ダンジョン・ドリフター ~退職金でキャンピングカーを買ったら、放置していたスキルが『SSSランク:完全複製(コピー)』だった件。最強スキルを拾い集めて全米横断の旅に出る~   作:パラレル・ゲーマー

15 / 15
第15話 どうやら、魔法使い(メイジ)が一番硬いらしい

 午前も遅い時間。

 

 マットはC-87サイトのトレーラー内の折りたたみテーブルに座り、昨日のボス戦の戦利品(スポイルズ)に囲まれていた。

 残された床の大部分は、ノーマル装備で埋め尽くされている。剣、盾、ヘルメット、胸当て、手袋、ブーツ、ベルト。すべてクリーン(白紙)。すべて無改造。すべて、「これが実際に使えるものなのかどうか」をマットが解明するのを待っている状態だった。

 

 彼の右側には、彼が楽観的にラベルを貼ったプラスチックの収納箱が置かれていた。

 

 クラフト — 後で調べる

 

 このラベルはすでに正確ではなくなりつつあった。

 彼は実際のところ、すでに『一部を調べ終えていた』からだ。

 

 コピーしたクラフトスキルは、一晩明けてリセットされていた。

 

 生命の刻印 — 10 / 10

 元素の守護 — 10 / 10

 

 10回の『ライフ』確定クラフト。

 10回の『耐性』確定クラフト。

 通貨(カレンシー)が詰まった箱。

 ベース装備で埋め尽くされた床。

 

 マットは完全に無地の鉄のロングソードを手に取った。

「よし」

 彼はそれを手の中でひっくり返した。

「俺にはクラフトができる」

 

 マットは剣を見て、それから通貨を見た。

 トレーラーの中に沈黙が流れた。

「……で、俺は何をクラフトすればいいんだ?」

 

 彼は笑って剣を置いた。

「クラフト通貨の使い方を知っていること」と、「何が良い装備を構成するのかを知っていること」は、どうやらまったく別の学問(サブジェクト)であるらしい。

 

 マットはライフが重要であることは知っていた。オハイオ州が「火を吹く鳥」を紹介してくれたおかげで、耐性が重要であることも知っていた。剣にはダメージが必要だろうと推測できる。

 

 防具にはおそらく——

 マットは胸当てを見た。

「……防御力が必要だろうな」

 

 役に立たない考察だ。

 基礎以上のことになると、彼は完全に『推測(ゲス)』で動くことになる。

 そしてホワイトベースは、「推測でクラフトした時の経済的結末」について、驚くほど明確に説明してくれていた。

 

『俺たちはギャンブルはしない。製造(マニュファクチュア)するんだ』

 

 マットに必要なのは、一般的なクラフトのガイドではない。

『装備(ギア)』のガイドだ。

 

 彼は再び検索結果に戻った。

 関連動画の一つが彼の注意を引いた。

 

『@BastionBuilds(バスティオン・ビルド)』

 

 マットはそのアカウントに薄っすらと見覚えがあった。ウォリアー層に大人気のチャンネルだ。防御の仕組み、装備の分析、そして「ボス戦での生存能力」についての解説を大量に投稿している。

 

 ルークが「初心者ウォリアー・ビルド界の、疲れ果てた親戚のオジサン」だとしたら、バスティオンは「顔面を殴られることを学術的専門分野とする大学教授」だ。

 

 サムネイルには、バカバカしいほど重厚で装飾的なプレートアーマーを着たバスティオンの姿があった。

 その隣には、ゆったりとしたローブを着たメイジが立っている。

 画像の上半分を、巨大な文字が覆っていた。

 

『メイジはお前より硬い』

 

 マットは片眉を上げた。

「……見事なクリックベイト(釣りタイトル)だな」

 彼はそれをクリックした。

 

 ◆

 画面には、無地の黒いTシャツを着てアームチェアに座るバスティオンが現れた。

 防具なし。

 ドラマチックな音楽なし。

 大声もなし。

 

 彼は40代くらいに見え、「数千人に対して同じ間違いを説明し続けてきた人間」特有の穏やかな表情をしていた。

 

「あなたはレベル1ですか?」

 間を置く。

「現在、『レベル1で最強(ベスト・イン・スロット)』の装備を探しているところですか?」

 

 マットは微笑んだ。

「……いいや」

「よろしい。もしそうなら、この動画を閉じてダンジョンに行ってください」

 マットは笑った。

 

「あなたをレベル50まで連れて行ってくれるような、秘密の伝説的なレベル1防具なんて存在しません。ネズミを何匹か殺し、経験値を稼ぎ、後でまた来てください」

「この界隈のトーン(語り口)、好きだわ」

 

「親が金持ちだからといって、ダンジョンの進行(プログレッション)手順が免除されるわけではありません」

 バスティオンの横に、高レベルの胸当てが表示された。その装備要件テキストのほとんどが赤く光っている。

 

 要求レベル

 要求STR(筋力)

 要求DEX(敏捷)

 要求INT(知力)

 

「装備によって要求されるものは異なります。レベル。属性(ステータス)。時にはもっと専門的な条件も」

 バスティオンは胸当てを指差した。

「お金は助けになります」

 一時停止。

「しかし、お金があるからといって、レベル1の初心者がレベル60の防具を買って『これが俺のビルドだ』と名乗ることは許されないのです」

 

 マットは頷いた。

 おそらく、それはシステム的に必要な制限なのだろう。

 そうでなければ、アメリカ中の裕福な家庭が、覚醒したばかりの子供にトラック一台分のエンドゲーム(最終盤)装備を買い与え、序盤の成長曲線(プログレッション・カーブ)をブルドーザーで更地にしてしまうはずだ。

 

「最初の数レベルは事情が違います」

 高レベルの防具が消え、シンプルな初心者用装備に置き換わった。

「レベル1から大体7くらいまでは、『補助輪』の期間です。市場は巨大。装備はベーシック。要求ステータスは低い。初心者向けのユニーク装備もある。これらは、『あなたが高いお金を払って致命的なミスを犯す方法を学ぶ前』に、とりあえず機能するように設計された装備です」

 

 モンタージュ映像の中に、『純粋なる元素』が短く映し出された。

 マットは首元のペンダントに触れた。

「おっ」

 

 そして、画面が暗転した。

 一つの数字が現れる。

 

 レベル:8

 

「レベル8」

 マットの動きが止まった。

「ここが、初心者が『意味のあるレベル・ステータス要求を持った標準的な装備ベース』と本格的に向き合い始める、最初の一般的な分岐点です」

 

 マットは自分のステータスを開いた。

 

 レベル:8

「……ああ」

 

「価値のあるアイテムのすべてが必ずレベル8から始まる、というような神秘的な法則があるわけではありません」バスティオンは続けた。「これは『市場の転換点』なのです。このあたりから、探索者は『これは初心者用装備より強いか?』と問うのをやめ、『このベースは自分のビルドに合っているか?』『要件を満たせるか?』『クラフト通貨を投資する価値があるか?』を問い始めます」

 

 マットはゆっくりと視線を下げ、トレーラーの床を覆う装備の山を見た。

 オーチャード・キーパーの戦利品の中からいくつかを選び、確認する。

 

 ヘルメット。

 胸当て。

 ブーツ。

 手袋。

 

 要求レベル:8

 

 端から端まで、すべてだ。

 マットはブーツを山の上に落とした。

「マジかよ」

 

 オーチャード・キーパーは、ただランダムな白い装備をバラ撒いたわけではなかった。

 有用そうなベースの大部分は、ボスが死んだ時にマットが到達した『まさにその転換点』のレベルに合わせて設定されていたのだ。

 

 ボス討伐。

 レベル8到達。

 ノーマル・ベースの山。

 クラフト通貨。

 そして、そのほんの数時間後に、マットは2つのCランク・クラフト・ユニークスキルを発見し、コピーした。

 

 彼は装備の山を見つめた。

「偶然にしては、あまりにも出来すぎたタイミングだぞ」

 

