STAR WARS: STAR DESTROYER 作:あーくわいてんず
C.R.C. 7944.218
最初に動いたのは、一体だけだった。
防護フィールドの内側で、通商連合の取締役たちを十三体のセキュリティ・ドロイドが取り囲んでいた。最後に入ってきた一体が頭部を回し、外の襲撃者から、守るべき者たちへ向き直る。
座席の隙間から見ていたシーアは、その動きに目を留めた。
「……何してるの?」
誰に聞いたわけでもなかった。
隣の一体が動いた。さらに、その隣も。合図は見えず、命令も聞こえない。それでも、何かが順に伝わっているように、銃口が同じ方向へ回っていった。
取締役の一人が気づき、手を上げた。
「停止しろ!」
ドロイドは動きを止めなかった。
「停止命令だ! 認証――」
閃光が走り、男が倒れた。
そばにいた者が身を屈める。その頭上を次の一発が通り、別の取締役が椅子ごと崩れた。叫び声が上がり、人々が区画の中央へ逃げようとする。
だが、そこにも銃口が向いた。
防護フィールドは、正常に作動していた。上からの射撃を防ぐために立ち上げた光の壁が、取締役たちとドロイドを一緒に包んでいる。外にいる警備員がブラスターを構えたが、撃たなかった。射線の先には、防護フィールドがある。
「フィールドを解除しろ!」
エリアドゥ側の警備員が投射装置へ駆け寄った。操作盤に触れ、誰かへ怒鳴る。光の壁は消えない。
一人の取締役が壁へ両手をつき、すぐ外の警備員へ何かを叫んだ。言葉は周囲の怒号にかき消された。その背後で、また銃口が光った。
「シーア」
エレナの指が腕に食い込んだ。痛かった。それでも、シーアは顔を動かせなかった。
「なんで……」
あの機械は、人を守るために置かれていた。
港の警備員も、《タイラント》の兵士も、同じように武器を持っていた。何かあれば、その人たちの後ろへ行けばいい。少なくとも、シーアはそう思っていた。
今、その後ろへ逃げ込んだ人が撃たれている。
「殿下、見ないでください」
セレナが二人を抱えるように引き寄せた。シーアの顔が彼女の服へ押しつけられ、議場が見えなくなる。
「でも――」
「見なくていいです!」
その声に、シーアは抵抗をやめた。
音までは消えなかった。ブラスターと悲鳴の間に、解除コードを求める警備員の声が聞こえる。何度も同じ呼びかけが繰り返され、その間隔が分かるほど、区画の中から聞こえる人の声が少なくなっていった。
⸻
アルドレンは、防護フィールドへ近づきかけて足を止めた。
投射装置の周囲には、すでに警備要員が集まっていた。共和国側の警護員も加わり、通商連合の技術者を呼べと叫んでいる。誰かが操作を試すたびに、別の者が光の壁を見上げた。変化はなかった。
公王の命令で、あの装置を止めることはできない。現場の警備員も、持ち込まれた機材も、アルドレンの指揮下にはなかった。さらに一人がそこへ割って入り、同じ命令を叫んでも、解除の方法が分かるわけではない。
彼は北側へ向き直った。立ち上がった代表者たちに遮られ、傍聴席の中が見えない。
「ヴァレン、北側は?」
護衛官が通信機から顔を上げた。
「セレナ侍従と連絡が取れました。お二人とも御無事です。退避通路の確認を待っています」
アルドレンは短く息を吐いた。
「確認でき次第、連れ出せ。私の方は後でいい」
「承知しました」
ヴァレンは別の護衛へ合図を送り、北側へ通じる通路へ向かった。アルドレンはその姿が人の間へ消えるまで見ていた。
頭上では、まだ戦闘が続いていた。緑の光が梁の陰へ動き、別の方向で青い刃が閃く。どちらへ何人の襲撃者が逃げたのか、下からは分からない。
近くでは、ターキンが開催地側の警備官から報告を受けていた。
「最高議長は?」
「共和国警護班が確保しています」
「南側通路は閉鎖しろ。確認が済むまで誰も通すな。外周も警戒を続けろ。侵入者が一人とは限らん」
警備官が通信へ命令を流す間に、ターキンは別の担当者を呼んだ。声を張り上げることもなく、報告の途中で必要な点を確かめ、次にすべきことを告げている。
軍艦を案内している時よりも、今の方が、この男の仕事ぶりはよく分かった。
