「──、起──」
凛とした声と、優しく揺さぶられる感覚が、まどろみを覚ましていく。
しかし、それがあまりにも心地良くて、“彼”は目覚めるのを惜しく思ってしまう。
「お─、もう──る時間だぞ」
再びの声。
ポンポンと肩を叩かれ、そのリズムが眠気を更に助長する。
もう、ずっとこうしていたい……。
「うう……あと、五分……」
「……ふう」
溜め息。
側にあった気配が少し遠ざかるのを感じ、次の瞬間、鼻が摘まれた。
当然、息は出来なくなり、沈もうとしていた意識が強制的に浮上し始める。
「っ、ん、ぐ……ふが……?」
「やっと起きたか」
呆れ笑いと同時に、つん、と額を突つかれ……。
そこまでされて、ようやく“彼”は目を開ける。
見上げる視界に居たのは、花のように美しい女性。
夕暮れの空を思わせる色合いの瞳を持ち、艶やかな黒髪をサイドポニーにまとめる彼女の名は、ファレノプシス。胡蝶蘭の名を持つウマ娘だった。
「おはよう。今日もそなたは寝坊助だな」
「……おはよう」
“彼”は寝起きが悪い。
遅刻常習犯になる程ではないけれども、どうにも朝はボーッとしてしまう性質である。
そんな“彼”の頭上で主張する寝癖を撫でつけ、ファレノは布団の脇から腰を上げた。
「もう朝餉は出来ている。早く顔を洗って来なさい。仕事に遅れてしまうぞ」
そう言い残し、居間へと向かうファレノを見送って十数秒。
“彼”はやっと布団から抜け出す事に成功したのだった。
“彼”とファレノがトゥインクルシリーズを駆け抜けたのは、もう過去の話。
トレセン学園を卒業と同時に、ファレノは現役を引退。幼い自分を導いてくれたウマ娘育成倶楽部で、後進を育てる道に進む。
そして二人は、そうするのが当たり前であるかのように、互いを人生のパートナーとして定めた。
結婚式こそまだだが、一年ほど前に入籍は済ませ、こうして同棲生活を送っている。
……少し補足しよう。
幸せな同棲生活を、送っている。
「頂きます」
顔を洗い、身嗜みを整え、食卓について、純和風な朝食を前に手を合わせる。
二人で住むために引越した一軒家は、いわゆる古民家であり、少し修復に手間はかかったものの、その分、比較的安価で入居できた。
家事は分担……するはずだったのだが、前述の通り“彼”は朝が弱く、トレーナーという仕事上、帰りが遅くなる事もしばしばあるため、定時に帰れるファレノの負担が多めとなってしまっている。
けれども、彼女は文句を言うどころか、どこか楽しそうに、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるのであった。
「うん、今日も美味しい」
「そうか。それは重畳。夕餉に食べたい物はあるか? なんでもとは言えぬが、善処するぞ」
「そうだなぁ……」
塩鮭と白米に、油揚げとワカメの味噌汁という鉄板メニューに舌鼓を打ちながら、早くも夕飯の献立を考える。
武芸十八般に加えて、家事全般にも通じるファレノは、料理に関しても和食を得意とするが、和食しか作れない訳ではない。いわゆる日本の家庭料理ならOKだ。
昨日は肉じゃが、一昨日は具沢山豚汁と筑前煮……。和食が続いているし、今日は違うジャンルが良いかも知れない。
「ハンバーグ、とか。前に作ってくれた、粗挽きの挽肉使った豆腐ハンバーグ、美味しかったしまた食べたいな」
「ハンバーグか。うむ、あい分かった。腕によりを掛けて作ろう」
ファレノが柔らかく微笑み、髪を纏めている花飾りが小さく揺れる。
何気ない仕草ですら、まさに胡蝶蘭が風に揺れるような優雅さで、思わず見惚れてしまう。
それを悟られるのが妙に恥ずかしく感じ、“彼”は箸を動かす速度を早めた。
そんなこんながあり、数十分後には家を出なければ時間となった。
ネクタイを締め、ジャケットを羽織り、鞄を確認して……。準備万端、のはず。
「さて。そろそろ私も出る。忘れ物はないか? ……そのまま。ネクタイが少し……よし、これで良い」
同じように支度を終えたファレノが隣に立ち、慣れた手付きで首元を整えてくれる。
今日こそは完璧だと思ったのだが、ちょっと悔しい。でも、こうしてネクタイを直してもらうのも嬉しいので、一生ネクタイを結ぶのは上達しなさそうだ。
加えて、愛する女性の存在を間近に感じた事で、とある欲求がムクムクと湧き上がってきて……。
「一つだけ、忘れ物したかも」
「うん? なんだ、なら早く……」
「……ファ、ファレノ成分の摂取を、忘れてたなー! ……なんて」
「は?」
半目になり、ジロリと睨みあげるファレノ。
引き攣った笑みを浮かべる“彼”。
玄関の引き戸の向こう側で、野良猫やら犬やらの声が虚しく響いていた。
ヤバい。滑った。
仕事前にちょっとスキンシップしたかっただけなのに……!
