STAR WARS: STAR DESTROYER   作:あーくわいてんず

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異動

C.R.C. 7952.122 アウター・リム、スカリフ軌道

 

 ゴランM3185シールドゲート・ステーションは、青い惑星の上をゆっくりと回っていた。

 

 巨大な開口部の向こうへ、雲が流れていた。船舶の通過を管理するための施設が、まだ何も囲われていない空に浮かんでいる。惑星シールドとの接続はなく、周囲を行き交う作業船も、ゲートを通る必要はなかった。

 

 指定された軌道へ搬入を終え、曳航に使った船が一隻ずつ離れていく。外側の作業灯は点いていたが、付属区画の大半は暗いままだった。基地化の最初の作業として、管制室と仮の連絡所へ電力を通し、人が入る前に空調と隔壁を確かめている。

 

 コルサントで工程を確かめてから、先発隊と輸送隊は別々に出発していた。途中の寄港と点検を終えたM3185が、今日、指定位置へ入った。シーアは二日前にスカリフへ着き、港湾局で受け入れの記録を照合していた。

 

 シーアの乗った連絡艇は、作業船が離れるのを待って接近した。窓の下へ島々が流れる。コルサントを発つ前に何度も見た写真より、海の色は明るかった。

 

「あれを全部使うんですか」

 

 操縦士が訊いた。

 

「最初は、一部だけです」

 

 シーアは、使う予定の区画を目で探した。仮の司法連絡所は、外からではどこか分からない。救難艇に使わせる係留場所には、作業用の艇が一隻入っていた。外付けの整備ユニットをつなぐ場所には、誘導灯だけが点いている。

 

 ゲートの管制設備を基地の当直へ使い、余裕のある区画へ人を置く。その周りへ、修理、医療、補給の設備を足していく。配置図では一つにまとめた領域ステーションも、今ここに届いているのは、その最初の施設だけだった。

 

 連絡艇が接続した先では、設営隊のキャプテン・ヘストが待っていた。

 

「ヴァラリアン。まず、こちらへ」

 

 挨拶を終えると、そのまま連絡室へ案内された。設営状況を見て回る予定だったが、ヘストは最初から通信記録を開いた。

 

「後続の貨物が、上がってこない」

 

「予定では、二時間後に最初の便が」

 

「その便だ。港側が、荷役許可を保留した」

 

 独立系輸送会社の《オルセナ》が、地上の貨物ターミナルで出港を待っていた。積荷は電力系統の接続機器、作業区画の空調部材、医療区画に入れる設備。船の手配は済んでいた。積載する物も、倉庫には届いている。

 

 港湾事業者から来た文書には、施設使用契約について再確認が必要だとあった。

 

「現地当局の承認は?」

 

「生きている。こちらの係留位置も、作業許可も取り消されていない。ただ、民間の施設を使って物を積むところで止まっている」

 

 シーアは出発前に確認した書類を開いた。使用できるという回答がある。契約の番号も同じだった。

 

 追加された文書には、その事業者が別に結んでいた長期契約の条項が引用されていた。航路の保安体制に重大な変更が生じる場合、設備と資材の利用条件を再協議する。以前からあった一文だったが、これまで今回の作業に適用するという説明はなかった。

 

「通商連合ですか」

 

「法務代理人の署名がある」

 

 ヘストは別の通信を開いた。連合側が政府へ提出した抗議文だった。

 

 軍事的な前進拠点の設置。商業活動への威圧。既存の保安契約と港湾使用契約への重大な影響。建設活動の即時停止と、共和国政府による再協議を求める。

 

 シーアは最後まで読んだ。表題のすぐ下に、領域ステーション計画の名がある。連合の元老院代表が、最高議長府へ説明を求めたことも記されていた。

 

「ステーションは、もうここにあるのに」

 

 シーアが言うと、ヘストは頷いた。

 

「だから、これから付けるものを止めている」

 

 連絡室の壁には、実証工程が表示されていた。到着の欄だけが完了になり、その下の作業開始時刻は変わっていない。誰も、何時に直せばよいのか分からないのだった。

 

 シーアは椅子を引き、港湾事業者への照会を開いた。

 

「本部にも連絡します」

 

「こちらからは送った」

 

「はい。それとは別に、説明したい相手がいます」

 

 ヘストは一度彼を見たが、止めなかった。

 

 *

 

