STAR WARS: STAR DESTROYER   作:あーくわいてんず

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エリアドゥ・サミット

C.R.C. 7944.218

 

 朝、シーアが最初に開いたのは、サミットの代表団一覧だった。

 

 夜の間に、緑の標識が増えている。昨日は到着の見込みも分からなかった政府の名前に、確認済みの印がついていた。クラクドアVIIの欄は、昨日と同じ緑。その下には黄色が残り、さらに画面を送ると、まだ灰色の名前も現れた。

 

「増えてる」

 

 向かいで朝食を取っていたエレナが、シーアの端末を見た。

 

「昨日からずっとそれですね」

 

「これでサミット、始められるかな」

 

「予定どおり開会するそうです」

 

 セレナは今朝届いた連絡を確かめながら答えた。

 

「協議に必要な代表の出席は確認できた、とあります」

 

「まだ来てない人もいるのに?」

 

「全員がそろったわけではありません。それでも、始められるところまでは集まったのでしょう」

 

 シーアは一覧へ戻った。政府のほかに、通商連合、コマース・ギルド、テクノ・ユニオン、自由交易世界協会などの名も並んでいる。昨日、宇宙港で船を見たインターギャラクティック・バンキング・クランもあった。

 

 来られない代表がいても、会議は開ける。だが、その人たちの席が埋まったことにはならない。

 

「ぎりぎりだったの?」

 

「そこまでは存じません。詳しいことは会場でお聞きください」

 

 セレナは端末の横へ朝食の皿を寄せた。

 

「その前に、お召し上がりください。殿下が到着の遅れる側になります」

 

 シーアはようやく画面を閉じた。エレナがパンを取りながら、念を押す。

 

「今日はちゃんと、サミットを見るんですよね」

 

「見るよ。船を見に行く時間はないでしょう」

 

「分かっているなら結構です」

 

「《タイラント》は、途中で見えるかもしれないけど」

 

 エレナが手を止めた。

 

「それは見るんですね」

 

「見えたら見るでしょう」

 

 今度は何も言われなかった。シーアはそれを、同意ということにしておいた。

 

 

 シーアたちが出発の支度をしている頃、エリアドゥ・シティを見下ろすターキン邸には、二人のジェダイが到着していた。

 

 アディ・ガリアとサシー・ティン。予定されていた出発前の警備報告だったが、二人の表情を見て、フィニス・ヴァローラムは手にしていた資料を置いた。

 

「警備網を突破されたのか?」

 

「ネビュラ・フロントに関係する複数名が、エリアドゥへ侵入したと判断しています」

 

 ガリアが答えた。

 

 最高議長の隣にはセイ・タリアが控え、少し離れたところにパルパティーンとアルドレンがいる。エリアドゥ副総督ウィルハフ・ターキンは、共和国側の保安担当者から受け取った報告を開いた。窓の外では、会場へ向かう車列の準備が進んでいた。

 

「標的は私か」

 

「その可能性を前提に警護すべきです」

 

 ティンの答えは短かった。

 

 エリアドゥ到着前から、襲撃の危険は考えられていた。そのために警備を増やし、ジェダイも動いている。それでも侵入を許したという報告だった。

 

「マスター・ジンと弟子は?」

 

「別の経路から追跡を続けています。昨夜確認した侵入経路の一つで、動きがありました」

 

 ガリアの説明を聞きながら、アルドレンは昨日の夕方を思い出していた。二人はシーアと話した後、警備担当者に呼ばれてホールの奥へ消えた。息子は帰ってから、ジェダイも普通に話すのだと言っていた。

 

 その二人が今は、会場へ近づく襲撃者を追っている。

 

「最高議長。開会を延期してください」

 

 ガリアが進み出た。

 

「侵入した者を、まだ全員確保できていません」

 

 ヴァローラムは窓の外へ目をやった。待機中の車両のそばを警護員が歩き、通信機へ何かを伝えている。

 

「延期はしない」

 

「議長――」

 

 セイ・タリアが口を開いたが、ヴァローラムは片手で制した。

 

「一度襲撃を受けた。今度は開催地へ侵入された。そのたびに会議を延期していては、共和国の決定を止めたい者は、議員を説得する必要すらなくなる」

 

