STAR WARS: STAR DESTROYER 作:あーくわいてんず
人類は、コルサントから発祥した。
海と陸とが分かれ、山々が地平線を作っていた頃、人々は川のそばに集落を築いた。耕した土地の周囲に道を通し、余った食物を運び、川を渡る場所に市場を開いた。集落は都市へ育ち、都市を結ぶ道に沿って国境が引かれた。王が立ち、議会が開かれ、いくつもの言葉で同じ星の地図が描かれた。
人々は森を切り、鉱山を掘り、海岸を埋め立てた。畑を増やすために川を曲げ、工場を動かすために川を堰き止めた。都市の外側には、働きに通う者の家が並んだ。その家並みの先にまた工場が建ち、耕地はさらに遠くへ移った。
後に絶滅期と呼ばれる時代は、長い飢えと、汚れた雨の記録を残している。
同じ土地で続けて作物が採れなくなり、海から戻る船の積荷が減った。収穫の悪い地域へ送っていた備蓄が尽きると、食物を輸出していた国も港を閉じた。国境へ兵が集まり、川の上流を巡って戦争が起きた。勝った国では人口が増え、その人口を養うために、次の土地が必要になった。
やがて、どの政府も都市へ水と食物を送り続けることに力を費やすようになった。呼吸器を着けて登校する子供が増え、病院には濾過装置のある待合室が設けられた。窓の外を通る雨水は、飲めるようにするまで何度も処理しなければならなかった。
各国は、都市そのものを覆い始めた。
初めは病院と食料生産施設だった。清浄な空気を保つ外壁を建て、人工の光で植物を育て、使った水を集めて戻す。その中へ住宅を併設した施設は、避難所から恒久的な居住区になった。生まれた子供が成人するまで、外へ出る用事を持たずに暮らせるようになった。
覆われた街が満ちると、屋根の上に柱が立った。
古い街路を跨ぐ支持構造が組まれ、給水管と送電線が上へ延びた。足場の間を資材が行き来し、広場の真上に次の広場ができた。工事の終わった区画へ家族が移ると、その下では、作業員が天井に灯りを取り付けた。昨日まで陽の当たっていた通りで、時計に合わせて朝の照明が点くようになった。
階層都市は、いくつもの国で育った。
王国には王国の、共和国には共和国の建設計画があった。古い首都の周囲を高くする国もあれば、工業地帯を一つの巨大な構造物へまとめる国もあった。壁の厚さ、階層の高さ、昇降機の大きさはそれぞれ違っていた。国境を越えて資材を運ぶ時には、荷物を積み替えなければならない場所もあった。
その都市と都市の間に、ハイウェイが架けられた。
車列は汚染された地表を離れ、支柱に載った道路を走った。都市の出口から、隣の都市の同じ高さにある入口まで、途中で地面へ降りずに荷物を届けられた。道路の両端に税関ができ、中央には車両の整備場と宿泊所が置かれた。運転手が食事を取る店の隣に、そこで働く者の家が建った。
家族が増えると、学校が必要になった。学校へ通う道を作るために、道路の脇へ床が張り出した。店の裏に診療所ができ、その向こうに新しい住宅が並ぶ。都市の中心より家賃が安く、勤め先まではハイウェイで通えた。かつて耕地や荒野の上を渡っていた道は、両側を街に挟まれるようになった。
郊外が、その階層に生まれていた。
窓辺の庭には外から運ばれた土が入り、人工の日照に合わせて花が開いた。子供たちは下の世界へ続く保守口を柵越しに覗き、大人に引き戻された。支持柱の根元には、さらに古い道路が通っていた。その道路の標識には、上の街で使われなくなった地名が残っていた。
隣り合う郊外が接すると、都市の境は地図の上に残った。家々の間を国境が通り、出勤する者が毎朝同じ検問を抜けた。上層では条約によって道路が繋がり、下層では、前の戦争で閉じられた通路が塞がれたままだった。
人々はその上に、また街を作った。
*
宇宙へ向かった船が、最初に持ち帰ったのは資源だった。
母星の鉱山では採掘坑が深くなり、必要な金属を得るために捨てる岩の量が増えていた。空気と水を保つ設備にも、都市を支える柱にも、大量の材料が要った。各国は軌道に造船所を置き、近くの天体へ採掘隊を送った。