 地上の貨物ターミナルでは、《オルセナ》の船長が、三度目の積載時刻の変更を乗員へ伝えていた。

 

 船腹の前に資材が並んでいる。医療機器の容器には、温度管理の表示が点いていた。その向こうを港湾作業用の車両が走り、別の船の貨物を運んでいく。

 

 港は閉まっていなかった。

 

 共和国の積荷だけが、動いていなかった。

 

 シーアがヘストとともに事務所へ入ると、港湾局のタリ・エンが立ち上がった。今回の実証を担当する次長で、最初の補給案から調整を続けていた者だった。

 

「予定通りであれば、もう上でお会いしていました」

 

 彼女はそう言い、机の上の書類を寄せた。

 

「使用許可は有効です。地方議会も、今日の時点では承認を変えていません」

 

「では、事業者へ履行を求められますか」

 

「求めています。向こうは、履行できないとは言っていません。再協議が済み次第、続けると」

 

 窓の向こうで、積み終えた別の輸送船が離陸した。その脇には通商連合の識別標識があった。

 

 シーアはそちらを見た。商業施設の一部には、作業用の艇が移されている。別の場所で積もうにも、施設を空ける手続きが必要だった。港湾局がそちらを確保しようとすると、今度は別の契約の利用予定が出てきた。

 

 ヘストは、公共の積載区画を使えるかと尋ねた。

 

「重量物の一部は扱えません。小さいものだけ先に送ることはできます」

 

「それをお願いします。現地の許可と契約でできる分を、こちらで整理します」

 

 シーアが答えると、エンは頷いた。彼が一切を決める者ではないことは知っている。それでも説明を始める時、彼女の視線はヘストより先にシーアへ来た。

 

「あなたが、本部でまとめた方ですね」

 

「はい」

 

「こちらも、最初の職員を選びました。共和国の機関へ派遣する者と、整備契約で雇う者です」

 

 エンは名簿を開いた。勤務開始を待っている者の名前が並び、その横には、既に終えた講習と移動の予定がある。

 

「昨日、地元の学校で説明してきたところでした。宇宙港の仕事が、もう一つ増えると」

 

 シーアは名簿を見た。見覚えのある形式だった。船から借りる技術者の表と同じように、一人ずつ、前の仕事と次の仕事の間に予定が入っている。

 

「どのくらい待てますか」

 

「何を、ですか」

 

「人員の配置です」

 

「決まるまで待つ者もいます。別の仕事へ行く者もいるでしょう。こちらから、いつ始まると言えばいいのですか」

 

 シーアは、すぐには答えられなかった。

 

 そこで、端末が鳴った。アウレリアンからだった。

 

 彼は二人へ断って席を外し、廊下で通信を受けた。兄は元老院の執務区画にいた。後ろでは、補佐官が新しい声明を整理している。

 

『連合が本会議で扱うよう要求した。ボンテリらも、承認の範囲について再確認を求めている』

 

「協定の条件は守っています。今、止まっているのは、事業者側の契約です」

 

『それは分かった。ただ、向こうが使っているのは、その話だけではない』

 

 兄が映像を送ってきた。

 

 コルサントでの聴聞。シーアが、司法軍の行動能力は増すと答えた場面。次には番組のスタジオが映り、彼自身の声で、合意した範囲で進めるべきだと語っていた。その後に、KDYが公表した次世代艦艇の開発方針が続く。

 

 ヴェネター。マエルストローム。マンデイターII。

 

 《ネイビー・ギャップを埋める新戦力》という字幕の下へ、スカリフに搬入されたM3185の映像がつながる。三艦級が設計試験の段階であることは明記されていた。それでも、基地と艦隊は、同じ一つの構想として説明されていた。

 

 全く関係がないわけではなかった。

 

 シーア自身、別々では足りないと考えて、両方を進めていたのだから。

 

『ロジン議員が、企業艦隊を自由に行動させない配置を実現すると発言した。先日のニモーディアンについての発言も、一緒に流れている』

 

「僕は、そういう説明はしていません」

 

『知っている。お前が反対した箇所も流れている。それでも、彼と一緒に予算を求め、同じ番組で説明したことは変わらない』

 

「あの人の支持を受けずに、進められましたか」

 

 アウレリアンは、すぐには答えなかった。

 

『少なくとも、今より時間は掛かっただろう。私も、彼のまとめた要望を使って調整した』

 