 声を荒らげることはなかった。疲れの残る顔で、二人のジェダイをまっすぐに見ていた。

 

「爆弾を持ち込めば政府が引き下がる。そう教えるわけにはいかん」

 

「暗殺を許せば、延期よりも深刻です」

 

 ティンが言った。ヴァローラムは彼に向き直る。

 

「だから、君たちに来てもらった。私は会議へ出る。その上で必要な措置を取ってほしい」

 

 ガリアはすぐには返事をしなかった。ターキンが報告書を閉じ、二人の前へ進む。

 

「車列の防御フィールドは常時作動させます。会場周辺の空域制限も実施済みです。入場には、共和国側とエリアドゥ側双方の確認を通す」

 

「屋上と保守区画は?」

 

「再確認させています。警備要員を含め、内部の人員についても照合をやり直しています」

 

「通常の入口から入ったとは限りません」

 

「承知しています。その前提で指示を出しています」

 

 ターキンは保安担当者へ報告を返した。担当者がすぐに部屋を出る。

 

 アルドレンも同行の職員を呼び、息子たちの傍聴席と退避経路を改めて確認させた。主な出入口から離れ、別の通路を使える北側へ移す案が出ているという。

 

「セレナへ連絡を。異常があれば、私の席へ来ようとせず、そのまま退避させろ」

 

 職員が頷いて下がる。室内では、パルパティーンがヴァローラムへ話しかけていた。

 

「最高議長がお決めになることですが、延期にも危険はあります」

 

 穏やかな声だった。

 

「通商連合は、共和国が交易路を守れないことを自衛武装拡大の根拠としている。その共和国が、自ら開催する会議も守れないという印象を与えれば、交渉はさらに難しくなるでしょう」

 

「分かっている」

 

 ヴァローラムはガリアとティンを見た。

 

「予定どおり始める」

 

 二人のジェダイが視線を交わした。やがてガリアが頷く。

 

「では、我々も配置へ戻ります。動きがあれば、直ちにお知らせします」

 

 二人が退出すると、ヴァローラムは椅子の背へ手を置いた。

 

「始まる前からこれか」

 

「開催地を推薦した人物にも、一言申し上げておきますかな」

 

 ターキンが言った。パルパティーンは困ったように微笑む。

 

「責任を感じています」

 

「感じるだけなら無料だ」

 

 ヴァローラムの返答に、セイ・タリアがわずかに顔を伏せた。アルドレンも口元を緩めたが、最高議長が再び資料を取ると、すぐに自分の端末を開いた。

 

 出発までに、もう一つ確認すべきことが残っていた。

 

 

「公王殿下。修正案の扱いを決めておきたい」

 

 ヴァローラムは送られてきた文書を表示した。

 

「武装制限の緩和だけでは支持できない、という立場は変わらんか」

 

「はい。共和国側の能力整備を、同じ合意に含めていただきたい」

 

 最高議長案は、ミッド・リムとアウター・リムの自由交易区域への課税と引き換えに、商業組織の自衛武装に関する制限を緩めるものだった。共和国は財源を得る。通商連合をはじめとする企業側は、襲撃される船や施設を守るための装備を増やせる。

 

 アルドレンは、その仕組みを恒久的なものとして認めることに反対していた。

 

「だが、今この時も襲われている船がある」

 

 ヴァローラムが言った。

 

「それは承知しています。司法軍の整備が終わるまで十年待て、とは言えません」

 

「ならば、当面の武装拡大は認めるのだな」

 

「こちらの修正条件を含めていただけるなら」

 

 アルドレンは交易路図を開いた。自由交易区域と主要なジャンクション、その間に置かれた司法軍の拠点が表示される。

 

「問題は十年後です。十年後にも、共和国が守れないから同じ企業が同じ航路を守る。それが当然の制度として残るなら、今日の危機は何も変えるきっかけにならなかったことになる」

 

 図の上へ、新設を求める哨戒区域と救難拠点が重なった。管制、税関情報、船籍登録、通信と識別の共通規格。拠点ごとの人員と補給の見積もりも添えられている。

 

