STAR WARS: STAR DESTROYER   作:あーくわいてんず

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見えざる脅威

C.R.C. 7945.104.11/39 ナブー王室航路管制局

 

 王室航路管制局が最初の異常を記録した時、当直管制官ヴェダ・ソルンは、それを特に重要なものとは考えなかった。

 

 予定にない通商連合船が一隻。運航計画書は提出されていない。ただ、連合の船はナブー星系を頻繁に出入りしている。計画変更の通知が遅れることもあれば、積み替え地点を変えた大型船が、予定外の時間に現れることもあった。

 

 ソルンは《予定外進入》として記録した。処理区分は、軽微。

 

 二隻目がほぼ同じ方位から通常空間へ復帰すると、区分を《要確認》へ上げた。三隻目で、上席管制官を呼んだ。

 

「船団の予定は?」

 

「該当ありません。積み替えの通知もなし」

 

「連合側へ照会」

 

「送っています」

 

 返事を待つ間に、四隻目が現れた。五隻目。星系外縁で青白い閃光が繰り返されるたびに、監視卓へ新しい船影が加わった。

 

 ソルンは表示倍率を下げた。個々の船より、全体の配置を見る必要があった。

 

「……ナブーへ向かっていませんね」

 

 隣の管制官が言った。

 

 通常なら軌道港か積み替え点、あるいは待機軌道へ向かう大型船が、それぞれ別方向へ減速している。行き先は、主要進入航路の近傍だった。

 

 運用記録の《船団編成変更》が、《大規模航路再配置》へ書き換えられた。

 

 七隻目が第二主要進入航路上に位置を取ると、上席管制官は王宮への第一報を命じた。確認できた船籍と位置、連合側への照会状況をまとめるのに、四分かかった。

 

 《通商連合所属大型船舶による異常な航路占有を確認》

 

 その報告書には、まだ封鎖とは書かれていなかった。

 

 送信を終えた直後、別の卓から声が上がった。

 

「民間船から緊急照会。通商連合船から進路変更を要求されたそうです」

 

 ソルンが振り返る。

 

「どの船?」

 

「コレリア船籍。《アヴァレン》」

 

「回線をこちらへ」

 

 

C.R.C. 7945.104.11/52 ナブー星系外縁

 

 最初の通告を受けた時、《アヴァレン》の船長は、通信士が別の船への指示を拾ったのだと思った。

 

 コレリア船籍、登録トン数四万二千。船齢二十六年の中型汎用貨物船だった。農業機械の交換部品と医療用化学品、合わせて千八百四十トンを積み、ナブー第三軌道港へ向かっている。

 

 ハイパースペース離脱は予定通り。あとは航路標識と王室管制局の誘導に従えばよかった。船長がこの船に乗ってからの二十年間で、百回以上通ってきた区間である。

 

 到着予定まで四時間。前方には、青白い惑星が小さく見えていた。

 

『進入船舶へ通告。現在、本航路は一時的な航行管理下に置かれている。針路を変更し、星系外縁で待機せよ』

 

「……誰だ?」

 

 船長が副操縦士を見る。

 

「王室管制ではありません」

 

「それは分かる」

 

 局識別符号も、担当セクター番号も送られてこない。通信士が認証ヘッダを開いた。

 

「通商連合です。企業識別コード、TF-0817」

 

「何だと」

 

 船長は前方表示へ目を戻した。航路の右舷側に一つ、左舷側に一つ。さらに惑星寄りに二つ。大型船の反応があった。

 

 いずれも、武装化されたLH-3210型貨物船だった。

 

 通称、ルクレハルク級。三キロメートルを超える環状船体は、本来、膨大な貨物を運ぶためのものだ。通商連合はその一部に兵装と戦闘管制設備を加え、多数の搭載艇を運用する武装船団の中核として使っていた。

 

 一隻なら珍しくない。だが四隻が同時に、一つの星系の進入航路を挟んでいる。船長は、そんな配置を見たことがなかった。

 

「ナブー管制を呼べ」

 

「呼んでいます。回線混雑、応答待ち」

 

『《アヴァレン》、進路変更を確認できない。直ちに減速せよ』

 

 今度は、こちらの船名が入っていた。

 

「こちらコレリア商船《アヴァレン》、船籍登録CS-44197。正規航路上を航行中。ナブー王室管制から航行停止命令は受けていない。貴船の権限根拠を示されたい」

 

 四秒後、返答が来た。

 

『交易路の安全確保に伴う一時措置である。指示に従え』

 

「安全確保だと?」

 

「船長」

 

 副操縦士の声と同時に、警報灯が点いた。

 

「アクティブ照射。方位017、前方の船です」

 

「航法用か」

 

「いいえ。射撃管制帯域です」

 

 船橋が静かになった。

 