 アウレリアンは弟を見た。

 

『お前の案を通すために賛成した者が、全員、お前と同じものを望んでいるわけではない』

 

 シーアは、事務所の扉へ目を向けた。中では、エンが公共区画で積める物の一覧を作っている。

 

「兄上。止まっている資材の一覧を送ります。荷役の妨害と、基地の権限の議論は分けて扱ってください」

 

『そうする。ただし、私が分けたいと思っても、相手は一緒に扱いたがっている』

 

「それでも、記録には分けて残してください」

 

 兄は頷いた。シーアは通信を切ると、カースの事務所への連絡を開いた。整備ユニットの輸送経路を替えられるか。現地の施設を使わずに、どこまで直接搬入できるか。

 

 その次に、ヴァントへ状況を送った。

 

 使える相手の名前を思い浮かべることに、もう時間は掛からなかった。

 

 *

 

C.R.C. 7952.126 スカリフ港湾局

 

 《オルセナ》は、まだ同じ岸壁にいた。

 

 四日間で、出港予定は三度変わった。積荷を公共区画へ移す案には、倉庫側の搬出許可が要る。別の荷役会社を使う案には、設備の使用契約が関わっていた。シーアとエンは同じ書類を何度も開き、前日と違う担当者へ説明した。

 

「この便は出ていますね」

 

 シーアは港の表示を指した。通商連合系列の輸送船が、予定通り荷物を積んでいる。

 

「ええ。通常の荷役は続いています」

 

 エンはその隣へ、独立系の貨物船を二隻表示した。こちらも出港していた。止まっているのは、共和国の基地設営に関わる荷物だった。

 

「今日、上へ送れたのは?」

 

「保全要員の食料と、生命維持装置の交換品です。安全上必要なものとして、扱いを分けてもらいました」

 

 新しい区画を使えるようにする機材は、まだ倉庫に残っている。

 

 シーアは、カースの事務所から届いた輸送案を開いた。大型の整備ユニットは、出荷を保留してもらっていた。ここまで運んでから受け入れられないと分かれば、曳航船と技術者まで待たせることになる。

 

「別の星系で積み替えて、直接つなぐことはできます。ただ、地上の接続機器までそちらから回すなら、追加の輸送枠が要ります」

 

「それを、今から取る?」

 

「見積もりと、空いている便を確認します」

 

 エンは頷いた。その返事をしながら、目は《オルセナ》の船長から届いた文書へ向いていた。次の契約のため、いつまでここで待つべきかを決めてほしいとある。

 

 シーアは、直接搬入の案へ護衛の要否を書き加えた。本部へ送る一覧の最初には、待機費用の合計を置いた。日付を一つ進めるたび、同じ仕事に掛かる金額が増えた。

 

 *

 

C.R.C. 7952.128 コルサント、共和国元老院

 

『これは、共和国の軍拡を口実にした企業による妨害です』

 

 ロジンの声は、議場全体へ響いた。

 

『正規の許可を受けた施設へ、正規の積荷を運べない。相手が私企業だからといって、いつまで国の側が待つのですか』

 

 ドッドは、商業契約に関する紛争へ軍事力を持ち込むのかと返した。続いて、保存してあった報道映像の提出を求めた。

 

 ニモーディアンに航路を預けるべきではない。

 

 議場の表示に、ロジンの顔が現れた。発言した本人は腕を組み、隣から差し出された端末にも目を落とさなかった。

 

『計画を推進する議員が、我々の種族を理由に排除を求めている。その要求と同じ時期に、出入管理にも使用できるシールドゲートが運び込まれた。関係がないと、我々の加盟企業や従業員へ説明せよと仰るのですか』

 

『その施設には、ニモーディアンの船も救難を求められる。担当士官が、同じ番組でそう説明したでしょう!』

 

 ロジンが返した。ドッドは、シーアの説明を否定しなかった。

 

『では、その保証を共和国政府の文書で示していただきたい。若い士官の善意に、顧客と乗員の安全を預けるわけにはいきません』

 

 通商連合とは別に席を持つ代表団からも、種族を理由に通航や施設利用の条件を変えないとの確認が求められた。その発言の後には、ロジンとともに教育要員の増員を求めた議員まで頷いていた。

 

 グレッシュが発言を求めた。

 