 マットはバスティオンの動画に視線を戻した。

「じゃあ、この白いベースを全部『レア』にすれば完成ってことか?」

 

 彼は動画を一時停止した。

 彼の視線が『純粋なる元素』と『元素の指輪』に向いた。

 

 初心者セット(ビギナーズ・セット)は、単にレアアイテムのテキストの方が綺麗に見えるからという理由で手放すには、まだ有能すぎる仕事をしている。

 標準的な3属性耐性に31%のベースラインを与え、アクティブ・スキルジェム・スロットを消費することなく『エレメンタル・シールド』を提供してくれている。

「まだちゃんと仕事をしているものを、無理に交換する理由はない」

 

 となると、残された「再構築(リビルド)可能」な装備枠は6つ。

 ヘルメット。

 胸当て。

 手袋。

 ブーツ。

 2つ目の指輪。

 ベルト。

 

 6つの部位。

 10回のライフ確定クラフト。

 10回の耐性確定クラフト。

 

 マットは微笑んだ。

「……都合がいいな」

 彼は動画を再開した。

 

 ◆

「レア装備を買い始める前に」バスティオンが言った。「『防御』が実際に何を意味するのかを理解する必要があります」

 

 画面が変わった。

 

【防御レイヤー(階層)】

 アーマー(装甲)

 回避(エバジョン)

 エナジーシールド(魔力障壁)

 

 マットはノートを開いた。

「よし」

 

「さらに複雑な防御手段もあります。専門的なメカニクスもあります。ユニークスキル特有の例外もあります。ですが、あなたが初心者なら、まずはここから始めましょう」

 

 バスティオンは『アーマー』を選択した。

 重装備のウォリアーが表示される。

 

「アーマーは主に『STR(筋力)』に関連付けられます。アーマー値が増加すると、システムはその数値を『対象のレベルおよび脅威範囲における、物理ダメージ軽減率の推定値』に変換します」

 

 シンプルな例が表示された。

 

 受ける物理ダメージ:100

 物理ダメージ軽減率:50%

 最終的なダメージ:50

 

「アーマーは、物理的な攻撃(ヒット)のダメージを『小さく』します」

 マットは頷いた。

「システム上表示されるハードキャップ(上限)は90%です」

 

 マットはペンを止めた。

「……90?」

 バスティオンはカメラを真っ直ぐに見つめた。

「はい」

 

 例が切り替わる。

 

 受ける物理ダメージ:100

 物理ダメージ軽減率:90%

 最終的なダメージ:10

 

 マットは見つめた。

「……そいつはバカげてるな」

 

「正気の汎用ビルドを組んでいる限り、おそらく90%に到達することはないでしょう」

「少しマシになった」

「しかし、防御に重く投資した物理タンクであれば、適正レベルの脅威に対して表示上の推定値で70%から75%あたりをうろうろすることは十分に可能です」

 75%。

「それでも莫大な数字です。軽減率75%の場合、物理アタッカーが『防御ゼロの相手と同じ結果(ダメージ)』を出すためには、おおよそ4倍の生の(ロウ)ダメージが必要になります」

 

 マットは自身の防御インターフェースを確認した。

 彼の初心者用装備は、ある程度のアーマーを提供している。

 彼のパッシブは、その既存のアーマーを増加させている。

 その結果、彼にとって適切な脅威範囲に対する物理ダメージ軽減率の推定値は、およそ『25%』と表示されていた。

 

「パッシブの『アーマー12%増加』は、この数字を上げるためのものだったわけか」

 

 パッシブスキルは、無から魔法のように防御力を生み出しているわけではない。

 それは主に「装備から供給される防御レイヤー」を掛け算(乗算)しているのだ。

 ベースとなるアーマー値が高ければ高いほど、パッシブが機能するための「素材」が増える。

 

「レイヤー(階層)、か」

 

 バスティオンは次に進んだ。

『回避(エバジョン)』。

 軽装のローグが表示される。

 

「主な関連ステータスは『DEX(敏捷)』です。回避値は『回避率(エバジョン・チャンス)』に変換されます」

 バスティオンは片手を挙げた。

「アーマーはこう言います。『殴ってみろ、だが痛みを減らしてやる』」

 彼はもう片方の手を挙げた。

「回避はこう言います。『ノー(お断りだ)』」

 

 マットは厳粛に頷いた。

「……専門的(テクニカル)だな」

 

「システムの『回避』を、現実の『上手く避ける動作』と混同しないでください」

 動画が戦闘映像に切り替わった。

 ローグがほぼ完全に静止して立っているところへ、モンスターが重い棍棒を彼の肩へ真っ直ぐに振り下ろした。

 命中するギリギリの瞬間、攻撃の軌道がズレた。

 ほんの少し。

 しかし、必要なだけ。

 武器は不自然なほど滑らかに、彼の体を通り過ぎていった。

 微かな揺らめき(シマー)が現れる。

 

 EVADED(回避)

 

 ダメージゼロ。

 

 マットは画面に顔を近づけた。

「システムが『回避した』と言えば、それは回避したことになる」

 バスティオンは微笑んだ。

「おめでとうございます。あなたは無敵です」

 

 マットは眉をひそめた。

「それってなんか——」

「『次の攻撃が来るまで』はね」

 マットは笑った。

 

 映像は、同じローグに対する連続攻撃に切り替わった。

 持続的なプレッシャーを受けるにつれ、彼の表示上の『回避率』が徐々に悪化していき——ついに一撃が命中した。

 ローグは即座に離脱した。

 

「繰り返される攻撃のプレッシャーは、『エントロピー(不確実性)』を適用します。簡単に言えば、敵が剣を振り続けている間、表示上の回避率が永遠に自分を救ってくれると期待してはいけない、ということです」

 バスティオンの表情が平坦になった。

「このシステムは、回避特化ビルドが『一発食らった瞬間に即死する』のを防ぐために存在しています。あなたがボスの前に3分間棒立ちになり、『俺はタンクだ』と勘違いさせるために存在しているのではありません」

 

 マットはノートに書き込んだ。

 

 回避 = その場に留まるな。

 

 彼は『リープ・スラム』をちらりと見た。

 素晴らしいシナジーだ。

 避ける。

 位置を変える(リポジショニング)。

 プレッシャーを切る。

 また戻る。

 

 バスティオンは3つ目のカテゴリーに移った。

『エナジーシールド(魔力障壁)』。

 サムネイルにいたメイジが表示された。

 

「もしあなたが過去のゲームの知識から、『魔法使いは自動的に脆いガラスの大砲(グラス・キャノン)だ』と思い込んでいるなら、今すぐ忘れてください」

 

 ライフバーが表示された。

 そして、その上に青白いバーが重なる。

「エナジーシールドは主に『INT(知力)』に関連付けられ、通常、ライフよりも先にダメージを吸収します」

 

 初心者の例が表示された。

 

 ライフ:1,000

 エナジーシールド:1,500

 

「基礎理論として言えば、これは『敵があなたを殺すために削らなければならない2,500ポイントの壁』です。専門的な相互作用(インタラクション)について議論するのはその後です」

 

 マットは見つめた。

「……2本目のライフバーか」

「初心者の理論としては、ほぼその認識で間違いありません」

 

 例は、巨大なエナジーシールドのプールに包まれた高レベルのメイジへと切り替わった。

「本気で投資すれば、エナジーシールド特化ビルドは莫大な生の(ロウ)耐久力を生み出すことができます。ローブを着ているからといって、魔法使いが脆いなどと思い込まないでください」

 

 メイジが、プレートアーマーのウォリアーの横に並んだ。

 マットは画面を指差した。

「……メイジの方がタンクじゃないか」

 バスティオンは頷いた。

「その通りです」

 サムネイルの主張は正しかった。

 

「アーマービルドは『軽減』します。回避ビルドは『避けます』。エナジーシールドビルドは『もう一つのプールを追加』します」

 彼はカメラを真っ直ぐに見た。

「30年前のRPGのステレオタイプを、現代の防衛理論として使うのはやめましょう」

 