 《アヴァレン》に武器はない。防御シールドも、宇宙塵や小規模な衝突を想定したものにすぎなかった。前方の船が撃てばどうなるか、計算する必要はなかった。

 

「減速する。主推進を切れ。制動推力、五パーセント」

 

「船長――」

 

「進路を外縁側へ。ナブー管制へ航行妨害を通報しろ。通信、航行、センサーの各記録を封印保存。時刻証明も付ける」

 

「了解」

 

 制動が始まり、船首がゆっくりと指定針路へ向いた。遠距離表示には、その間にも光点が増えていた。

 

「新たに一隻、通常空間復帰。方位234」

 

 少し遅れて、もう一隻。巨大な環状船体が、ナブーへ伸びる航路の近くへ配置されていく。

 

 船長は、それを黙って見ていた。許可を得て通ってきた航路を、今は別の誰かの指示で離れなければならなかった。

 

 

C.R.C. 7945.104.12/11 ナブー王室航路管制局

 

 《アヴァレン》以外からも通報が入り始めていた。

 

 進路変更要求。減速命令。航路外での待機指示。そのうち二隻は、射撃管制帯域による照射を記録している。

 

 ソルンは局長の承認を受け、ナブーへ向かう全船舶に星系外縁での待機を勧告した。

 

 勧告理由の欄で、手が止まった。

 

 事故ではない。漂流物による航路閉塞でもない。武装船による妨害は報告されていたが、軍事行動として扱う指示は、まだ局に届いていなかった。

 

 既存の分類を確認した末に、《未確認の航行障害》を選んだ。三十秒かかった。

 

 ただし、詳細欄には確認できた事実をそのまま記した。通商連合船からの進路変更要求と、二件の射撃管制照射。分類が決まらなくても、起きたことまで曖昧にするわけにはいかなかった。

 

 送信直後、通商連合から最初の公式声明が届いた。

 

 共和国による交易路への一方的課税によって、安全かつ公正な通商環境が損なわれている。その影響を受ける航路で、一時的な安全管理措置を実施する。解除については、共和国政府との協議を求める。

 

 ソルンは二度読んだ。上席管制官も、横で黙って読んでいた。

 

「これ、どう扱います?」

 

「原文のまま記録しておけ。こちらの航行停止命令も出す」

 

「理由は」

 

「安全上の予防措置」

 

「連合と同じ言葉になります」

 

 上席管制官は声明から顔を上げた。

 

「だからといって、民間船を進ませるわけにもいかん。連合の権限を認めたのではない、とも明記しろ」

 

 ソルンは頷いた。

 

 画面の中では、また一隻の大型船が航路上に位置を取っていた。

 

 

 その日のヴァラリアン家コルサント邸は、普段より少し賑やかだった。

 

 ウィルハフ・ターキンが、数日前から首都に滞在していた。エリアドゥ事件後も続く治安と通商の問題について、元老院や司法省で会合があるという。その合間に、アルドレンを訪ねてきていた。

 

 ヴァルコス家も、産業関係の会合でコルサントに来ていた。両家が同じ惑星にいるのだから、子供たちも交えて昼食を取ろうということになったらしい。政治と商談に私事が混ざる、よくある大人たちの予定だった。

 

「それ取って」

 

 エレナに言われ、シーアは近くの皿を持ち上げた。

 

「これ?」

 

「うん。ありがとう」

 

 皿を渡してから、シーアは彼女の手元を見た。

 

「自分でも届いたでしょう」

 

「あなたの方が近かったから」

 

「少しだけだよ」

 

「じゃあ、少し助かりました」

 

 何か言い返そうとしたところで、壁際のホロ表示が暗転した。

 

 軽い警告音が鳴り、画面の上部に赤い帯が走った。音量を下げられていたニュース番組に、別の映像が割り込む。

 

『速報です。チョメル・セクター、惑星ナブー周辺で、通商連合所属の大型船舶が、複数の主要航路へ展開していることが確認されました』

 

 粗い遠距離映像の中で、環状船体がゆっくり回っていた。

 

「LH-3210……」

 

 シーアが口にすると、ターキンが一度こちらを見た。すぐに視線を画面へ戻す。

 

『確認されているのは、LH-3210型大型貨物船の武装改造型とみられています。一般に、ルクレハルク級と呼ばれる型です』

 

 映像が拡大された。

 

『王室航路管制局によれば、複数の民間船が進路変更を求められています。現時点で砲撃、死傷者は確認されていません。ナブー政府は、進入予定の船舶に対し、星系外縁で待機するよう勧告しています』

 

「何隻だ」

 

 アルドレンが訊いた。ちょうど、キャスターが数字を読み上げた。

 

『現在までに九隻が確認されています。映像の範囲外にも、同型船が存在する可能性があります』

 

 続いて現れた解説者は、まだ軍事封鎖と断定する段階ではない、と説明した。通商連合は安全管理措置と呼んでいる。ただし、第三者の航行を実力で阻止しているなら、その説明だけでは済まない。

