ダンジョン・ドリフター ~退職金でキャンピングカーを買ったら、放置していたスキルが『SSSランク:完全複製(コピー)』だった件。最強スキルを拾い集めて全米横断の旅に出る~   作:パラレル・ゲーマー

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第12話 どうやら、8つのスキル枠なんて全然多くないらしい

 アッシュフィールド果樹園での2日目の朝。マットは稼働中の探索者キャンプ特有の騒音で目を覚ました。

 

 大型のディーゼルトラックがC-87サイトの横を轟音を立てて通り過ぎていく。二つ隣のサイトでは誰かが発電機を回している。遠くで犬が吠え、ダンジョンゲートの端末エリアからかすかな高い駆動音が風に乗って聞こえてきた。

 

 そして、窓のすぐ外から聞こえたのだ。

 

『カーッ』

 

 マットは目を開け、天井を見つめた。

「……嘘だろ」

 

 毛布を跳ね除け、トレーラーを横切り、キッチンの窓のブラインドを引き上げた。

 

 50ヤード(約45メートル)先の木の電柱に、一羽のカラスが止まっていた。

 完全に普通の、魔法の力など一切持たない、地球生まれのカラスだ。

 

 羽は光っていない。火も吹かない。現在、魔石を盗んでいる最中でもない。

 

 マットは目を細めた。

「平和なもんだ」

 

 カラスが鳴いた。

「やめろ」

 

 鳥は彼を無視した。

 マットはブラインドを下ろした。

 

 朝食の準備ができる頃には、彼はすでにアッシュフィールドで自分に何が必要かを決断していた。

 

『移動(ムーブメント)』。

『遠距離(レンジ)』。

 

『リープ・スラム(跳躍叩きつけ)』なら最初の問題を解決できる。安価な物理系の投射物スキルなら2つ目の問題を解決できる。

 両方とも手が届く値段だ。

 

 そこで、マットは『クリーブ(なぎ払い)』を見た。

 彼の『アクティブ・スキルジェム・スロット』は、たった1つしかない。そして、それはすでに埋まっている。

 

「……そうだった」

 それが本当の問題だ。

 

 マットはスキルジェムのインターフェース全体を開いた。

 

【アクティブ・スキルジェム・スロット】

 現在の解放スロット:1

 最大容量:8

 

 **スロット1:**クリーブ

 

 マットは動きを止めた。

「8?」

 

 彼は、レベルの節目節目で自動的にスロットが追加されていくものだとばかり思っていた。レベル10とか、レベル20とか、そんな感じで。

 しかし、インターフェースには今後のレベルアップについては何も書かれていなかった。

 

 ただ、こう書かれているだけだ。

 

 最大容量:8

 

 マットは「追加スロットの解放方法」について検索した。

 初心者向けFAQ、ダンジョンWiki、掲示板、装備屋のサイト、そして動画ガイド。そのすべてがほぼ同じ答えを出していた。

 

「レベルを上げればスロットが増えるわけではない」

「『買う』のだ」

 

 マットはため息をついた。

「……当然、専用のアイテムがあるってわけだ」

 

 彼は再びマーケットを検索した。

 

【スキル枠拡張クリスタル】

 アイテムタイプ:キャラクター・アップグレード

 

 効果

 アクティブ・スキルジェム・スロットを永久に1つ追加解放する。

 最大アクティブ・スキルジェム・スロット:8。

※8つのスロットがすべて解放された後は使用不可。

 

 **平均市場価格:**約 $500

 

 マットはその価格を見つめた。

 1スロット追加で500ドル(約7万5,000円)。それ自体は悪くない。

 だが、7スロット追加するとなると、およそ3,500ドル(約52万5,000円)になる。

 

「……7倍にする前は、500ドルってすごく安く聞こえたんだけどな」

 

 彼はコーヒーを一口飲んだ。

「この経済圏は、本当に『500ドル』って数字が好きらしい」

 

 パッシブのリセット。

 スキル枠の拡張。

 どうやら500ドルというのは、『後悔』と『インフラ整備』の公式な定価らしい。

 

 だが、一つ重要な違いがある。

 パッシブのリセットは「過去の選択を取り消すため」に支払う金だ。

 拡張クリスタルは「キャラクターが装備できる上限を永久に増やす」ものだ。

 一度買えば、一度使えば、そのスロットはずっと残る。リセット(リスペック)とは違い、そのお金のどれもが「ミスを帳消しにするため」に消えるわけではない。

 

 マットには7つすべてを買う余裕がある。

 問題は、「今すぐ7つすべてを買うことが本当に有用か」ということだ。

 

「ウォリアーに8つもスロットが必要なのか?」

 

 マットは検索した。

 動画検索のトップに出たのは『@RookDelves(ルーク・デルブス)』だった。

 

 マットは微笑んだ。

「やっぱりか」

 

『ウォリアーのスキルジェム:8つのスロット、8つの問題』

 

 サムネイルには、相変わらず世の中のすべてに失望して疲れ果てたような顔をしたルークが写っており、その顔の横に大きな赤い『8』の数字が浮かんでいた。

 マットはクリックした。

 

 デジタルのホワイトボードの前にルークが現れた。

「8つというのは、多く聞こえるだろう」

「確かに」マットは同意した。

「多くない」

 

 マットは動画を一時停止した。

 ルークがホワイトボードを指差す。

 

「スキルジェム・スロットは、『ダメージ・スロット』ではない」

 彼はボードを一度叩いた。

「それは『回答(アンサー)・スロット』だ」

 

 マットは身を乗り出した。

「お前が装備するすべてのジェムは、お前のビルドが『どう答えるかを知っている質問』の数だ」

 

 ルークの横に4つの質問が表示された。

 

 もし1体のモンスターが異常に硬かったら? 