「課税するなら、収入の一部をここへ戻す。すべての航路を一度に引き受ける必要はありません。まず主要区間で、共和国が仕事をできるようにする」

 

「司法軍の増強だけではないのですね」

 

 セイ・タリアが資料を読み進めた。

 

「警備、救難、管制、税関、標識、登録。航路行政全体です」

 

「はい。船を買うだけでは、長く続きません」

 

 彼女は次の項目で指を止めた。

 

「企業武装船の登録義務も含まれています。これは通商連合が嫌がるでしょう」

 

「でしょうね」

 

 アルドレンは否定しなかった。

 

「共和国の不足を補うために武装を認めるなら、誰が、どこで、何を持っているのかくらいは把握すべきです。無条件で枠だけ広げることには賛成できません」

 

 ヴァローラムは椅子に腰を下ろした。

 

「彼らには、こう聞こえるだろう。税を払え。艦隊を登録しろ。その金で共和国が自前の警備能力を作り、最後にはお前たちの仕事を取り上げる、と」

 

「航路の警備に限れば、かなり正確です」

 

 セイ・タリアが顔を上げた。ターキンは扉のそばで警備担当者と短く言葉を交わしてから、再び二人へ注意を戻した。

 

「それでは合意できん」

 

 ヴァローラムは笑わなかった。

 

「だから段階的に進めるのです。代わりの能力がないうちに、企業の護衛を引き揚げさせるつもりはありません」

 

「その段階が十年なのか、二十年なのか。見通しはあるのか」

 

「全域についてはありません。ですから、実施する区域を絞り、定期的に評価する。次へ広げる計画まで、合意文書へ入れていただきたい」

 

 パルパティーンが交易路図を眺めながら口を開いた。

 

「お二人が見ておられる時間が違うのでしょう」

 

 アルドレンが彼を見る。

 

「最高議長は現在の危機を収めようとしている。公王殿下は、それを機に共和国の構造を変えようとしている」

 

「否定はしません」

 

「悪い意味で申し上げているのではありません。ただ、一つのサミットで合意するには、大きな課題です」

 

 アルドレンは図を戻した。最初の整備区域だけを残すと、広大な自由交易区域の中で、色のついた部分はごく小さくなった。

 

「全体を今日決めてくれとは言っていません。ここから始めると決めてほしいのです。何も始めなければ、十年後にも同じ理由で武装枠を広げることになる」

 

 ヴァローラムはしばらく、その小さな区域を見ていた。

 

「私は今日、通商連合に課税を受け入れさせなければならない。彼らにも持ち帰れるものが要る」

 

「そのための武装拡大を、当面の措置として受け入れます。共和国側の整備と登録、定期的な見直しを一緒にするなら」

 

「別々に審議すると言ったら?」

 

「私が支持を約束する理由がなくなります」

 

 ヴァローラムは端末を置いた。セイ・タリアが口を挟みかけたが、最高議長は首を振る。

 

「分かった。修正案は全体協議へ出す」

 

「ありがとうございます」

 

「礼を言うのは通ってからにしてくれ。私が出したからといって、企業側が飲むわけではない」

 

「承知しています」

 

 セイ・タリアが議事担当への送信を始めた。その横で、ターキンが時計を確かめる。

 

「私は先に会場へ戻ります。車列の準備も整いました。これ以上遅れますと、今度は開催地側が最高議長の遅刻を説明することになります」

 

 ヴァローラムが立ち上がり、資料をタリアへ渡した。

 

「そこまで君に世話になるつもりはない。行こう」

 

 

 セスウェナ・ホールの周囲では、車両が何段階にも分けて止められていた。

 

 警備線を越えるたびに身分の照合があり、搬入車両は別の検査区画へ回される。屋上と周囲の高層建築には警備要員が立ち、上空をエリアドゥ政府の警備艇が旋回していた。

 

 シーアたちが車を降りると、セレナはすぐに入場証を用意した。同行する護衛の一人が先へ進み、入口の係員と言葉を交わす。

 

 少し奥にターキンがいた。士官から報告を受け、短く指示を返している。シーアに気づくと一度だけ目を向け、軽く会釈した。シーアも礼を返す。

 