 

「安全管理、か」

 

 ヴァルコス家の当主が、小さく繰り返した。

 

 ターキンはもう食事を見ていなかった。映像から起こされた星系図を見ている。

 

「配置を見ろ」

 

 シーアも画面へ顔を向けた。赤い点が、ナブーへ通じる航路に沿って広がっていた。

 

「この図が正しければ、少なくとも三隻は互いを支援できる位置にいる。別方向から突破しても、一隻だけを相手にすれば済む配置ではない」

 

「最初から決めてたの?」

 

「今朝思いついて船を集めたとは考えにくい」

 

 アルドレンがターキンを見た。

 

「どの程度前からだと思う」

 

「それは分からん。だが、船を集めるには出港の準備が要る。補給も、乗員も、搭載艇もだ。商業航路から回す船なら、代替船や傭船契約も手配しなければならん」

 

 ターキンは星系図を見たまま言った。

 

「船は会議室から突然生えてこない」

 

 シーアは、四十日あまり前の展望台を思い出した。

 

 リヴィアと見た市況表示では、ナブー便の保険料が少し上がっていた。まだ何も起きていないのに、と訊いたのを覚えている。あれが今日のこととつながっていたのかは、分からなかった。

 

『続報です。通商連合は今回の措置を、交易路課税に対する商業上および安全上の対応と説明しています。ナブー政府そのものを対象としたものではない、としています』

 

「でも、ナブーに入れないんでしょう?」

 

 エレナが訊いた。

 

「今のところはな」

 

 アルドレンが答える。

 

「じゃあ、ナブーが対象じゃないって、どういう意味?」

 

 すぐには誰も答えなかった。ターキンがグラスを置いた。

 

「言葉の意味と、船の位置が違うということだ」

 

「船は動かないのに?」

 

「ああ」

 

 エレナは画面を見た。

 

「じゃあ、船の方が本当なんじゃない?」

 

 アルドレンの眉が少し上がった。ターキンは一度エレナを見てから、星系図へ視線を戻した。

 

「少なくとも、現地の船長にとってはな」

 

 

C.R.C. 7945.104.13/26 コルサント、フィナンシャル・ディストリクト

 

 ハーロン・ヴェスが最初に見たのは、ニュースではなかった。

 

 チョメル向けの再保険料率が、朝の建値から急に離れ始めたという社内通知だった。

 

 船舶保険の引受主任として、チョメル・セクターを担当している。勤続十九年。事故率と、その数字を動かす事情を読む仕事には慣れていた。通知を確認してからホロネットを開き、十四分後、担当役員に判断を求めた。

 

 議題は、通商連合の《安全管理措置》を、現在の約款でどう扱うかだった。

 

 運航遅延か。政治危険か。戦争危険か。

 

 約款第十七条は、宣戦の有無を問わず、敵対行為による損害を戦争危険として扱う。宣戦していないから適用されない、という話ではなかった。問題は、武装した企業船による今回の行為が、どこからその条項に入るのかだった。

 

 待機中の積荷に損害が出た場合はどうか。指示を拒否して撃たれた船は。共和国司法軍が介入し、その後に損害が出た場合は。

 

「料率は?」

 

 役員の一人が訊いた。

 

「現状では提示できません」

 

「高すぎるということか」

 

「補償する範囲が定まっていません。再保険側も、同じ確認を求めています」

 

 危険が高ければ保険料を上げ、損害が大きければ引受額を絞る。その判断以前に、何を引き受けるのかが決まっていなかった。

 

「通常危険として出せないか」

 

「今日までの航路条件では見積もれません」

 

「では戦争危険に切り替える」

 

「適用範囲を法務と確認する必要があります。現在の再保険枠で扱えるかも含めて」

 

「その間は?」

 

 ヴェスは一瞬黙った。

 

「範囲を決められないまま、値段だけを出すわけにはいきません」

 

 二十二分後、役員会は決定した。

 

 既存契約は維持する。新規引受は、法務部の条項解釈と再保険の条件が確認できるまで一時停止。

 

 ヴェスが起案した通達は、三行だった。

 

 別の二社も、ほぼ同じ時刻に同様の判断を下していた。誰もナブーへの物流を止めるために決めたのではない。それでも、新しく出航する船が保険を求めた時、引き受ける窓口は減っていた。

 

 

 昼食は、とっくに終わっていた。

 

 アルドレンの端末には、先ほどから連絡が届いている。ターキンも一度席を外していた。戻ってきた時には食器が下げられ、ホロネットの音量だけが大きくなっていた。

 

『金融情報です。ナブー周辺の情勢を受け、チョメル・セクター向け貨物保険料が上昇しています。複数の大手保険会社が、新規引受を一時停止しました』

 

 経済担当記者が、続けた。

 