 

 もし20体のモンスターが群れていたら? 

 

 もしモンスターが遠くにいたら? 

 

 もしモンスターがこっちへ歩いてくるのを拒否したら? 

 

 マットはゆっくりとコーヒーを置いた。

「……なるほど」

 不快になるほど正確な指摘だった。

 

「今日俺が話しているのは物理ウォリアーについてだ」ルークは続けた。「魔法使い(キャスター)のビルドには違う優先順位がある。ローグにも違う優先順位がある。お前の持ってる変態的なユニークスキルのビルドにも、違う優先順位があるだろう。だが、これは『最も退屈なウォリアーのベースライン』だ」

 

 マットは再びマグカップを持ち上げた。

「そいつは最高だ」

 

 ルークが指を一本立てた。

「単体攻撃(シングルターゲット・アタック)」

「ボス、エリート、あるいは通常の範囲スキルでは効率が悪いほどのライフや軽減率を持つ相手に対する『回答』が必要だ」

 画面には、ウォリアーが重装甲のモンスターに集中的な一撃を叩き込む映像が流れた。

「初心者にとって、『ヘビーストライク(重撃)』は最もシンプルな回答の一つであり続ける。安い。信頼できる。一つのものを強く殴る」

 

 マットはブラックホロウでそのジェムを見たことを思い出した。

 群れだらけのダンジョンでは、クリーブは最初のスキルとして正解だった。

 だが今は、どちらか一つを選ぶ必要はないのだ。

 

 ルークが二本目の指を立てた。

「範囲処理(エリア・クリア)」

「もし6匹のケイブラットに対するお前の『回答』が『個別の攻撃を6回繰り返す』ことだとしたら、お前が構築したのはビルドじゃない。ただの『失業状態』だ」

 

 マットは笑った。

「それはもう持ってるよ」

 デモ映像に、見慣れたクリーブの赤い弧が現れた。

 複数のモンスター。

 一回の攻撃。

 効率的(エフィシエント)。

 

 ルークが三本目の指を立てた。

「移動(ムーブメント)」

 彼はカメラを真っ直ぐに睨みつけた。

「『お前の足』は移動スキルではない」

 

 マットは眉をひそめた。

「手厳しいな」

「距離を詰める時、危険地帯から離脱する時、悪路を越える時、遠距離の敵に到達する時、そして群れと群れの間を移動する時のための『回答』が必要だ」

 ウォリアーが『リープ・スラム』を発動し、何ヤードもの開けた地面を飛び越え、遠距離攻撃をしてくるモンスターの横に着地する映像が流れた。

「そう、リープ・スラムはダメージも出す。だが、だからといってそれが自動的に『メインのクリア用スキル』になるわけではない。このセットアップにおけるこいつの仕事は、『お前を動かすこと』だ」

 

 マットは頷いた。

 昨日、30フィート(約9メートル)先にいたアッシュ・ラビットは「ダメージを与えられない問題」を提示してきたわけではない。

「30フィートという距離」を提示してきたのだ。

 

 ルークが四本目の指を立てた。

「遠距離(レンジ)の選択肢」

「ウォリアーという生き物は、『最終的にはどんな敵も自分から剣の間合いに入ってきてくれる』と思い込むのが大好きだ」

 

 マットは顔をしかめた。

「だが、羽の生えた奴らもいる」

「鳥だな」

「危険地帯の向こう側に陣取る奴らもいる」

「それも鳥だ」

「距離を取りながら攻撃(カイト)してくる奴らもいる」

「たぶん鳥だな」

「単にウザいだけの奴らもいる」

「絶対に鳥だ」

 

 ルークは、悲劇的なことに、マットの合いの手を聞くことはできなかった。

「専用のレンジャーやメイジに勝てるような遠距離火力を手に入れる必要はない。お前が必要としているのは、『物理的に手が届かない』という問題を解決できるだけの、最低限の遠距離ダメージだ」

 

 ボードが切り替わった。

 

【ソロ・ウォリアー・コア(必須)】

 

 単体攻撃

 

 範囲処理

 

 移動

 

 遠距離

 

「この4つ」ルークが言った。「これが、お前が『自分は何かに特化したスペシャリストだ』と勘違いし始める前に揃えておくべき、最低限のツールキットだ」

 

 マットはリストを見つめた。

 最大スロットは8つ。

 基本的なソロ用パッケージだけで、すでにその半分を消費している。

『8』という数字が、突然ずっと小さく感じられた。

 

「これはあくまで『ソロ・プレイ』に特化した話だ」ルークが続ける。「パーティーを組めば、問題(プロブレム)を分配できる」

 タンク、メイジ、レンジャー、ローグのアイコンが表示された。

「もし他の誰かが遠距離、群れの処理、索敵、あるいはサポートを担当してくれるなら、お前はもっと特化したビルドを組める」

 

 パーティーのアイコンが消えた。

 ウォリアーが一人だけ残る。

「だが、もしお前が一人でダンジョンに入るのなら——おめでとう」

 ルークは間を置いた。

「すべての問題は、お前一人のものだ」

 

 マットはゆっくりと頷いた。

「そうなるな」

 

 ルークの口元が、わずかに笑みの形に歪んだ。

「さて、ここからが金のかかる話だ」

 マットは目を細めた。

「金のかかる?」

「選択肢(チョイス)の話だ」

 マットはため息をついた。

「だろうな」

 