「何を言うかと思えば、全く……」
はあぁぁ……とクソでか溜め息をつき、ファレノが額を抑える。
あー、これは怒られるなー。調子乗るんじゃなかった……と“彼”が後悔していたら。
「少しだけ、だぞ」
ファレノは両腕を広げ、“彼”を受け止める体勢に。
思わぬ形で願いが叶い、少し戸惑う“彼”だったが、抱きしめたい欲には抗えず、ファレノの背中に腕を回した。
頭一つ分強の身長差があるせいか、すっぽりと腕の中に収まる、小柄な体。
その体温を感じると、落ち着くのに心臓が跳ね回るという、矛盾した状態に。
入籍はしたけれど、夫婦という自覚に乏しく、どちらかと言えば、やっと恋人同士になれたような感覚だ。
初めて肌を重ねたのも……うまぴょい(隠語)したのもつい最近、それだってまだ数えるほど。
もっと触れ合いたいと思うのは、自然な事であると思いたい。
「……まだ足りぬのか?」
「もうちょっとだけ……」
腕の力を強めると、ほんのりと、シャンプーの香りが鼻をくすぐる。
嗅ぎ慣れた匂い。いつまでも感じていたい匂い。
ああ、いっそこのまま、仕事をサボってしまえたら……。
「こら」
「あでっ」
いつの間にか、するりと腕の中から逃げ出したファレノが、“彼”の額を指で弾く。
かなり強めに抱きしめていたはずだが、彼女にとっては意味のない拘束だったらしい。
「そなた、最近弛んでおるぞ。その様な振る舞いでは、後進に示しがつかぬ。しっかりしなさい」
「う……それは……申し訳ない……」
ピシャリと叱られ、“彼”は意気消沈。思いっきり肩を落とす。
弛んでいる。そう、弛んでいる。
元よりファレノの在り方、精神性に惹かれ、相手が年下のウマ娘にも関わらず、弟子入りを志願したほどに惚れ込んでいた。
それが同棲を始めて、いっそう強くなった。
現役時代は意識して無視していた分、女性としての魅力を強烈に意識するようになってしまった。
要するに、ぞっこんなのだ。
そんなファレノにワガママを言って、ちょっと強引に抱きしめさせて貰った挙句、苦言を呈された。
何やっているんだろう、と自己嫌悪を覚える“彼”だった。
「……そんな顔をするでない。ほら、遅刻してしまう。もう行くぞ」
「そう、だな。今日も頑張らないと」
情けない顔でもしていたのだろうか。
ファレノが、ぽん、と背中に手を置き、のっぴきならない現実に向き合う勇気をくれる。
こうして“彼”は気を取り直し、けれども、ちょっとヘコんだ状態で出勤する事になったのである。
「なぁるほど。それでしょげてる訳だ」
数時間後。
トレーナー寮のラウンジにて、“彼”は先輩の男性トレーナーと共に昼食を摂っていた。
何を食べているのか? もちろん、ファレノ特製の愛妻弁当である。
だし巻き玉子がとてつもなく美味しい。
「ま、気持ちは分かるよ。誰でも最初は加減なんて分からないもんさ。ましてや、お前さん達は恋人期間をすっ飛ばして入籍しちまったんだから」
「そんなもの、でしょうか……」
先輩トレーナーは既婚者……。それも、“彼”と同じく、過去の担当ウマ娘と結婚した。
以前から知人ではあったが、同じ身の上になったという事もあり、何かにつけて相談に乗ってくれている。
誰かと恋愛関係になったのすら初めての未熟な男にとって、実にありがたい相談相手だった。
「不安なら、立場を逆転させて考えるといい」
「逆転ですか……?」
先輩トレーナーもまた、愛妻弁当を食しながら言う。
箸で摘んだ卵焼きが少々焦げているのは……見なかった事にしよう。
結構な確率で焦げている気がするけれど、きっと気のせいだ。うん。
「例えば、お前が早めに出勤したい朝に、嫁さんが珍しくスキンシップを求めてきたとする」
「……ファレノがそんな事するかなぁ」
「例え話だ、突っ込むなって」
言われて、“彼”は想像力を働かせてみる。
忙しい朝。
ファレノが出掛けに“彼”を呼び止め、恥ずかしそうな顔で「行ってきます」のハグを求め……。
やっぱり似合わない気がしてならないが、この際、違和感は捨て置こう。
「どうしても仕事を優先しなくちゃいけなくて断ったら、嫁さんはしょげてしまった。お前はどう思う?」