 それだけだった。今日は船の質問をする暇もなさそうだった。

 

「忙しそうですね、おじさま」

 

 エレナが言った。

 

「一昨日は、会議が多すぎるって言ってたのに」

 

「あなたも言っていたでしょう」

 

「言ったけど」

 

 シーアは、すでに別の報告を聞き始めているターキンを見た。《タイラント》を案内していた時と同じ落ち着いた声だったが、相手の返事を待つ間も、次の担当者がそばに控えている。

 

 入場検査を終え、ホールへ入る。シーアは周囲を見回した。昨日会った茶色いローブは見当たらなかった。

 

「ライトセーバーを探してます?」

 

「ジェダイだよ」

 

「今日は人の方なんですね」

 

 言い返す前に、セレナが先の通路を示した。

 

「こちらです。止まらずに進んでください」

 

 クワイ=ガンもオビ=ワンも見つからないまま、二人は北側の傍聴席へ案内された。

 

 

 大会議場は、シーアが想像していたより広かった。

 

 中央の演壇を何段もの席が取り囲み、その外側に傍聴区画が置かれている。配置はホロニュースで見る元老院議事堂に少し似ていたが、ここには元老院議員ばかりが集まっているわけではなかった。

 

 共和国加盟世界の政府、自由交易区域の代表、企業組織、交易団体。シーアが案内表示を見ている間にも、さまざまな種族の代表が自分の席へ進んでいく。

 

 クラクドアVIIの区画で、セヴ・ナールが補佐官から資料を受け取っていた。

 

「ナールさんだ」

 

 シーアが指すと、エレナもそちらを見た。

 

「今日は、ちゃんと席にいますね」

 

「昨日もホールにはいたよ」

 

「そういう意味ではありません」

 

 シーアは少し笑った。端末の緑の標識より、こうしてナール本人が座っている方が、分かりやすかった。

 

 席につく前に、セレナは二人を通路側へ寄せた。

 

「今朝、場所が変更になりました。お戻りになる時も、入ってきた北側の通路を使います。私か護衛の指示に従ってください」

 

「父上のところは?」

 

「お父上とは、こちらで合流する手配です。お一人で下へは行かないように」

 

 シーアは頷いた。扉のそばにも警備員が二人立っている。セレナは彼らと言葉を交わしてから、子供たちのすぐ後ろへ腰を下ろした。

 

 下では、ボサウイ、ファリーン、マラステア、サラストの代表が席につき始めていた。コマース・ギルド、企業同盟、テクノ・ユニオン、ハットの代表団もいる。

 

 シーアは参加者一覧を送っているうちに、最近よく聞く名前がないことに気づいた。

 

「ネビュラ・フロントは来ないんだ」

 

「招待されていません」

 

 セレナが答えた。

 

「通商船を襲い、最高議長の暗殺も企てた組織です」

 

「でも、今日はあの人たちの話もするんでしょう?」

 

「襲撃にどう対処するかを話し合うのです」

 

 シーアは一覧を閉じた。相手がいなくても、相手のことで決めなければならないことはあるらしかった。

 

 通商連合の区画には、他より多くの機材が持ち込まれていた。独立した通信設備と、周囲に並べられた小型の投射装置。係員が最後の確認を済ませると、その間へ警備ドロイドが配置されていく。

 

「あそこ、警備が多いですね」

 

 エレナが身を乗り出しかけ、セレナの手に気づいて背を戻した。

 

「襲われてるからでしょう。船も、施設も」

 

 シーアは端末に表示された協議事項を見た。企業の自衛武装についての項目がある。

 

 昨日の港では、通商連合の船が何隻も働いていた。貨物を降ろし、次の荷物を積んで、また別の星へ向かっていく。あの一隻が来なくなるだけでも、荷物を待つ者が困る。

 

「だから、武器を増やしたいんだね」

 

「でも、税金は払いたくない」

 

 エレナが協議事項の最初を指した。

 

「みんな、税金は嫌なんじゃありませんか」

 

「父上も?」

 

「あとで聞いてみたらどうです?」

 

 シーアは少し考え、それは聞いてみてもよさそうだと思った。

 