 ホワイトボードが他の可能性で埋め尽くされた。

 緊急回避用スキル、オーラ、探知と索敵、ステルス、採集、採掘、デバフ、行動阻害(クラウドコントロール)、ユーティリティ、回復、離脱用ツール、その他諸々。

 

 ルークはそのリストを消し、8つの空白のボックスだけを残した。

「お前には8つのスロットがある」

 彼は、先ほどカテゴリーのリストがあった場所を指差した。

「お前には8つの『カテゴリー』はない」

 

 マットは動きを止めた。

「……あ」

 今朝は「8つ」と聞いて余裕だと思っていた。

 今では、それが酷い「制限」に聞こえる。

 

「8つなんて、全然足りない」

「その通り」ルークが言った。

 マットは笑った。

 このタイミングの良さはもはや疑わしいレベルだ。

 

 ルークは最後に一度だけボードを切り替えた。

 8つのスキルボックスの周囲に、装備、パッシブ、サポートジェム、ユニークアイテムといった文字が現れた。

「高レベルのビルドは、『魔法のようにアクティブスロットが20個に増える』ことでこの問題を解決しているわけではない。彼らは『1つのスロットに、複数の質問に答えさせる』ことで解決しているのだ」

 

 有用なダメージも出せる移動スキル。

 別のリソースを生成する防御スキル。

 ジェムスロットを消費する代わりに、装備から付与されるオーラ。

 1つのスキルで複数のニーズをカバーできるようにするサポート効果とシナジー。

 

 ビルドのすべてのレイヤーが、別のレイヤーへのプレッシャーを減らすことができる。

 

 マットは本能的に、鎖骨のあたりにある『純粋なる元素』に触れた。

『エレメンタル・シールド』は装備から来ている。

 彼の8つのアクティブスロットを消費していない。

 スロットの経済性(エコノミー)。

 それが、装備付与スキルを彼が思っていたよりもはるかに興味深いものにしていた。

 

 そして、彼は『COPY』について考えた。

 

 8つのスキルジェム・スロットは、信頼できるベースライン(土台)を形成する。

『COPY』のアクティブスロットは、ダンジョンごとに変更可能な、独立した柔軟なレイヤーだ。

 

「それは事情が変わってくるな」

 スキルジェムを完全に代替できるわけではない。

 だが、その相互作用(インタラクション)を桁違いに面白くするには十分だ。

 

 マットは動画を見終え、自分のたった1つだけ埋まっているスロットを見つめた。

 

 スロット1:クリーブ

 

 財務的に保守的な選択は明白だ。

 拡張クリスタルを1つだけ買う。

 リープ・スラムを追加する。

 アッシュフィールドを走る。

 本当に必要になった時だけ、追加で買う。

 

 レベル7の初心者が、今すぐ8つすべての枠を最大まで広げなければならないというルールはどこにもないのだ。

 

 マットはそれを考慮した。

 それから、『永久(パーマネント)』という言葉について考えた。

 

 探索者を続けるなら、間違いなく1つ以上のスキルを使うことになる。

 ほぼ間違いなく、4つ以上は使うだろう。

 クリスタルは、特定の武器、スキル、ビルド、ジョブへのコミットメント(縛り)を強要するものではない。

 

 それは『余裕(ルーム)』を作るものだ。

 リセット(リスペック)とは違い、後で取り消す必要は何もない。

 

 マットは立ち上がった。

「全部買うか」

 彼は言葉を切った。

「……あまりにもあっさりと決断できた自分が少し怖いな」

 

 ◆

 アッシュフィールドの装備屋(ギア・ショップ)は、改造された2つの輸送コンテナを木製の日よけで繋いだような見た目をしていた。ブラックホロウの『ギア&ジェム』よりも小さく、より実用的な作りだ。

 

 マットは中に入った。

 店員が顔を上げた。

「いらっしゃい」

「スキル枠拡張クリスタルを7つ頼む」

 

 店員は鍵付きのキャビネットに手を伸ばす途中で止まった。

「レベル7でもう最大(マックス)まで開けるのか?」

「永久的なインフラ投資だ」

 

 男はそれを考え、そして肩をすくめた。

「反論の余地はないな」

 彼は小さなロックボックスを取り出した。

 

 マットは瞬きした。

「今回はセールストークはなし?」

「あんたがすでに『7つ』って言ったからな」

 店員は箱の鍵を開けた。

「俺のコミッション(歩合)を自分から減らすような口出しはしないさ」

「妥当だな」

 

 中には7つの小さな白いクリスタルが収まっていた。

 システムを永久に書き換える代物にしては、特に目を引くような見た目ではない。

 光を閉じ込めた磨かれたガラス玉、といったところだ。

 

 店員がレジを打つ。

「3,500ドル(約52万5,000円)だ」

 マットはカードをタップした。

 

 決済承認

 $3,500

 

 ダンジョンの源泉徴収税はない。

 ただの通常の小売りの買い物だ。

 

 マットは最初のクリスタルを手に取った。

 

【スキル枠拡張クリスタル】

 タイプ:キャラクター・アップグレード

 

 効果

 アクティブ・スキルジェム・スロットを永久に1つ追加解放する。

 最大アクティブ・スキルジェム・スロット:8。

 

「『永久』なんだよな?」とマットは聞いた。

「永久だ」

「サポートソケットは?」

「全く別のアイテムだ」

 マットはじっと彼を見た。

「全く?」

「全く」

「……当然そう来るよな」

 

 マットはクリスタルに意識を集中した。

 最初の3つを使う。

 白い光が手の中で溶け込んだ。

 

 アクティブ・スキルジェム・スロット:1 → 4

 