「……申し訳ない気持ちで、いっぱいですかね。後で埋め合わせしないと……」
「お前がそう思うなら、嫁さんもそう思っている可能性はあるだろう? そんな気にしなくても大丈夫さ」
実際に求められたら何時間でもハグする所だけれど、断腸の思いで断る。すると、「仕方ないな」と苦笑いして、残念そうにするファレノ。
……想像しただけなのに、胸が痛い。
今すぐにでも愛妻を抱きしめたい衝動に駆られるが、果たしてファレノは、どうなのだろうか。
同じように思ってくれているのなら……少しは安心、できるのだが。
いまいち、ファレノに似つかわしくない行動を想像したせいで、説得力を感じられない。
しかし、先輩トレーナーのお気楽で豪快な笑みは、不思議とそれを信じたくなるような、朗らかさに満ちていた。
「ありがとうございます。ちょっとだけ、気が楽になりました」
「良いって事よ。お礼は……そうだな。そのやたら美味そうな卵焼きでどうだ」
「絶対ダメです。後でコーヒー奢りますから」
「ははは、ダメかー。んじゃそれで良いや。午後は気張っていけよ」
「はい!」
例え恩義ある相手でも、愛妻弁当のおかずは譲れない。
分かっていて言ったのだろう先輩トレーナーは、ちょっと苦いだろう卵焼きを、それでも満足げに完食するのだった。
そして、同時刻。
“彼”と同様に、ファレノもまた思い悩んでいた。
「むう……」
既に昼食を終えたファレノは、育成倶楽部で午後の指導の準備を進めつつ、今朝の出来事を思い出す。
愛しい男性の温もりと、寂しそうな顔を。
(やはり、厳しくし過ぎただろうか)
弛んでいる、と思ったのは嘘ではない。ただし、それにはファレノ自身も含まれている。
あのまま……。あのまま“彼”の腕の中に居れば、きっとファレノの方が我慢できなくなっていた。
弛んでいる。弛みきっている。
夫に抱擁を求められ、妻として応えるまでは良い。
だが、実はあの時、ずっとこうしていたいとファレノも思っていたのだ。
仕事前にも関わらず、なんという惰弱。
自分に喝を入れるため、断腸の思いで抱擁から抜け出し、誤魔化すように夫を叱りつけて……そして、寂しそうな顔をさせてしまった。
本意では、なかった。
「一人で考えていても、堂々巡りか……。知恵を借りるべき、だな」
このままでは指導に集中を欠くかも知れないし、まだ休憩時間は残っている。
懸念は早々に払拭すべきと考え、ファレノは、同期であり人生の先輩でもある友人に、助言を求める事にした。
その友人とは……。
『はーい、もしもし。ファレノさん?』
「ああ、スペ。久しぶりだな」
『お久しぶりですー! どうしたんですか? 急に電話なんて』
かつて、黄金世代とも呼ばれたウマ娘達の筆頭にして、一児の母(第二子も妊娠中)の、スペシャルウィークであった。
彼女もトレセン学園を卒業後、自らのトレーナーを実家のある北海道へと攫げふんげふん連れ帰り、そのまま結婚。幸せな結婚生活を送っているようだ。
夫婦生活の相談相手として、これ以上に相応しい友人は居ないだろう。
なお、その他の黄金世代の同期達の現状は以下の通りである。
グラスワンダー。担当トレーナーと結婚。日本の永住権を取得して、現在は妊活中。
エルコンドルパサー。担当トレーナーを寝技(意味深)で堕とし結婚。しばらくは世界を走り回っていたが、現在は祖国に腰を落ち着けて子育てに奔走している。
ツルマルツヨシ。担当トレーナーと体質改善を続ける中で既成事実が積み上がり、授かり婚。今は悪阻と戦っている。
キングヘイロー。卒業後に担当トレーナーと恋仲となり、「私達は恋人同士としても一流よ!」と豪語していたが、思いがけないタイミングで子供を授かってしまい、こちらも授かり婚。母親との関係も、少しは改善したようだ。
セイウンスカイ。察してあげて下さい。
『なるほどー。つまり、旦那さんが悲しんでないか、嫌われたりしてないか、不安なんですね』
「……まぁ、そうとも言える、かも知れない……」
閑話休題。
事情を説明したファレノが、珍しく言葉尻を濁す。
気丈に振る舞っているけれど、まだ19歳の幼妻。色恋沙汰に心が揺れる事だってあるのである。