 マットは自身の属性(ステータス)の配分を見た。

 STR(筋力)は圧倒的に高い。

 DEX(敏捷)も悪くない。

 INT(知力)は依然として最も低い属性だ。

 

 エナジーシールドは面白い。

 とても面白い。

 だが、今日の課題(プロブレム)ではない。

 彼のウォリアーとしての基礎は自然とアーマーをサポートしており、DEXは回避とハイブリッド・ベース(アーマー+回避)へのアクセスを与えてくれる。

 

 マットはボスのドロップ品を見た。

 アーマーのベース。

 回避のベース。

 ハイブリッドの装備。

 

「よし」

 

 その時、バスティオンが身を乗り出した。

「さて。今私が言ったことを、30秒間だけ全部忘れてください」

 マットの動きが止まった。

「なぜなら初心者は、防衛メカニクスを学ぶのが大好きなあまり、その『さらに下にある最も重要なもの』を忘れがちだからです」

 

 画面が暗転した。

 

 + 最大ライフ

 

 マットは微笑んだ。

「出たな」

「固定値(フラット)の最大ライフ。退屈。だが効果的」

 

 バスティオンは、探索者が攻撃を受ける映像を流した。

「回避は失敗(フェイル)することがあります。アーマーはすべてのダメージ・ファミリーをカバーできるわけではありません。そして、人間はミスをします」

 ライフ・フラスコが表示される。

 そして、離脱。

「ライフとは、そのミスから生き延びるための『時間』を与えてくれる『緩衝材(バッファ)』なのです」

 

 マットは『生命の刻印』を開いた。

「……都合がいいな」

「初心者の戦闘用装備において、固定値の最大ライフは、あなたが積める(スタックできる)最も安全なモディファイアの一つです」

 

 6つの装備スロットが表示された。

 それぞれが約30のライフを獲得する。

 

 ≈ +180 最大ライフ

 

 マットは思考を止めた。

 彼の現在の総ライフは、「追加の180ライフ」を些細な数字だと思えるほど大きくはない。

「……マジか」

 

「あなたのライフプールが『顕微鏡レベルの小ささ』でなくなったら、次は標準的な3属性のトリオに対処しましょう」

 

 画面が変わった。

 

 火耐性

 氷耐性

 雷耐性

 

 マットは『純粋なる元素』に触れた。

 彼はすでに火耐性の重要性を理解している。

 シンダー・クロウは極めて教育的(エデュケーショナル)だったからだ。

 

「ライフが『緩衝材』だとするなら、耐性は『特定のダメージ・ファミリーがその緩衝材をどれくらい食い破るか』を決定するものです」

 一般的なベンチマークが表示された。

 

 火:75%

 氷:75%

 雷:75%

 

 マットは見つめた。

「……3つ全部で?」

「いずれはね」

 

 マットは少しだけリラックスした。

「もしあなたがレベル8なら、明日までに3つすべてを無理やり75%にしようとして破産する必要はありません。しかし、Cランクのコンテンツに向けて準備を始める頃には、標準3属性すべてで75%を達成しているのが『メインストリームの防衛ベンチマーク』になります」

 

 バスティオンは、火中心、氷中心、雷中心のダンジョンの映像を順に切り替えていった。

「もしあなたが『旅(トラベル)』をするつもりなら、特別な理由がない限り『広範囲の防御』を構築してください。来月、自分が何と戦っているかなんてわからないのですから」

 

 マットは頷いた。

 ロード・デルバー(放浪探索者)特有の問題だ。

 

「あなたのステータス画面は、氷耐性が手袋から来たのか、指輪から来たのか、それとも死ぬほどダサい帽子から来たのかなんて気にしません。すべての装備を合計して、数値を構築してください」

 

 マットはスプレッドシートに『火』『氷』『雷』の列を追加した。

「当然だな」

 

 画面が紫色に変わった。

 マットは即座にため息をついた。

「……もう一つあるのか」

 

 カオス(混沌)耐性

 

「残念ながら」

 バスティオンは微笑んだ。

「カオスは、それ自体が独立した非常にウザいダメージ・ファミリーです。毒や、ガイド動画でよく見る『紫色っぽい攻撃』の多くがこれに分類されます」

 

 カオス耐性は、標準的な3属性よりも獲得が難しい傾向にある。

 幸いなことに、初心者レベルのダンジョンでカオス中心のコンテンツが出現する頻度もまた低い。

 

 バスティオンは、評価の低いダンジョンのリストを表示した。

 

 重度のカオスダメージ

 

「カオス中心の初心者ダンジョンが頻繁に不人気になる理由の一つがこれです」

 マットは笑った。

「みんなただ立ち去るのか?」

「紫色の死のダンジョンに対する最高の防衛策は、州間高速道路70号線(インターステート70)を使うことですからね」

 

 マットは頷いた。

「……ロードトリップ・ビルドの特権だな」

 完璧だ。

 もしオハイオが面倒臭くなったら、文字通り家にトラックを繋いで離れればいいだけだ。

 

「ライフと耐性がコントロールできるようになったら、装備の選択はもっと面白くなります。初心者の例を2つ挙げましょう」

 

 手袋 — 攻撃速度(アタック・スピード)

 

「攻撃速度は、あなたの攻撃の速さを増加させます」

 バスティオンは間を置いた。

「この説明は無料サービスです」

「圧倒的な説得力だな」

 

「より多くの攻撃。ダメージウィンドウのより良い活用。より高い出力(アウトプット)」

 マットは書き加えた:

 

 将来の手袋 — 攻撃速度

 

 彼には攻撃速度のクラフターのツテはない。

 今のところは(Yet)。

 

「ブーツです」

 

 移動速度(ムーブメント・スピード)

 

 マットのペンが止まった。

「低レベルの数値ロールでは、10%程度しか得られないかもしれません」

 映像では、2人の探索者が同じ距離を走っており、一方が明らかに速かった。

 

「10%と聞くと退屈に思えるでしょう。ですが違います。移動速度は、攻撃から逃れる時は『防御』であり、次のターゲットへより速く到達する時は『ダメージ』であり、1時間あたりのダンジョン探索量を増やす時は『金』なのです」

 

 マットは昨日のことを思い出した。

 リープ・スラム。

 石垣。

 マナ・フラスコ。

 ボスレース。

「あれは欲しい」

 

 彼は書き加えた:

 

 将来のブーツ — 移動速度

 

 バスティオンの最後のスライドが表示された。

 

【初心者向け戦闘用装備の優先順位】

 

 適切なベース防御 — アーマー / 回避 / エナジーシールド

 

 固定値の最大ライフ

 

 火 / 氷 / 雷 耐性

 

 有用なスロット固有のモディファイア

 

 自分の要求ステータスを満たすこと

 

「『いつか着たいと願っているアイテム』をビルドしないでください」

 バスティオンは腕を組んだ。

「『現在のキャラクターが実際に使える最高のアイテム』をビルドするのです」

 

 動画が終わった。

 

 マットは画面から、6つの空き装備スロットに視線を移した。

 次に、ベースの山。

 次に、クラフト通貨。

 生命の刻印。

 元素の守護。

 

 マットはゆっくりと指の関節を鳴らした。

「よし」

 彼は微笑んだ。

「これならやれる」

 

 ◆

 マットは新しいスプレッドシートを作成した。

 彼はそれを「自制心(レストレイント)」と呼ぶことにした。

 

【レベル8 防衛再構築(ディフェンシブ・リビルド)】

 

 **ヘルメット:**アーマー / 回避 — ライフ — 火

 **胸当て:**アーマー重視 — ライフ — 火

 **手袋:**ハイブリッド — ライフ — 氷 — 将来的に攻撃速度

 **ブーツ:**アーマー / 回避 — ライフ — 雷 — 将来的に移動速度

 **指輪 2:**ライフ — 氷

 **ベルト:**ライフ — 雷

 