 マットは止まった。

 4スロット。

 ルークがソロ・ウォリアーに推奨した最低ラインだ。

 彼は残りの4つのクリスタルを見た。

 ここで止めることもできる。

 

 だが、彼は残りをすべて使った。

 

 アクティブ・スキルジェム・スロット:4 → 8

 

 異なる通知が現れた。

 

【アクティブ・スキルジェム容量が最大になりました】

 アクティブ・スキルジェム・スロット:8 / 8

 

 マットはインターフェースを開いた。

 8つのボックス。

 1つは埋まっている。

 7つは空。

 

「随分と見栄えが良くなった」

 それから、彼は空のロックボックスとレシートを見た。

「空っぽの箱に3,500ドルも使っちまった」

「ビルドクラフトの世界へようこそ」

 

 マットは頷いた。

「3つ埋める必要がある」

 役割はすでに明確だ。

 

 単体攻撃(シングルターゲット)。

 移動(ムーブメント)。

 遠距離(レンジ)。

 

「ヘビーストライク」

 店員がケースからありふれた深紅のジェムを取り出した。

 特殊なものではない。

 レアでもない。

 まさにマットが求めていたものだ。

 

「リープ・スラム」

 2つ目のジェムが置かれた。

 

 マットは投射物(プロジェクタイル)のセクションを指差した。

「物理系。ウォリアー適合。ボスを殺せる火力は必要ない」

 店員は片眉を上げた。

 マットは続けた。

「『シンダー・クロウ(鳥)』に、鳥であることをやめさせたいだけだ」

 

 男は笑った。

「なるほどね」

 彼はケースのさらに奥に手を伸ばし、淡い半透明のジェムを取り出した。

 

【ブレード・プロジェクション(剣閃投射)】

 タイプ:スキルジェム

 タグ:攻撃 / 投射物 / 物理

 

 効果

 装備中の近接武器の『マナで構成された一時的なコピー』をターゲットに向かって投射する。

 

「近接ビルドに人気の遠距離サブウェポンだ」と店員が言った。「装備している武器をベースにして攻撃する。これ一つで遠距離特化ビルドになれるわけじゃないが、もし弱い敵が降りてくるのを拒否した時には——」

「鳥だな」

「大抵は」

「完璧だ」

 

 マットは3つすべてを買った。

 ヘビーストライクは約110ドル(約1万6,500円)。リープ・スラムはほぼ正確に300ドル(約4万5,000円)。ブレード・プロジェクションはさらに260ドル(約3万9,000円)だった。

 ジェム3つの合計で、大体670ドル(約10万500円)になる。

 

 ジェムと拡張クリスタルを合わせて、マットは昼食前に約4,170ドル(約62万5,500円)を消費した。

 

 彼はレシートを見た。

「昨日、俺は草木の切れ端を売って140ドル(約2万1,000円)稼いだ」

 店員が片眉を上げる。

「今日、俺は4,000ドル以上(約60万円以上)使った」

「いかにも探索者(デルビング)らしい金銭感覚だな」

「俺もそれに気づき始めたところだ」

 

 彼はジェムをソケットにはめた。

 

【アクティブ・スキルジェム】

 スロット1 — クリーブ — 範囲処理

 スロット2 — ヘビーストライク — 単体攻撃

 スロット3 — リープ・スラム — 移動

 スロット4 — ブレード・プロジェクション — 遠距離

 スロット5 — 空

 スロット6 — 空

 スロット7 — 空

 スロット8 — 空

 

 マットは最初の4つを見つめた。

「いかにも『ビルド』って感じの見た目になったな」

 彼はそれを考慮した。

「ビルドの半分、か」

 

 ◆

 アッシュフィールドの訓練場(トレーニング・ヤード)は賑わっていた。

 メイジが補強された標的に向かって制御されたバースト魔法の練習をし、二人のウォリアーが盾のドリルの打ち合いをし、槍を持った誰かが異なる距離から同じ突きを何度もテストしている。

 

 マットは空いているレーンを見つけた。

 

 リープ・スラムを初めて使う瞬間が、「アッシュ・ラビットが逃げ出し、ブライアー・ハスクが足元をすくおうとしている最中」であるべきではない。

 

 まずはテストだ。

 ダンジョンはその後。

 ボスはさらにその後。

 

 マットはロングソードを抜いた。

 

 一つ目:『ヘビーストライク』。

 彼は一番近い補強ダミーに通常攻撃を叩き込み、訓練システムがその衝撃を記録するのを確認した。

 

 次に構えをリセットし、ジェムを起動した。

 マナがスキルを通り抜け、攻撃をより深く、より集中的なものに変容させる。

 マットは振り抜いた。

 

『ドガァン!』

 

 ダミーが補強された土台の上で激しく震えた。

 

 マットの眉が上がる。

「ボス用だな」

 シンプルだ。

 一つのターゲット。

 より強く殴る。

 

 彼は3体固まっているダミーに向かった。

 ヘビーストライクが1体に命中する。

 他のダミーは無傷のままだ。

 次にクリーブを放つと、赤い弧が3体すべてを貫いた。

 

 マットは頷いた。

 違う問題。

 違うスキル。

 

 次:『リープ・スラム』。

 マットは、固く踏み固められた土の上に一定間隔でマーカーが引かれた「移動専用レーン」に移動した。数ヤード先に練習用ダミーが立っている。

 

 彼は着地点(ターゲットポイント)を選択した。

 マナが脚に流れ込む。

 マットは跳躍した。

 