『既存契約が一律に失効するわけではありません。ただし、新たに保険を確保できない商船が出港を見合わせれば、物流への影響はさらに広がるとみられます』

 

「止めなくても止まる」

 

 シーアが言うと、ヴァルコス夫人がこちらを見た。

 

「何が?」

 

「船。連合が全部捕まえなくても、保険に入れなかったら、出てこなくなる」

 

「そういうことだ」

 

 ヴァルコス家の当主が頷いた。

 

「船会社は英雄じゃない。船や積荷を失った時に補償されない航路へは、簡単には出せない」

 

「薬も?」

 

 エレナが訊いた。

 

「薬も、機械も、交換部品も。ただし、今日明日でナブー全体が困るという話ではないよ。備蓄もあるし、自分たちで作れるものもある」

 

「長く続かなければな」

 

 ターキンが付け加えた。

 

 エレナは、しばらくニュースを見ていた。

 

「共和国が運べばいいのに」

 

「司法軍で?」

 

 シーアが訊く。

 

「それでもいいでしょう」

 

「もし、その船も止められたら?」

 

「共和国の船だよ?」

 

「だから、止められたらどうするのかなって」

 

 エレナは答えなかった。

 

 共和国の船なら通れる。シーアも、最初はそう思った。共和国の惑星へ向かう、共和国の航路なのだから。

 

 だが、その通りにしろと言って、目の前の大型船を退かせられるのか。

 

「司法軍は、どこにいるんだろう」

 

「近隣の巡察部隊について、報告を待っている」

 

 アルドレンが端末から顔を上げた。

 

「すぐ来られる?」

 

「それも含めてだ」

 

 シーアは星系図を見た。一隻だけ来れば済むとは思えなかった。赤い点は、最初の映像より増えている。

 

「船があることと、今回の任務に使えることは別だ」

 

 ターキンが言った。

 

「命令がいるんでしょう」

 

「命令と、その範囲だ。何をするために行くのか。どこまで武器を使ってよいのか。補給と増援をどうするか。相手が退かなかった場合も考えておかなければならん」

 

「向こうに着いてからじゃ駄目?」

 

「艦長が現地で決めることはある。だが、封鎖を解くために戦ってよいかまで、一人に決めさせるわけにはいかん」

 

「その間は、船が通れない」

 

「封鎖する側は待ってくれないからな」

 

 アルドレンの視線が、ターキンへ動いた。

 

「共和国政府は、まだ正式に認定していない」

 

「船長たちは、それを待ってから止まったわけではないだろう」

 

「認定すれば、次は誰に何を命じるかが問われる。言葉は重要だ」

 

「その間も、船の位置は変わらん」

 

 二人は一度、視線を合わせた。

 

 シーアには、どちらかが間違っているようには聞こえなかった。それが、余計に困った。

 

 

C.R.C. 7945.104.14/02 ホロネット・ニュース中央編集室

 

「『封鎖』だけでは出すな。確認できた範囲を付けろ」

 

 編集責任者が言った。

 

「現地政府も、まだその言葉は使っていません」

 

「政府の見解は別に取る。こちらで確認できているのは?」

 

「主要航路十二本中、九本で航行阻止。残る三本でも通商連合艦を確認していますが、妨害の通報はありません」

 

「なら、全面とは書けない」

 

 大型表示に、見出しが出た。

 

 《ナブー周辺で「事実上の封鎖」か》

 

 別の記者が顔を上げた。

 

「定期貨客船《メリディアン・スター》、ローディアへ目的地変更。乗客四百三十名」

 

「速報へ」

 

「輸送会社一社、ナブー便の停止を発表」

 

「社名と対象便を確認してから出せ」

 

「通商連合の二回目の声明が来ました」

 

「何と?」

 

「『安全管理措置は、航行の安全を確保するための限定的かつ平和的手段』」

 

「連合側の説明として出す。ナブー側は?」

 

「『武装船による自由航行の妨害を、安全管理とは認めない』と反論しています」

 

「それも併記。航行阻止の確認件数は、別に残しておけ」

 

 スタジオには、三人の解説者が入っていた。元司法省高官、大手物流会社役員、国際法学者。

 

「法学者には、発砲や宣戦布告がなくても封鎖と認定できるかを聞け。物流には保険の話。司法省には、軍を出せるかだけではなく、誰が命令できるかを」

 

「司法軍の方面部隊が、即応態勢を引き上げたという情報があります」

 

「確認は?」

 

「二系統。ただ、同じ命令を指しているかは確認中です」

 

「司法省にも照会しろ。出港命令と取り違えるな」

 

 若い記者が頷いた。

 

 編集責任者は、見出しの下に並ぶ記事を読み直した。通商連合の説明。ナブー政府の反論。船長たちから届いた記録。呼び方が決まるより先に、伝えるべき事実は増えていた。

 

 