『ロジン議員の種族に関する発言は支持しません。同時に、その発言によって、事業者の契約上の義務が消えたことにもならない。現地で何が止められているか、まず報告を求めます』

 

 その要求が記録された直後、別の代表団から、司法軍の任務変更について発言要求が出た。

 

 アウレリアンは自席で、その代表団の名前を確認した。先週までは費用分担の修正にだけ参加していた星系だった。今日は、ボンテリらと同じ承認条件を求めている。

 

 通信欄には、シーアから届いた資材の一覧があった。下には、現地の使用許可と、事業者側の保留通知が並ぶ。弟は法的な争点を整理して送ってきた。どの事実を確かめればよいかも、分かりやすかった。

 

 だが、今の議場で争われているのは、その一覧だけではなかった。

 

『星系政府が認めたのは、限定された実証です』

 

 ボンテリは言った。

 

『それを中央政府の継続的な軍事展開の足場として説明する議員がいる。私たちは、計画を支持した時に、何へ賛成したことになったのかを確認しています』

 

『代表者一人の発言で、協定の内容は変わりません』

 

 アウレリアンが答えた。

 

『その通りです。ですから最高議長府にも、その解釈を明示していただきたい』

 

 彼女は言い終えると、新しい共同照会を送った。前より多くの代表団が名を連ねていた。補給拠点の受け入れには賛成しながら、中央の武力が恒常的に近づくことには条件を付けたい。それを同じ文書に書く者が増えている。

 

 モスマは、建艦計画の先行費用についても、対象とする任務を明確にするよう求めた。

 

『相手が建造していることだけで、我々の必要数を決めるべきではありません』

 

『相手が何を持つかを無視して、こちらの必要数が決まりますか』

 

 今度はロジンともグレッシュとも別の議員が返した。工業星系の代表だけではなかった。企業艦隊に依存している星系からも、共和国側に対処できる戦力が必要だという声が出た。

 

 その同じ代表団が、常駐部隊の使用権限についてはボンテリの照会へ賛同していた。

 

 アウレリアンは、相手の発言を聞きながら、補佐官へ次の面会を頼んだ。賛成票を一つ数えれば終わる話ではない。艦の建造には賛成し、基地の権限には反対し、税の増額には留保を付ける。同じ相手と、議題ごとに別の合意を作らなければならなかった。

 

 弟の資料へ、短い返事を書いた。

 

 《許可の有効性と荷役保留は、別件として調査を求めた。基地計画全体は、最高議長府が調整する》

 

 書き終えても、すぐには送らなかった。

 

 調整するという言葉が、現地で何を意味するのか。シーアは、おそらく次の通信で訊いてくる。

 

 アウレリアンは、その言葉を変えずに送信した。

 

 *

 

C.R.C. 7952.134 スカリフ軌道、設営中のゴランM3185

 

「護衛付きで直接搬入する案は、受け取った」

 

 最初の荷役停止から十二日が過ぎていた。別の港へ回す案も、直接搬入する案も、照会先から条件を付けられて戻ってきた。ヘストは一度、使わない作業艇を元の部隊へ返している。

 

 ターキンのホログラムが、狭い連絡室の中に立っていた。

 

 シーアはヘストの隣で、輸送案を開いていた。公共の施設で積める物を先に運び、重量物は別の港から出す。司法軍艦を護衛に付け、ステーションへ直接接続する。費用も時間も増えるが、地上の商業施設への依存は減らせる。

 

「外部の作業船が進路を塞いだ場合、退去を命じるのか」

 

「現地当局から、工事用の安全区画を設定してもらいます」

 

「連合側が、既存契約に基づく作業権を主張した場合は」

 

 ヘストが、現地政府と法務担当者への照会内容を説明した。両方の主張を調べている。軍として何を強制できるかは、まだ命令にできる状態ではなかった。

 

 ターキンは最後まで聞いた。

 

「最高議長府は、計画全体を預かる」

 

 シーアは画面から顔を上げた。

 

「設営は?」

 

「基地化に伴う新たな設備搬入と、部隊の常駐を停止する。シールドゲート本体は、現在の軌道に残す。保全と、既にいる者の安全に必要な作業は継続。関係する契約は、凍結に伴う処理を始める」

 

「本体を搬出する命令はない、と確認します」

 

 ヘストが言った。

 

「ない。ゲートは共和国側の資産として、最小限の保全要員を置く。以後の使用目的は別途判断する。惑星シールドの稼働も、今回の命令には含まれない」

 