 ただし、それは普通のジャンプではなかった。

 スキルが主導権を握り、彼の体を速く浅い弧を描いて前方へ射出した。

 ほんの極めて短い一瞬だけ、マットは「もう少しこのスキルについて事前に質問しておくべきだった」と後悔した。

 

 そして、地面がやってきた。

『ズシン』。

 彼はターゲットの横に着地し、一歩よろめいた。

 

「おお」

 マットは自分が飛び越えた距離を振り返った。

 通常の助走の数歩分。

 

 2回目の挑戦はマシになった。

 3回目では斜めのルートを試し、着地の際に膝をしっかり曲げて衝撃を吸収し、即座にロングソードを構え直した。

 

 マットは微笑んだ。

 これは単なる「速く走る」ことではない。

『急速な位置の再定義(リポジショニング)』なのだ。

 間合い(ギャップ)が存在する。

 次の瞬間、それがなくなる。

 

 アッシュ・ラビットに果樹の列の間を全力疾走させられた記憶が蘇る。

「ああ、これは絶対にあった方がいい」

 

 最後:『ブレード・プロジェクション』。

 マットは後退し、ロングソードを掲げた。

 

 ジェムを起動する。

 本物の武器の横に、半透明のマナで構成された剣のコピーが形成された。

 

 マットは剣を振った。

 投射された刃が練習レーンを横切り、遠くのダミーに命中した。

 確かな手応え。

 ヘビーストライクほどの威力はない。

 足元にも及ばない。

 だが、それでいいのだ。

 

 マットはもう一発放った。

 命中。

 どんなシンダー・クロウが飛んでいようと、これ以上遠くにいる必要はない距離だ。

 

 マットは訓練場の周囲に立つ高い木の柱の一つを見上げ、その頂上に赤黒い鳥が止まっている姿を想像した。

 

 ブレード・プロジェクション。

 マナの刃が木に命中した。

「お前ら全員、死んだも同然だぞ」

 

 隣のレーンで盾のブロック練習をしていた男が手を止めた。

「カラスか?」

「カラスだ」

 男は頷いた。

「わかるよ」

 

 マットは水のボトルを持ちながらベンチに座り、装備した4つのスキルを眺めた。

 

 ルークの「コア(必須)・パッケージ」は完成した。

 

 単体。

 範囲。

 移動。

 遠距離。

 

 4つのスロットが空いている。

 およそ3秒間、マットはそれを埋め始めたいという衝動に駆られた。

「ダメだ」

 彼はページがロードし終わる前にマーケットを閉じた。

 

 空のスロットは無駄(ウェイスト)ではない。

 それは『予備容量(リザーブ・キャパシティ)』だ。

 彼には、次のFランクダンジョン、Eランク、あるいはその先の道のりで何が必要になるか見当もつかない。

 

 今すぐすべてのボックスを埋めたからといって、賞品がもらえるわけではない。

『純粋なる元素』はすでに、ジェムスロットを消費せずにエレメンタル・シールドを提供してくれている。

『COPY』は、スキルジェムのセットアップの上に、柔軟な回答のペアを与えてくれる。

 

 それに、『サポートソケット』の存在もある。

 マットはまだ一つも開けていない。

 クリーブにも。

 何にも。

 サポートジェムが絡んでくれば、これらのスキルのそれぞれが、やがて別の『ビルド問題』に発展する可能性がある。

 

「……あ、そうか」

 マットはインターフェースを見つめた。

 

 パッシブ、アクティブスキル、サポート、装備、コピーしたユニークスキル、ステータス、属性耐性、装備要件、マナ管理——。

 

 彼はゆっくりと頷いた。

「こいつには、スプレッドシートが必要だな」

 マットは間を置いた。

 顔に笑みが広がる。

「残念ながら、俺はスプレッドシートの扱いにかけてはプロだからな」

 

 ◆

 実際にスプレッドシートを作り始める前に、マットは拡張されたスキル・インターフェースのスクリーンショットを撮り、ブラックホロウ・グループに送信した。

 

【ブラックホロウ・グループ】

 マット:[画像] スキルスロットを追加で買った。

 **クロエ:**いくつ? 

 **マット:**全部だ。

 

 沈黙。

 

 **クロエ:**拡張クリスタルを7つ買ったの? 

 **マット:**ああ。

 **イーサン:**マネー・ヘイズ!! 

 **マット:**それは俺のあだ名じゃない。

 **イーサン:**レベル7でスロットを全開放する金持ち野郎! 

 **マット:**3,500ドルだぞ。

 **イーサン:**それは『さんぜんごひゃくどる』だろうが! 

 **マット:**そうだ、それが数字の仕組みだ。

 

 クロエが返信した。

 

 **クロエ:**永久アップグレードね。あなたがこれからも探索者を続ける確信があるなら、妥当な判断だわ。

 

 マットは手を止めた。

『確信があるなら(If you’re sure)』。

 

 その瞬間まで、彼の心のどこかは、この「トラックとトレーラーの計画」を『いつでも降りられる出口(エグジットランプ)付きの実験』として扱っていた。

 

 探索者を試してみる。

 しばらく旅をする。

 もし楽しくなくなったら、辞める。

 

 ブラックホロウからアッシュフィールドへ向かう道のりのどこかで、彼はどうやら「出口」について考えるのをやめていたらしい。

 

 彼は遠くのゲートを見た。

 限られたスロット、ステータス、スキル、装備、そしてランダムなドロップ品を「より良いもの」へと変えていくという絶え間ないパズルが、完全に彼を虜(フック)にしていた。

 

 マットは薄く微笑んだ。

「ああ」

 彼はタイプした。

 