アルドレンは長く見ていなかった。防護フィールドの中で再び閃光が走り、そちらへ顔を戻した。
⸻
最初の襲撃者が議場へ落ちる、わずか前。
会場上層の保守歩廊では、クワイ=ガン・ジンが狙撃手を追っていた。
狭い足場の先を、傷だらけのローディアンが走っている。ボイニーだった。つい先ほどまで敵だった男が、今は狙撃手へ迫ろうとしていた。
前方の男が、肩越しに振り返る。
「伏せろ!」
クワイ=ガンの声より、銃口の動きが早かった。
閃光を受け、ボイニーの身体が揺れた。歩廊へ崩れ落ちる。その脇へ踏み込んだクワイ=ガンの刃が、次の一発を弾いた。
狙撃手が後退する。手すりの向こうには、はるか下の大会議場が見えていた。
男がもう一度撃った。クワイ=ガンが逸らす。そのまま距離を詰めると、男の足が歩廊の縁を外れた。
身体が手すりへぶつかり、伸ばした手が滑る。次の瞬間には、姿が下へ消えていた。
下の梁にぶつかる音がして、会場から悲鳴が上がった。
クワイ=ガンは歩廊を戻り、ボイニーのそばへ膝をついた。
「ボイニー」
肩へ手を置いて呼んだが、返事はなかった。通信機を取り、位置と救護の要請を伝える。
その時、下から別の銃声が聞こえた。
一発では終わらなかった。短い間隔で射撃が続いている。クワイ=ガンは手すりへ寄り、大会議場を見下ろした。
通商連合の区画を、防護フィールドが包んでいた。その内側で、ブラスターが光っている。
ヴァローラムのいる場所ではなかった。
議長への狙撃はあった。自分たちは確かにそれを追ってきた。だが、その下で別の襲撃が始まっている。
追跡の間、フォースの中に感じていた不穏さは、狙撃手が倒れても消えなかった。
コールやハヴァックまでたどっても、まだ先があった。近づくたびに、その奥へ逃げていくものがある。誰が、何のために、ここまでをつなげているのか。
フィールドの中で、また一発が光った。
クワイ=ガンは通信機へ状況を告げ、議場へ下りる通路に向かって走り出した。
⸻
銃声がやんでも、セレナは腕を緩めなかった。
遠くで誰かが泣いていた。警備員の呼びかけと足音が続き、通路の方からは、まだ動くなという指示が聞こえる。
「……終わった?」
エレナの声は小さかった。
「まだ、ここにいてください」
シーアは顔を上げかけた。
「もう撃ってないよ」
「分かっています」
セレナはシーアの頭へ手を添えた。今度は、強い声ではなかった。
「お願いします。まだ見ないでください」
シーアは動くのをやめた。
しばらくして、通路を重い機材が運ばれていく音がした。車輪が床の継ぎ目を越えるたびに、小さな振動が伝わってくる。通商連合の技術者が警備員に囲まれ、投射装置のそばへ進んだ。
持ち込まれたのは、フィールド・ディスラプターだった。技術者たちが装置の出力を確かめ、防護フィールドの解除を試みる。
光の壁が揺れた。座席の背に映っていた青白い光が薄れ、再び強くなる。
そして、消えた。
警備員が中へ入り、停止したドロイドから武器を離していく。後ろで待っていた医療班が続いた。
「殿下、通路が確保できました」
ヴァレンが傍聴席の入口から呼びかけた。
セレナが立ち上がり、二人を自分の前へ寄せる。その時、シーアには人の隙間から区画の中が見えた。
倒れている人と、動かなくなったドロイド。医療班の一人が膝をつき、すぐに次の人のそばへ移る。別の隊員が顔を上げ、待っている者へ首を振った。
シーアは目を逸らした。今度は、セレナに言われる前だった。
入口まで歩いてから、ふと思い出した。
「……二人、出ていったよね」
エレナがこちらを見た。
「シャトルのところへ」
「あ……」
ヌート・ガンレイとロット・ドッド。エンジンのプラズマ漏れを確かめに行った二人は、フィールドの中にいなかった。
「だから――」
助かったのだ、と言おうとして、シーアはやめた。
閉じられていく会場の扉を見てから、セレナに促されるまま歩き出した。
⸻
ガンレイとドッドがセスウェナ・ホールへ戻った時、入口はすでに封鎖されていた。
「通してもらいたい」
ガンレイが入場証を示したが、警備官は道を空けなかった。
