ダンジョン・ドリフター ~退職金でキャンピングカーを買ったら、放置していたスキルが『SSSランク:完全複製(コピー)』だった件。最強スキルを拾い集めて全米横断の旅に出る~   作:パラレル・ゲーマー

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第9話 どうやら、俺が「古参」になっちまったらしい

 1週間後、ケイブラット(洞窟ネズミ)はもはや『モンスター』ではなくなっていた。

 ただの『的(ターゲット)』だ。

 

 マットが初めてブラックホロウ鉱山に足を踏み入れた時、彼は一匹のネズミに対して、それが致命的な脅威であるかのように接していた。動きを観察し、突撃に備え、剣の空振りを恐れていた。

 

 今や、脇道から6匹のケイブラットが雪崩れ込んできても、マットはその光る赤い目や装甲のある背骨をほとんど見ない。

 

 彼が見るのは『敵と敵の間の隙間』だ。

 その移動の軌道。

 イーサンの盾。

 そして、自分の剣の射角。

 

 イーサンは「コール」を待つことなく前に踏み出し、盾の縁で石壁を一度だけ叩いた。3匹のネズミが即座に方向を変え、さらに2匹が続く。マットが左へ動き、クロエが反対側へ回り、パック(群れ)を二人の間に圧縮する。

 

 マットはあと0.5秒だけ待った。

 そして——

 クリーブ(なぎ払い)。

 

 赤い弧がトンネルを薙ぎ払う。

 4匹のネズミが消滅した。クロエが消えゆく灰を通り抜け、短い突きで5匹目を仕留める。イーサンは無造作に6匹目をブロックし、マットの射程内へと蹴り飛ばした。

 

 振り下ろしの一撃。

 終わり。

 

 誰も何も言わない。

 ただ歩き続ける。

 

 それが最も奇妙な部分だった。

 初日なら、今の戦闘はマットの全神経をすり減らしていただろう。

 今では、それは『会話』と呼ぶのすらためらわれるほどの日常になっていた。

 

 ブラックホロウも変わった。

 いや、変わったのはマットの方だ。

 

 ダンジョンはもはや、「意味不明なルールで構築された理解不能な地下世界」ではなくなっていた。よくあるトンネルのパターンを認識し、どのルートが探索に値するかを推測し、ストーンビートルが突撃してくる直前の挙動を読み、ゴブリンマイナーが追い詰められるとどう群れるかを理解し、そしてクリーブの実際の有効範囲がどれくらいなのかを完全に把握していた。

 

(マットの想像ではもっと広範囲を薙ぎ払ってほしかったが、現実は無情だった)。

 

 ダンジョンの外でも、キャンプ場の印象は同じように縮小していた。

 最初は「無秩序に広がる仮設の都市」のように見えた場所が、今では単なる「マットが住んでいる町」になっていた。

 

 G-214(自宅のサイト)。

 ラスト・フラスコ・ダイナー。

 ギア&ジェム(装備屋)。

 魔石換金所(エクスチェンジ)。

 スーパーマーケット、コインランドリー、そして2台のコーヒートラック(片方は味が良く、もう片方は安い)。

 

 ギア&ジェムの青いメッシュの店員でさえ、今ではマットを一目で認識するようになった。

 不可能だった非日常が、ここまで急速に日常に変わってしまうというのは奇妙な感覚だった。

 

 この1週間は、着実で規則正しい狩り(グラインド)の連続として飛ぶように過ぎていった。

 

 4日目は普通だった。新鮮(フレッシュ)なインスタンスも、ボスラッシュも、宝箱もなし。適度に人がいるインスタンスを選び、他の誰かがすでにオールド・フォアマンを倒しているのを確認した。

 

 マットは端末を見た。

『ボス討伐済』。

 そして、予期せぬ安堵感を覚えた。

 

「正直、これくらいの方がリラックスできるな」

 イーサンが彼をじっと見た。

「臆病者」

「彼の言う通りよ」とクロエが同意した。「毎日あのストレスを抱える必要はないわ」

 

 5日目は、まさに『平均的な一日』だった。地下で5時間過ごし、たくさんのモンスターを倒し、宝箱もボスもなし。一握りの魔石と、誰も欲しがらないマジック装備が2つ。

 