氷を積んだ船が戻った。精錬前の鉱石を曳く船が続いた。軌道で加工された梁は地表へ降ろされ、その梁の上に次の街区が載った。新しい階層の住所が発行される頃には、別の船がその上に積む分を運んできていた。
採掘地は遠くなった。小さな岩塊には自動機械が取り付き、大きな天体には基地と精錬所が造られた。氷の眠る地下へ坑道が延び、ガスの豊富な惑星には採集施設が浮かんだ。恒星の光を受ける設備が宇宙空間に並び、巨大な工場が昼夜を持たずに稼働した。
星系中の富が、コルサントへ集められた。
採掘船の所有者も、融資する銀行も、産出物を買い取る市場も母星にあった。遠い基地で働く者は、賃金を家族へ送り、任期を終えるとコルサントへ戻った。基地で育った子供の多くも、進学や就職のために母星へ向かった。帰還船には金属と氷と、人が載っていた。
都市の中では、食料を作る区画が幾つもの階層を占めるようになった。水は使う場所ごとに分けて処理され、大気は巨大な設備を通って循環した。工場と住宅の熱を運ぶ配管が街の骨組みに沿って走り、集められた熱は地上と軌道の放熱設備へ送られた。設備を動かす工場を造り、その工場の作業員を住まわせるために、住宅が増えた。
絶滅期に失われかけた人口は回復し、かつての最大値を越えて増え続けた。
数個の大国が、惑星を分け合っていた。その境界は何度も動き、同じ支持柱の上で国旗が替わった。征服された都市でも、給水と換気の設備を止めることはできなかった。新しい政府は古い政府の技師を呼び、維持費を払い、上層の建設を続けた。
山頂が都市の間へ沈み、海岸線は図面から探さなければ分からなくなった。住んでいる街の下に幾つの街があるのか、正確に答えられる者は減っていった。廃止された階層を数に入れるかどうかで、都市ごとに記録も違った。
五千兆を優に超える人間が、その星に暮らしていた。
全盛期のコルサントには、宇宙から見た時の「夜」がなかった。恒星の光が退いた側でも、都市の灯りが地表を埋め、雲を下から照らしていた。ハイウェイの光は都市から都市へ途切れずに続き、その間にも無数の窓が輝いていた。資源を積んで戻る船からは、母星が自ら光を放っているように見えた。
どこかの階層で夜勤が終わる頃、別の階層では学校の灯りが点いた。海の上に張られた都市床のさらに遥か上で、子供が海という言葉を習った。生きた木々の間を歩くために、何年も金を貯める家族がいた。屋外へ出た日のことを、祖父母が繰り返し話す家もあった。
その暮らしを支えるため、星系の地図は採掘と輸送の線で埋まっていた。資源として利用できるもののほとんどが開発され、都市と、それを維持する設備へ組み込まれていた。母星の街路を支える梁にも、台所の蛇口から流れる水にも、遠い天体から運ばれたものが混じっていた。
利用しやすい鉱床の多くは掘り尽くされていた。採掘隊は深い地層へ入り、輸送船は遠い軌道へ向かった。いくつもの小天体が解体され、建設資材となって母星へ降りた。氷を採り終えた場所には空洞が残り、閉鎖された基地の機械は次の採掘地へ運ばれた。
新しい開発計画が出るたびに、得られる資源と、それを持ち帰るために使う資源とが並べられた。かつて容易に届いた場所からは、もう十分な量が採れなかった。都市の上には新しい住宅が完成し、入居を待つ家族が列を作っていた。
遠い星へ届く船の研究は、それ以前から続いていた。
望遠鏡の向こうには、まだ採掘権の設定されていない星があった。大気を持つ惑星も、水があると考えられる惑星も見つかっていた。しかし、往復に掛かる時間を計算すると、資源を待っている者の寿命が先に尽きた。乗員の孫が帰ってくる計画では、いま建設している街への供給を賄えなかった。
各国の研究施設は、推進装置と空間そのものの研究に金を投じた。軌道の試験場には立入制限が設けられ、失われた実験機のために、次の機体が造られた。
その中の一機が、観測装置の前から消えた。
予定された時間に戻ってきた機体には、星系の外で観測した星の配置が記録されていた。誤作動を疑った技師たちは装置を分解し、同じ飛行を別の機体で繰り返した。帰還した機体は、再び同じ空を記録していた。
