ほとんどAIで作ってみました。
あらすじ
小学四年生の修(おさむ)には、秘密があった。それは「触れた無生物の時間を巻き戻し、新品の状態に完全復元(レストア)してしまう」という、物理法則も質量保存の法則すら無視する規格外の能力。幼い頃、友人の服だけを新品にして親をパニックに陥らせて以来、修は「目立たないこと」「不審がられない自然な動作の中で力を紛れ込ませること」を己に固く課していた。
ある日、大好きな母親の「昔みたいに綺麗なお城が見たいなぁ」という何気ない一言を聞いた修は、ちょっとした親孝行のつもりで皇居(旧江戸城)の石垣にそっと手をかざす。すると、音も光もなく、一瞬にして完璧な姿の「多聞櫓」が出現。現場の警備員や外国人観光客は大パニックに陥り、翌朝のニュースは「令和の怪異」「宇宙人の介入か」と大騒動になるが、修本人は「ひとつだけピカピカなのは格好悪いな」と他人事のまま、トーストをかじっていた。
これを皮切りに、修の「思いつき」と「無自覚なやらかし」による歴史修復劇が幕を開ける。
皇居周辺のマラソン大会で父親を応援するフリをして江戸城外壁を全復元し、スカイツリーから昭和の思い出のビルと消えた噴水広場を復活させ、勝鬨橋では元技師の老人の魂に火をつけて半世紀ぶりの完全稼働を果たさせる。さらにエアレース会場では本物の零戦を完璧な状態に戻して大空へ舞い上がらせ、京都では引退間近のC62形蒸気機関車を時速124kmで爆走させて現役復帰へ追い込む。
「平城京が見たい」と願えば奈良の都市空間ごと1300年前の姿へ上書きし、エレベーター付きの大阪城にブチギレてパンチ一発で豊臣時代の黒金大坂城へと変貌させ、呉の戦艦大和の模型に手を合わせれば、東シナ海の海底から完全体の「大和艦隊」を引き寄せて英霊たちの悲願を昇華させる——。
当の本人は、父親が買ってきたガラクタの「マツダ・787B」を通学用にして登校し、大人たちが頭を抱える横で「身から出た錆だね」と笑う毎日。
歴史的ロマンと国家レベルの大狂乱、そして一人の少年の呑気な日常が交錯する、爽快度100%の痛快レストア・コメディ!
秋雨前線や台風が通り過ぎ、気圧配置が冬になるにつれて徐々に寒くなる今日このごろ。皇居のとある高台の一画に、彼はいた。
彼の名前は、修(おさむ)。小学四年生だ。
今日は両親とともに、無料公開されている皇居東御苑にいた。
最初の方では、両親と一緒に歩いていたが、今では順路から少し離れた場所にいる。
彼は周囲を見渡し、一人きりになれる瞬間を狙う。一体何が目的なんだろうか。
そう思索するまもなく、その時がやってくる。
彼は右腕をあげ、手のひらを目の前の空間にかざす。
そこには、黒い瓦と白の漆喰でできた「櫓」が立っていた。
修の異質な能力が発現したのは、まだ自我すらおぼつかない赤ん坊の頃だ。
彼が口に含んだおしゃぶりは、噛みちぎられることも色が褪せることもなく、常に工場から出荷された直後の光沢を保っていた。誤って口に含んでしまった古い十円硬貨も、両親が青ざめて吐き出させた時には、造幣局から出てきたばかりのような眩しい銅色に輝いていた。
成長するにつれ、その現象はより顕著になっていく。
修が触れた玩具は塗装の剥げが治り、食べた果物はどれほど傷みかけていても一口噛めばもぎたての新鮮さを取り戻し、付着していた微量な農薬すら無毒化された。
転んで擦り傷を作った際、腹立ち紛れに蹴っ飛ばした公園のボロいベンチは、木目が美しく揃った新品の木材へと変貌した。
破壊や摩耗という、あらゆる物質が辿る不可逆の過程を、修の接触は嘲笑うかのように巻き戻した。
修が自身がつも力を「異様」だと自覚した出来事がある。それは、彼が幼稚園の年長になった頃である。
雨上がりの公園の滑り台で派手に転び、全身泥まみれになった友達が、泣き出しそうな顔で自宅へ向かって駆け出した時のことだ。
「待って」
修は咄嗟に手を伸ばし、友達の背中に触れた。
次の瞬間、奇妙極まりない光景が発生した。