 ヘストは復唱し、命令書の受領を確認した。

 

 シーアは、開いていた輸送案を見た。さっきまで、通れる経路を増やしていた。今は、通す物そのものを減らす命令が来ている。

 

「現地の承認を取り消したわけではないんですよね」

 

「そうだ」

 

「荷役を止めた側の主張が、正しいと決まったわけでもない」

 

「それも、その通りだ」

 

「では、先に止めた側の要求が通ることになります」

 

 ターキンは、すぐには否定しなかった。ヘストも、何も言わずに命令書を読んでいた。

 

「ここで武装艦を並べれば、資材の搬入を守るという説明だけでは済まなくなる。最高議長は、今その対立を選ばなかった」

 

 シーアは椅子の背から身体を離した。

 

 先にステーションを置けば、残りの判断を進められると考えていた。今、その判断は確かに出た。予定していた続行とは、逆のものだった。

 

 係留と保全の費用は、止めても掛かる。配置を変えた者たちの予定も、搬入前には戻らない。自分が進めるために使った事情が、そのまま凍結の負担になっていた。

 

「僕から、もう一度説明させてください」

 

「誰に」

 

「最高議長に」

 

 ヘストがこちらを見た。

 

 シーアは視線に気づいたが、言い直さなかった。最高議長へつながる相手が目の前にいる。その相手に頼むことで、もう一度扱ってもらえるかもしれない。

 

 ターキンは数秒、彼を見ていた。

 

「説明を受けたうえでの決定だ。追加の事実があるなら送れ。だが、同じ案を、相手を替えて通し直すための面会は取らない」

 

 シーアは口を閉じた。

 

 通信の向こうで、誰かがターキンへ資料を差し出した。彼はそれを受け取らず、シーアの返事を待っている。

 

 少し離れた机では、設営担当者が明日の勤務表を開いていた。命令が出れば、彼らはそれに合わせて動く。シーアが話し続ける間も、その予定を変える時刻は近づいていた。

 

「……凍結後の処理について、提案します」

 

「聞こう」

 

 シーアは、輸送案を閉じた。

 

「設営部隊を、期限のない待機にしないでください。戻す者と、保全のため残す者を分けます。借りた設備も、積み出し前のものは元の予定へ戻せるように」

 

 ターキンが頷いた。ヘストは、そのために必要な日程を出した。

 

「現地の雇用は?」

 

 シーアが続けた。

 

「採用準備や講習に、もう費用が出ています。共和国側の停止で生じた費用として、精算の対象に含めてください。事業者との紛争が終わるまで、職員の分まで保留にしないでほしい」

 

「金額と根拠をまとめろ。支払える範囲を財務と法務へ確認する」

 

 シーアは頷いた。

 

 話せば変えられることは、まだあった。だが、今変えようとしているのは、造る計画ではなく、止める計画だった。

 

 通信が終わると、ヘストが表示を消した。

 

「帰投案を手伝ってもらえるか」

 

「はい」

 

「私はこちらの残留要員を決める。君は、本部から派遣予定になっている者を確認してくれ」

 

 シーアは席を移り、常駐予定の一覧を開いた。司法官、医療班、整備技術者、通信担当者。一人ずつ、今いる場所へ照会を送る。

 

 必要な者を同じ場所へ集めるために作った表を、今度は別々の場所へ戻すために使った。

 

 *

 

C.R.C. 7952.138 スカリフ軌道、ゴランM3185

 

 凍結命令から四日後、エンがステーションへ上がってきた。

 

 地方政府の担当者とともに、設営の停止状況を確認するためだった。シーアは彼女を出迎え、使用予定だった区画へ案内した。

 

 司法連絡所になるはずの場所には、仮の間仕切りだけが立っていた。床へ引かれた線に沿って、机や通信設備を置く予定だった。窓の外には、海と雲が見える。

 

「見晴らしは、いいですね」

 

 エンが言った。

 

「コルサントの本部には、窓がありません」

 

 シーアが答えると、彼女は笑った。笑い終わると、また空いた床へ目を向けた。

 

「いつ再開する、と伝えればいいですか」

 

「今は、日を言えません」

 

「待っていてほしい、とも?」

 

 シーアは、三日かけて各部署の返答を集めた人員の処理案を開いた。

 