『うーん。まず最初に、旦那さんはそこまで悲しんだりしてないと思いますよ? ちょっと残念、くらいには思ってるでしょうけど』
「……そう、だろうか」
『はい、絶対です! 嫌いになる事もあり得ないです。ファレノさんの旦那さんって、ファレノさんにぞっこんですし』
「だ、断言したな。根拠でもあるのか?」
『根拠って……。え? 現役時代から、見てるだけで分かりましたけど』
「…………そ、そうか」
『それに、ファレノさんの方だってそうですよね? 前にみんなで集まった時とか、旦那さんをすっごく褒めまくって──』
「ゔっゔん! 分かった、分かったから、もう堪忍して欲しい……」
『ふふふ、はぁーい』
それを感じ取ったスペは、不安なんか消し飛ばそうと、明るい声で断言する。
不思議なもので、他の誰かから言って貰えたというだけで、暗澹とした気分は霧散してしまった。
げに頼もしきは同期の絆、であろうか。
「しかし、それが事実だとして、落胆させてしまったのも確か。何か埋め合わせをせねば……」
『あ! だったら良いアイディアがありますよっ。私のトレーナーさ……じゃなかった、夫も大満足のやつが!』
「ほう。スペがそこまで言うとはな。して、如何様なものなのだ?」
『それはですねぇ……。ごにょごにょごにょ……』
「……なっ!? い、いやしかし……う、むう……それはまことか……?」
加えて、何やらスペから入れ知恵されたらしいファレノは、驚いたり、顔を赤くして悩んだり。
終いにはドン引きすらしてしまったが、休憩時間ギリギリまで、友人との通話は続いたのだった。
時は過ぎ去り、同日の夜。
帰宅した“彼”が「ただいま」と玄関を開けると、聞き慣れたスリッパの音がパタパタと近づいてきた。
出迎えてくれるのは勿論、ファレノ。割烹着姿の幼妻だ。
「おかえり。もう夕餉の下拵えは済んでいる。すぐに食べるか? それとも風呂を先にするか?」
「……ご飯を先に食べたいかな。お腹が空いちゃって」
「分かった。準備をしておくから、手を洗って来なさい」
鞄とジャケットを預けつつ、“彼”は思う。
ここで「それとも、私か?」っていつか言って欲しいなぁ、と。男としては、一度は聞いてみたいセリフだ。
……普通にお願いすれば言ってくれるだろうか? 今朝のことがあるからしばらくは無理かも知れないけれど、いつか頼んでみるとしよう。
それはともかく、言われた通りに手洗い・うがいをして居間に。
肉の焼ける音と香ばしい匂いが、これでもかと空きっ腹を刺激した。
ワクワクしながら食器などを準備して待っていると、程なく食卓にハンバーグを始めとしたおかずが並ぶ。
「では。頂きます」
いつものように手を合わせ、さっそくハンバーグを一口。
ごく普通の粗挽きハンバーグに豆腐を混ぜ込んだものだが、パサついたりせず、醤油ベースのソースが良く合い、箸が止まらない。
みるみる内に白米は減っていき、副菜も含め、気が付いた時にはもう完食だ。
「ご馳走様でした。美味しかったよ。やっぱりファレノの料理は絶品だ」
「ふふ、そうか。お粗末様でした。……さて、今日は先に湯を頂いても良いだろうか」
食後にお茶を一服していると、ファレノは湯呑みを傾けながらそう言った。
何故だか、妙にソワソワしているようにも見えるが、異を唱える理由もない。“彼”は頷き返した。
「構わないよ。ゆっくりと温まって」
「うむ。ならば、お先に失礼させて貰おう。私が上がったら、湯が冷めぬ内にそなたも入るのだぞ」
お茶を飲み終え、風呂場に向かうファレノを見送る。
彼女は寝巻きに襦袢を使っていて、風呂上がりには火照ったうなじが色っぽい。
今日もそれを拝める……とホクホクしながらくつろいでいたら、意外にも早めにファレノが戻ってきた。
「あれ、早かったね。何かあ──」
「……寝床で待っている」
「っ!?」
すれ違い様に、耳元で囁かれた一言。
思わずギョッとして振り向くが、見えたのは尻尾の先だけ。
同じ家に住み、入籍も済ませている二人だが、その寝室は別だ。
