STAR WARS: STAR DESTROYER 作:あーくわいてんず
プロローグ:ギャラクティック・シティ
C.R.C. 7945.060
シーアは、コルサントを知っているつもりだった。
銀河共和国の首都。元老院議事堂と最高裁判所、司法省、無数の大使館や企業本社が集まり、定住人口はおよそ一兆。長い歴史の中で都市の上へ都市が重ねられ、現在の主要な表層であるレベル5127には、ギャラクティック・シティと総称される巨大都市圏が広がっている。
公王家の邸宅からフェデラル・ディストリクトへ向かう航路も知っていた。元老院議事堂の円蓋も、五本の尖塔を備えたジェダイ大聖堂も見慣れている。KDYのコルサント支社がどちらにあるか、司法省の尖塔がどの角度からなら見分けやすいかも分かる。上空を横切る艦艇なら、窓越しでもかなりの確率で艦級を言い当てられた。
だから、リヴィア・セリンに言われた時には、反論せずにいられなかった。
「シーアって、コルサントのこと何も知らないでしょう」
「知ってるよ」
「じゃあ、中央環状線の第三十二駅で降りたら、どこに出る?」
シーアは少し考えた。邸宅の近くで見た路線図を思い出そうとしたが、駅の番号までは覚えていない。
「フェデラル・ディストリクト?」
「違う」
「フィナンシャル・ディストリクト」
「それは二駅前。正解はアスクルー・ディストリクト」
「……知らない」
「ほら」
リヴィアは満足そうに笑った。
四十日あまり前の社交会で知り合ってから、時折顔を合わせるようになった。三歳年上の彼女は、会うたびに、シーアの知らないことを一つは見つけてくる。
「だから今日は、私が案内してあげる」
「何も知らないとは言ってないよ」
「じゃあ、知ってるところへ出たら教えて」
そう言って、リヴィアは先に歩き出した。
二人きりの外出ではなかった。少し後ろにセレナがいる。さらに離れて、買い物客に紛れたヴァラリアン家の私服警護員が二人。もう一人は先回りしており、リヴィアにもセリン家の警護員が一人ついていた。
それでも、いつもそばに見えるのはセレナだけだった。
警護側は当初、公王家の車列を使うつもりだったらしい。だが、リヴィアが、それでは街を見せる意味がないと主張した。行程を確認し、利用する区間を選んだ上で、公共交通を使うことになった。
セレナは今朝も行程表を見直していたが、前回の展望デッキとは違う。今回は許可がある。入ってはいけない場所へ行く予定もない。シーアとしては、何も問題のない外出だった。
「ここから」
最初に連れて行かれたのは、博物館でも史跡でもなかった。駅に直結した、巨大な複合商業施設だった。
入口を抜けたところで、シーアは足を止めた。
何十層もの回廊が吹き抜けを囲み、その間を透明な昇降機が上下している。荷物を積んだ小型リパルサーが専用の通路を抜け、上層からは人工庭園の緑が張り出していた。さらに高いところを都市交通の幹線が横切っている。ホロ広告は見る方向によって文字を変え、店先からは異なる言語の案内が重なって聞こえてきた。
「これ、全部お店?」
「ホテルも劇場もあるよ。診療所とオフィスも。上の方には住んでる人もいる」
「街じゃん」
「そういうところを見せたかったの」
リヴィアが人の流れへ入っていく。シーアも、上を見上げたままにならないよう気をつけて、その隣へ並んだ。
コルサントの街を歩いたことがないわけではない。ただ、これまでは邸宅から目的地へ向かい、用事が済めば戻ることがほとんどだった。元老院なら元老院。KDYならKDY。その間にある場所は、エアスピーダーの窓を流れる背景だった。
今は、その中を歩いている。
イソリアンの店から、焼いた香辛料の匂いが流れてきた。隣には人間向けの衣料品店があり、その先では、水棲種族用の生活用品が水槽状の展示区画に並んでいる。旅行者らしい家族と制服姿の学生がすれ違い、企業のIDタグをつけた会社員たちが、立ったまま昼食の相談をしていた。
「コルサントって、今、何人くらいいるんだろう」
シーアが呟くと、リヴィアも通路の先を見た。
「一兆くらいでしょう?」
「住んでる人はね。旅行とか、仕事で来た人もいるでしょう」
「ああ。そこまでは知らない。この辺りなんて、住んでる人より外から来る人の方が多い日もあるって」