友達の服、靴、帽子、果ては下着に至るまで、泥汚れどころか洗濯のダメージすら消え去り、店頭に並ぶ新品そのものの状態へ戻ったのだ。しかし、友達の顔や手足、髪の毛についた泥はそのままだった。
『服だけが仕立て直したようにピカピカで、体だけが泥だらけ』という強烈な矛盾を抱えたまま、友達は自宅の玄関へと飛び込んでいった。
その直後、家の中から聞こえてきた友達の母親の悲鳴と、理解不能な事態に対する狂乱の声を、修は玄関の扉を背に聞いていた。
(……服だけ綺麗なんて、あり得ないんだ)
友達の母親が見せた、恐怖と困惑が混ざり合った表情を玄関の扉から覗き込んで見る。大人は「あり得ない現象」に直面すると、常識を揺さぶられて異常な反応を示す。
子供心ながら、修は強烈な恐怖を抱く。自分の力は、おおっぴらにしてはならない。バレれば異物として扱われ、穏やかな日常が壊れてしまう、と本能で悟ったのだ。
この日を境に、修は二つの教訓を得た。
一つは、自分の能力の対象範囲について。人間や動物、植物といった「生きている生物」そのものは復元できないが、服や道具などの「無生物」であればタイムふろしきのように時間を戻せるということ。
もう一つは、目立たないための処世術だ。何かを修復する時は、必ず第三者から見て自然な動作——日差しを遮る、背伸びをする、物を拾うといった意味のある動きの中に能力の発動を紛れ込ませること。誰にも勘取られないよう、細心の注意を払う「静粛な心がけ」が、修の日常の立ち振る舞いとなった。
月日は流れ、修は小学四年生になった。
成長に伴い、修の身体には大きな変化が訪れていた。かつては小さなミニカー一つを新品にするだけでかすかな疲労感を覚えていたが、成長期を迎えたことで体力が飛躍的に向上していたのだ。
持久走の授業でも息が切れにくくなり、体内に蓄えられるエネルギーの容量そのものが増していた。今や、自宅であるに階建ての一軒家など、ある程度の大きさの建造物をひとつ二つ丸ごと時間を戻したところで、少しあくびが出る程度の体力しか消耗しない。
能力の規模に対して、身体のスペックが十分に追いつき始めていたのである。
そんな折、母親がふと口にした言葉が、修の小さな勘違いを引き起こすことになる。
リビングで洗濯物を畳んでいた母親が、テレビに映る皇居の特集を見ながら溜息をついた。
「皇居……昔の江戸城のあたりね。昔は大火事があったり、時代の流れでたくさんの櫓や門がなくなっちゃったのよね。昔通りの姿で残ってたら、もっと素敵だったのにねぇ」
母親のその言葉を、修は素直に受け止めた。
(お母さん、昔の綺麗なお城が見たいんだな)
修は根本的な部分で勘違いをしていた。
彼にとって自分の能力は「散らかった部屋を片付ける」「壊れたおもちゃを治す」程度の、少し特殊な掃除道具のようなものだと思っていたのだ。
だが、その本質は単なるお片付けなどではない。
失われた歴史の残骸から過去の時間を引っ張り出し、現在の上に上書きする——『歴史の修復』という、国家や時代をも揺るがす概念そのものの行使であった。
ただ「お母さんに見せてあげたい、綺麗にしてあげたい」という、純粋で無邪気な動機。だからこそ、修は静寂のポケットのような高台で、周囲に人が誰もいなくなるその一瞬を静かに待っていたのだ。
視線を新品になった櫓へ向ける。頭の中に思い浮かべたのは、おぼろげな完成予想図。立派な木造の骨組み、真っ白な漆喰の壁、重厚な瓦屋根。
音も光もなく、欠けていた石垣の上に、塗りたての漆喰とピカピカの木材で組み上げられていった完璧な姿の「多聞櫓」。昨日建てられたばかりのような新築の輝きと、ほのかな木の香り。
修は手を下ろし、両親の背中を追ってそのまま何事もなかったかのように高台から出ていった。
修がその場を離れてから、ちょうど十分が経過した頃のことだ。
順路を回ってきたアメリカ人旅行者のグループがその高台に差し掛かり、先頭の男性が突如として足を止め、口をぽかんと開けた。