 **マット:**しばらくは続けるつもりだ。

 

 それから:

 

 **マット:**現在の4つ

 **マット:**ヘビーストライク / クリーブ / リープ・スラム / ブレード・プロジェクション

 **クロエ:**標準的(スタンダード)ね。良いわ。

 **イーサン:**退屈(ボーリング)。

 **マット:**ルークが「退屈なものは生き残る」って言ってたぞ。

 **イーサン:**ルークは感情が死んでるんだよ。

 **クロエ:**ルークは初期の頃からこれをやり続けてる人よ。

 **イーサン:**だからだよ。

 

 マットは笑った。

 そして時間を確認する。

 まだ午後だ。

 外には日差しがたっぷりある。

 そもそも、アッシュフィールドの人工の夕暮れは、外の時間が何時だろうと気にも留めないのだが。

 

 彼は立ち上がった。

 昨日の「問題」には、今や「回答」がある。

 

 ウサギが逃げた? 

 リープ・スラム。

 カラスが木に居座ってる? 

 ブレード・プロジェクション。

 硬いターゲットが1体? 

 ヘビーストライク。

 ターゲットが群れている? 

 クリーブ。

 

 マットはスマホをポケットに滑り込ませた。

「こいつは、昨日までとはまったく違う感覚になりそうだな」

 

 ◆

 実際に、まったく違った。

 

 マットは意図的に、そこそこ人がいてボスがすでに死んでいるインスタンスを選んだ。

 彼は『テスト』がしたかった。

 興奮(エキサイトメント)ではない。

 

 インスタンス91 — 29/64 — ボス討伐済

 

 ゲートが彼を、人工の夕暮れの下の暖かい果樹園の空気へと転送(トランジション)した。

 マットは見上げた。

「相変わらず綺麗だな」

 

『カーッ』

 

 彼の視線が即座に動く。

 高い木の上に、シンダー・クロウが止まっていた。

 マットはため息をついた。

「お前は綺麗じゃない」

 

 前方の草むらからガサガサと音がした。

 アッシュ・ラビットが走り出す。

 

 昨日なら、マットはそれを追いかけていただろう。

 今日、彼はウサギの『少し前の空間』をターゲットした。

 

 リープ・スラム。

 マナがうねりを上げ、足元の地面が消え去る。

 マットは高速の跳躍で空間を飛び越え、ウサギが方向転換を終えるより先に、その進行方向へ着地した。

 

 クリーチャーは止まろうとした。

 遅すぎた。

 通常攻撃一発で、それは灰に変わった。

 

 マットは姿勢を正し、自分が跳んできた距離を振り返った。

 それから、消えゆくモンスターを見た。

 

「……俺は今まで、間違った生き方をしていたらしい」

 

 シンダー・クロウが金切り声を上げた。

 くちばしに火が形成される。

 

 マットは振り返った。

 昨日なら、鳥が最終的に急降下を決意するまで、何度も火の玉をやり過ごして待たなければならなかった。

 

 今日、彼はブレード・プロジェクションを使った。

 ロングソードのマナのコピーが上空へ撃ち出され、カラスに命中した。

 モンスターが弾け飛ぶ。

 

 シンダーの羽の小さな束が枝の間を落ちてきた。

 マットは歩いていき、即座にそれを拾い上げた。

 彼は他の鳥がいないか辺りを見回した。

 

「テクノロジーって最高だな」

 マットはその発言を考慮した。

「これは魔法か」

 少しの間。

「まあ、似たようなもんだ」

 

 風化した木造建築の横から、ブライアー・ハスクが現れた。

 昨日なら、通常攻撃が2発必要だった。

 今日、マットはその腕の振りの中へ踏み込み、ヘビーストライクを試した。

 

『メキッ』。

 ブライアー・ハスクが砕け散る。

 灰。

 

 マットは何もない空間を見た。

「ボス用スキルか」

 

 彼はまだ『果樹園の番人(オーチャード・キーパー)』について調べていないし、ヘビーストライクが必ずしもすべてのボスへの正解というわけでもないだろう。

 しかし、その『役割(ロール)』は明白だった。

 

 マットは進み続けた。

 

 ◆

 最初の混合パックは、低い石垣の近くに現れた。アッシュ・ラビット2匹、ブライアー・ハスク1匹、そしてシンダー・クロウ1匹。

 セットアップを本格的にテストするには物足りない。

 

 マットは剣を構えた。

 カラスが火のチャージを始める。

 火の玉が放たれる前に、ブレード・プロジェクションがそれを排除した。

 

 ウサギの1匹が彼に突進してきて、基本攻撃で死んだ。次にハスクが接近し、ヘビーストライクが一撃でそれを粉砕した。

 残りのウサギはすでに数ヤード先まで逃げていた。

 

 マットはそれを見た。

 ウサギも彼を見返した。

 

 リープ・スラム。

 マットは、次にクリーチャーが方向転換すればそのまま彼の剣に突っ込むような距離に着地した。

 灰。

 

 彼はマナを確認した。

 目に見えて減っている。

 これが重要だ。

 ツールが増えれば、リソースの消費方法も増える。マットは今や、マナのほとんどをクリーブのために温存するのではなく、移動、射撃、単体攻撃の増幅にもマナを使っている。

 

 便利さにはコストが伴う。

 まだ大したことはない。

 依然としてFランクだからだ。

 だが、意識を向けるには十分な消耗だ。

 

 マットはマナが回復するのを待った。

「よし」

 回答が増えた。

 リソース消費も増えた。

 等価交換(フェア)だ。

 