シーアはもう一度、行き交う人々を見た。誰が近所に住んでいて、誰が別の星から来たのかは分からない。目の前の店で買い物をしている家族も、どこかの船から降りてきたばかりかもしれなかった。
「また船のこと考えてる?」
リヴィアに顔を覗き込まれ、シーアは少し間を置いた。
「……少し」
「分かりやすい」
彼女が笑った、その直後だった。通路の向こうに、艦船模型の店が見えた。
司法軍のドレッドノート級、コレリアン・コルベット、領事船。民間の貨客船や採掘船もある。棚の奥には、ミュニファスント級スター・フリゲートまで並んでいた。
「リヴィア」
「駄目」
「まだ何も言ってない」
「お店を見て、それから私を見たでしょう」
「五分」
「十分まで」
シーアは彼女を見た。
「いいの?」
「五分じゃ出てこないと思うから」
十二分後、セレナに時間を告げられて店を出た時、シーアの手には小さな紙袋が増えていた。
「結局、買ったんだ」
「小さいやつだけ。ミュニファスント」
「持ってないの?」
「これは砲塔の配置が、前に見たのと違うんだ」
リヴィアは袋の中を覗いた。
「同じ船じゃない」
「同じ級でも、建造時期や造船所で違うところが――」
「続きは歩きながら聞く」
また先へ行ってしまった。シーアは袋を持ち直して追いかけた。
⸻
昼食は、施設の最上階にあった高級店ではなく、中央環状線で二駅離れたフードホールで食べることになった。
「上は観光客向け。こっちにも同じくらいおいしいものがあるよ」
リヴィアにそう言われ、シーアは列車へ乗った。座席につくと、模型の袋を膝に置き、窓の外へ目を向ける。
しばらくは、建物の壁面と駅の案内表示が交互に流れていた。やがて高層建築が途切れ、片側の視界が大きく開けた。
「あそこ、低くない?」
今いる線路よりはるか下に、別の街があった。古い高層建築の上部が並び、その間を細い交通路が縫っている。こちら側の都市面から伸びる巨大な橋脚は、その街を越え、さらに下の暗がりへ消えていた。
「レベル5127じゃないんだ」
「あそこは違うと思う」
リヴィアも窓の外を見た。
「新しい街を上に造ったところもあれば、古い方をそのまま使ってるところもあるから。ここからだと、よく見えるでしょう」
「全部が同じ高さじゃないの?」
「こんな広いところ、全部まとめて建て替えないよ」
見ている間にも、古い建物の間から一機の公共輸送艇が上がってきた。こちらの交通レーンへ合流し、高い方の街へ向かっていく。
「じゃあ、5127って」
「今よく使ってる都市面の基準みたいなものじゃない? 詳しいことは知らないけど、地図でも高さが違う道は分けてあるよ」
シーアは窓へ少し身を寄せた。
これまではレベルの番号を聞くと、同じ高さの床が惑星を覆っているように考えていた。だが、目の前では新旧の街が違う高さで続き、その間を橋や線路や航路がつないでいる。
「五千層もあるんでしょう。下はどうなってるのかな」
「そこまでは行ったことない」
「全部、地図にはあるの?」
「どうだろう。埋まった場所もあるって聞いたし、五千層くらい分かってる、というだけかもしれないよ」
リヴィアは肩をすくめた。
「誰かが全部数えて歩いたわけじゃないでしょうし」
シーアは、橋脚の消えていく先を見た。番号を知っていることと、そこに何が残っているかを知っていることは、別なのかもしれなかった。
古いものを残したまま、新しいものを上から付け足す。クアットで見た改装中の艦や、《タイラント》の狭い通路を思い出した。昔の隔壁に沿って、新しい配線が引かれていた。
「また何か考えてる」
リヴィアが言った。
「船と似てるなって」
彼女は一瞬黙り、それからセレナを見た。
「やっぱり船でした」
「でしょうね」
セレナは驚かなかった。次の駅の案内が流れると、二人に降りる準備をさせた。
⸻
昼食を終えたあと、リヴィアは高層建築の展望区画へシーアを連れていった。
塔そのものがランドマークとして知られており、昇降機の前には旅行者が列を作っていた。事前に取っておいた予約を確認すると、二人はセレナとともに案内された。
高速昇降機の扉が開いた時、シーアはすぐには何も言えなかった。