C.R.C. 7945.104.14/40 ホロネット・ニュース

 

『宣戦していない、撃っていない。それだけで、封鎖ではないと言い切ることはできません』

 

 国際法学者が言った。

 

『武装船を配置し、第三者の航行を実力で阻止している。少なくとも、通常の商業活動として説明できる行為ではありません』

 

『軍事封鎖に当たると?』

 

『法的な評価には、対象となる範囲と、どのように強制しているかの確認が必要です。ただ、連合がどう名付けるかだけで決まるものではありません』

 

 元司法省高官が続けた。

 

『共和国政府が武力による封鎖と認定すれば、当然、解除のために司法軍を送るかという問題が出ます。送った部隊と連合側が、互いに退かなければどうするか。そこまで含めて決めなければなりません』

 

『では、共和国は何もできないのでしょうか』

 

『いいえ。どの措置を、誰の権限で命じるかという問題です。警戒態勢を上げることと、封鎖を実力で排除させることは、同じ命令ではありません』

 

 物流会社の役員が、画面の端に表示された運航情報を見た。

 

『そして、船会社はその結論を待てません。今日の便を出すかどうか、今日決める必要がある。保険会社も同じです。政府の法的判断が出る前に、物流では、既に封鎖と同じことが起き始めています』

 

 

C.R.C. 7945.104.14/51 共和国司法軍・チョメル方面連絡司令部

 

「待機態勢引き上げ、受領」

 

 当直参謀が命令書を開いた。隣の士官が、対象部隊を表示する。

 

「巡回任務へ投入可能な全艦ですか」

 

「そうだ。出港命令はない。弾薬は通常即応搭載量まで補充。戦時の追加搭載は、別命あるまで実施しない」

 

「戦闘機は?」

 

「基地防衛即応。星系外への発進は個別承認。休暇中の乗員は呼び戻せ」

 

 士官が手元へ記録していく。

 

「要するに、戦える状態にしろと」

 

「ただし、戦いに行く命令ではない」

 

「封鎖解除は、元老院の決定待ちですか」

 

「今のところはな」

 

 別の表示には、ナブー周辺の連合艦数が出ていた。確認十四。未確認情報を含めれば二十隻以上。

 

 士官は、それと自軍の稼働状況を見比べた。

 

「もし、退かせろと言われたら。今動ける艦だけでは足りません」

 

 参謀も同じ数字を見ていた。

 

「その前提で試算しろ。偵察と救難に出せる艦、船団護衛に必要な艦。それと、武力で解除する場合。任務を分ける」

 

「増援要求も?」

 

「まとめて上げる。到着までの日数と、補給拠点も付けろ」

 

「まだ命令は来ていませんが」

 

「来てから足りないと報告するつもりか」

 

 士官は頷き、作業へ戻った。

 

 出港命令はない。それでも、埋めておかなければならない欄は多かった。

 

 

C.R.C. 7945.104.15/08 ナブー王室政府

 

 声明文の第六稿で、表現が変わった。

 

 《組織的な航行妨害》が削除され、その場所に《通商連合による違法な封鎖》と記された。

 

「法務確認は?」

 

「済んでいます。女王府も承認」

 

 広報官が最終稿を開いた。

 

「では、この文面で送信します」

 

 15時08分。ナブー政府は初めて、公式文書で封鎖という言葉を使った。

 

 二分後、ホロネットの見出しが変わった。

 

 《ナブー政府、通商連合による「封鎖」を正式認定》

 

 疑問符は消えていた。十五分後には、ほかの局も同じ言葉を使い始めた。

 

 朝には、個々の船から届く異常報告だった。午後には、それらを一つにまとめる名前ができていた。

 

 ナブー封鎖。

 

 

 シーアの個人端末が震えた。リヴィアからの音声通信だった。

 

『ナブー便、全部じゃないけど、止まり始めてる』

 

 声の後ろでも、誰かが話していた。

 

『お父様のところ、ずっと通信が入ってる。保険屋さんが、新しい契約をほとんど受けなくなったって』

 

 シーアは少し考えてから、返信した。

 

『この前、展望台で見たやつ?』

 

『保険の話? うん』

 

『あの時から、こうなるって分かってたの?』

 

 少し間を置いて、返事が来た。

 

『分かってたら、少し上がるだけじゃ済まないと思う』

 

 シーアは画面を見つめた。

 

『あの時は、何か起きるかもしれないって話だったでしょう。今日は、本当に船が止まってる』

 

 そこで通信は途切れた。向こうで、また彼女を呼ぶ声がした。

 

 シーアは端末を伏せた。

 

 ホロネットでは、同じ遠距離映像が繰り返されている。武装化されたLH-3210型が、航路の近くにいる。画面の中で砲火が走ることはなかった。

 

 だが、あそこから進路を変えろという通信が届く。従わなければ、射撃管制装置を向けられる。

 