人類は、ハイパースペースへ通じる道を発見した。
最初の航路には、探査機が何度も送られた。失われた機体の位置が地図へ書き込まれ、生還した機体の航跡が次の発進に使われた。やがて人を乗せた船が戻り、その後を測量船と採掘船が追った。新しい星系の資源量が、母星の取引所に掲示された。
造船所には注文が積み上がった。各国は探査隊を送り、企業は旗を立てる場所を競った。コルサントの宇宙港では、外から来る貨物のために使っていた区画が、出ていく船の積込み場所へ変わり始めた。
建設機械。発電装置。種子。家畜。食料と、次の食料を作るための設備。
そして、家財を詰めた箱が運び込まれた。
*
初期の移住者が持ち帰った映像には、低い家と、その横に続く畑が映っていた。
屋根の上には空があった。雲が動き、その影が畑を横切っていた。撮影した者が夜まで待つと、家の窓に灯りが点き、窓の上には星が現れた。遠くの山並みを遮る構造物はなく、地平線まで歩いていくための許可も要らなかった。
映像が階層都市を巡ると、移民船の乗船を申し込む者が増えた。
海辺で暮らしたい者。土地を買いたい者。母国の政府から離れたい者。工場を持ちたい者。何をするかは、着いてから決めるつもりの者。人々は家を売り、仕事を辞め、あるいは何も持たずに港へ来た。
彼らが出ていった部屋には、初めのうち、下の階層から別の家族が移った。やがて、その家族も船に乗った。学校が合併され、使われなくなった住宅区画の換気が止まり、通勤車両は停車する駅を減らしていった。
幾世代もの間、上へ延び続けていた街の建設が止まった。
工事途中の支持柱が空へ突き出したまま残った。郊外のハイウェイから車列が消え、中央の整備場が閉じた。照明の交換に来る者がいなくなると、長い道路は区画ごとに暗くなった。
移住先から戻る船には、新しい土地で育った子供が乗っていた。母星へ初めて来た子供たちは、天井のある街路で上を見続けた。その子供たちも、やがて自分の星へ帰っていった。
人類の住む世界は、銀河へ広がっていった。
進出した先には、すでに別の文明があった。
探査船の呼出しに、未知の言葉で返事が届いた。上陸に適した場所を探していた測量艇へ、地上から進路を変えるよう信号が送られた。人間の航法図で空白だった星系には、そこに住む者たちの名が付いていた。彼らにも国家があり、商人が行き来する航路があり、近づけば撃たれる国境があった。
デュロスをはじめ、自ら船を造って星々を渡る種族との往来が増えた。人類の船より広い範囲を往復する船も、母星へ帰る道を失って旅を続けている船もあった。幾つもの星系を治める国がある一方で、その支配を逃れて新しい居住地を探す者もいた。
交易の始まった港では、通訳が商人と同じくらい忙しく働いた。人間には食べられない収穫物が高値で売れ、ありふれた鉱物が別の世界では貴重品になった。船の整備場に異なる形の工具が並び、宿には空気の成分を変えられる部屋が設けられた。航法士たちが互いの星図を持ち寄ると、どちらか一方の図だけでは辿れなかった道が繋がった。
交渉が戦争に変わる場所もあった。
人類の採掘隊が杭を打った土地には、すでに別の種族の権利があった。無人に見えた惑星が、遠い国の保護領であることもあった。撤去を命じられた施設を守るために兵が送られ、兵を引き揚げさせるために港が封鎖された。武装した輸送船の後から軍艦が来ると、採掘地の争いは幾つもの星系へ広がった。
侵攻を受けた人類の植民地から、家族を載せた船が逃げ出した。人類の軍隊が征服した世界からも、その土地で生まれた者たちが追われた。降伏した都市には新しい旗が掲げられ、住民を載せた船が、本人たちの知らない行き先へ運ばれていった。破壊された港では、双方の言葉を刻んだ通商条約の碑が倒れていた。
戦争の中で結ばれる同盟もあった。人間の輸送船を異種族の軍艦が守り、別の人間国家の艦隊と戦った。異なる種族の部隊が同じ基地で補給を受け、故郷の違う兵士たちが共通の識別標識を付けた。救援を求めた相手が、次の世代には最も重要な交易相手になっていることもあった。