 必須の税金と3等分を終えた後、マットの取り分は約75ドル(約1万1,000円)になった。

 彼はスマホの画面を見た。

「これくらいの方が、長続きしそうだな」

 クロエが片眉を上げた。

「がっかりしてるみたいに聞こえるけど」

「財務的にホッとしてるんだよ」

「どういう意味?」

「もし毎日2,000ドル(約30万円)も稼いでたら、永遠にここに留まらなきゃいけないような義務感を感じちまうからな」

 

 マットはスマホをポケットにしまった。

「75ドルなら、まだ『これはロードトリップなんだ』って言い張れる」

 イーサンは笑った。

 

 6日目、見慣れた通知が来た。

 

【レベルアップ】

 マシュー・ヘイズがレベル6に到達しました。

 

 イーサンがちらりと見た。

「6か」

「みたいだな」

 マットは通知を消し、歩き続けた。

 

 7日目と8日目になる頃には、3人はもはや「たまたま同じ方向を向いて戦っている見知らぬ他人」ではなくなっていた。

 普通の群れを相手にする時、クロエが指示(コール)を出すことはほとんどなくなった。イーサンが釣り、マットがポジションに入り、クロエがすり抜けたものを処理する。誰かが左へスライドし、一歩下がり、あるいはイーサンが急停止するだけで、他の二人には何が起きているのかが理解できた。

 

 彼らはお互いを学習したのだ。

 

 そして9日目。それ以外は何の変哲もない午前中の探索の半ばで、再びチャイムが鳴った。

 

【レベルアップ】

 マシュー・ヘイズがレベル7に到達しました。

 

 マットはロングソードを下ろした。

「……7だ」

「だから言ったでしょ」とクロエ。

 彼女は、アカデミーがここを離れる前に彼がレベル7に到達すると予言していた。

 

「残念ながらな」とイーサン。

 マットは彼を見た。

「なんで『残念』なんだ?」

「あんたが追いついてきてるからだ」

「俺はこれを10日やってるんだぞ」

「だからだよ。ムカつくわー」

 

 マットは彼を無視した。

 ブラックホロウは依然として人が多く、彼は毎日のようにユニークスキルが発動されるのを目撃していた。その中には、現在の彼のCランク上限を超えているために『COPY』が拒否したものもたくさんあった。

 

 失敗(コピー拒否)に驚くことはなくなった。

 いまだに腹は立つが。

 

 大抵の場合、それらは「ブラックホロウの向こうには、まだまだ見るべきものがある」ということを彼に思い出させた。

 できれば、彼が実際にコピーできるランクのものがいいのだが。

 

 ◆

 10日目はゲートの前で始まった。

 マットはイーサンとクロエの間に立ち、目の前でスクロールするインスタンスのリストを見ていた。

 

 インスタンス218 — 21/64 — ボス討伐済

 

 マットはそれを見つめた。

「なんというか、あっけないな」

 クロエが彼を見た。

「何が?」

「最後の探索(ラン)が、さ」

 

 イーサンが盾を調整する。

「ドラマチックに俺が何かに殴られようか?」

「いや、いい」

「悲鳴くらいなら上げられるぞ」

「いいって」

「ケイブラットの群れに自己犠牲の特攻をしてもいい」

 クロエが彼を見た。

「是非そうして」

 イーサンは傷ついた顔をした。

 

 マットは笑った。

「普通の探索(ノーマルラン)で十分だ」

 

 今日はアトランティック・デルバー・アカデミーがブラックホロウに滞在する最後の日だ。午後にはアカデミーの車両がここを出発する予定になっている。

 

 今日が最後。

 彼らが一緒に走る、最後の探索(ラン)。

 しかしどうやら、ダンジョンにはこの記念日を祝う気はないらしかった。

 

 プレイヤーゼロのインスタンスもない。ボスの生存表示もない。ワクワクするような兆候は何一つない。

 ただ、他に21人の探索者がいて、フォアマンがすでに死んでいるというだけ。

 

 それでも彼らは中に入った。

 探索は約束通り、完全に『普通』のまま進んだ。

 

 最初の部屋には3匹のゴブリンマイナーがいた。イーサンが前に踏み出し、最初のツルハシの一撃を直接吸収するのではなく、盾で『逸らし』た。2匹目のゴブリンがクロエに向かって動いたが、『瞬動』が彼女を攻撃の軌道から滑らせ、そのままモンスターをマットの方向へと押しやった。