『純粋なる元素』はキープ。

『元素の指輪』もキープ。

「まだちゃんと仕事をしているものを、無理に交換する理由はない」

 

 初心者セットはすでに、火、氷、雷すべてに31%のベースラインを与えてくれている。

 

 マットはおおまかな目標値を設定した。

 火:31% → ~50%

 氷:31% → ~50%

 雷:31% → ~50%

 

 そして、彼は付け加えた。

 カオス:0%

 

 マットは最後の一行を見つめた。

「……今はこいつは無視しよう」

 紫色のダンジョンを避ける。

 問題解決。

 今のところは。

 

 マットは装備の山へ移動した。

 この作業には時間がかかった。

 ボスは大量のベースを落としたが、それがすべて等しく有用なわけではない。

 

 ヘルメットには、アーマーベース、回避ベース、ハイブリッドの3つを比較した上で、ハイブリッドを選んだ。

 胸当てはアーマー重視のものにした。STR 43のおかげで装備要件は余裕で満たせる。

 手袋もハイブリッドを選択。

 

 そしてマットはブーツに手を伸ばした。

 その1足には、追加の一行があった。

 

 革のブーツ

 レアリティ:ノーマル

 要求レベル:8

 暗黙(インプリシット)プロパティ:最大ライフ +25

 

「……おや」

 マットはそれを裏返した。

 このライフはクラフトされた『追加効果(アフィックス)』ではない。

 ベースそのものに最初から備わっている特性なのだ。

 つまり、この上にさらに『生命の刻印』を重ねられるということだ。

 

「お前は俺と一緒に来い」

 

 やがて、6つのクリーンなベースがテーブルの上に並んだ。

 残りはすべて床に戻された。

 

 次は通貨(カレンシー)だ。

 今回、マットはすべての光る物体を平等には扱わなかった。

 彼がすでにリサーチを終えた、一般的で低レベル向けのクラフト通貨は片側に寄せられた。

 

 マットはマスキングテープをちぎった。

『コモン — 実験しても安全』

 

 見慣れないもの、高価そうなもの、明らかに希少そうなものはすべて反対側へ。

 2枚目のラベル。

『高価 — バカな真似はするな』

 

 マットは頷いた。

「十分に曖昧さが排除されたな」

 

 彼は座り、『COPY』を開いた。

『不動の歩み』と『瞬動』を外す。

『生命の刻印』と『元素の守護』を入れる。

 

【アクティブコピースロット】

 生命の刻印 — C — 10 / 10

 元素の守護 — C — 10 / 10

 

 昨日は概念実証(プルーフ・オブ・コンセプト)だった。

 今日は生産(プロダクション)だ。

 

 マットは、低レベル装備に適切であるとすでに確認済みの安価なコモン通貨を使って、クリーンなヘルメットを準備(プレパレーション)した。

 ノーマルのベースが、作業可能な『レア』の土台へと変化する。

 

 次に、最初のターゲット・モディファイアを準備した。

 生命の刻印。

 通貨が光となって溶け込む。

 ヘルメットが変化した。

 

 レア・ヘルメット

 要求レベル:8

 最大ライフ +30

 

 マットは動きを止めた。

「……30」

 彼が研究してきたレベル帯の中では、非常に強力なロール(数値)だ。

 

 次は火耐性。

 元素の守護。

 結果が定着した。

 

 レア・ヘルメット

 要求レベル:8

 最大ライフ +30

 火耐性 +10%

 

 マットはそれを見つめた。

「完璧だ」

 数学的に完璧な装備というわけではない。

 彼のスプレッドシートが『要求した通りのもの』という意味での完璧だ。

 

 最初のアイテムが、テーブルの「完成品」側に移動した。

 その後、マットは本格的な生産作業に入った。

 

 胸当ては『+28 最大ライフ』と『+9% 火耐性』のロールを出した。

 手袋は『+30 ライフ』。マットは一瞬だけ「攻撃速度」のギャンブルに挑むことを考えたが、ホワイトベースの言葉を思い出し、代わりに『元素の守護』を使って『+8% 氷耐性』をつけた。

「これで十分だ」

 スプレッドシートに『将来 — 攻撃速度』と書き加えた。

 

 ブーツはさらに良かった。

 ベース自体が『+25 最大ライフ』の暗黙プロパティを持っている。『生命の刻印』がさらに『+28』を追加した。

 

 マットはその結果を見つめた。

「……ブーツだけでライフが53増えるのか」

 そのブーツはもはや退屈なものではなくなっていた。

 

『元素の守護』が『+8% 雷耐性』を追加した。

 完璧な耐性ロールではない。

 それでも構わない。

『将来 — 移動速度』。

 

 2つ目の指輪は『+28 ライフ』と『+10% 氷耐性』。

 ベルトが『+30 ライフ』と『+10% 雷耐性』でセットを締めくくった。

 

 テーブルの上に6つのピースが並んでいる。

 正確に12回のターゲット・クラフトを終え、『COPY』はこう表示していた。

 

 生命の刻印 — 4 / 10

 元素の守護 — 4 / 10

 

 それぞれ4回の「確定使用権」が残っている。

 

 マットの視線が、手付かずのノーマル・ベースの山へと動いた。

「潜在的な販売在庫(セールス・インベントリ)」。

 ホワイトベースの『初心者市場の例』が蘇ってくる。

 

 マットは数秒間、それを見つめた。

「……やめておこう」

 

 誘惑が『会計プロジェクト』に発展する前に、彼は市場のタブを閉じた。

 今日は彼の最初の本格的な生産クラフトの日だ。

 彼はまだ「クラフトした装備を売ること」についてのリサーチを終えていない。

 市場の手数料についても詳しくない。

 顧客とどう対応したいかも決まっていない。

 箱の中の通貨の半分は、まだ意味すらわかっていないのだ。

 

「自分の装備(セルフギア)が最優先だ」

 お金は後でいい。

 この防具は、今日彼を生かしてくれる。

 そっちの方が有用に思えた。

 

 マットはテーブルの上にまだ残っている無地の鉄のロングソードを見た。

 ライフや耐性は、彼が武器に求めているものではない。

 現在の彼のクラフト特化能力は「防御系」だ。

 

 彼の思考は、共同組合の物理武器ベンチに戻った。

 鍛え抜かれた刃(テンパード・エッジ)。

 Bランク。

 

「後でな」

 彼はその剣を未改造のまま脇に置いた。

 

 ◆

 マットは装備を着替えた。

 初心者用のバニラ(何の効果もない)装備を脱ぐ。

 

 レア・ヘルメット。

 レア胸当て。

 手袋。

 ブーツ。

 ベルト。

 2つ目の指輪。

 

 首元には『純粋なる元素』が残っている。

 手には『元素の指輪』が残っている。

 

 マットは胸のストラップを締め、『エレメンタル・シールド』を起動した。

 微かな虹色のオーラが彼の周囲に広がる。

 それから、防御ステータスの表示を開いた。

 

「……おお」

 数字が変わっていた。

 大幅に。

 

 6つの新しいピースは、既存の装備、レベルごとの基礎値、そしてパッシブモディファイアが計算される前に、『199』の固定(フラット)最大ライフを提供していた。

 システムが最終的に弾き出した数値は:

 

 最大ライフ:352

 

 マットは見つめた。

「……めちゃくちゃ増えたな」

 不死身になったわけではない。

 足元にも及ばない。

 しかし、ミスに対する許容度(フォーギビング)は劇的に上がった。

 

 彼の属性防御は、ほぼスプレッドシートの予測通りに落ち着いた。

 

 火耐性:50%

 氷耐性:49%

 雷耐性:49%

 カオス耐性:0%

 

 マットは最初の3つを見て微笑んだ。

 そして、4つ目を見て顔をしかめた。

「お前は本当にスプレッドシートの見た目を台無しにしてくれるな」

 

 アッシュフィールドの問題ではない。

 アッシュフィールドには『火』の鳥がいる。

 火の鳥なら対処できる。

 

 次に、物理防御が解決(リゾルブ)された。

 新しいベースは初心者用装備に比べて劇的に高いアーマーと回避を持っており、彼の既存のパッシブボーナスは「より大きな数値」を増幅(アンプリファイ)するようになった。

 

 推定物理ダメージ軽減率:70%

 

 マットは見つめた。

「……70」

 

 バスティオンは、適正レベルの物理的脅威に対して「70%から75%」が現実的な重タンクの領域だと言っていた。

 マットは70を表示している。

 レベル8で。

 

 この推定値は文脈(コンテキスト)に依存する。この同じアーマー値が、何十レベルも上の敵に対しても70%の軽減率を提供するという意味ではない。より高い脅威層(スレットバンド)に対して同じ表示軽減率を維持するには、より多くのアーマーが必要になる。

 

 だが、マットが『実際に戦うために構築した』現在のコンテンツに対しては? 