「現在、会場への出入りは制限されています」
「私は通商連合総裁だ。中には取締役会がいる」
警備官が一瞬、そばの同僚を見た。その反応を、ドッドは見逃さなかった。
「何があった?」
別の警備官が近づき、二人を人の流れから離れた場所へ案内した。
「説明します。こちらへ」
「ここで答えろ」
ガンレイの声に、近くの者が振り返った。警備官は声を落とし、会場で起きたことを伝えた。
二人とも、しばらく何も言わなかった。
「ドロイドが、取締役を撃ったのか?」
ドッドが聞いた。
「そのように報告されています」
「我々の警備ドロイドが?」
「詳しい状況は調査中です」
ドッドは会場の入口を見た。入場した時の列が、頭に浮かぶ。予定より多かった機体。最後尾で遅れて止まった一体。
「……十三体目」
ガンレイが横を向いた。ドッドはそれ以上言わなかった。
ほどなく、通商連合の技術者からも報告が入った。防護フィールドは解除され、ドロイドはエリアドゥの警備要員が管理しているという。機材の確認に引き続き協力を求められたが、その場で二人が異を唱えることはなかった。
⸻
別区画へ退避したヴァローラムは、立ったまま報告を聞いていた。
「取締役会の区画に、生存者は?」
担当者は一瞬言葉を切った。
「確認されていません」
ヴァローラムは目を閉じた。開くまでの数秒、誰も続きを話さなかった。
今日、合意を求めるはずだった相手が死んでいた。課税も企業武装も、修正案も、正式な協議に入る前だった。そのために各地から集まった代表団が、今は警護の下で退避している。
セイ・タリアがそばへ来た。
「最高議長」
「サミットは中止する。全代表団へ通知を」
声に迷いはなかった。
「帰還については、エリアドゥ側の安全確認を待つ。負傷者と、まだ所在を確認できていない者の報告もまとめてくれ」
「承知しました」
彼女が指示を伝え始めたところへ、共和国司法部門の担当者が入ってきた。
「議長、現場の保全を開始します。ドロイドの回収についても――」
「その前に、手順を確認していただきたい」
ターキンが口を挟んだ。
「現場の封鎖と第一次保全は、エリアドゥ当局が行います。すでに警備要員を配置しています」
「共和国最高議長を標的とした事件です。共和国司法部が捜査します」
「承知しています。同時に、エリアドゥで発生した大量殺人でもある」
ターキンは担当者へ向き直った。
「別々の機関が、それぞれの判断で機材を動かしては証拠管理が混乱する。現場での保全はエリアドゥ側が取りまとめ、共和国側へ記録を提供します」
「記録だけで済む問題ではありません」
「共同でやれ」
ヴァローラムが言った。二人が口を閉じる。
「共和国側から立会人を出す。エリアドゥ側は現場を動かす前に記録を共有する。回収するドロイドも機材も、双方で確認しろ」
ターキンはすぐに頷いた。
「異論ありません」
司法部門の担当者も了承し、立会人の手配に向かった。
アルドレンは、そのやり取りを少し離れた場所で聞いていた。現場を保全する者を決め、別の機関が確認する。混乱した会場で、同じものを別々に持ち去られるよりはよい。
この合意に、異を唱える理由はなかった。アルドレンは護衛からの連絡を受けると、息子たちのいる待機区画へ向かった。
⸻
シーアたちは北側の出口を通り、そこから来た時とは違う連絡通路へ入っていた。
窓はなかった。角を曲がるたびに警備員が立ち、ヴァレンが身分を示して通る。セレナは二人のすぐ後ろを歩き、立ち止まりかけると肩へ手を添えた。
「父上は?」
「御無事です。こちらへいらっしゃいます」
セレナが答えた。シーアは頷き、前を歩く護衛の背中を見た。
エレナは何も言わなかった。シーアの袖をつかんだまま歩いている。離してほしいとは思わなかった。
頭の中には、銃口が回っていく光景が残っていた。忘れようとすると、その前に見た緑と青の光が浮かぶ。暗い部屋と四角い何かは、もううまく思い出せない。
それよりも、光の壁へ手をついた人の姿が離れなかった。
「守るって、難しいね」
シーアが呟くと、エレナがこちらを向いた。
「あのシールド。外から入れないから、安全だと思った」