 

 マットは3匹目のゴブリンが自分の射角に入るまで待った。

 クリーブ。

 2匹が消滅。

 クロエが最後の1匹を仕留める。

 

 彼らは移動を続けた。

 10分後、ストーンビートルが脇道から突撃してきた。

 マットは警告システムより先にその動きを視認した。

「ビートル」

 イーサンがシフトし、盾でクリーチャーを受け止め、意図的に後退してスペースを作った。マットが回り込み、クロエが後部の関節を叩く。

 

 マットは基本攻撃でそれに続いた。

 無駄なクリーブはなし。

 無駄なマナ消費もなし。

 30秒。

 終わり。

 

 さらに奥で、彼らは混合パックに遭遇した。ケイブラット5匹、ゴブリンマイナー2匹、ストーンビートル1匹。

 1週間前なら、マットはこれを『大乱戦』だとみなしていただろう。

 

 今、彼はイーサンを見た。

 イーサンがパックを見た。

 言葉はいらない。

 

 彼が突撃する。

 マットの予想通り、ビートルが最初に反応した。イーサンがそれを捕まえ、ゴブリンたちが一点に収束し、ネズミたちが両脇から回り込もうとする。

 

 マットはイーサンが作った開口部に滑り込んだ。

 ターゲットは3匹。

 足りない。

 彼は待った。

 ネズミが1匹射角に入る。

 4匹。

 あと0.5秒。

 5匹。

 

 クリーブ。

 弧が中心を切り裂いた。スキルが完了する前からクロエはすでに動いており、生き残った2匹を素早い突きで掃除し、その間にイーサンが負傷したビートルをマットのラインへと押し込んだ。

 

 2発目のクリーブ。

 静寂。

 

 マットは灰を見て、それから自分のブーツに向かって転がってくる魔石を見た。

 彼はそれを拾い上げた。

 イーサンが振り返る。

「あんた、初日にああいう石を置いていく時に泣きそうになってたの覚えてるか?」

「泣きそうになんかなってない」

「絶対なってたね」

「あれは戦利品だ」

「5ドル(約750円)の戦利品な」

「お金はお金だ」

 

 クロエが消えゆくゴブリンの残骸を跨いだ。

「2万ドルのツルハシをもう一回拾う最後のチャンスよ」

 マットは魔石を共有の戦利品バッグに入れた。

「俺、あのツルハシの件は『普通じゃない』って思い始めてるんだが」

 クロエはじっと彼を見た。

「それに気づくのに1週間もかかったの?」

「データセットが小さい時に結論を急ぐのは危険だからな」

 イーサンは首を振った。

「あのスプレッドシート・アカウントにあんたの脳みそは完全に破壊されたな」

「改善されたんだよ」

 

 彼らは進み続けた。

 宝箱は現れなかった。ユニークアイテムも落ちなかった。ボスは死んだままだし、隠し通路を見つけることもなければ、土壇場の悲劇に見舞われることもなかった。

 

 彼らの最後のブラックホロウ探索は、おそらく世の中の『プロフェッショナルの仕事の終わり方』とまったく同じように終わった。

 

「これくらいで十分だろう」と決断したのだ。

 

 彼らはポータル・スクロールを割った。

 そして、家に帰った。

 

 ◆

 魔石換金所の店員は、3人が一緒にやってきても驚いた顔一つしなかった。

 またこいつらか。

 

 彼らの戦利品はカウンターに置かれ、計量され、グレード分けされ、課税され、そしてマットが数え切れないほど見てきたのと同じ効率で3分割された。

 

 初日にあんなに奇妙でエキゾチックに感じられたプロセスは、今や「スーパーのレジで会計をする」のと同じくらい日常的な作業になっていた。

 

 彼の取り分は、およそ120ドル(約1万8,000円)だった。

 マットはその数字を確認した。

 

「なんだか、ぐっと『仕事』っぽく感じられるようになったな」

 イーサンが覗き込む。

「悪いか?」

 マットはそれを考慮した。

「悪くない」

 

 それは彼自身を少し驚かせた。

 6,000ドルの臨時収入も、興奮するドロップも、ボス戦の武勇伝もなかった。ただ地下に行き、数時間効率的に働き、少しのお金を稼いだ——そして、マットはそれを心から楽しんでいたのだ。