「ほかの仕事を断ってまで待ってほしいとは、言えません。既に掛かった費用については、こちらから確認しています」

 

 エンは頷き、資料を受け取った。その手つきは静かだった。シーアを責める言葉もなかった。

 

 その方が、返事に困った。

 

「最初の協議から、随分長かったんです」

 

 彼女が言った。

 

「補給施設ができれば、修理の仕事も来る。司法官が残れば、手続きをするために別の星系へ行かずに済む。何度も説明しました。ようやく、形が来たと思ったのですが」

 

 シーアは窓の外へ目を向けた。彼女が毎日暮らしている星だった。資料では、三つの候補地の一つにした場所だった。

 

「僕も、ここで始めたかった」

 

「ええ。それは分かります」

 

 エンは端末を閉じた。

 

「ただ、次に来る方にも、同じところから説明することになるのでしょうね」

 

 シーアは、自分の連絡先を送った。

 

「本部の担当窓口と、僕の連絡先です。異動しても、経緯は説明できます」

 

「では、困ったらこちらへ送っても?」

 

「はい」

 

 答えた後で、シーアは学院の机を思い出した。

 

 誰かの知り合いだから先に助けてもらえる、そういうものを減らしたいと話した。同じ仕組みで届くようにしたいと。

 

 今、エンが保存したのは、そこにいる自分の名前だった。

 

 取り消すつもりはなかった。別の誰かが彼女の書類を最初から読むより、自分へ連絡をくれた方が早い。それは、今のところ事実だった。

 

 エンを乗降区画まで送ると、作業員が仮の案内板を外していた。《司法連絡》《医療》《補給受付》。開設に備えて掛けた表示を、まとめて保管箱へ収めていく。

 

 ゲート管制室の表示は残った。そこから先には保全当直が入り、軌道と電力の監視を続ける。引継書の資産欄にも、搬入されたゴランM3185が、そのままスカリフ所在の施設として記載された。

 

 連絡艇が離れると、シーアは窓から開口部を見た。向こう側に海が見える。人と物資を迎える拠点にするつもりで運んできたものを、使い道が決まらないまま、ここへ残していく。

 

 艇内の端末には、予定されていた現地中継の取り消しが届いていた。理由の欄は、《計画見直しのため》だった。

 

 地上へ戻ってからも、精算と引き継ぎは続いた。予定を取り消すだけで済む者と、既に契約を結んでいた者を分け、帰投する要員を輸送便へ振り分けた。シーア自身がスカリフを離れたのは、それから四日後だった。

 

 *

 

C.R.C. 7952.150 コルサント、共和国司法軍本部

 

 帰路には中継基地へ寄り、残った器材の送り先を調整した。コルサントへ戻ってからも、関係部署への説明に二日を使った。

 

 運用局の机の上には、領域ステーションとは別の仕事が届いていた。

 

 教育支援班の調整。艦艇の設計試験に付ける運用所見。次年度の基地使用計画。シーアがいない間も、それぞれの担当者が資料を直していた。

 

 教育支援班には、独立した枠を整えるための先行措置が認められていた。すべての不足が埋まるわけではない。それでも、艦から借り続けていた者の一部を、教育任務そのものへ配置する手続きが始まる。

 

 装備計画の方には、試験契約の継続と、追加の比較資料を作成するという通知が付いていた。ヴェネター、マエルストローム、マンデイターII。三つの名前は、まだ任務へ出る艦の一覧にはない。

 

 だが、担当する技師と、使う試験設備と、その費用が付いた。

 

 企業側の造船契約にも、追加の発表があった。大型タイプの受け入れ準備、艦載機部隊の訓練、関連施設の整備。民間保安の需要に応じるためだと説明されている。

 

 共和国側では、その発表が次の必要戦力の検討資料へ加えられた。

 

 シーアは記事を保存し、装備担当者へ回した。それをしてから、スカリフの最終報告を開く。

 

 計画を止めた文書と、別の計画を進める文書が、同じ端末に並んでいた。

 

「局長が呼んでいる」

 

 ヴァントが言った。

 

 執務室には、メイランも来ていた。その隣にはターキンが座っている。シーアが挨拶をすると、以前の上官は、随分と顔を見る機会が増えたと言った。

 

「ニュースでですか」

 

「番組でもだ。補給施設の説明を、家で見るとは思わなかった」

 