「私も」
「助けに行く人も、入れなかった」
エレナは返事をしなかった。二人とも、しばらく床を見て歩いた。
通路の先には、大きな窓のある待機室が設けられていた。セレナは二人を椅子へ座らせ、水の入った容器を持ってきた。
シーアは受け取ったが、すぐには飲めなかった。エレナも容器を両手で持ち、膝の上に置いている。
窓の向こうを、エリアドゥ政府のシャトルが横切った。その音に顔を上げると、高空に大きな影があった。
《タイラント》だった。
⸻
軌道から高度を下げた巨艦は、雲の上にいた。
四キロを超える船体が、灰色の空の中に長く伸びている。艦の下から小さな光が離れ、警備艇と合流した。別の一機は向きを変え、宇宙港の方へ降りていく。
「シーア」
エレナが窓を指した。
「見てる」
シーアは椅子の背から身体を起こした。セレナも外を見たが、今度は何も言わなかった。
同じ船だった。一昨日はあの中を歩いた。古い隔壁と、新しく取り付けられた端末。補給庫に積まれた物資。DBY-817を動かすために更新された設備の説明も聞いた。
今、目に留まったのは砲塔ではなく、艦から離れていく艇だった。
入口のそばで、警備員が通信に答えていた。
「《タイラント》との回線は確保されています。軌道監視情報をこちらにも回してください。搬送艇の進入は地上管制と調整します」
少し間があり、警備員が端末の表示を送る。
「受信しました。救護所へ伝えます」
シーアは窓と、その端末を交互に見た。
あの艦のどこかに、情報を送っている人がいる。格納庫では次の艇を出す準備をしているのかもしれない。見学した時に台車へ積まれていた医療物資も、今はどこかへ運ばれているのだろうか。
艦に何を載せられるかは、考えてきた。戦闘機も、人も、救難艇も必要だと思っていた。そのための場所を見せてもらい、維持するのに大勢が働いていることも知った。
今日は、そこから出てきたものを、この街の人が受け取っていた。
「見学した時と、少し違いますね」
エレナが言った。
「同じ船なのに」
「艇がいっぱい出てる」
「それもですけど」
エレナは入口の警備員へ目を向けた。その先では、別の職員が救護班に何かを伝えている。
「こっちにいる人も、あの船の情報を待っているんですね」
シーアは頷いた。
昨日見た宇宙港には、船を動かす人がいた。管制も警備も、別々の場所で仕事をしていた。今は、その一部が上空の艦とつながっている。
「エリアドゥが、船になってるみたいだ」
「街が、ですか?」
「中が街みたいなんじゃなくて。あそこから、こっちの街を動かしてる」
うまく言えなかった。エリアドゥのすべてが、あの船の中にあるはずはない。ここにいる警備員も、救護班も、自分の仕事をしている。
それでも、船が来たことで、その人たちが使えるものが増えていた。
シーアは手にしていた容器を持ち直した。ようやく水を飲むと、口の中がひどく乾いていたことに気づいた。
⸻
アルドレンが入ってくると、シーアは椅子から立ち上がった。
「父上」
父はすぐにそばへ来て、息子の肩へ手を置いた。顔と服を確かめ、袖から出ている腕を見る。それからエレナにも身をかがめた。
「怪我はないな。二人とも」
「うん」
「はい」
アルドレンは息を吐き、セレナを見た。
「ありがとう」
「仕事です」
彼女はそれだけ答え、シーアの手から空の容器を受け取った。机へ置く時、小さな音がした。
シーアは父の顔を見ていた。
「取締役の人たちは?」
アルドレンはすぐには答えなかった。シーアの肩に置いた手を、そのままにしていた。
「助からなかった」
「全員?」
「あそこに残っていた者は」
シーアは目を伏せた。
「警備のドロイドだったのに。どうして?」
「まだ分かっていない。なぜ撃ったのか、誰が何をしたのか。それを調べている」
「ネビュラ・フロント?」
「関係があるのかも含めて、調べる」
シーアは言葉を探したが、それ以上、何を聞けばいいのか分からなくなった。
「怖かったか」
父に聞かれ、少し間を置いてから頷いた。
「うん」
「そうか」
アルドレンは息子を引き寄せた。シーアは抵抗せず、しばらくその服に額を当てていた。