 

 換金所から歩き出しながら、彼はゲートの方を振り返った。

 1週間前、彼は「どうすれば恥をかかずに剣を持てるか」を必死に考えていた。

 今日、彼は午前中のほとんどを「パックの密度」「位置取り」「そのターゲットはマナを消費する価値があるか」について考えて過ごした。

 

 これが、実際に『レベルアップする』ということの感覚なのだ。

 ステータスの数字は重要だ。

 しかし、その数字の間に彼が学んだすべてのことも、同じくらい重要なのだ。

 

 ◆

 その午後、キャンプ場のアトランティック・デルバー・アカデミーの区画は、「組織化されたカオス」と化していた。

 

 生徒たちがバッグを運び、インストラクターがリストを確認している。装備ケースがトラックに吸い込まれ、バスが道路脇でアイドリングし、誰かが「すでにおそらくバスに積み込まれているであろう行方不明のブーツ」を大声で探している。

 

 マットはイーサンとクロエの横に立ち、生徒のグループが武器ラックを機材トラックの後部に押し込もうと悪戦苦闘しているのを眺めていた。

 

 彼らは失敗した。

 一旦下げて。

 回転させて。

 別の形で失敗した。

 

 マットは純粋な興味をもってそれを見ていた。

「お前ら、これを数週間おきに本当に全部動かしてるのか?」

「大体はね」とクロエ。

 イーサンは顔をしかめた。

「誰かが忘れ物をした時は最悪だぜ」

「例えば?」

「先月、ホテルの部屋に胸当てを忘れたバカがいた」

 マットは彼を見た。

「どうなったんだ?」

「アカデミーの貸出用防具(ローナー)を着せられた」

 

 クロエの表情が微妙に変化した。

 マットはそれに気づいた。

「なんだ?」

「蛍光オレンジよ」

 イーサンが身震いした。

「全身、真っオレンジだ」

 マットは見つめた。

「なんでまた?」

「防具を忘れたという事実を、全員に知らしめるためだ」

「残酷だな」

「完全にね」

 

 クロエは同意しなかった。

「効果的よ。あれ以来、彼のグループで防具を忘れた人間は一人もいないもの」

 マットは頷いた。

「優秀な教育だ」

 

 通りすがりのアカデミー生がマットに気づき、手を挙げた。

「じゃあな、マット」

「じゃあな」

 ダッフルバッグを持った別の生徒も彼を指差した。

「ロードトリップ、頑張れよ」

「ありがとな」

 

 マットは彼らが去っていくのを見送った。

 あまり意識していなかったが、1週間の間、同じ生徒たち、端末、キャンプの顔ぶれを見てきたことで、彼はもはや完全に「部外者」ではなくなっていたのだ。

 アカデミーの一員ではない。

 だが、顔見知り(ファミリア)ではあった。

 

「次はペンシルベニアか」とマットが言った。

 イーサンが頷く。

「ああ」

「その次は?」

「また別のFランクよ」とクロエ。

 マットは待った。

「で、その次は?」

「また別のFランク」

 

 彼は眉をひそめた。

「いつまでそれを続けるんだ?」

「あと2ヶ月くらいだな」とイーサン。

「2ヶ月?」

 マットは彼をまじまじと見た。

「俺は10日でレベル7になったぞ」

「これは『学校』なのよ」とクロエ。「目的はパワーレベリングじゃない。もしレベルだけが欲しいなら、効率のいいダンジョンを一つ見つけてそこにこもるわ」

「じゃあ、目的は何なんだ?」

「経験(エクスポージャー)よ」

 

 彼女はブラックホロウの方へ手を向けた。

「無知の代償が高くつくようになる前に、意図的に違う種類のダンジョン——違う環境、違うモンスター、違うボスのギミック、違うパーティーのトラブル——を体験させているのよ」

 イーサンが頷いた。

「そして、違う種類の『マズい飯』もな」

「それはカリキュラムに入ってないわ」

「入れるべきだね」

 

 マットは理解した。

 アカデミーは『最速でレベル10に到達するエリート』を作りたいわけではないのだ。

 失敗の代償がまだ「やり直せる」うち(Fランク)に、ダンジョンの基本的な教訓を確実に叩き込むことが目的なのだ。

 