 その時、通商連合代表団が入ってきた。

 

 ヌート・ガンレイとロット・ドッド。その後に、取締役たちが続く。ニモーディアンだけではなかった。人間もいれば、グランやサラスタンもいる。

 

「いろんな人がいるんだ」

 

「ニモーディアンだけだと思っていたんですか?」

 

「何となく」

 

 シーアはガンレイの後ろを歩く取締役たちを見た。

 

「会社が、いっぱい入ってるんだね」

 

 エレナも表示を読み、そのうちの一人が代表する企業名を確かめていた。

 

 

 ロット・ドッドが足を止めたのは、取締役たちが専用区画へ入る直前だった。

 

「十二体ではありませんでしたか?」

 

 ガンレイが振り返る。ドッドの視線を追い、後ろに並ぶセキュリティ・ドロイドを見た。

 

「警備の数か?」

 

「予定では、そのはずですが」

 

 最後尾の一体が、他よりわずかに遅れて止まった。頭部を左右へ動かし、それから前を向く。姿勢はすぐに、他の機体と変わらなくなった。

 

「警備部門が追加したのだろう」

 

 ガンレイは演壇へ目をやった。すでに係員が次の代表団を案内している。

 

「後で確かめればよい」

 

 ドッドもそれ以上は追及せず、自分の席へ向かった。

 

 そのやり取りは、傍聴席には届かなかった。シーアが代表団の方から顔を上げた時、議場では出席者が立ち始めていた。

 

 フィニス・ヴァローラム最高議長の到着だった。

 

 シーアも立ち上がる。ホロニュースで見慣れた顔だったが、実物は画面より少し疲れて見えた。セイ・タリアと共和国官吏が後に続き、警護員が演壇の周囲へ散っていく。

 

 その一行の中に、顔と名前の一致する議員がいた。

 

「パルパティーン」

 

 エレナが横を見る。

 

「知り合いですか?」

 

「ううん。ナブーの議員だよ。ニュースに出てた」

 

 エリアドゥを開催地に推薦した人物だということも、聞いていた。パルパティーンは周囲の者と言葉を交わし、穏やかに頷きながら席へ進んでいく。

 

 シーアはしばらくその姿を見てから、父の席を探した。

 

 

 アルドレンの端末には、修正案を全体協議へ回したという通知が届いていた。

 

 支持を得たわけではない。議題として取り上げられるところまで進んだだけだった。

 

 地方政府の中には、共和国による航路警備に関心を示すものもある。だが、整備が始まるまで自分たちの船を誰が守るのかと聞かれれば、今ある戦力を挙げるほかなかった。

 

 サーティネイニアン基地のドレッドノート級は定数三隻。そのうち一隻は護送任務に出て、別の一隻は整備に入る。名簿に三隻載っていても、そこから直ちに出せるのは一隻という時がある。

 

 人員も基地も補給も必要だった。企業側は、アルドレンがその金を議会で確保するのを待ってから襲われるわけではない。

 

 当面の武装を認める理由はある。だからこそ、その当面がいつまでも続かない仕組みを求めていた。

 

 近くでは、ターキンが最後の警備報告を受けていた。士官が下がると、アルドレンへ顔を向ける。

 

「修正案は協議に出されるそうですな」

 

「どう思う?」

 

「共和国が責任を広げるという考えは理解できます。引き受けた仕事を、本当に遂行できるなら」

 

「ない力を作るための提案だ」

 

「ええ。そのための金も人も、各地から集めなければならない」

 

 ターキンは議場を見渡した。

 

「ここへ来た方々が、どこまで応じるかでしょうな」

 

「君の意見を聞いている」

 

 ターキンの口元がわずかに動いた。

 

「今日は開催地側として、中立を保つことにしています」

 

「軍艦の話なら、息子相手にもずいぶん明快だったそうだが」

 

「軍艦は専門ですので」

 

「共和国は?」

 

 ターキンはアルドレンを見た。それから、呼びかけてきた警備担当者へ短く合図する。

 

「いずれ、時間のある時に」

 