 メイランは笑わなかった。シーアは椅子へ座り、用意してきた報告を開いた。

 

 局長が、スカリフの報告について確認を始めた。搬入の判断、現地側の同意、契約の照合、凍結後の処理。シーアは、自分が働きかけた箇所も含めて説明した。

 

 KDYの試験予定を前倒ししたことも、最高議長との面会で追加の議題を出したことも省かなかった。ロジンに賛同者を集めてもらい、放送で計画を説明したことも記録に入れた。

 

「計画そのものは、局の判断で進めた」

 

 局長は言った。

 

「搬入を認めた責任は、私にも、ほかの決裁者にもある。その点は審査で説明する」

 

 局長は、手元の報告を閉じた。

 

「それとは別に、君の勤務を変える」

 

 机上へ人事案が送られた。

 

 スティアガード宇宙基地。

 

 司法軍タスクフォース、TF-4B。

 

 作戦参謀。

 

 シーアは、その欄を読み直した。先日付いたキャプテンの階級は、そのままだった。任務と勤務先が変わる。

 

「運用局を出るということですか」

 

「そうだ。議長府と人事局の調整は済んでいる」

 

 シーアは、ターキンを見た。彼も人事案を開いていたが、今決まったことを読む顔ではなかった。

 

「スカリフの件で?」

 

「直接の契機は、そうだ」

 

 ターキンが答えた。

 

「君は、しばらくコルサントを離れた方がいい」

 

 シーアは椅子の縁へ手を置いた。現場の経験を積めと言われるのだと思っていた。その言葉が出る前に、首都を離れる方が先だと伝えられた。

 

「搬入を進めたのは、承認の範囲です。出演にも許可はいただいています」

 

「そうだ。出演許可を出した広報側も、君の顔で普段届かない視聴者に説明できると考えた。実際、成果はあった」

 

 局長は広報の報告を出した。番組の視聴状況、紹介された計画への問い合わせ、議員事務所からの説明要請。その下には、次回出演の予定があった。

 

 そこだけ、取消しの表示になっていた。

 

「だが、今では君を呼べば、次の政策が聞けると思われている。工業星系の議員が予算を付け、ロジンが賛同者を集め、君が番組で実施の見通しを話す。その後に、我々が予定を変えると答えなければならない」

 

「決まっていないことを、決まったとは言っていません」

 

「君が区別して説明したことは確認した。聞いている側が、同じように区別するとは限らない」

 

 シーアは制服の胸へ視線を落とし、それから局長を見た。

 

「その説明に箔を付けるために、僕を昇任させたんですよね」

 

 局長は、すぐには答えなかった。広報の報告を閉じると、人事案の下にあった勤務評価へ指を置いた。

 

「昇任には、実際の勤務も評価されている」

 

「番組の予定に間に合わせたことも、覚えています」

 

 部屋が静かになった。

 

「起用した側の判断も、今回の経緯に含める」

 

 ターキンが言った。

 

「ただし、それを理由に同じ配置を続けることにはならない。昇任は維持する。君をどこで勤務させるかは、別に決める」

 

 彼はスカリフの搬入記録を開いた。

 

「シールドゲートを先に運べば、残る協議を先送りしにくくなる。そう考えたな」

 

 シーアは否定しなかった。

 

「はい」

 

「放送で予定を話した時にも、同じ効果を期待したか」

 

 最後に出演した時の表示を思い出した。延期の可能性を訊かれ、すぐには頷かなかった。船も設備も準備していると、前を向いて答えた。

 

「……期待しました」

 

「なら、受け取られ方の問題だけではない」

 

 ターキンは人事案へ手を置いた。

 

「君は議員と企業を回り、放送で支持を集め、現物を置いて、政府の残る判断を促した。首都へ戻して同じ仕事を続けさせれば、次にもそれを求める者が来る。今回は、進めすぎた」

 

 シーアはスカリフの報告へ目を落とした。接続工事を待つ間にも費用が掛かる。だから早く決めてほしかった。その事情を、自分から作ったことも認めなければならなかった。

 

「資料を出して、回答を待つところまでにしておくべきだった、と?」

 

「働きかけることは仕事の一部だ。だが、政府が決め直す余地まで狭めてよいとは認めていない」

 

「止める判断には、従いました」

 

「報告で読んだ。その後の処理も含め、任務を続けられると判断している」

 