「あんたは、俺たちより先にFランクを卒業するだろうな」イーサンが言った。

 マットは彼を見た。

「そうか?」

「たぶんね」とクロエも同意した。「あなたは独立してるもの。自分が準備できたと思えば、学校のカリキュラムを待たずにEランクに挑戦できるわ」

 

 マットはそこまで先のことまでは考えていなかった。

 彼はまだレベル7だし、上のランクに上がることを検討する前に、見ておきたいFランクダンジョンがいくつかあった。

 

 イーサンがニヤリとした。

「何が一番ムカつくかわかるか?」

 マットはため息をついた。

「何だよ」

「次に俺たちがあんたに会った時、あんたは『ベテラン』になってる可能性が高いってことだ」

 

 マットは笑った。

「俺、探索者歴10日だぞ」

「で、俺たちはこれからさらに2ヶ月、Fランクのカリキュラムをやらされるんだ」

「それが?」

「だから、もし半年後に会ったら、あんたが俺たちに色々教える立場になってるってことだ」

 

 マットはじっと彼を見た。

「……それは非常に憂鬱な話だな」

「たぶんそうなるわね」とクロエ。

「頼むから俺を誰かの責任者にしないでくれ。自分のやってることすらまだよくわかってないんだから」

 イーサンは敬礼した。

「遅すぎますよ、ヘイズ先輩」

「絶対にやめろ」

 

 出撃エリアに鋭いホイッスルの音が響いた。

 インストラクターがバスの方へ手を振っている。

 生徒たちの動きが速くなった。

 

 マットはイーサンを見て、それからクロエを見た。

「さて」

 イーサンは真面目な顔を作った。

「さて」

 クロエは即座にため息をついた。

「お願いだからやめて」

 マットは片眉を上げた。

「何を?」

「これを『卒業式のスピーチ』に変えるのはやめて」

「そんなつもりはなかったぞ」

「俺はあった」とイーサン。

「だろうね」

 

 イーサンは大げさに胸に手を当てた。

「マシュー・ヘイズ」

「やめろ」

「我々が共に旅をしたこの短い1週間の間に——」

「早くバンに乗りなさい」

 クロエが物理的に彼を待機している車両の方へ押しやった。

 

 マットは笑った。

 イーサンはスピーチを放棄し、拳を差し出した。

 マットがそれに拳を合わせる(フィストバンプ)。

 

 クロエが振り返り、手を差し出した。

 マットはそれを握った。

「ありがとな」

 その言葉は、それまでの会話よりもずっと真剣な響きを持っていた。

 二人の学生もそれに気づいた。

 

「マジで」とマットは続けた。「お前ら二人がいなかったら、俺の学習スピードはもっとずっと遅かったと思うよ」

 クロエは肩をすくめた。

「一人でもどうにかしたでしょ」

「『はるかに大金を無駄にした後で』な」とイーサンが付け加えた。

 マットは頷いた。

「間違いなくそうなるな」

 それについては反論の余地がない。

 

「グループチャットは消さないでね」とクロエ。

「当然だ」

 イーサンがバスに向かって後ずさりし始めた。

「いいドロップがあったらスクショ送れよ」

「高いやつだけな」

「特に高いやつを頼む!」

 

 マットはクロエを見た。

「じゃあ、これで本当にお別れだな」

 彼女は首を振った。

「そうでもないわ」

「違うのか?」

「ランクが上がってあちこち動き回るようになればなるほど、探索者のコミュニティは狭くなっていくから」

 

 マットは車両の列の方を見た。

「アメリカは結構デカいぞ」

 イーサンがバスのステップに到達した。

 彼は振り返った。

「ダンジョンが世界を狭くするのさ」

 マットは動きを止めた。

「今のは、少しだけ知的な響きがあったな」

「ありがとよ!」

「『少しだけ』って言ったんだぞ」

「褒め言葉として受け取っとくぜ!」

 

 クロエがバスの方へ歩き出した。

「またどこかで、マット」

「ああ、またな」

 イーサンが手を振り、車内へと消えた。

 

 10分後、アカデミーのキャラバンが出発し始めた。バス、機材トラック、インストラクターの車両が長い列を作り、幹線道路へと向かっていく。

 

 マットは出撃エリアの端に立ち、最後の一台がキャンプから見えなくなるまでそれを見送った。

 