透明な外壁の向こうに、都市が広がっていた。何本もの交通レーンが建物の谷間を抜け、近くの塔の間から、さらに遠い市街地が見える。その先には、霞に沈む別の街が続いていた。建物の切れ目には巨大な交通結節点があり、そこから伸びる幹線に沿って、新しい区画が連なっている。
「すごいでしょう」
リヴィアが得意そうに言った。
「うん」
「船じゃなくても?」
シーアは苦笑した。
「船じゃなくても」
「よし」
窓のそばまで行き、都市の中を探す。見慣れた円形の屋根は、すぐに見つかった。
「元老院だ」
巨大な円盤を伏せたような議事堂が、周囲の建物とは違う輪郭を作っている。そこから離れた場所には、五本の尖塔も見えた。
「ジェダイ大聖堂もある」
シーアが指すと、リヴィアも窓へ近づいた。
「こうやって見ると、近いんだね」
「同じフェデラル・ディストリクトだから」
「歩いたら、結構あると思うけど」
「コルサントで近いって言う時、歩く距離で考えないでしょう」
リヴィアは彼を見て、それから笑った。
「それはそうかも」
議事堂の周囲を、小さな粒のようなエアスピーダーが飛んでいた。その上を大型シャトルが横切っていく。
「父上、今日あそこにいる」
「また会議?」
「税金の話だって」
リヴィアが少し眉を寄せた。
「楽しくなさそう」
「朝も、そういう顔してた」
⸻
その頃、元老院議事堂に付属する会議区画では、アルドレンが卓上の資料を見ていた。
「課税そのものを止める提案なら、賛同はできん」
静かな声だった。だが、向かいに座るロット・ドッドは、不快そうに身じろぎした。
本会議ではない。最高議長府と関係委員会、主要な当事者による非公開の調整会合だった。ヴァローラムの隣でセイ・タリアが資料を確認し、課税対象航路への依存が大きい星系の代表たちが卓を囲んでいる。ナブー選出のシーヴ・パルパティーンも、その一人だった。
中央には、自由交易区域を経由してアウター・リムへ伸びる航路が映っていた。成立したばかりのBR-0371に基づく課税対象区間と施行規則案、その上に、通商連合をはじめとする商業組織の修正要求が重ねられている。
「停止など求めておりません」
ドッドは両手を広げた。
「問題にしているのは施行方法です。共和国は長年、自由交易区域の拡大を認め、辺境交易の相当部分を我々の輸送網へ委ねてきた。その航路に新しい税を課せば、費用は荷主や取引先にも転嫁されます。運賃だけで済む話ではない」
「税だからな」
セイ・タリアの視線が資料へ落ちた。
「殿下は、簡単に仰る」
「簡単ではない。だからエリアドゥでは、歳入の一部を航路警備や救難、税関、通信設備へ戻すよう求めた」
「元老院は、その条項を採用しなかった」
「だから今、別の形で戻せと言っている」
ヴァローラムが表示を切り替えた。課税対象区間に、司法軍の基地と巡察航路、救難拠点が重なる。何もない区間が目についた。
「新しい負担を課す以上、共和国が何を提供するのかという問題は残っています」
議長は航路図を見ながら言った。
ドッドがわずかに首を傾ける。
「共和国は、法的な安定を提供しています。我々も、その下で契約を結び、船を運航してきた」
「その法を現地で守れる力も必要だ。襲われている船は、法令を積んだ救命艇では助からん」
アルドレンの言葉に、今度は誰も表情を緩めなかった。
セイ・タリアが各代表の端末へ資料を送った。
「最高議長府案では、税収の一部を司法軍の航路警備予算へ自動的に繰り入れます。主要交易路上に救難拠点を増設し、加盟星系との共同管制も拡大する。まず三年間の時限措置とし、その間の実績を評価します」
「その場合、我々も警備能力の配分を再検討することになるでしょう」
ドッドが口を挟んだ。
「同じ航路に共和国の警備が置かれるのなら、通商連合が現在の規模を維持する必要性も変わります」
「護衛船を引き揚げるということか」
アルドレンが尋ねた。
「そこまでは申し上げていません。輸送量、課税額、保険料、共和国側の警備能力を総合して判断します。船腹配分や便数の調整が必要になる航路もあるでしょう。経済合理性の問題です」
船をどこへ回すか。どの航路を何便運航し、どの程度の護衛を付けるか。通商組織がそれを検討すること自体には、何も不自然な点はなかった。