 アルドレンは追及しなかった。国家が実力を持たなければならないという点では、ターキンも異論はないはずだった。だが、その実力を誰が、どこまで扱うべきかについて、今日は答えを聞けなかった。

 

 

 開会予定時刻が近づくと、通商連合の区画へ若い従者が入ってきた。

 

 ヌート・ガンレイのそばで身を屈め、何かを耳打ちする。ガンレイが顔を上げ、低い声で聞き返した。従者はもう一度説明し、端末を差し出す。

 

 ガンレイは席を立った。

 

「ドッド、来てもらう」

 

「私は残るべきでは? まもなく開会です」

 

「シャトルのエンジンで、プラズマ漏れが見つかったそうだ」

 

 ドッドも端末を覗き込んだ。ガンレイが続ける。

 

「港側との法的な処理が必要になるかもしれん。君にも確認してもらいたい」

 

 ガンレイは従者を先に立たせた。ドッドは残る取締役へ短く断ってから、その後を追った。セキュリティ・ドロイドは動かず、区画の周囲に立ち続けている。

 

 傍聴席のシーアにも、二人が出ていくところは見えた。

 

「もう始まるのに、どこへ行くんだろう」

 

 しばらくして、入口の係員と連絡を取っていた随員が事情を教えてくれた。到着に使ったシャトルで、プラズマ漏れがあったのだという。

 

「危ないじゃん」

 

「その確認へ行かれたようです。法務上の問題もあるそうで」

 

「だから二人とも?」

 

 随員は頷いた。シーアは扉を見たが、二人の姿はもうなかった。

 

 船のエンジンでプラズマが漏れているなら、会議どころではないのかもしれない。少なくとも、自分なら気になって仕方がないだろうと思った。

 

 やがて照明が落ち着き、開会を告げる音楽が流れ始めた。

 

 

「まだ話さないんだ」

 

 シーアが小声で言うと、エレナは演奏している方を見た。

 

「開会式でしょう。まだ始まったばかりです」

 

「始める前にも、することがあるんだね」

 

「昨日、入口で見たでしょう。受付とか」

 

「あれとは違うと思う」

 

「お二人とも、静かに」

 

 セレナに言われ、二人は前を向いた。

 

 ヴァローラムが演壇のそばにいる。パルパティーンは議員たちの区画に座り、父は手元の資料を閉じた。少し離れた場所にはナール。通商連合の取締役たちは、空いた二つの席を残して演奏を聞いている。

 

 昨日まで別々の場所で見ていた人たちが、同じ部屋へ集まった。

 

 傍聴席の端末には、本日の協議事項が表示されていた。自由交易区域への課税。企業の自衛武装。共和国側の警備と航路行政に関する修正提案も、その中に入っている。

 

 シーアが父の名前を見つけたところで、エレナが顔を寄せた。

 

「結局、誰が正しいんでしょう」

 

 シーアは端末を伏せ、議場を見た。

 

「みんな、言ってることは分かる気がする」

 

「通商連合も?」

 

「襲われてるのは本当でしょう。共和国の船が、今すぐ代わりに来てくれるわけでもない」

 

 エレナは考えながら頷いた。

 

「じゃあ、今は自分で守らないと」

 

「でも、ずっとそれなら、共和国はいつまでも来なくていいことになる。父上は、それが嫌なんだと思う」

 

「税金で船を増やしたら?」

 

「造るまで時間がかかるよ。基地も、乗る人も要るし」

 

 エレナはそれ以上、すぐには言わなかった。

 

「どうしたらいいんです?」

 

「そこは分からない」

 

 シーアは正直に答えた。

 

 サーティネイニアンの基地で星図を見た時には、必要な場所へ船が間に合うかを考えていた。公王軍と司法軍が違う命令で動くことも気になった。今は、企業の船が実際に人を守っていることまで、その中へ入ってくる。

 

 必要な船が来ることと、共和国がその船を動かせることは、同じではないらしい。

 

 どうすれば両方できるのか。考えているうちに、演奏が次の部分へ移った。

 

 

 演壇の脇で、セイ・タリアが顔を上げた。

 

 視線が高い天井へ動く。照明設備の上に梁が渡り、その奥へ保守通路が続いていた。

 