 70は非常に魅力的な数字だった。

 

 そして:

 

 回避率:48%

 

「ほぼ半分か」

 通常の有効な攻撃に対して、持続的なプレッシャーがレイヤーを劣化させる前であれば、システムは「ほぼコイントス」の確率で攻撃を無効化すると推定している。

 

 マットはゆっくりと頷いた。

「……これは、相当安全になったな」

 

 それから彼は装備を見下ろし、即座に『まだ欠けているもの』を見つけ始めた。

 手袋に攻撃速度がない。

 ブーツに移動速度がない。

 カオス耐性がない。

 標準3属性は75のベンチマークにはまだ遠く及ばない。

 いくつかのロールは「完璧」というより「有用」レベルだ。

 モディファイアを入れるスペースもまだたっぷり残っている。

 

「だから、これは良いもの(グッド)だ」

 マットは言葉を切った。

「そして、まだ欠けているものが山ほどある」

 

 そこだ。

 罠(トラップ)だ。

 彼は1時間も経たないうちに劇的に強くなったというのに、「これで完成だ」と感じる代わりに、「さらに長い買い物リスト」を手に入れてしまったのだ。

 

 マットは笑った。

「これがビルドクラフトの沼ってやつか」

 

 昨日、これらのアイテムは彼の床を覆う単なる白いボスのドロップ品だった。

 今やそれらはカスタマイズされた防衛装備だ。

 

 マットは市場で同等のリストを確認した。

 一つにつき数百ドル。

 ベースとロールによってはそれ以上。

 

 プロセス自体は無料ではなかった。通貨とクリーンなベースの双方に機会費用がかかっている。

 しかしマットは、クラフターへのサービス料も、ライフや耐性を確定させるための市場プレミアムも一切支払っていない。

 

 最も希少な『特化能力(スペシャライゼーション)』は、『COPY』から来たのだ。

 

「こいつはチートだわ」

 マットは新しいヘルメットを見た。

 彼は嬉しそうだった。

 

 ◆

 誰かに見せたかった。

 クラフトのプロセスではない。

 絶対に『COPY』ではない。

 だが、その結果は? 

 もちろん。

 

 マットは防衛ページのスクリーンショットを撮り、『COPY』やクラフトのセットアップが露見する可能性のある部分をすべて切り取り(クロップ)、ブラックホロウ・グループを開いた。

 

【ブラックホロウ・グループ】

 マット:[画像] 装備をアップグレードしたぞ。

 **イーサン:**なんだと!? 

 **クロエ:**それ全部レベル8のレア? 

 **マット:**6スロットな。

 **マット:**純粋なる元素と元素の指輪はキープ。

 **クロエ:**良い判断ね。

 **クロエ:**レアのテキストの方が綺麗に見えるからって理由だけで、あれを交換しないでよ。

 **マット:**すでにその結論に達してる。

 **イーサン:**それ全部買ったのか!? 

 **マット:**いいや。

 **マット:**クラフトしてもらった。

 

 技術的には真実(トゥルー)だ。

 単に『誰が』クラフトを実行したかを言っていないだけだ。

 

 **イーサン:**マネー・ヘイズが「外注労働」の味を占めたぞ!! 

 **マット:**やめろ。

 **クロエ:**アッシュフィールドの共同組合で? 

 

 マットは動きを止めた。

 

 **マット:**まあ、そんなところだ。

 

 クロエはそれ以上追及してこなかった。

 よし。

 

 数秒後:

 

 **クロエ:**レベル8にしては非常に強力ね。

 **マット:**マジで? 

 **クロエ:**ええ。

 **クロエ:**カオスは? 

 **マット:**0

 

 少しの間。

 

 **クロエ:**お約束ね。

 

 マットは笑った。

 

 **マット:**バスティオンが「カオスはウザい」って言ってたからな。

 **クロエ:**バスティオンは正しいわ。

 **クロエ:**ただ、「キャンプ場のレビューが良かったから」って理由だけでカオス中心のダンジョンに入らないようにね。

 **マット:**肝に銘じるよ。

 

 イーサンが戻ってきた。

 

 **イーサン:**金持ちは嫌いだ。

 **マット:**ベースはボスからドロップしたやつだ! 

 **イーサン:**金持ちはいつだって言い訳を用意してるんだ。

 

 マットはロングソードを手に取った。

 

 **マット:**テストしにアッシュフィールドに入ってくる。

 **クロエ:**いいわね。

 **クロエ:**コントロールされた環境で、普通の攻撃を食らってみなさい。

 **クロエ:**間違っても、新しい防御力のテストを「オーチャード・キーパーの大鎌の下に棒立ちになること」でやらないように。

 **マット:**そのつもりはなかったが。

 **イーサン:**臆病者。

 **マット:**お前、フォアマンに殴られてただろ。

 **イーサン:**あれは「戦術的データ収集(タクティカル・データ・コレクション)」だ。

 

 マットは首を振った。

 そして、あることに気がついた。

 

 **マット:**そういえば、お前ら今どこにいるんだ? 

 

 沈黙。

 それから、イーサンが写真を送ってきた。

 マットはそれを開いた。

 

 青。

 最初に彼が認識したのは、青だった。

 

 果てしなく広がる、完璧に透き通った海。

 白い砂浜。

 ヤシの木。

 ビーチパラソル。

 

 その写真は明らかに、ダンジョン内の保護された海岸の出撃エリアから撮影されたものだった。

 イーサンは装備の横でビーチチェアに座り、頂上に小さな紙の傘が刺さった冷たい飲み物を持っていた。

 クロエは砂浜の少し先、水際の近くに立っている。

 

 マットは見つめた。

「……は?」

 

 **イーサン:**南国(トロピカル)Fランクだぜ!! 

 **クロエ:**沿岸ダンジョンのルートをテスト中なの。

 **イーサン:**バ・カ・ン・ス!! 

 **クロエ:**技術的にはまだ『授業』だから。

 

 マットはトレーラーの窓の外を見た。

 オハイオ。

 砂利。

 ピックアップトラック。

 

 その向こうに:

 アッシュフィールド果樹園。

 焼け焦げた木々。

 火を吹く鳥。

 

 彼はもう一度写真を見た。

 

 **マット:**それ、ただのビーチじゃねえか。

 **イーサン:**たまにモンスターも出るぞ。

 

 マットは顔をこすった。

「……俺はオハイオを選んだんだった」

 

 別のメッセージが現れた。

 

 **クロエ:**防具のテストに行ってきなさい。

 **クロエ:**後で情報(ノート)を交換しましょ。

 **マット:**わかった。

 

 これ以上どちらかが別の写真を送ってくる前に、彼はスマホをしまった。

 

 そして、立ち止まった。

『COPY』。

 生命の刻印。

 元素の守護。

 彼は今からダンジョンに入ろうとしている。

 

「……あぶねえ」

 マットは両方のクラフトスキルを外し、『不動の歩み』と『瞬動』を戻した。

「このまま入ってたら、死ぬほど恥をかくところだった」

 