 それだけで、船長は船首を巡らせた。まだ出港していない船の予定も変わり、荷物は倉庫へ戻される。

 

 シーアは画面の隅の星系図を見た。ナブーの位置は変わっていない。赤い点が増えただけなのに、そこだけ急に遠くなったように見えた。

 

 

C.R.C. 7945.104.15/30 フェデラル・ディストリクト、最高議長府

 

 最高議長府へ集まる報告は、ホロネットの画面ほど整理されていなかった。

 

 同じ船を別々に数えた可能性のある観測記録。時刻の違う配置図。確認の取れていない証言。セイ・タリアは、それらを確度ごとに分けて卓上へ送った。

 

「連合艦は、十四隻まで確認しています。未確認情報を含めれば二十隻以上。ただし、重複の可能性があります」

 

 フィニス・ヴァローラムは、星図を拡大した。

 

「封鎖範囲は」

 

「主要航路のほぼ全て。現地政府は全面封鎖と報告しています。配置は変動中。司法省は法的評価を継続しています」

 

「発砲は?」

 

「確認されていません。射撃管制照射は六件。連合側は否定。死傷者の報告もありません」

 

 情報は増えていた。だが、それが一枚の確かな図になるには、まだ足りなかった。

 

「司法軍は」

 

「チョメル周辺の巡回部隊が即応態勢を引き上げています。燃料補給、乗員呼集を開始。任務別の投入可能戦力も照会中です」

 

「元老院承認なしで可能な範囲だな」

 

「はい。封鎖解除を任務とする実力展開には、別途の授権が必要です」

 

 ヴァローラムは椅子に背を預けた。

 

 別の表示には、各会派からの要求が並んでいる。即時封鎖解除。課税の凍結。事実確認の優先。司法軍派遣。派遣こそ挑発になるという反論。

 

 同じ事態に対して出された要求とは思えなかった。

 

「緊急本会議は」

 

「今夕には可能です」

 

「決議の見込み」

 

 セイは一瞬黙った。

 

「予測できません」

 

 ヴァローラムは鼻から息を吐いた。

 

「ホロネットには、何と出した」

 

「『最高議長府は状況を重大な懸念をもって注視し、関係各機関およびナブー政府と連絡を取っている』と」

 

「ひどい声明だ」

 

「事実ではあります」

 

「そこが一番ひどい」

 

 セイは答えなかった。

 

 ヴァローラムは、ナブーの近くに表示された船影を見た。

 

「パルパティーン議員は?」

 

「王室政府と連絡中です。まもなく声明を出します」

 

「通商連合は交渉を拒否しているのか」

 

「共和国政府との協議には応じる、としています。ただし、ナブー政府には、課税問題の解決が先だと」

 

「話し合う。その間も、船は退かさない」

 

「はい」

 

 ヴァローラムは指で机を一度叩いた。

 

「司法軍を送って、相手が退けば終わる」

 

「退かなければ、双方が武装したまま同じ航路に残ります」

 

「船を通せと命じて、向こうが止めれば、現場に選ばせることになる。退くのか、進むのか」

 

 セイは頷いた。

 

 次の命令を送る前に、発砲が始まるかもしれない。どちらが先に撃ったかを確認する頃には、既に次の艦が応戦しているかもしれなかった。

 

 ヴァローラムは窓の外へ目を向けた。遠くに、ジェダイ大聖堂の五本の尖塔が見えた。

 

「ジェダイは」

 

「評議会へ要請しますか」

 

「使節としてだ。武装している。現地で判断もできる。それでも、艦隊を送るのとは違う」

 

「交渉権限を与えるのですね」

 

「まず、直接話をさせる」

 

 セイは記録の手を止めた。

 

「元老院には」

 

「正式な決定を待てば、数日かかるかもしれない」

 

「最高議長」

 

 ヴァローラムは窓から視線を戻した。

 

「発砲を始めるためではない。始めさせないために送る」

 

 セイはしばらく最高議長を見ていた。やがて頷くと、新しい連絡先を開いた。

 

「評議会へ連絡します」

 

 

C.R.C. 7945.104.16/12 コルサント、フィナンシャル・ディストリクト

 

 ナブー向け短期貨物運賃指数は、前日終値比で17.4パーセント上昇していた。

 

 実際にナブーへ向かう船は減っている。指数に反映されるのは、輸送を引き受けるために提示された運賃だった。引き受け手が減り、条件も厳しくなる一方で、その価格を払えば予定通り届くと保証されたわけではなかった。

 

 チョメル向けの船腹の一部は、既に別航路へ振り替えられていた。船主は、いつ再開するか分からない航路に、使える船をいつまでも置いておかない。

 

 明日封鎖が解除されたとしても、輸送量までその日のうちに戻るとは限らなかった。

 

 物流会社の運航管理室では、配船計画の書き換えが続いていた。

 

「4107便、ローディアへ」

 