隣では、エレナが容器を机へ置き、何も持たなくなった手を膝の上で組み直していた。セレナがそのそばへ座る。
誰も、すぐに次の話を始めなかった。
やがてシーアが顔を上げた。窓の向こうに、まだ《タイラント》がいる。
「あの船、戦ってないよね」
アルドレンも外を見た。
「今のところはな。警戒と、地上への支援をしている」
「いっぱい動いてる。艇が出て、通信も来てる」
「ああ」
シーアは艦の下から離れていく光を追った。
「見学した時、最初に見たのは砲だった」
「お前の報告も、砲の話から始まったな」
「それは先に言うでしょう」
隣で、エレナが小さく笑った。事件が起きてから初めて聞く笑い声だった。シーアも少し口元を緩め、それからまた空へ目を向けた。
「あの船が別の星に行ったら、今日していることも持っていける?」
アルドレンは、息子の見ている方を確かめた。
「ある程度は。人も設備も運べる。ただ、今日も艦だけで仕事をしているわけではない」
入口では、警備員が地上管制への連絡を続けていた。
シーアは頷いた。そのことは、少し分かる気がした。船から来たものを使う人が、こちらにもいる。
クアットでカースへ話した言葉を思い出した。
共和国が、ちゃんとそこまで来られる船。
あの時は、速く、遠くまで行けて、着いてからもいろいろな仕事のできる船を欲しがった。今日は、その仕事の一部を目の前で見ていた。
「じゃあ、船が来れば」
シーアは一度言葉を切った。
「共和国も、来られる?」
アルドレンはすぐには答えなかった。
上空にいるのは、エリアドゥの艦だった。今ここで働いている人も、いくつもの組織に分かれている。そして、その下では共和国の代表者たちが、何も決められないまま会議を終えた。
「船だけでは足りない」
シーアが振り向く。
「だが、船がなければ、できないことも多い」
父はそれだけ言った。
シーアはもう一度、窓の外を見た。
「そっか」
まだ、分からないことの方が多かった。それでも、船が来れば何が始められるのかは、見学した時より少し具体的に考えられる気がした。
⸻
夕方、ヌート・ガンレイとロット・ドッドは、共和国側の質問にほとんど答えなかった。
ドッドは通商連合代表としての特権を主張し、正式な照会は文書で行うよう求めた。襲撃時に会場を離れていた理由については、二人とも同じ説明を繰り返した。
シャトルのプラズマ漏れを知らせる連絡があり、確認のために宇宙港へ向かった。だが、現地に着いた時には、呼び出したはずの相手を見つけられなかった。
連絡は誰から来たのか。従者は誰から話を受けたのか。担当官が問いを重ねても、二人の答えから全体は見えなかった。
「警備ドロイドが予定より多かったことには、気づいていましたか」
ドッドは少し間を置いた。
「我々も不審には思っていました」
「誰に確認を?」
「開会の直前でした。警備部門が追加したものと考えていました」
ガンレイも、それを否定しなかった。
担当官は答えを記録した。二人を拘束する命令は出ず、やがて通商連合側は帰還の手配に入り始めた。
それまで各地の企業の利害を持ち寄っていた取締役会は、この日、会場に残っていた構成員をすべて失っていた。
⸻
夜になっても、セスウェナ・ホールの明かりは消えなかった。
共和国司法部門とエリアドゥ当局が、通商連合の技術者を交えて現場を調べている。十三体のドロイド、投射装置、入場記録、警備映像。回収された襲撃者の遺体と、まだ所在の分からない関係者の名簿。
記録は集まり始めていた。だが、それらを結びつける説明は、まだ出ていなかった。
迎賓館の部屋で、シーアは端末に映る《タイラント》を見ていた。
艦は軌道へ戻っていた。観測映像の中で、帰艦する艇の航行灯がゆっくりと動いている。大きな船体の一角に格納口の明かりが見え、その周囲にもいくつかの光点が待っていた。
今日、あの主砲は一発も撃たなかった。
それでも、見学した時よりずっと大きな船に見えた。
シーアの目は砲塔を探さず、帰ってきた一隻の艇を追っていた。その光が格納口へ収まるまで、画面を閉じなかった。