 ブライアー・ハスクが彼を木に叩きつけようとしている時に、「SSSランクのクラフト能力」などクソの役にも立たない。

 

 マットは剣を帯び、フラスコとマナを確認し、C-87を出発した。

 

 ◆

 マットは『ボス生存中』のインスタンスを選ばなかった。

 今日はレースではない。

 狩り(ファーミング)ですらない。

 彼は『データ』が欲しかったのだ。

 

 端末にはいくつかのオプションが表示されていた。

 マットは、適度に人がいて、ボスがすでに死んでいるインスタンスを選択した。

 

 インスタンス118 — 24/64 — ボス討伐済

 

 完璧だ。

 彼は中に入った。

 

 暖かい空気。

 永遠の夕暮れ。

 黒ずんだ木々の列。

 マットは見上げた。

 相変わらずオハイオだ。

「ビーチにいることもできたのにな」

 

 遠くでシンダー・クロウが鳴いた。

 マットは目を細めた。

「挑発するなよ」

 

 彼はゲートから離れて歩き出した。

 リープ・スラムの連発はしない。

 ボスレースもしない。

 今日、彼が求めているのは「普通のモンスター」だ。

 

 最初の相手はすぐに現れた。

 アッシュ・ラビットが道に飛び出してきた。

 

 マットは剣を抜いた。

 そして、意図的にそれを下げた。

 

 ウサギは減速した。

 マットは見つめた。

「……さあ来い」

 

 クリーチャーはシャーッと威嚇し、突撃してきた。

 マットは避けなかった。

 彼が培ってきたすべての本能が「これはバカのやることだ」と警告していた。

 彼は静止したままだった。

 

 ウサギが跳びかかる。

 一瞬、その爪が確実に彼の太ももを捉えるように見えた。

 

 その時、何かがズレた(シフトした)。

 マットではない。

 攻撃の軌道だ。

 

 ウサギは空中の飛びかかりの最中に、本来起こり得ないような形でわずかに体をねじった。

 その爪が、彼の装甲の表面すれすれを滑り抜けていく。

 

 EVADED(回避)

 

 ライフの損失ゼロ。

 

 マットは瞬きした。

 ウサギは彼の背後に着地した。

「……気持ち悪い感覚だな」

 

 それは向き直り、再び突撃してきた。

 マットは静止したままだ。

「もう一回」

 

 2回目の攻撃は、彼の脛当て(グリーブ)に鈍い衝撃音と共に命中した。

 ライフはほんのわずかにしか動かなかった。

 

 ウサギはもう一度試みた。

 

 EVADED

 

 別の攻撃が命中した。

 マットは、「連続的なプレッシャーの下で、表示上の回避率が低下していく」のを確認するまでの間だけ攻撃を受け続けた。

 

 そこだ。

 まさにバスティオンが説明していた通りだ。

「なるほど」

 

 十分だ。

 マットは動いた。

 一歩。

 一振り。

 ウサギは灰となって消えた。

 

「棒立ちはなし、だな」

 彼は頷いた。

「理解した」

 

 回避(エバジョン)は攻撃を無効化できる。

 だからといって、モンスターが何度も殺そうとしてくる間、ただ突っ立っているのが良い作戦になるわけではない。

 良いテストだった。

 

 ◆

 彼は石垣の近くでブライアー・ハスクを見つけた。

 こっちの方がいい。

 アッシュ・ラビットは弱い。

 ブライアー・ハスクはもっと重い一撃を撃ってくる。

 

 マットは近づいた。

 クリーチャーが太い木製の腕を振り上げる。

 マットは、「横に避ける」という極めて理にかなった衝動を抑え込んだ。

「データ収集だ」

 

 腕が振り下ろされる。

『ドスッ』。

 

 マットは後方に揺さぶられた。

 彼の『ライフ』の保護が負傷を吸収する。

 実際のダメージは、彼が予想していたよりもはるかに小さかった。

 

 マットは数字を見た。

 それから、ハスクを見た。

「……70%ってのは本物だな」

 

 適正レベルのFランク物理アタッカーに対して、彼の新しいアーマーは、表示上の推定値が示唆した通りの仕事をしていた。

 

 クリーチャーが再び腕を上げる。

 マットは即座に後ろへステップした。

「1回目はデータだ」

 木製の腕が何もない地面を叩きつける。

「2回目はただのバカだ」

 

 マットは内側に入り込み、ヘビーストライクを使った。

 ブライアー・ハスクが粉砕された。

 

 それから、彼はライフが回復していくのを見守った。

 もう一つ、改善されたものがある。

『アリーナの達人』は依然として「毎秒、最大ライフの1%」を自動回復させている。

 パーセンテージは変わっていない。

 その下にある「プール」が変わったのだ。

 

 最大ライフ352において、再構築(リビルド)前と同じ「毎秒1%」のレートで回復していても、毎秒ごとに回復する『絶対的なライフ量』は以前よりはるかに多くなっていた。

 

 マットはステータスを開いた。

「……おお」

「ライフが増えたから、リジェネの価値も上がったのか」

 

 固定(フラット)ライフ。

 パーセンテージ・ライフ。

 パーセンテージ・リジェネレーション。

 アーマー。

 回避。

 

 これらのシステムが、ステータス画面上の孤立した数字として存在するのではなく、互いを『補強(レインフォース)』し合い始めていた。

 

「重なり合うレイヤー(階層)か」

 マットは間を置いた。

「最高だな」

 彼の言葉は、完全に本心からのものだった。

 

 ◆

 次のテストには『鳥』が必要だった。

 アッシュフィールド果樹園は、マットが鳥を欲していない時は「決して鳥を出し惜しみしない」場所だった。

 意図的に探そうとすると、急に面倒になる。

 

 やがて彼は、崩れた灌漑水路の上の枝に止まっているシンダー・クロウを見つけた。

 鳥は彼を見た。

 マットは鳥を見た。

 

 くちばしが開く。

 オレンジ色の光が形成される。

「来い」

 

 火の玉(ファイアボール)が放たれた。

 マットは意図的にリープ・スラムを使わなかった。

 それが彼の上腕に命中する。

 

 エレメンタル・シールドがフラッシュした。

 熱が広がる。

 ライフは数ポイントしか減らなかった。

 

 マットは見つめた。

 攻撃の意味がなくなったわけではない。

 ダメージゼロではない。

 しかし、彼が火耐性31%だった時の「同じカラスの火の玉」と比較すると? 

 違いは明白だった。

 50%ははるかに良い仕事をしている。

 

「よし」

 彼は微笑んだ。

「こっちはわかりやすいな」

 

 カラスが次の火の玉を準備した。

 マットは剣を掲げた。

「テストへのご協力、感謝する」

 

 ブレード・プロジェクション。

 マナで形成された剣が鳥に直撃した。

 灰。

 

 シンダー・フェザーが舞い落ちてくる。

 マットは、他のカラスがどういうわけかそれを盗みに来る前に、即座に拾い上げた。

 

 それから、残った火ダメージが自動回復によって消えていくのを見ていた。

 耐性が攻撃を和らげた(ソフトにした)。

 大きなライフプールが『余裕(マージン)』を与えてくれた。

『アリーナの達人』が、そのプールが大きくなった分、毎秒より多くの絶対的なライフを回復させた。

 

 レイヤー。

 まさにその言葉通りだ。

 バスティオンがなぜ何度もその言葉を使っていたのか、マットは理解した。

 

 ◆

 最後のテストは、古い石造りの納屋の近くでやってきた。

 アッシュ・ラビット2匹。

 ブライアー・ハスク1匹。

 シンダー・クロウ1匹。

 見慣れた混合パックだ。

 

 アッシュフィールドに来たばかりの頃、この組み合わせは「意図的な位置取り(ポジショニング)」を要求した。

 コアの4スキル(Core Four)を完成させた後、それはずっと簡単になった。

 今日、マットが見たかったのは、「同じ攻撃力(オフェンス)が、劇的に向上した防御力(ディフェンス)の上に乗った時、どう感じるか」だった。

 