「4122便は?」

 

「コレリアへ戻す」

 

「積荷も?」

 

「倉庫へ。荷主と相談して、再配船を組む」

 

「医薬品が入っています」

 

「優先保管。保管条件を受け入れ側と確認してくれ」

 

「次は、いつ出せますか」

 

 運航担当者は、空欄になった出港予定を見た。

 

「まだ入れるな」

 

 その欄は、空いたまま残された。

 

 

 夕方には、昼食会は完全に別のものになっていた。

 

 大人たちは届く連絡に答え、端末を見せ合い、時折、画面の向こうの人物と話すために部屋を出ていった。帰る準備をしていたヴァルコス家の人々も、まだ邸宅に残っていた。

 

 ホロネットには、フェデラル・ディストリクトへ向かうエアスピーダーの流れまで映し出されている。

 

『最高議長府は、ナブー周辺で自由航行が妨害されていることを公式に確認しました。ただし、現時点で封鎖解除のための司法軍派遣は決まっていません』

 

 画面が切り替わった。パルパティーン議員が、記者に囲まれていた。

 

『ナブー市民は冷静に事態を見守っています。我々が求めているのは特別扱いではありません。共和国加盟惑星として保障されるべき自由な航行と、法の回復です』

 

『最高議長の対応は十分だとお考えですか?』

 

 パルパティーンは、穏やかな表情を崩さなかった。

 

『今は責任の所在を論じる時ではありません。一刻も早い、平和的な解決を求めています』

 

 シーアは画面から父へ目を移した。アルドレンは窓際で、届いた議事予定を確認していた。

 

「まだ決まってないんだね」

 

「決まっていないことと、何もしていないことは違う」

 

「何かしてるの?」

 

「巡察部隊の準備は始まっている。現地との連絡も、使える手段の確認もな。全部がニュースに出るわけではない」

 

 ターキンが横から言った。

 

「ニュースが政府の全部だとは思わない方がいい」

 

「でも、船はまだ行かないんでしょう」

 

「行かせる前にできることもある。司法軍だけが手段ではない」

 

 シーアが続きを訊こうとしたところで、セレナが入ってきた。

 

「公王殿下。元老院からお迎えです」

 

 アルドレンが端末を閉じた。

 

「行ってくる」

 

「今日、戻る?」

 

「分からん」

 

「また税金の話?」

 

 父は、一瞬だけシーアを見た。

 

「その税金の続きをな」

 

 ターキンも立ち上がった。

 

「私も司法省へ呼ばれた」

 

 ヴァルコス家の当主が、少し疲れたように笑った。

 

「せっかくの昼食だったのだが」

 

「もう夕方だ。十分長かっただろう」

 

「あなたは、そういう言い方をするから嫌われるんですよ」

 

 ヴァルコス夫人が言うと、ターキンは時計を見た。

 

「事実だ」

 

「それを言うからです」

 

 ターキンは特に気にした様子もなく、上着を受け取った。

 

 玄関では、使用人たちが端末や書類を揃えている。つい数時間前まで同じ卓についていた大人たちが、それぞれ別の場所へ向かおうとしていた。

 

「みんな行っちゃうね」

 

 エレナが言った。

 

「うん」

 

「これ、ずっと続くの?」

 

 シーアは、すぐには答えられなかった。

 

 ホロネットには、交渉はすぐ始まるという人もいれば、長引けば物流への影響は避けられないという人もいた。ナブーの街が撃たれたわけではない。ただ、船が通れなくなった。それを元に戻すのが、いつになるのか分からない。

 

「分からない」

 

 結局、そう答えた。

 

 エレナは少し考えてから、もう一度画面を見た。

 

「早く通れるようになるといいね」

 

「うん」

 

 シーアも、そう思った。

 

 

C.R.C. 7945.104.17/40 フェデラル・ディストリクト周辺

 

 元老院議事堂の周辺では、通常より多くのエアスピーダーが行き交っていた。

 

 緊急会合へ向かう議員。省庁へ呼び戻された高官。企業代表。記者。ロビイスト。交通管制は臨時回廊を設定し、その外側をホロネット各局の中継艇が飛んでいた。

 

 速報には、もう《ナブー封鎖》とだけ出ていた。それで、何のニュースかが通じるようになっていた。

 

 議事堂の中では、事情はそれほど単純ではなかった。

 

 通商連合代表団は、課税問題の即時再協議を要求した。ナブー代表団は、課税問題と封鎖解除を別に扱うよう求めた。

 

 複数の加盟星系は、民間企業が武装船で加盟惑星への航路を閉鎖できるという前例そのものに懸念を示した。一方、課税に反対してきた星系の一部は、危機を招いたのは共和国政府だと主張していた。

 

 緊急会合は始まっていた。結論は、まだ出ていなかった。

 

 

C.R.C. 7945.104.19/06 最高議長府

 