理由はただ一つ。一緒の部屋で寝たりしたら、絶対に歯止めが効かなくなるからである。お互い、今は後進を育てる事を優先しようと、話し合って決めた。
だと言うのに、寝床で待っている? こんなの、どう考えてもOKが出たとしか考えられない。
しばし“彼”は呆然とし、ハッと気を取り直して、大急ぎで風呂場へ。
ささっと体を洗い、湯船の中で「どうして突然?」「もしかして今朝のアレが原因か?」「先輩大当たりじゃん凄え」などと考えながら温まり、なんとなく、もう一度体を洗ってから上がる。
ファレノが用意しておいてくれた、寝巻き代わりの作務衣に袖を通すと、急ぎ足で彼女が待っているはずの部屋の前に。
暴れ回る心臓を深呼吸で落ち着かせて、「入るよ」と声をかけてから襖を開ければ……。
「ファレノ!? そ、その格好は……!?」
「う、うむ……」
そこには、現役時代に幾度となく目にした、勝負服姿のファレノが、布団の上で正座して待っていた。
着物に甲冑の部品をあつらえた和装で、現代風にアレンジされているが、その佇まいは正しく武家の姫君。
風呂上がりだというのに、しっかりと化粧までしてくれているらしく、戦支度は万全のようだった。
「え、ええと……。今日は、それで……?」
「……まあ、その、あれだ。……皆まで言わせるな。恥ずかしい」
念のため確認すると、流石に照れてしまったのか、俯き加減に頬を染めるファレノ。
そう。スペの入れ知恵とは、「昔の勝負服でコスプレぴょいがオススメです!」という、なんとも安直かつド直球なものだったのだ。
曰く、「現役時代はそんな対象じゃなかったのに、結婚してから着てもらうと凄く滾る……って悦んでました!」だとか。
実際、“彼”も視線が釘付けなので、男は単純である。
「今朝は嫌がられたから、てっきり、しばらくは触れさせてもらえないのかと……」
「それは無い。そんなはずがあろうものか。……よいか? 一度しか言わぬから、心して聴くように」
言いながら、ファレノは布団をポンポン。そこに座れ、という事だろう。
求められるまま、“彼”が側で膝を揃えると、真正面に向き直り、ジッと瞳を見つめ……。
「愛しい
優しく、雅に、微笑んだ。
膝に乗せていた手へと、ファレノの手が重なって。
“彼”は思った。
我慢できるか、こんなもの……!
「ファレノ……!」
「あっ、こ、こら、がっつくでない! まだ慣れていないのだ、もっとゆっくり……こら!」
勢いよく抱きしめられ、ファレノは戸惑うものの、抵抗らしい抵抗をしない。
そうこうしている内に、二人の影は絡み合ったまま布団へ倒れ……朝まで離れる事はなかったという。
「ファレノさん達、そろそろ頑張ってる頃かなぁ? むふふ、よぉーし! 私達も、けっぱるべー!」
「……なぁスペ。お腹に赤ちゃん居るんだし、なんなら昨日も六回くらいしたし、ちょっと今日は休憩しても……聞いてる? な、なんでにじり寄って来るんだ……?」
「 い た だ き ま す 」
Q:別名義の連載はどうしたネクパイ野郎。
A:ファレノさんの割烹着姿が見たくなったんだから仕方ねぇべさ。
正直に言いましょう。最初は引く気ありませんでした。
石回収の為だけにキャラストを読んだら、何故かガチャチケと石が消し飛んでたんですわ。属性ごった煮恐るべし。
という訳で、またirirし始めたtntnを鎮めるためのダイレクトマーケティングでした。ほら引けよ。「愛いやつめ」ってしてくれるぞ。
余談ですが、先輩トレーナーの奥さんは飯マズではないです。
普段はだし巻き玉子派で、リクエストされて甘い卵焼きを作ると、火加減を間違えてちょっと焦がしちゃう事が多いだけなんです。
それを奥さんが謝り、先輩トレーナーが慰めて、最終的にラブラブするというルーティーンなのです。もげろ。
あ、スペの旦那さんは文字通りの搾取され枠です。愛してるのは間違いないけど、もう少し加減して欲しいなぁ……と悩んでいるそうですよ。もげて爆ぜろ。
さてさて。スッキリして賢者タイムに入った故、続きはありません。が、気分転換したくなったら違うネタを更新するかも?
その時は読んでやって頂けると、作者がうまぴょい伝説を踊るくらい喜びます。
ではまたいつか。