけどね!」

 

「は、はわわ……。そ、そんなそんな……。たいしたことは、できません……」

 

「ね、ねえみんなは当たり前のように魔法って言ってるけど……ここに捕まったみんな、魔法を使えるってこと?ボク、魔法なんて使えないと思うんだけど……。」

 

話についてこれなかったようで、エマが立ち上がりながら問いかける。

 

「私もエマさんと同じですよ。魔法なんて初めて知りましたし、使えません」

 

「……ふぅ、何も知りませんのね。シェリーさんも、エマさんも。魔女因子を持っている子は、不思議な力が使えるんですの。それが【魔法】。あなたたちも気付いてないだけで、なにか不思議な力を持っているはずですわ。」

 

ハンナは食事の手を止め、説明を始める。

 

「ええ〜?私不思議な力なんて持ってないですよ?特技っていえば……ちょっと力が強いかなってくらいで」

 

そう言ってシェリーは机の上のリンゴに手を伸ばし、紙でできたものを潰すように握りつぶした。周囲に果汁が飛び散り、グループの全員が絶句する。

 

「どこがちょっとなんですの!?ゴリラ女!?」

 

「ひどいです〜。リンゴくらい誰でも潰せますよね?」

 

「いや〜、流石に魔法だと思うなぁ……それ」

 

周りを観察しながら聞き手に回っていたナノカも思わず否定してしまう。

 

「そっかあ……私って魔法が使えたんですね。いやぁ、照れますね〜」

 

嬉しそうに自分の手を見つめながらシェリーはナノカのトレーの上に乗っているリンゴへ手を伸ばす。

 

「ハ、ハンナちゃんはどんな魔法が使えるの?」

 

伸びてくるシェリーの手を何とか躱してナノカはハンナへと話を振る。

 

シェリーの興味もそちらへ移ったようで「私も気になります〜」とハンナの方へ向き直る。

 

「仕方ないですわね、そんなに見たいのなら見せてあげてもよろしくってよ?よ?」

 

得意げになったハンナは目立つ所へ移動していき、大袈裟に両手を広げ、その小さな体躯に力を込める。

 

「これがわたくしの魔法ですわあぁっ」

 

そんな声とともにハンナの体が天井から釣られたように10センチほど浮き上がる。

 

「すごいすごいすご〜い」

 

大はしゃぎのシェリーを横目にハンナはテンションを上げてそのまま左右に移動する。しかし、すぐに疲れたようで魔法を解除し床へと降り立つ。

 

「……と、こんな風にわたくしたちは魔法を持っていますの。きっと魔女見習いみたいなものね。自分が不思議な力を使えるって気づいた時から、わたくし、色々調べてきましたの。魔女因子や牢屋敷のことは、都市伝説で聞いたことがありますわ」

 

「それ、私も聞いたことあるわ。まさか実在するとは思わなかったけど……」

 

ナノカが同意を示すと、シェリーもうんうんと頷く。

 

「実在した都市伝説!あがりますね〜」

 

「ボク、全然知らなかった……」

 

エマとメルルは初耳だったようでキョトンとして話を聞いている。

 

「ボク、間違えてここに連れてこられたんじゃないかな?」

 

「可能性はありますわね。検査なんて、いつされたのかもわからないですし。わたくし、牢屋敷送りが嫌でこの能力をずっと隠してきましたのに……。こんなところに閉じ込められて、この先、どうなってしまうんですの……」

 

「ところで、ナノカさんの魔法はどんなものですか?!私、気になります!」

 

陰鬱な雰囲気を察したシェリーがナノカへ話題を振る。先程、マーゴには空気の読めない子と言われていたが、彼女なりに考えて行動しているのだろう、とナノカは心の中で評価を改める。

 

「私の魔法はね、【予知夢】なんだけど、自分の意思で発動できないからみんなほど便利なものじゃないよ……パッとしないし……」

 

この魔法だけは誰にもバレてはいけない、例え全員を裏切ることになっても……、そう心の中で唱えてナノカは笑顔で答える。

 

「魔法が使えるのは羨ましいよ。ボク、何も持ってないし……。もし何か見たら教えて欲しいな」

 

その後も、不味い食事を胃に流し込む間に5人は外の世界の思い出について語り合った。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

夕食後、シャワーの温水に当たりながら、黒髪の少女は大きく息を吐く。入浴時間ギリギリのシャワールームはナノカ以外はだれもおらず、自分だけの空間に一日中張っていた緊張の糸が緩んでいく。初日としては上々、危うい場面はあったが何とか死なずに過ごすことができた。1日の反省をしながら、ナノカは用心深くシャワールームを見渡す。

 

「もう誰も居ないよね……?」

 

十重二十重と警戒を振りまき、【ナノカ】は右手の指をパチンと鳴らし、牢屋敷で目覚めてから、否、牢屋敷に囚われる前から自身にかけていた【変身】の魔法を解く。

 

その瞬間、まだツインテールの癖が残った黒髪は肩にかかる程度の白髪へ変わり、顔立ちもよく似てはいるが、少し幼さの抜けた顔へと変容していく。

 

「生き残らなくちゃ……。何をしてでもこの牢屋敷から脱走する。世界一可愛い私の妹に会うために!」

久しぶりに扱う自分の手を握りしめ、白髪の少女は脱獄を誓う。

 

たった一人の愛する家族のため、一日中変身し続けた黒髪の少女の為に、牢屋敷という地獄からの脱走を誓う。

壁に叩きつけた拳の痛みを自分の決意として、少女は進み続ける。

 

こうして、【黒部ナノカ】改め、【黒部ホノカ】の牢屋敷生活が始まった。

 




本小説は【もしも、黒部姉妹が生まれるのが一年遅かったとしたら】という世界観で書かれたIF二次創作です。
囚人番号665番として身代わりになった黒部ホノカが生き残り、再びナノカに会うために奔走する、そんな物語です。
結末としては、ナノカ抜きではサバトが行えない為、本編一周目、二週目と同様ににBADENDとなります。ご了承ください。
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