「評議会から回答です」

 

 セイ・タリアが言った。ヴァローラムが顔を上げる。

 

「誰を送る」

 

「クワイ=ガン・ジン。同行者は、オビ=ワン・ケノービ」

 

「出発は?」

 

「準備が整い次第。外交任務用のコンスラー級を手配します」

 

「標準の外交船でいい。通商連合には、到着直前まで詳細を知らせるな」

 

「使節派遣そのものは通知しますか」

 

「交渉のため、共和国の使節を送る。それだけでいい」

 

 セイが記録した。

 

「交渉権限の範囲を確認します。課税問題そのものについて、譲歩する権限は?」

 

「持たせない。目的は、封鎖解除のための直接協議だ」

 

「連合が拒否した場合は」

 

 ヴァローラムは、しばらく答えなかった。外ではまだ、元老院各派との調整が続いていた。

 

「状況を報告させる。実力で解除させる任務ではない」

 

「元老院への説明は」

 

「使節派遣として行う。軍事行動ではない」

 

 セイが顔を上げた。最高議長は、卓上の星図を見ていた。

 

 会わせれば、退かせられるかもしれない。少なくとも、声明の応酬だけを続けるよりは、相手の意図を確かめられる。

 

「まず、会わせろ」

 

 ヴァローラムは言った。

 

 

C.R.C. 7945.104.22/18 コルサント、共和国政府用第四発着場

 

 一隻の船が、出航準備を終えていた。

 

 コンスラー級クルーザー。全長百十五メートル。赤い船体を持つ共和国の外交船、《ラディアントVII》。

 

 予定表の任務欄には、《外交輸送》とだけ記されていた。行き先は公開されていない。

 

 元老院の緊急会合を中継しているホロネットも、この船を映してはいなかった。発着場に記者はおらず、整備員たちは、通常の外交任務と同じ手順で最終確認を進めていた。

 

「主機、正常」

 

「ハイパードライブ、同期確認」

 

「航法データ、受領」

 

「外交識別ビーコン、正常」

 

 搭乗口へ、二人のジェダイが現れた。

 

 クワイ=ガン・ジンと、オビ=ワン・ケノービ。

 

 封鎖解除のために武力を行使する権限は与えられていなかった。共和国の代表として交渉するために、二人は乗り込んだ。

 

 搭乗口が閉じ、管制から離陸許可が下りた。

 

『《ラディアントVII》、第四発着場より離陸を許可。上昇回廊220を使用。軌道管制へ引き継ぐ』

 

『《ラディアントVII》、了解』

 

 反重力機関が船体を持ち上げた。

 

 赤い船はゆっくりと発着場を離れ、都市の上を流れる交通へ入った。やがて指定回廊に沿って高度を上げ、雲を抜けた。

 

 大気圏を離れ、軌道管制の誘導を受ける。船首が外宇宙へ向く頃には、ナブーへ至る跳躍経路が確定していた。

 

 星々が線へ伸びた。

 

 《ラディアントVII》は、ハイパースペースへ消えた。

 

 その出航を速報した局は、一つもなかった。

 

 

 ヴァラリアン邸の窓からも、その船を見分けることはできなかった。

 

 夜になったコルサントの空には、あまりにも多くの船がいた。到着する船、出発する船。貨物船も旅客船も、政府艇もシャトルも、遠くから見れば光の列に紛れていた。

 

 エレナはもう帰っていた。アルドレンは元老院から戻っていない。ターキンもいなかった。昼間は人の声が絶えなかった部屋が、急に広く感じられた。

 

 シーアは窓辺に立ち、その空のずっと向こうにあるはずのナブーを考えていた。

 

 四十日あまり前、リヴィアと歩いた街には、何でも届いていた。模型店にも、昼食を食べた店にも、銀河のどこかから運ばれてきたものが並んでいた。

 

 ナブーでは今日、その荷物を積んだ船が追い返された。これから来るはずの船も、別の場所へ向かい始めている。

 

 窓の外を、一隻の貨物船が横切った。

 

 あの船にも、行き先がある。そこで荷物を待っている人がいる。コルサントでは当たり前に続いていることが、ナブーでは止められていた。

 

 シーアは端末を開き、昼のニュースで見た貨物船を探した。《アヴァレン》。農業機械の部品と医療用化学品を積んでいると、放送では言っていた。

 

 運航案内の行き先は、ナブー第三軌道港のままだった。到着時刻だけが、未定に変わっている。

 

 更新しても、表示は同じだった。シーアは端末を窓辺へ置き、外を通る船を見た。先ほどの貨物船は、もうほかの光と見分けがつかなくなっていた。

 

 ナブーへ向かう使節がいることも、共和国が既に一隻を送り出したことも、彼は知らなかった。

 

 ただその夜、封鎖を解くために共和国が送り出した船は、一隻だけだった。

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