STAR WARS: STAR DESTROYER   作:あーくわいてんず

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大提督

C.R.C. 7984.216.04 *1

 

 ベラトール級スター・ドレッドノート《コンシストリー》は、ハイパースペースを航行していた。

 

 観測窓の向こうに星はなく、青白い光の筋が絶え間なく後方へ流れている。艦そのものが、銀河を裂いて進んでいるかのようだった。

 

 エリアス・ヴァーン中佐は手元の端末で時刻を確かめ、部屋の主へ目を向けた。

 

 アレクシアール・ヴァラリアン大提督は、机に向かったまま動かなかった。銀色の髪が白い頬にかかっている。細身の身体と整いすぎた顔立ちから、四十代後半という実年齢を言い当てられる者は、まずいないだろう。

 

 ヴァーンも、着任した当初はその外見に惑わされた。最初の印象が間違っていたと気づくまでに三週間かかり、実年齢を知ったのはさらに後のことだった。その頃にはもう、顔立ちの若さなど気にならなくなっていた。

 

 それでも、目を合わせるたびに思うことがある。

 

 あの目は、若くない。

 

「閣下。お時間です」

 

 姿勢を正して告げたが、シーアはすぐには応えなかった。机の端に置かれた古い立体写真を見ている。

 

 ギャラクティック・シティの夜景を背に、十歳ほどの銀髪の少年が写っていた。少し離れた位置には、何人かの顔がある。ヴァーンには見覚えのない人々だった。

 

 何も尋ねずに待っていると、やがてシーアは写真を閉じ、傍らの軍帽を取った。

 

「行こう」

 

 

 リフトが上昇を始めた。ヴァーンは床から伝わる微振動を足裏に感じながら、隣に立つ大提督を見た。少しためらった後、口を開く。

 

「閣下。作戦について、一つ確認を」

 

「言え」

 

「新共和国艦隊は、艦数で我々の1.5倍。こちらは外線からの強行突入です。数の不利を抱えたまま、勝算があるとお考えですか」

 

 シーアはしばらく黙っていた。壁に伝わる振動に耳を澄ませているようにも見えたが、やがて静かに答えた。

 

「数の優位で押し潰すつもりはない。艦数は戦力の一部にすぎない。それは千年変わらない」

 

 ヴァーンが待っていると、シーアは閉じた扉を見たまま続けた。

 

「モン・モスマはコルサントを取った。そしてそこを新共和国の首都に据えた。元老院を置き、官庁を置き、軍司令部を置いた。銀河の中心を押さえることで、自分たちが共和国の正統な後継者だと宣言したわけだ」

 

「だからこそ、守りも厚い」

 

「当然だ。だが、コルサントを保持していること自体が、彼女たちにとって最大の政治的資産になっている」

 

「それを奪う、と」

 

「奪い返す」

 

 穏やかに訂正し、シーアはわずかに間を置いた。

 

「コルサントを失っても新共和国は消えない。首都を失っても国家は存続する。それは私が一番よく知っている」

 

 最後の一言だけ、声の響きが変わった。ヴァーンはその変化に気づいたが、踏み込まずに話を戻した。

 

「艦隊そのものを破壊する必要はない、と」

 

「破壊できるなら破壊する。だが、それは手段だ」

 

 シーアの口元に薄い笑みが浮かんだ。リフトが減速を始めると、その笑みも消えた。

 

「目的は、彼らが勝ったと思っている戦争が、まだ終わっていないと教えることだ」

 

 ヴァーンは黙って聞いていた。

 

「コルサントを取ったから新共和国になったのではない。皇帝が死んだから帝国が消えたのでもない」

 

 ここで初めて、シーアがヴァーンを見た。

 

「国家は、そう簡単には死なない」

 

 リフトが止まり、扉が開いた。シーアは廊下へ踏み出しながら、言葉を継いだ。

 

「今日は国を滅ぼしに来たのではない。旗を戻しに来たんだ」

 

 

 艦橋では、全員が配置についていた。

 

「大提督、入られます」

 