港が開かれ、閉じられ、条約が結ばれ、破られた。使節を交換した国が滅び、その領土を継いだ政府へ、商人たちがもう一度契約を持っていった。母星へ届く報告には、新しい鉱床の発見とともに、交易相手の名、同盟国の名、敵国の名が並ぶようになった。
拡大の中で、コルサントの国々も姿を変えた。植民地が独立し、王位が倒れ、かつての属領の方が母国より豊かになった。遠い星系で決まった取引が、母星の工場を閉じさせるようになった。
その時代に、一つの王国が滅んだ。
生き残った王子は、従う者たちと船に乗った。彼らは確かめられた航路を離れ、その先で幾度も進路を探し直した。帰還するための目印を残しながら、さらに遠くへ進んだ。
辿り着いた惑星には、呼吸できる空気と、水があった。
降下した人々は船の近くに住まいを作り、機械を降ろして土地を拓いた。王子もそこに留まった。母星で失った王国の名を知る者が減った後も、彼の家と、彼に従った人々の子孫は、その星で暮らし続けた。
後のサーティネイニアンである。
*
星々の間には、幾つもの通商圏と同盟が育っていた。
隣の星へ行くたびに許可を取り直し、政府が替わるたびに積荷を差し押さえられる航路では、定期船を出せなかった。紛争の起きた港へ複数の国が使節を送り、同じ航路を使う船が費用を出し合って警備を置いた。遭難船をどこへ運ぶか、引き渡された捕虜を誰が迎えに来るかについても、約束が交わされた。
コルサント、オルデラーン、デューロ、コレリア。後に共和国の創設を担う世界の間でも、相互の利益を守るための連携が進んだ。人類の住む世界と、異なる知性種族の母星から、それぞれの政府を代表する者が会議へ送られた。
議場には通訳の席が増えた。使節の身体に合う椅子が運び込まれ、呼吸装置を着けた代表のために控室が改められた。持ち込まれた条文は幾つもの言葉に訳され、同じ語が同じ権利を指しているか、何度も読み合わせられた。
各世界が自らの政府を持ちながら、共に航路を守り、紛争を持ち込み、他の世界と約束を結ぶための枠組みが作られた。その会議に席を得ようとする世界が増え、遠い星系からも代表が到着するようになった。
銀河共和国が成立した。
その首都に定められたコルサントには、新しい街が造られた。
加盟世界の代表を迎える議場が建ち、その周囲に官庁と公館が集まった。往来する船のために宇宙港が拡張され、遠い世界の商品を売る店と、それを買う人々の住宅が増えた。古い都市の構造物を補強し、あるいは解体して、その上に新しい街区が載った。
ギャラクティック・シティは、そこから広がっていった。
共和国の長い歴史を通じて街は造り替えられ、訪れる者はその巨大さに目を奪われた。元老院へ続く航路には無数の船が並び、夜になっても建物の窓は明るかった。首都で生まれ育った者の中にも、その明かりの外側へ出たことのない者が大勢いた。
現在、コルサントの定住人口は、およそ一兆人。
人の住む区画が幾層にも重なる首都と、その外に点在する街々を合わせても、古代の人口の五千分の一に満たない。
惑星の大部分には、使われなくなった都市が残っていた。幾千もの階層が暗闇に重なり、配管の抜かれた壁と、扉の外された家が並んでいる。地表を覆う構造物は、住民が去った後もその場所を占め続けた。崩れた区画の隣では、旧い支持柱が、上に載る無人の街をまだ支えていた。
首都の管理区域を出ると、航法図に通行不能の印が増えていく。都市の縁からは、途切れたハイウェイの先端が張り出している。遠くには、かつてその道が繋いでいた街の塔が見える。窓には灯りがなく、塔のさらに向こうにも、同じような街が続いている。
その道路も、かつては郊外へ続いていた。
艦艇、兵器説明は欲しい?
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いらない
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欲しい(文のみ)
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欲しい(元ネタリンク含め)