「……Holy SHIT!!」
彼が上げた悲鳴のような叫びに、周囲の外国人たちが一斉に集まってくる。
「What the hell is this!?(一体全体、何なんだこれは!?)」
「Is this a new attraction? It wasn't here five minutes ago!(
新しいアトラクションか? 五分前にはこんなのなかったぞ!)」
シャッター音が連打される中、異変を察知した皇宮警察の巡回警備員が二人、走って現場に駆けつけてきた。
「どうしました、何かありましたか——」
警備員の一人が声をかけかけた瞬間、その言葉は途中で凍りついた。二人の目が限界まで見開かれる。そこにあるはずのない、あまりにも完璧に作り込まれた江戸時代の物見櫓が、陽光を浴びて神々しく聳え立っていた。
漆喰は湿り気すら感じられるほど塗りたてなのに、クレーン車も足場も資材の搬入の痕跡すら存在しない。
「な……なんだこれは……!?」
「本部に連絡を! いや、何を報告すればいいんだっ!? 増築……いや、十数分で建てられたのか!?」
インカムを握りしめる警備員の指先がガタガタと震える。現場は瞬く間に「あり得ない奇跡」を目撃した群衆の怒号と興奮の渦に包まれていった。誰が、いつ、どうやって、何の目的で。答えを知る者は誰もいなかった。
翌朝。
修の自宅のダイニングルームには、テレビから流れるアナウンサーの切迫した声が響いていた。
『——─続いてのニュースです。昨日午後、皇居東御苑内において、突如として完璧な状態の江戸城・物見櫓が出現するという、前代未聞の事態が発生しました……』
テレビの映像にはあのピカピカの櫓が映し出され、画面の端では老教授が白目を剥いて「あり得ません! 慶安年間の塗り方をそのまま新品にしたものです! タイムスリップか宇宙人の介入か……!!」と叫んでいる。
そんな狂乱の画面を前に、修は寝ぼけ眼をこすりながらパジャマ姿で食卓についた。
大きめのあくびを噛み殺し、牛乳をぐっと飲み干す。
「修、テレビ見た? 皇居にすごいの出来たんだってさ。昨日僕たちが行ったところだよ」
キッチンから母親がトーストのお皿を持ってきながら、目を丸くしてテレビを見上げている。出勤前の父親も、新聞の手を止めて画面に釘付けになっていた。
「へー、すごいねー」
修の口から出たのは、実に心のこもっていない、棒読みの言葉だった。
心の底では「お母さんのためにちょっと綺麗にしただけなのに、大袈裟だなあ」と思っている。だが、彼は完璧に『何も知らない一人の小学生』という他人事の仮面を被っていた。
自分がやったとバレたら、あの友達の母親が見せたような恐怖と困惑の顔を、大好きな両親にさせてしまう。だから絶対に、悟られてはならないのだ。
(ちょっと古かったから綺麗にしただけなのに。でも、ひとつだけピカピカなのは全体のバランスが悪いな……)
テレビの中の大騒動を横目に、焼き立てのトーストを持っていちごジャムを塗りたくった。芳醇ないちごの香りがただようトーストをかじる。サクッ、と心地よい音が口内に響く。
「あ、ちょっと焦げてる」
国家レベルの大騒動や専門家の悲鳴よりも、修にとっては目の前のトーストの焼き加減の方が大事だった。
朝食を平らげた修は、軽くなったランドセルを背負うと玄関へ向かう。四年生になって増えた体力を実感しながら、彼は「他人事」の顔のまま、静かに決意を固めていた。
(ひとつだけじゃ格好悪いし、周りの城壁も綺麗にしてあげなきゃ。今度はもっと手際よく、お父さんの応援のフリでもしながら目立たないようにやろう)
「行ってきまーす」
「あ、修、気をつけてね! 世の中なんだか物騒だから!」
母親の心配そうな声を背に受け、修はガラリとドアを開けた。
自分が世界をどれほど揺るがしたかも、これからさらに揺るがすことも隠し通すつもりで、彼は今日もごく普通の小学生として、登校の路へと足を踏み出していった。