だが、その判断で影響を受けるのは、会社の帳簿だけではない。
「大幅な調整には、事前通告を義務づけたい」
ヴァローラムが言った。
「主要航路の輸送能力を一定以上削減する場合は、該当星系と司法省へ通知する。生活必需物資については、代替の輸送手段を用意するための移行期間も設ける」
「経営判断へ共和国が介入すると?」
「加盟星系への輸送が途絶する恐れがあるなら、政府は無関係ではいられません。とりわけ、その判断が共和国の政策に伴うものであれば」
ドッドは資料へ目を落とした。
「一点、確認してもよろしいでしょうか」
パルパティーンの声だった。
「想定されている航路の再編には、チョメル・セクターも含まれますか」
卓上の星図が動き、ナブーを含む一角が拡大された。
「現時点で、特定の星系を対象とする計画はありません」
ドッドが答えた。
「ナブー航路の運航頻度についても、変更の予定はないと?」
「保証を求めておられるなら、それはできません。需要も費用も変わります。通商連合は慈善組織ではない」
「もちろん、ナブーもそのような要求をしているわけではありません」
パルパティーンは微笑んだ。
「税制を巡る対立によって、市民の生活費が上がることを懸念しているのです。事前に影響を知ることができれば、こちらにも備える余地があるでしょう」
「ナブーとの良好な関係を損なう意図はありません」
「それなら結構です」
パルパティーンは、それ以上追及しなかった。
アルドレンは二人を見比べた。今の言葉だけを取れば、脅迫とは言えない。運賃や便数の見直しを、直ちに違法と断じることもできなかった。それでも、その判断で、一つの惑星に届く食料や機械部品、医薬品の量が変わる。
哨戒艦を増やしただけでは、減った貨物船の積荷を代わりに運べるわけではない。
「我々が直面しているのは、そういう問題です」
ヴァローラムが言った。
「共和国には課税する権限がある。だが、その結果、民間の輸送網が縮小した時に、加盟星系の物流を維持する手段がないとすれば、自分たちの決定に責任を持てていない」
「それは通商連合の責任ではありません」
ドッドの返答は早かった。
「ええ」
ヴァローラムは頷いた。
「共和国の責任です」
会議室が静かになった。
アルドレンは航路図を見ていた。企業が強すぎると言えば、企業の力を削る話になる。共和国にできることが足りないと言えば、誰が何を用意するのかを決めなければならない。後者には、まだ埋まっていない欄がいくつもあった。
セイ・タリアが、残された協議事項へ目を通した。
「本日中に文面をまとめるのは、難しいでしょう」
ヴァローラムも否定しなかった。
「七日後に再開します。それまでに最高議長府から、事前通告制度と航路警備費の修正版を提示する。通商連合には、運航再編に伴う影響試算を提出していただきたい」
ドッドは不満そうだったが、拒絶はしなかった。
次の会合の日取りだけは決まった。
⸻
「まだ見てるの?」
リヴィアの声に、シーアは元老院議事堂から目を離した。
「お父様が窓から手を振ってくれるかも?」
「父上のいる部屋、窓があるかも分からないよ」
「夢がない」
リヴィアは肩をすくめ、展望台の反対側へ歩いていった。
こちらからは、フィナンシャル・ディストリクト方面が見えた。超高層建築の壁面に大きな市況表示が浮かび、商品価格や運賃の指数が、企業広告の間で入れ替わっている。
今度はリヴィアが足を止めた。
「面白い?」
「うん」
「数字しかないけど」
「あなたが砲の型番を読んでるのと同じ」
シーアは反論できなかった。リヴィアは手持ちの端末を取り出し、窓の向こうに表示されている指数を呼び出した。
「外縁航路の短期運賃、今朝見た時より上がってる」
シーアも覗き込んだ。数字は読める。だが、普段と比べてどれほど高いのかは分からなかった。
「何かあったの?」
「通商連合が便数を見直すかもしれないって。さっき見出しが出てた」
「もう船を減らした?」
「まだ。減るかもしれないから、先に貨物枠を押さえたい人がいるんだと思う」
リヴィアは運賃の推移を指で広げた。
「来月も運ぶ荷物はあるでしょう。船が減ってから探して、空きがなかったら困るから」
シーアは線の上がっているところを見た。