 光が走った。

 

「――上!」

 

 叫び声に、シーアも顔を上げた。

 

 最初に見えたのは、赤い閃光だった。続いて緑の光が横切り、閃光が別の方向へ弾かれる。照明の縁で火花が散った。

 

 ブラスターだった。

 

 少し離れた梁の上でも、青い刃が動いた。人影が身を沈め、次の一発を逸らす。

 

「ジェダイ……」

 

 長い髪を振って襲撃者へ迫る大柄な男と、その先へ回り込もうとする若い男。昨日会った二人だった。

 

 クワイ=ガンの緑の刃が振られる。オビ=ワンは梁を蹴り、向こうの保守通路へ飛び移った。人が跳べるとは思えない距離だった。着地する時には、もう青い刃が次の銃口へ向いている。

 

 背後で護衛が動き、セレナの手がシーアの肩をつかんだ。

 

「伏せてください!」

 

 声は聞こえた。けれど、シーアは一瞬、目を離せなかった。

 

 光る剣が、暗い天井を横切っていく。

 

 胸の奥で、何かが引っかかった。

 

「……あれ?」

 

 知っている、と思った。

 

 暗い部屋に、四角い光が浮かんでいた。その中で、剣を持った人が動いている。緑と青と、別の赤い光。声がして、音楽も聞こえた気がする。

 

 自分は、それを見ていた。

 

 いつなのか。どこにいたのか。思い出そうとすると、そこだけが遠ざかった。顔も名前も出てこない。ただ、今とよく似たものを、ずっと前にも見たという感覚だけが残っている。

 

「シーア、早く!」

 

 エレナが袖を引いた。セレナに促され、すでに身を低くしている。

 

 瞬きをすると、四角い光は消えた。目の前にあるのはセスウェナ・ホールの天井と、そこを走る人影だった。

 

 そのうちの一つが、梁から外れた。

 

 襲撃者が縁へ腕を伸ばす。手は届かなかった。身体が下の梁へぶつかって回転し、そのまま議場へ落ちていく。

 

 床を打つ音がした。

 

 悲鳴が上がり、演奏が途切れた。シーアの頭から、かすかな記憶が吹き飛んだ。

 

「頭を下げて!」

 

 セレナが二人を引き寄せた。シーアは膝を折り、座席の背に隠れる。そばでエレナが息を呑んだ。

 

 議場では人々が立ち上がり、椅子の倒れる音が続いた。共和国警護員が演壇へ走っていく。上ではまだブラスターが鳴り、光る刃が閃いていた。

 

 

 アルドレンが席を立って最初に見たのは、北側の傍聴席だった。

 

 シーアのいる場所は分かっていた。だが、立ち上がった出席者たちに遮られ、区画の中までは見えない。

 

「北側を確認しろ」

 

 近くの護衛へ指示した。護衛が通信機を取る間にも、別の代表団が通路へ出ようとし、その手前で人の流れが詰まった。

 

 ターキンは開催地側の警備要員を呼び寄せていた。通信機へ口を近づけ、短く命令を出している。何を言っているのかまでは、アルドレンには聞こえなかった。

 

 通商連合の区画で、鋭い声が上がる。

 

「フィールドを!」

 

 残っていた取締役たちが中央へ寄った。区画の周囲に置かれた投射装置が作動し、床から半透明の光が立ち上がる。

 

 幾枚もの光の壁がつながり、頭上を覆った。通商連合取締役会の区画が、防護フィールドの内側へ収まる。

 

 取締役たちと、その警備に当たるセキュリティ・ドロイドが、同じ光の中にいた。

 

 

「シールド……」

 

 座席の隙間から、シーアにも光の壁が見えた。

 

 上ではまだ撃ち合っている。議場の通路では、逃げようとする人と警護に向かう人がぶつかり、怒鳴り声が重なっていた。その中で、通商連合の区画だけが、薄く光る壁に守られている。

 

 外から撃たれても届かない。襲撃者が下へ降りてきても、簡単には入れないだろう。中には警備ドロイドもいる。

 

 これなら安全だ。

 

 少なくとも、その時のシーアには、そう見えていた。

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