 次の群れは大きかった。

 崩れた壁の近くの乾いた草むらを4匹のアッシュ・ラビットが動き回り、2匹のブライアー・ハスクが木々の間に半分偽装して立ち、2匹のシンダー・クロウが上から見下ろしている。

 

 昨日、無駄に時間を浪費させられたのとほぼ同じ構成だ。

 敵は8体。

 危険ではない。

 面倒(メッシー)なだけだ。

 

 マットは微笑んだ。

「試してみようじゃないか」

 

 最初のカラスが彼を見つけ、火を形成し始めた。

 ブレード・プロジェクション。

 マナの刃が空き地を横切り、それを消し去った。

 一つの問題が消えた。

 

 残りのカラスが枝から飛び立ち、位置を変える。その間にウサギたちが散開し始めた。

 昨日なら、ここから追いかけっこが始まっていた。

 今日、マットは一番密集している場所をターゲットにした。

 

 リープ・スラム。

 彼は空き地を跳躍した。

 着地する前に、ウサギが1匹逃げ出した。

 3匹が十分近い距離に残った。

 着地の衝撃が、彼らの動きを乱す。

 

 クリーブ。

 赤い光が群れを薙ぎ払う。

 2匹のウサギが即座に消滅し、3匹目が弧の端でよろめいた。

 マットは通常のスイングでそれにトドメを刺した。

 

 今や2体のブライアー・ハスクが接近してきていた。

 生き残ったシンダー・クロウが火を放つ。

 マットが投射物を見た時には、避けるには遅すぎた。

 肩をかすめる。

 

 ライフ:137 → 132

 

「構わん」

『アリーナの達人』が即座に失われたポイントを返し始めた。

 

 最初のブライアー・ハスクが到達した。

 マットはその腕をすり抜け、ヘビーストライクを使った。

 灰。

 

 2体目のハスクが両手を土に叩きつける。

 根が噴出する。

『不動の歩み』がその引っ張りを捉え、彼をその場に固定した。

 

 その時、マットはカラスが角度を変えるのを見た。

 最初のハスクが魔石をドロップしていたのだ。

 

「そうはいくかよ」

 鳥が急降下する。

 彼に向かってではない。

 石に向かって。

 

 マットは狙いを定めた。

 ブレード・プロジェクション。

 外れ。

 鳥が旋回(バンク)する。

 

 マットは顔をしかめた。

「そうだった。あいつら動くんだ」

 

 カラスがさらに低空へ降りてくる。

 マットは『瞬動』を起動した。

 鳥の軌道が読みやすくなった。

 

 2発目の投射。

 命中。

 シンダー・クロウは、戦利品のわずか3フィート(約90センチ)上で消滅した。

 

 魔石は元の場所から1ミリも動いていない。

 マットは即座にそれをすくい上げた。

「学習してるぞ」

 

 残ったブライアー・ハスクは、まだ根で彼を引っ張ろうとしていた。

 マットは効果が弱まったタイミングで『不動の歩み』を解除し、一歩前に出て、ヘビーストライクでそれを終わらせた。

 

 そこで、最後のウサギが走り出した。

 当然だ。

 マットは振り返った。

 ウサギはすでに次の列の半分まで行っている。

 

 彼はリープ・スラムを検討した。

 それからマナを確認する。

 十分ある。

 しかし、かなり低くなっている。

 

 マットは微笑んだ。

「いや」

 

 彼は走った。

 ウサギがジグザグに動く。

 マットは直接追いかけるのではなく、角度を切って先回りした。

 ウサギが引き返してくる。

 マットが迎撃する。

 基本攻撃。

 灰。

 

 静寂が戻った。

 彼のライフはすでにほぼ満タンまで回復していた。

 マナはそうではない。

 

 戦闘は昨日よりも劇的に速かったが、同時にマナの消費もずっと大きかった。

 スキルスロットは、彼の「可能な行動(アクション)」を広げてくれた。

 しかし、それらの行動を「無料(フリー)」にしてくれたわけではない。

 

 もしマットが10フィート(約3メートル)の隙間すべてにリープ・スラムを使い、ウサギ1匹1匹にヘビーストライクを使えば、単にリソースを無駄にするだけだ。

 

「正解」が存在していても、特定の瞬間においてはそれが「間違った選択」になり得るのだ。

 

 マットは水のボトルを取り出し、『完璧な温度』で調整して飲んだ。

 昨日までは「ターゲットに届くかどうか」が問題だった。

 今日は、届く。

 今度は「マナを消費してまでそれに届かせる価値があるかどうか」が問題なのだ。

 

 マットは微笑んだ。

 また出た。

 新しい問題(プロブレム)だ。

 彼は問題が好きだった。

 

 ◆

 次の遭遇が、その教訓をさらに明確にした。

 2匹のシンダー・クロウが別々の木に止まっている。その下をアッシュ・ラビットがうろつき、中央の道をブライアー・ハスクが塞いでいた。

 

 昨日なら、マットはこの戦いの大半を上を見上げて過ごしていただろう。

 今日、一発のブレード・プロジェクションが最初のカラスを排除した。

 

 2匹目が位置を変える。

 マットはすぐには次を撃たなかった。

 彼は観察した。

 

 カラスが火の玉を放つ。

 マットはそれを避けた。

 ハスクが接近してくる。

 

 マットは木の幹を利用してカラスの射線を切り、ハスクを近接戦へと持ち込んだ。

 彼はヘビーストライクにマナを消費する代わりに、通常の攻撃2回でそれを殺した。

 魔石がドロップする。

 即回収。

 

 次にウサギが突撃してきて、またしても基本攻撃で死んだ。

 