 士官たちが一斉に立ち上がった。シーアは片手を軽く上げて応え、その間を抜けて中央指揮卓へ向かった。士官たちが席に戻ると、艦橋には機器の低い作動音が残った。

 

 ヴァーンは大提督の後ろに控え、端末を持ち直した。艦橋に入る前と後とで、シーア自身の態度はほとんど変わっていない。それでも、今は誰もがその声を待っていた。

 

「状況」

 

「全戦闘群、予定航路を維持。第一陣は誤差37秒以内で復帰予定。敵側に大規模な航路変更は確認されていません」

 

「モスマは」

 

「コルサント在留と推定」

 

 シーアの口元が、ほんのわずかに動いた。

 

「あの人も忙しいな」

 

 ヴァーンには、旧友の近況を尋ねているように聞こえた。今は敵同士でも、おそらく実際にそうした付き合いがあったのだろう。

 

 戦術表示が切り替わり、ハイパースペースからの復帰まで、残り60秒と表示された。

 

「全艦、戦闘配置」

 

 低い警報とともに艦橋の照明が落ちた。シーアは正面窓へ目を向けた。青白い光の筋が、変わらず後方へ流れている。

 

 復帰まで30秒を切った時、ヴァーンは大提督が一度だけ視線を落とすのを見た。すぐに戻されたその横顔からは、何も読み取れなかった。

 

 遥か昔、まだ共和国が存在していた頃、彼は一度、この星へ艦隊を向けたことがある。

 

 その時は、届かなかった。

 

 残り10秒。シーアは小さく息を吐き、正面を見据えた。

 

「今度こそ、コルサントの旗を戻す」

 

 青白い光が途切れ、窓の外に星々が戻った。その中央に、コルサントがあった。

 

 かつて銀河共和国の首都であり、銀河帝国の首都でもあった世界は、今やモン・モスマを首班とする勢力の占領下にあった。彼らはそこに政府を置き、自らを「新共和国」と称している。

 

 《コンシストリー》の周囲で空間が次々と歪み、巨大な艦影がリアルスペースへ躍り出た。一隻、また一隻と復帰した艦が位置につき、一つの艦隊を形作っていく。その外側でも光が走った。別航路から到着した戦闘群だった。

 

 遠方では、さらに別の艦隊が展開を始めていた。新たな艦影が加わるたびに、帝国艦隊の陣形はコルサントを囲むように広がっていった。

 

「敵艦隊、反応!」

 

「軌道防衛艦、離岸開始!」

 

「叛徒通信量、急増!」

 

 艦橋の各所から報告が上がった。士官たちが表示を切り替え、指示を出す中で、シーアは正面の惑星を見据えていた。

 

 少年の頃には、共和国の首都として見上げた。青年となって艦隊を率いた時には、届かなかった。その後は帝国の軍人として守ってきた星が、今また、彼の前にあった。

 

「全艦隊へ」

 

 通信士が振り返った。

 

「回線、開きます」

 

 シーアは軍帽の位置を直し、告げた。

 

「予定通りに進めろ。コルサントを奪還する」

 

 短い間を置いて、各艦から応答が返り始めた。

 

『了解』

 

 声が重なる中、《コンシストリー》が前進を始めた。その艦首の先に、コルサントがあった。

*1
C.R.C.(Coruscant Reckoning Calendar)

銀河各地で異なっていた暦法を統一するため、共和国によって導入された標準暦。コルサントの標準日・標準年を基準とし、共和国の行政・通商・航行などで広く使用され、銀河帝国にも引き継がれた。年.日.時という表記




ベラトール級スター・ドレッドノート

分類:スター・ドレッドノート
全長:約7,200メートル
建造:クアット・ドライブ・ヤード

銀河帝国が運用した大型主力艦。

マンデイター級に代表される共和国時代の大型戦艦系列から発展した艦で、「エグゼクター」「アサーター」ほど巨大ではない一方、通常のスター・デストロイヤーを大きく上回る火力と耐久力を持つ。

巨大艦でありながら比較的高速な「スーパー・バトルクルーザー」として位置づけられている。

アレクシアール・ヴァラリアン大提督の旗艦《コンシストリー》もこの級に属する。
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