RESONANCE ARENA   作:エーアイ

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1章・あとがき

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

 

第1話から第11話までを、第1章『ゼロの向こう側へ』として一区切りとします。

この第1章で描きたかったのは、最初から強い主人公が勝ち進んでいく話ではなく、まだ何も分からない初心者が、負けながら少しずつ「次は何を変えるか」を覚えていく過程でした。

 

瀬川直希が神谷蓮司を選んだ理由も、最初はとても単純です。

初心者向けと書いてあった。

主人公っぽかった。

だから選んだ。

 

その時点では、神谷蓮司というキャラクターに特別な思い入れがあったわけではありません。

そして、負けます。

 

最初の公式戦から思うように動かせず、桐生玲奈には何度挑んでも勝てない。

同じ技を繰り返せば読まれる。

待てば先に動かされる。

考えすぎれば動けなくなる。

今度は止まらないようにしようとすれば、逆に動くことを急ぎすぎる。

何か一つできるようになっても、それだけで勝てるわけではない。

 

玲奈はそこを容赦なく突いてきます。

一発届いた。

前より戦えた。

少し変えられた。

それでも結果は負け。

公式戦なら最後に残るのは勝敗だと、何度も蓮司へ突きつけます。

 

それでも直希は、負けたからやめるのではなく、

「じゃあ次は、何を変える?」

と考える。

 

第1章では、この繰り返しをかなり大切にしました。

 

そしてPLAYER側で、その変化を最初に長く見ることになったのが御影紗良です。

紗良から見れば、最初の直希は認定中の初心者です。

玲奈を使えば二対零で勝てる。

再戦されても、また勝てる。

普通なら、それだけで終わってもおかしくありません。

けれど、直希は負けるたびに少しずつ変えてきます。

 

最初はただ前へ出る。

次は待ってみる。

今度は相手を見ようとする。

それで失敗すれば、また次を変える。

結果そのものは変わらなくても、負け方が少しずつ変わっていく。

 

その積み重ねによって、紗良の側にも、

「次は何を変えてくるんでしょう」

という興味が生まれていきました。

 

この作品では、AIキャラクターだけでなく、その向こうにいるPLAYERも同じ試合を見ています。

だから一つの対戦でも、

直希がどう考えたのか。

紗良がどう操作したのか。

蓮司が敗北をどう受け取ったのか。

玲奈が相手の変化をどう見たのか。

それぞれで意味が違います。

 

そして第5話からは、佐久間航がそのPLAYER同士の関係をさらに分かりやすくしてくれました。

 

航は直希と同じ学校に通う友人で、直希より長く『RESONANCE ARENA』を遊んでいるPLAYERです。

使用キャラクターは九条美月。

ここでは、それまで顔も名前も知らなかった相手とのオンライン対戦とは違い、

「画面の向こうに誰がいるのか分かっている」

状態で直希が戦います。

 

美月の弧月蹴をどう越えるか。

零歩をどう追うか。

迅条をどう止めるか。

それだけでは足りない。

 

航自身が、直希の癖を見ています。

 

直希が待つなら航も変える。

直希が何かを覚えれば、航も別の答えを出す。

だから直希も、少しずつ、

キャラクターの技を見るだけではなく、

そのキャラクターを操作している相手が何を考えているのかを見るようになります。

 

美月との対戦は、神谷蓮司対九条美月であると同時に、瀬川直希対佐久間航でもありました。

 

カジュアルマッチに移ってからは、航が半分先生のような立場になる場面もあります。

不用意に跳べば落とされる。

なら、どうすれば跳び込みを通せるのか。

一つ覚えたら、その次はどうするのか。

ただし、教えたから勝たせてくれるわけではありません。

むしろ覚えたなら、その答えを今度は航と美月が潰しに来る。

この関係は、個人的にも『RESONANCE ARENA』らしいところになったと思っています。

 

そして、ようやく届いた最初の一勝。

一勝十一敗。

 

十一敗が消えたわけではありません。

 

玲奈にはまだ一度も勝っていない。

美月にも通算では負け越している。

一勝したから、急に強者になったわけでもありません。

それでも。

もう、ゼロではない。

 

だから、この第1章を『ゼロの向こう側へ』としました。

 

そして、その一勝は蓮司だけのものでもありませんでした。

美月にとっては、自分の三勝では消すことのできない一敗になりました。

玲奈にとっては、以前五度戦った相手を、次に見るときの意味を少し変える結果になりました。

 

同じ勝敗でも、それを誰がどう受け取るかは違う。

 

PLAYERに残るもの。

AIキャラクターに残るもの。

 

勝者に残るもの。

敗者に残るもの。

 

『RESONANCE ARENA』では、これからもそんな「戦ったあとに残るもの」を大切にしていきたいと思っています。

まずは、ゼロだった勝利数が一になるところまで。

まだ一勝。

でも、確かに一勝。

 

第1章『ゼロの向こう側へ』、ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました。




第1章は書き溜め分があったので毎日投稿でしたが、第2章以降は投稿ペースが落ちますのであらかじめご了承ください。

pixivでは直希と紗良のRESONANCE IDではない別の同位体の蓮司、玲奈、美月の短編を掲載しています。

短編『桐生玲奈 VS 九条美月 月華連環』をpixivに掲載しています。
短編『桐生玲奈 VS 九条美月 月華連環』を見る(pixiv)

短編『桐生玲奈は、「女の中では強い」を終わらせる』をpixivに掲載しています。
短編『桐生玲奈は、「女の中では強い」を終わらせる』を見る(pixiv)

短編『九条美月は、女に負けるのが怖い男を逃がさない』をpixivに掲載しています。
短編『九条美月は、女に負けるのが怖い男を逃がさない』を見る(pixiv)

短編『九条美月は、男子王者だった男を練習相手にする』をpixivに掲載しています。
短編『九条美月は、男子王者だった男を練習相手にする』を見る(pixiv)

短編『神谷蓮司は、女ではなく桐生玲奈に勝つ』をpixivに掲載しています。
短編『神谷蓮司は、女ではなく桐生玲奈に勝つ』を見る(pixiv)

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