 そこまで終わってから、マットは木の陰から歩み出た。

 カラスはまだ旋回していた。

 ブレード・プロジェクションを一発。

 灰。

 

 マットはマナを確認した。

 ずっと良い。

 彼は頷いた。

「ガイド動画が教えてくれないのは、こういう部分だな」

 

 ルークは「ソロのウォリアーがどんな『回答』を持っていくべきか」を教えてくれた。

 だが、そのガイドは「目の前にいる特定のブライアー・ハスク1体に、ヘビーストライクのマナを支払う価値があるかどうか」までは教えてくれない。

 

 それがプレイ(実践)だ。

 経験(エクスペリエンス)だ。

 ビルドと実行(エグゼキューション)。

 ここにもまた、異なるレイヤーが存在していた。

 

 ◆

 マットはさらに数時間、アッシュフィールドに滞在した。

 

 大半の戦闘は、純粋に「速く」なっていた。かつては長い追いかけっこに発展していたウサギの群れも、適切な位置へのリープ・スラムで迎撃できるようになった。シンダー・クロウが戦闘のペースを支配することはなくなった。ブライアー・ハスクは、マットの必要に応じてヘビーストライクで速やかに処理することも、通常攻撃で安上がりに倒すこともできた。

 

 新しいスキルは、昨日の教訓を「置き換えた」わけではない。

 昨日の教訓を「より良く適用する」ための方法を与えてくれたのだ。

 

 彼は、リープ・スラムが「ミス」になる方法すら発見した。

 

 1匹のウサギが石垣の向こうへ逃げた。

 マットはその向こう側をターゲットにして跳躍した。

 着地。

 そして即座に、自分が「別の群れ(パック)のど真ん中」に飛び込んでしまったことに気づいた。

 

 ウサギ3匹。

 ハスク1匹。

 カラス1匹。

 

 マットはゆっくりと剣を抜いた。

「……ルート選択のミスだな」

 カラスが金切り声を上げた。

 戦闘開始。

 

 移動スキルは、「とんでもなく馬鹿げた場所へ、あっという間にたどり着くこと」を非常に簡単にしてくれる。

 有用な教訓だ。

 

 彼は余裕で生き延びた。

 しかし、後でその教訓をノートに書き留めておいた。

 

 ◆

 午後遅くになり、マットは切り上げることにした。

 ポータル・スクロールを使い、キャンプに帰還する。

 

 戦利品バッグの中身の違いは一目瞭然だった。

 より多くの魔石。

 より多くの植物素材。

 より多くのシンダー・フェザー。

 

 モンスターが良質になったからでも、彼の運が突然良くなったからでもない。

 単に、同じ時間でより多くのモンスターを殺したからだ。

 

 マットはバッグの中を覗き込んだ。

「クリアスピード(処理速度)か」

 

 同じ時間。

 より多くのモンスター。

 より多くの戦利品。

 

 それは彼が気に入った部分だった。

 とても気に入った。

 

 ◆

 その晩、マットはC-87に戻り、今日の戦利品を小さなテーブルの上に広げた。「売るもの」「一時保管」「地元のバイヤーの価格チェック」「装備候補」の山に分類していく。

 

 それから、彼はビルド用のスプレッドシートを開いた。

 

【ソロ・ウォリアー・コア】

 ヘビーストライク — 単体攻撃

 クリーブ — 範囲処理

 リープ・スラム — 移動

 ブレード・プロジェクション — 遠距離

 

 スロット 5–8: 空(エンプティ)

 

 4つが埋まり。

 4つが空いている。

 

 昨日なら、空のスロットは「欠けている機能」のように見えただろう。

 今では、それは『選択の自由(オプショナリティ)』に見える。

 

 アッシュフィールドが現在投げかけてきている問題に対して、マットは十分なツールを持っている。

 未来のすべてのダンジョンを予測する必要はないのだ。

 

 スマホが振動した。

 

 **イーサン:**ボス殺した? 

 **マット:**まだだ

 **イーサン:**臆病者

 **マット:**明日やる

 

 入力中インジケータが現れた。

 止まった。

 また現れた。

 

 イーサン: :)

 

 マットは見つめた。

「だからそれやめろ」

 

 彼はアッシュフィールド果樹園のガイドを開いた。

 昨日無視したボスの項目が、ページの下の方で彼を待っていた。

 

 マットはクリックした。

 

【果樹園の番人(オーチャード・キーパー)】

 アッシュフィールド果樹園 — インスタンスボス

 

 彼は一般的な概要、古いクリア記録、ドロップ報告をスキップした。

 ギミック(メカニクス)の項目へ直行する。

 

 最初の一行が目に飛び込んできた。

 

 **確認されている取り巻き(アッズ):**シンダー・クロウ

 

 マットは目を閉じた。

「……当然そう来るよな」

 

 彼はさらにスクロールした。

 ギミックが続く。

 最初の画面を見終わる頃には、もう十分だった。

 

 それは「明日の問題」だ。

 今日追加した4つのスキルは、純粋な数値を劇的に大きくすることなく、アッシュフィールドをまったく違うものに変えてみせた。

 それらは彼に『回答』を与えてくれた。

 

 4つのスロットがまだ空いている。

 マットはそれらを見た。

 それから、『COPY』を見た。

 それから、ボスのガイドを見た。

 

「よし」

 

 トレーラーの外のどこかで、完全に普通のオハイオのカラスが「カーッ」と鳴いた。

 マットはゆっくりと窓の方を見た。

 

「明日」と、彼はそのカラスに向かって言った。「お前らのボスを殺してやる」




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