 彼は近づいた。

 シンダー・クロウが先に彼に気づいた。

 火が形成される。

 マットは、今回ばかりは意図的にそれを食らうつもりはなかった。

 彼は動いた。

 火の玉が外れる。

 

 右からウサギが突撃してくる。

 マットは剣を振った。

 外した。

 2匹目が左から来る。

 その攻撃は——

 

 EVADED(回避)

 

 マットは接触すら感じなかった。

「便利だな」

 

 ブライアー・ハスクが前進してくる。

 マットは最初のウサギをターゲットにした。

 基本攻撃。

 灰。

 

 カラスはまだ頭上にいる。

 ブレード・プロジェクション。

 鳥が旋回し、投射物が外れた。

 

 マットは眉をひそめた。

「やっぱり自分で狙わないといけないか」

 よし。

 良い装備になったからといって、実行(エグゼキューション)のミスまで補正してくれるわけではない。

 

 残ったウサギが彼の脇腹にぶつかった。

 アーマーが物理ダメージを軽減する。

 彼のライフはほとんど動かなかった。

 

 ブライアー・ハスクが両手を土に叩きつけた。

 根が噴出する。

『不動の歩み』。

 マットはその引っ張りに抵抗した。

 ブーツが擦れる。

 耐えた。

 

 カラスが火を放つ。

 マットはそれを見た。

 跳躍(リープ)することもできた。

 代わりに、彼は単に横へステップした。

 火の玉が彼をかすめる。

 小さな属性の削り(チップ)ダメージ。

 自動回復が即座に始まる。

 

 ブライアー・ハスクが距離を詰める。

 マットは『不動の歩み』を解除した。

 ヘビーストライク。

 木が爆発する。

 ハスクが死んだ。

 

 カラスが急降下してくる。

『瞬動』。

 鳥の軌道がマットの知覚の中で鮮明になる。

 彼は待った。

 振る。

 灰。

 

 残ったウサギが逃げ出す。

 マットはそれを見た。

 リープ・スラム。

 彼はクリーチャーの前方に着地し、基本攻撃1回でそれを終わらせた。

 

 静寂が果樹園に戻ってきた。

 マットはライフを確認した。

 満タンではない。

 数回の自動回復(リジェネ・ティック)の後、満タンになった。

 

 彼は死んだモンスターたちを見た。

 この戦闘において、劇的(スペクタクル)なことは何もなかった。

 そこがポイントなのだ。

 

 マットは依然としてミスをした。

 ウサギに殴られた。

 火の玉をかすめた。

 ブライアー・ハスクに根っこのエフェクトを発動された。

 ブレード・プロジェクションを外した。

 

 しかし、その個々のミスのどれ一つとして、深刻な問題(プロブレム)には発展しなかった。

 

 彼の防御レイヤーは、「すべての不完全な瞬間を緊急事態(エマージェンシー)に変える」代わりに、「そのまま戦い続けるための余裕(ルーム)」を与えてくれたのだ。

 

 マットはゆっくりと頷いた。

「なるほど」

 

 今なら、バスティオンの主張が理解できる。

 防御力とは『一つの数字』ではない。

「一つのミスが致命的(カタストロフィック)になる前に、ビルド全体がどれだけの『失敗(フェイラー)』を許容できるか」ということなのだ。

 

 それこそが、装備が提供できる最も価値のあるものだろう。

「一つのミスを、人生最後のミスにしないための『余裕』」を与えてくれること。

 

 スマホが振動した。

 マットは顔をしかめた。

 すでに予想がついている。

 イーサンだ。

 写真。

 青い海。

 白い砂。

 今度は、イーサン本人がビーチパラソルの下に寝そべっている写真だ。

 

 **イーサン:**ダンジョンの生活ってツラいよなー。

 

 マットは顔を上げた。

 焼け焦げた果樹園。

 黒ずんだ柵。

 死んだブライアー・ハスク。

 シンダー・クロウの灰。

 乾いた草の間から顔を出しているアッシュ・ラビット。

 

 彼はトロピカルビーチの写真を見直した。

「……クソ喰らえ」

 

 2つ目のメッセージが現れた。

 

 **クロエ:**防具のテストはどうだった? 

 **マット:**残念ながら、上手くいったよ。

 クロエ:「残念ながら」? 

 **マット:**バスティオンの言ってたことが全部正しかったって認めることになるからな。

 **クロエ:**悲劇ね。

 **マット:**回避は機能する。

 **マット:**アーマーも機能する。

 **マット:**火耐性の効果はめちゃくちゃ明白だ。

 **マット:**ライフが増えたことで、毎秒の絶対的な回復量も上がった。

 

 少しの間。

 

 **クロエ:**その通り。

 **クロエ:**だからみんな、「防御ステータス」じゃなくて「防御レイヤー」って呼ぶのよ。

 

 マットは戦場を見渡した。

 まさにその通りだ。

 

 **マット:**あと、イーサンはブロックした。

 **イーサン:**グループチャットで俺だけブロックとかできないからな!! 

 **マット:**テスト中。

 **イーサン:**ビーチ最新情報!! 

 

 別の写真の読み込みが始まった。

 マットはそれが終わる前にスマホをロックした。

 

「この友情、マジで嫌い」

 彼は微笑んでいた。

 

 ◆

 マットはもう少しの間、アッシュフィールドに留まった。

 もうテストではない。

 ただの狩り(ファーミング)だ。

 

 彼のダメージが突然2倍になったわけではない。クリーブの挙動は同じ。ヘビーストライクの挙動も同じ。リープ・スラムは依然としてマナを消費する。ブレード・プロジェクションは、マットの狙いが悪ければ普通に外れる。

 

 しかし、彼は『より攻撃的(アグレッシブ)』にプレイした。

 無謀(レックレス)にではない。

 攻撃的に。

 

 防御力が上がったことで、「ダメージを受ける可能性」をいちいち「戦闘のリセット理由」として扱う必要がなくなり、より効率的な位置取りを選ぶ『自由』が生まれた。

 

 ウサギの流れ弾(ストレイ・ヒット)はもう大した問題ではない。

 かすめる程度の火の玉なら、それを避けることで「より良い攻撃角度(アングル)」を失うくらいなら、無視していい。

 

 不必要なダメージは依然として避ける。意図的に殴られるのはただのバカだからだ。

 しかし、「小さなミス」が彼のペースを支配することはなくなった。

 

 その結果が、よりスムーズな処理(クリアリング)だった。

 立ち止まる時間が減った。

 防御のためのリセットが減った。

 動いている時間が増えた。

 より多くのモンスター。

 より多くの戦利品。

 

 マットはため息をついた。

「結局、すべては『金』に変換されるわけか」

 

 別のアッシュ・ラビットが死んだ。

 魔石。

 マットは即座にそれを拾い上げた。

 カラスがそれを教えてくれたからだ。

 

 ゲートに戻る頃には、彼は一つのことを確信していた。

 彼の新しい防御セットアップは、Fランクに対しては『過剰(エクセシブ)』だ。

 クロエの言う通りだった。

 

 それでいい。

 マットは「過剰な安全性」が大好きだ。

 

 ◆

 C-87に戻ると、マットは新しいヘルメットを外し、テーブルの上に慎重に置いた。

 

 6つのレア・ピースは完成品ではない。

 テストする前よりも、今の方がその事実がはっきりと理解できた。

 

 手袋にはまだ攻撃速度が欲しい。

 ブーツには移動速度が欲しい。

 カオス耐性は恥ずかしいことにゼロのままだ。

 標準3属性は、長期的な目標である75%のベンチマークにはまだまだ余裕がある。

 

 いずれ、より高レベルのベースがこれらに取って代わるだろう。

 高いアイテムレベルが、より良いモディファイアの範囲(レンジ)を開放するだろう。

 Cランクを超えるクラフトスキルは、依然として『COPY』の現在の限界の先にある。

 