 ブラックホロウが静寂に包まれることはなかった。

 依然として大混雑だ。探索者たちが通り過ぎ、近くでトラックがバックし、誰かが装備の値段で言い争い、フード屋台の店員が注文番号を叫んでいる。そしてゲートは人々を飲み込み、また別の者を吐き出し続けている。

 

 何も変わっていない。

 ただ、マットがこの1週間、ほぼ毎日一緒に過ごした二人がいなくなったというだけだ。

 

 彼はスマホを取り出した。

 

【ブラックホロウ・グループ】

 **状態:**アクティブ

 

 ドラマチックなお別れのメッセージはない。

 別れの挨拶もない。

 イーサンはすでに、バスの中から撮ったブレブレの写真を投稿していた。

 背景には、心底迷惑そうな顔をしたクロエが写り込んでいる。

 

 マットは微笑み、スマホをしまった。

 

「……さて」

 彼は自分の隣の空いたスペースを見た。

「またソロだな」

 

 ◆

 トレーラーの中は、目に見えて静かだった。

 それがマットを苛立たせた。

 

 イーサンやクロエに会う前と『まったく同じ静けさ』のはずなのに。

 おそらく、前よりも静かに感じるのは、彼の中に『比較対象』ができてしまったからだろう。

 

 彼は装備をベッドの脇に放り出し、小さなデスクに座り、スマホを確認した。

 

『夕飯どうする?』はない。

『あと10分でゲート前ね』もない。

 

 誰かが到着する時間について、イーサンとクロエが言い争うメッセージもない。

 

 マットはグループチャットをもう数秒見つめ、それからスマホを裏返して置いた。

「よし」

 彼はトレーラーの中を見回した。

「俺は『旅』をする予定だったはずだ」

 

 それが本来の目的だ。

 ブラックホロウは最初の停留所に過ぎない。

 終点ではないのだ。

 

 マットは水のボトルを開け、『完璧な温度』で生ぬるさを冷たく修正し、飲んだ。

 それから、ノートPCを開いた。

 

 全米ダンジョン検索データベースがロードされる。

 一つのタブでは、まだブラックホロウ鉱山が開かれたままだった。

 

 ブラックホロウ鉱山

 **ランク:**F

 **推奨レベル:**1–10

 

 マットは現在レベル7だ。

 ここに残ることはできる。残ることに何の間違いもない。彼はこのダンジョンを知り尽くし、キャンプを知り、どこで買い物をするかを知り、平均的な一日がどんなものかを完全に把握している。ブラックホロウは依然として適度に安全で、十分な利益が出る。レベル10になるまでここに留まるのは簡単だ。

 もしかしたら、それ以上も。

 それは『効率的』だろう。

 

 マットはそのページを見た。

 そして、タブを閉じた。

「俺がトラックを買ったのには理由があるんだ」

 

 彼は全米マップを開き、「Fランク」「キャンプ場あり」「トレーラーフックアップあり」「初心者歓迎」でフィルターをかけた。

 周辺の州にマーカーが無数に現れた。

 何十個も。

 

 マットはズームインし、タブを次々と開き始めた。

 

【エンバーグラス採石場】

 ランク:F

 テーマ:火 / 岩石

 

 マットは首にかかっている『純粋なる元素』をちらりと見た。

 ブラックホロウでは、初心者セットの「属性耐性」の部分はほぼ無意味だった。

 だがエンバーグラスでは違うはずだ。

 

【フロストパインの巣穴】

 ランク:F

 テーマ:氷 / 獣

 

 地形もモンスターも違う。それに、初心者セットが属性ダメージに対してどれほど有効かを試すには絶好の機会だ。

 

【レッドクリーク遺跡】

 ランク:F

 テーマ:アンデッド / 遺跡

 

 マットはその項目で手を止めた。

 アンデッド。いかにもダンジョンらしい響きだ。

 ネズミよりもずっとドラマチックだろう。

 匂いはキツそうだが。

 それはまだわからない。

 

【ホロウ・レイク(虚ろな湖)】

 ランク:F

 テーマ:水 / 獣

 

 マットは背もたれに寄りかかり、ずらりと並んだタブの列を見た。

「よし。選択肢は山ほどある」

 