事故が起きてから救難艦を用意するのでは遅い。海賊が出てから護衛艦を造るのも遅い。今の話も、少し似ている。まだ船は減っていないのに、それに備える人がいるから、先に数字が動くのだ。
「ほら、ナブー便も」
リヴィアが別の欄を開いた。
「貨物保険の参考料率、昨日より少し高い」
「ナブーって、パルパティーン議員の星?」
「そう。チョメル・セクター。通商連合の輸送が多いから、影響が出ると思われてるんじゃないかな」
「何か起きるの?」
「そこまでは分からない。便が変わって、荷物が予定通り届かなくなるかもしれないでしょう」
リヴィアは、値の動いたところをもう一度見た。
「そういう心配を、少し余計に見てるんだと思う」
声には、さほどの驚きもなかった。
展望台の中央では、新作ホロドラマの予告が流れていた。旅行者が案内板を囲み、家族連れが窓の前で記念写真を撮っている。
予告が終わると、画面の端にニュースの見出しが出た。
《交易路課税を巡り、最高議長府と通商連合が協議継続》
その下に、短い続報が添えられていた。
《通商連合、課税実施後の一部航路について運航体制を再検討》
シーアは一度読んだ。リヴィアが端末をしまうと、二人も窓辺を離れた。
⸻
夕方には、さらに別の繁華街へ移った。
シーアは途中から、今どの区画にいるのかを何度か確かめるようになっていた。同じレベル5127でも、建物の形も、通りを歩く人々も、広告の言語も違う。大きな交通施設を越えると、その周囲には、先ほどまでとは新しさの違う街が広がっていた。
アスクルー・ディストリクトで降りると、雰囲気はまた変わった。
ホロシアター、劇場、飲食店、音楽ホール。空中に重なる広告の下を、夕方から遊びに来た人々が歩いている。列車を降りた客が次々と階段から出てきて、その人波へ加わった。
「ここが第三十二駅なんだ」
「そう」
「これを朝、当てろって言ったの?」
「コルサントを知ってるって言ったでしょう」
シーアは周囲を見回した。
「……ここは知らなかった」
「じゃあ、私の勝ち」
「何の勝負だったの」
「今、そういうことにした」
リヴィアは屋台で飲み物を二つ買い、一つをシーアへ渡した。受け取ったグラスから、甘い果物の匂いがした。
「コルサントって、一個の街じゃないんだね」
「惑星だからね」
「でも、ギャラクティック・シティって言うでしょう」
「全部まとめて、そう呼んでるんじゃない?」
シーアはストローを咥えたまま、通りの向こうを見た。朝にいた場所とは、別の惑星のようだった。
「共和国も、そうかも」
「何が?」
「一つの名前で呼んでるけど、中は全然違うから」
口にしてみると、それ以上うまく続かなかった。共和国にはたくさんの星系があり、コルサントにはたくさんの街がある。ただ、それだけの連想だったのかもしれない。
リヴィアは少し待ってから、顔を覗き込んだ。
「疲れた?」
「疲れてない」
「じゃあ、もう少し歩けるね」
「まだ行くの?」
言ってから、シーアはしまったと思った。
リヴィアが笑った。
「大丈夫。戻る駅はすぐそこだから」
「最初から、そう言ってよ」
セレナが追いつき、帰りの連絡を済ませたことを告げた。今度は車で邸宅まで戻るらしい。シーアは模型の袋を持ち替え、空いた手で飲み物を持った。
通りの広告が一つずつ明るさを増していた。建物の間に残っていた夕方の光が薄れ、その代わりに、店と交通レーンとホロ映像が街を照らし始める。
朝に嗅いだ香辛料も、昼食に出た食材も、袋の中の模型も、どこかから運ばれてきたものだった。今日見た店だけでも、毎日どれほどの荷物が届くのだろう。売る人がいて、買う人がいて、また次の荷物を待っている。
その流れが止まるところを、シーアはまだうまく想像できなかった。
元老院も、ジェダイ大聖堂も、銀行も、この街の中にある。展望台からなら場所を指せる。だが、窓から見た時には分からなかった街が、その間にいくつもあった。
少し先で、建物の外壁を覆うホロニュースが切り替わった。
交易路課税。通商連合。ナブー。
三つの言葉が、同じ画面に並んだ。
リヴィアが一度見上げた。シーアも目を向けたが、足は止めなかった。
二人は飲み物を手に、人の流れについて駅の方へ歩いていった。