 彼の装備はいずれ交換される。

 おそらく、何度も。

 

 だからといって、今日の作業が無意味だったわけではない。

「今のところは」、これで機能する。

 

 マットはスプレッドシートを更新した。

 

【レベル8 防衛再構築 — ひとまず完了】

 

 **ヘルメット:**ライフ +30 / 火 +10%

 **胸当て:**ライフ +28 / 火 +9%

 **手袋:**ライフ +30 / 氷 +8% / 将来:攻撃速度

 **ブーツ:**暗黙ライフ +25 / ライフ +28 / 雷 +8% / 将来:移動速度

 **指輪 2:**ライフ +28 / 氷 +10%

 **ベルト:**ライフ +30 / 雷 +10%

 

 その下に、マットは「まだ重要であるもの」だけを追加した。

 

【将来の目標(ターゲット)】

 ・攻撃速度

 ・移動速度

 ・カオス耐性

 ・より高い属性耐性

 ・より良いベース

 ・武器クラフター — Bランク。まだ無理。

 

 リストはすでに長くなりつつある。

 マットは背もたれに寄りかかった。

 

 1週間前、装備について考えることといえば大半がこれだった。

「この剣は、前のやつより強いか?」

 

 今や彼は、ベースタイプ、アイテムレベル、要求ステータス、暗黙モディファイア、防御レイヤー、ライフ、4つの耐性ファミリー、スロット固有のアフィックス、通貨、ロール範囲、そしてクラフト・ユニークスキルについて考えている。

 

 しかも、彼はまだ『サポートソケット』を開けてすらいないのだ。

 

 マットは天井を見た。

「これ、スプレッドシートが複数必要になるな」

 

 スマホが振動した。

 マットは無視した。

 ブーッ。

 まだ無視。

 ブーッ。

 

 やがて好奇心が勝った。

 イーサンだ。

 当然だ。

 

 またビーチの写真。

 今回は、人工の夕暮れの下の海が写っていた。

 

 **イーサン:**ココナッツ見つけたぜ。

 **マット:**俺は木と戦ったぞ。

 **イーサン:**楽しそうだな。

 **マット:**燃えてた。

 **イーサン:**オハイオの日常。

 

 マットはチャットを閉じた。

 彼は自分のトレーラーの中を見回した。

 

 新しいレア装備。

 クラフト通貨。

 ノーマル・ベース。

 ノートPC。

 ロードマップ。

 

 彼は午前中、「なぜメイジがウォリアーより硬くなり得るのか」を学ぶのに費やした。

 それから、2つの盗んだ——

 マットは思考を止めた。

 

『コピーした』。

 2つのコピーしたクラフト特化能力を使って、自分を劇的に殺されにくくする6つの装備を作り上げた。

 

 それから、魔法の果樹園に行き、科学(データ収集)のために意図的にウサギに殴られた。

 

 そしてどういうわけか、これが彼にとっての「完全に正常な火曜日」になっていた。

 

 マットは微笑んだ。

「上出来だ」

 

 彼はコーヒーに手を伸ばした。

『完璧な温度』。

 依然として、まさに適温だ。

 

 外で、カラスが鳴いた。

 マットはゆっくりと窓の方を見た。

 普通のカラスだ。

 たぶん。

 

 それでも、彼は目を細めた。

「挑発するなよ」

 カラスがもう一度鳴いた。

 マットはもう一口飲んだ。

 

 スマホが最後にもう一度振動した。

 

 **イーサン:**ダンジョンの生活ってツラいよなー。

 

 またビーチの写真。

 

 マットはスマホから、テーブルの上に広がるレア装備へと視線を移した。

 それから、アッシュフィールド果樹園の遠くのゲートを見た。

 あの向こう側のどこかで、火を吹く鳥がまた魔石を盗もうと待ち構えているのだろう。

 

「……あの二人、マジでムカつく」

 彼は微笑み、スプレッドシートに戻った。




ここまで読んでいただきありがとうございます! もし「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら、ページ下部より【お気に入り登録】や【評価】、感想などをいただけると執筆の励みになります。 作者のモチベーション上昇に直結しますので、是非ともよろしくお願いします!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

TCG能力《創世札典》を手に入れた俺、一日一マナから現代社会を攻略する~治療、未来予知、若返り。マナが足りないので山を買います~(作者:パラレル・ゲーマー)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

都内のシステム関連企業で主任として働く、三十六歳の会社員・門倉啓介。▼仕事も収入も安定し、独身ゆえに貯金もそれなり。大きな不満はないものの、同じ毎日を繰り返しながら少しずつ疲れていく人生を送っていた。▼そんな休日の朝、啓介は突然、TCGのルールで現実を変える異能《創世札典/GENESIS DECK》を手に入れる。▼最初の土地カードは、彼が暮らす賃貸マンション…


総合評価:1583/評価:7.39/連載:54話/更新日時:2026年09月24日(木) 16:50 小説情報

未来の崩壊世界に転生したら、職業くじでハンターを引いたので旧文明を漁る(作者:パラレル・ゲーマー)(オリジナル:SF/冒険・バトル)

前世では二十一世紀日本の普通のサラリーマンだった相馬悠真。▼気がつけば、文明崩壊後の未来地球に転生していた。▼東京とニューヨークがゲートでつながり、世界中の空間と時間が壊れた世界。それでも悠真は、日本系コロニーの中で十五年間、案外平和に暮らしていた。▼だが十五歳になった年、職業くじで最悪の札を引く。▼《ハンター》。▼防壁の外へ出て、旧文明の廃墟から物資を回収…


総合評価:1623/評価:8.53/連載:15話/更新日時:2026年09月24日(木) 20:52 小説情報

冴えない中年平社員、見た技と異能をコピーして企業代理戦で成り上がる(作者:パラレル・ゲーマー)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

冴えない中年平社員・佐伯直人は、会社で面倒な仕事を押しつけられ、誰からも必要とされない日々を送っていた。▼そんなある夜、立ち寄ったコンビニで、異能を使う強盗事件に遭遇する。▼人質となった店員を助けようとした直人の前に現れたのは、目の前で見た異能や技能をコピーし、保存できる能力――《ライブラリ》。▼強盗が使った《身体能力強化》と《アイテムボックス》、さらに格闘…


総合評価:281/評価:6.46/連載:47話/更新日時:2026年08月14日(金) 22:16 小説情報

俺の異能が中華ゲーだった ~34歳無職、ガチャで引いたキャラに変身して働きます~(作者:パラレル・ゲーマー)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

 ブラック企業を辞めて十一ヶ月。実家で無職生活を送っていた34歳の森川直哉の前に、ある朝突然、ゲームのような画面が現れた。▼ その名も《因果集結クロニクル》。▼ キャラクターガチャ、武器ガチャ、レベル、スキル、限定バナーに天井――どう見ても現代の中華系キャラゲーそのもの。しかも無料十連で引いた★4キャラクター《東雲セナ》を選択すると、直哉自身が黒髪の美少女剣…


総合評価:4760/評価:8.09/連載:36話/更新日時:2026年09月24日(木) 15:05 小説情報

自宅に届いた『惑星開発キット』で、社畜SEは異世界工場の管理者になる ―United States Route―(作者:パラレル・ゲーマー)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

アメリカ西海岸で働く三十代半ばのシステムエンジニア、工藤創一。▼十数年前に日本から渡米し、それなりに充実した生活を送っていた彼のもとへ、ある夜、謎の銀色のキューブが届く。▼それは未知の惑星《テラ・ノヴァ》へ繋がるゲートと、採掘・製錬・発電・自動化・兵器開発を可能にする《惑星開発キット》だった。▼鉄、石炭、銅、石油――地球では国家を揺るがすほどの資源が眠る異星…


総合評価:4409/評価:8.82/連載:25話/更新日時:2026年09月16日(水) 16:38 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>