 1週間前なら、レビューが一番良いダンジョンを適当に選んで、そこへ車を走らせていただろう。

 しかし今の彼には、その前に解決しなければならないもう一つの問題がある。

 

 彼の『パッシブポイント』は、計画通り手付かずのままだ。

 

 問題は、1週間に及ぶ読書と実戦を経てもなお、彼がブックマークした3つの初心者向けの方向性「すべて」を気に入っていることだった。

 

『剣 / 範囲処理』は、今のセットアップに最も近い。ロングソード、クリーブ、位置取り、高速処理。

『剣+盾 / ソロ安定型』は、イーサンが数百マイル彼方へ去ってしまった今、格段に魅力的に見え始めていた。

『重物理特化』は極めてシンプルだ。

 デカい武器。

 デカい一撃。

 

 マットは3つのガイドを見つめた。

「両方欲しい」

 彼は間を置いた。

「いや、全部(3つとも)欲しい」

 

「それはビルドとは呼ばない」と彼に言ってくれる人間は、今はもういない。

 

 スマホが振動した。

 マットは視線を落とした。

 

 **イーサン:**それはビルドとは呼ばないぞ

 

 マットは凍りついた。

 画面を凝視し、それからゆっくりとタイプした。

 

 **マット:**なんでわかったんだ

 

 返信はほぼ即座に来た。

 

 **イーサン:**何が? 

 **クロエ:**彼は何もわかってないわよ。ただウザいだけ。

 

 マットは、持っていた水のボトルを置かなければならないほど爆笑した。

「だよな」

 

 彼はノートPCの画面に視線を戻した。

 通常のウォリアーには、一度にすべての方向性でビルドを構築する余裕はない。

 

 だがマットには『COPY』がある。

 それが事情を変える——だが、無限に変わるわけではない。まだその時ではない。

 彼のアクティブスロットには依然として上限があり、アーカイブはまだ不完全で、そして「このスキルが最終的に自分をどう化けさせるのか」を知るには、あまりにも経験が少なすぎた。

 

 一つの思考が戻ってくる。

 おそらく、彼に必要なのは『すべてを可能にするビルド』ではない。

『他のすべてを機能させるためのビルド』なのだ。

 

『COPY』がいずれもたらすであろう可能性を完全に理解する前に、自分を一つの狭い正解に縛り付けない、安定したテスト済みの『土台(ファウンデーション)』。

 

 それは、たった10日の経験で「俺の考えた最強のオリジナルビルド」を発明するよりも、はるかに理にかなっているように思えた。

 

「まずは、証明されたベース(土台)だ」

 マットは手付かずのパッシブポイントを見た。

 そして、ビルドガイドを見た。

「チート(反則)はその後だ」

 

 彼はダンジョン検索のタブをすべて閉じた。

 永久にではない。

 旅に出るのは、もう一晩待てる。

 土台作りは、おそらく待つべきではない。

 

 マットはクロエが送ってくれたリンクを開いた。

『@RookDelves(ルーク・デルブス)』

 退屈なベテラン。

 

 最初に出てきた結果は、まさにマットが必要としていたものだった。

 

【レベル5~15のソロ・ウォリアー】

『確実に機能する退屈なビルド』

 

 マットは微笑んだ。

「完璧だ」

 

 彼は再生ボタンをクリックした。

 画面にルークが現れた。傷のある顔に白髪交じりの顎髭をたくわえ、「決して聞かれるべきではなかった質問」に何年間も答え続けてきた男の表情をしていた。

 

 彼は真っ直ぐにカメラを見た。

「もしお前が、『自分はネット上のどの初心者ガイドよりも賢い』とついに確信したからこの動画を見ているのなら、今すぐブラウザを閉じろ」

 

 マットは背もたれに寄りかかった。

「やっぱりこの人、好きだわ」

 

 ルークの解説が続く。

 マットは、視界の端に浮かぶ手付かずのパッシブポイントをちらりと見た。

 

 ブラックホロウは、彼に「戦い方」を教えてくれた。

 イーサンとクロエは、彼に「バカにならない方法」を教えてくれた。

 

 ここから先は、彼自身が「自分がどういう探索者になりたいのか」を決断しなければならない。

 

 マットはボリュームを上げた。

「よし」

 彼はノートに手を伸ばした。

「『貧困』を発明しないように頑張ってみるか」




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