 局長が、次の勤務内容を開いた。

 

「TF-4Bは本部との調整をできる参謀を求めている。君には、そこで艦の運用と、企業や現地政府との調整を担当してもらう。広報出演と議会への説明は、ここで後任へ引き継ぐ」

 

「向こうの要望を出すことも?」

 

「必要なら出せ。今度は所属部隊の命令系統を通して、指揮官と一緒に責任を持つことになる」

 

 シーアは、取消しになった出演予定を見た。呼ばれた最初の理由は、自分の顔だった。話を聞いてもらえるようになったのは、それを使って説明を続けたからでもある。いずれも、ここで終わらせるつもりはなかった。

 

 しかし、次の説明を誰がするかは、もう決まっていた。

 

「いつからですか」

 

「一六五日付けだ。ここで持った照会を引き継ぎ、必要な説明を終えてから出発してもらう」

 

「はい」

 

 答えてから、シーアは勤務案を受け取った。作戦参謀として必要とされていることは、嘘ではないだろう。同時に、コルサントの議員や番組制作担当者が、明日の予定へ気軽に呼べる距離からは出される。

 

 メイランが、手元に残った資料をまとめた。

 

「引き継ぐ時に、反対した相手の名前も残しておけ。向こうで同じ案件に当たる者には、通った案だけでは足りない」

 

 シーアは頷き、ロジンの事務所を含めた連絡先の一覧を開いた。

 

 執務室を出ると、ヴァントが待っていた。

 

「スティアガードか」

 

「はい」

 

「向こうの連絡担当者を紹介する。こちらで用意できるものは、先に頼んでおこう」

 

 シーアは頷き、その場で端末を開いた。

 

 *

 

 その日の夕方、ハックスとラックスが本部の来訪者用ラウンジにいた。

 

 教育関係の説明を終えた帰りだった。シーアを見つけると、ラックスが空いている席を示した。前に会った時ほど急いではいなかったが、手元には、今度はシーアの方が未処理の照会を抱えている。

 

「スカリフは、止まったね」

 

 ラックスが言った。

 

「止まった」

 

「次の番組も、別の士官に替わった」

 

 ラックスが続けた。

 

「予告が変わっていたよ。君の名前が消えた」

 

「勤務が変わるから」

 

「そうか。スカリフだけでは済まなかったわけだ」

 

 ハックスは、シーアの新しい階級章へ目を向けた。

 

「階級は残ったんだな」

 

「降任の話ではないよ」

 

「知っている。顔を使いたい時は上げて、近くに置きたくなくなれば遠くへ送る。人事の扱いだけは、随分早い」

 

 シーアは返事をしなかった。その昇任を、受けると答えたのは自分だった。

 

「最高議長に、もう一度会おうとしたそうだな」

 

 ハックスの言葉に、シーアは顔を上げた。

 

「誰から聞いたの?」

 

「君が面会を求めていたという話は、こちらの連絡担当者にも来ていた。内容までは知らない」

 

「話はできなかったよ」

 

 シーアは鞄を床へ置いた。隠すようなことではないが、どこまで話が回っているのかは気になった。

 

 ハックスは、教育支援班の通知を開いた。

 

「こちらは進んだ。担当者が変わってから、話が早かったと聞いた」

 

「前から準備していた人がいる。僕が来る前から」

 

「それで、前は通っていたのか?」

 

 シーアは答えなかった。

 

 ラックスは、机の端へ置かれた公報の表示を見た。新しい設計試験の予算、企業側の発注、元老院の照会。シーアの名前が出ていないものの方が多い。だが、その幾つかに彼が関わっていることを、二人は知っていた。

 

「君は、制度を使っているつもりなんだろう」

 

「つもりじゃなく、使っているよ」

 

「ああ。だが、同じ制度を使っても、ほかの者にはできなかったことがある」

 

 ラックスは、シーアの軍服へ視線を移した。

 

「任官したばかりの士官が、委員長とメーカーと議長府を回る。相手は、君が頼んだことを自分の部署へ持ち帰る。次には、先に君の意見を聞きに来る」

 

「僕にはない権限を持っている人が、判断している」

 

「君がいなければ、その判断をする場そのものができなかった」

 

 シーアは背もたれから身体を起こした。

 

「だからといって、その人たちの権限が要らないことにはならない」

 

「今すぐ要らなくしろとは言っていない」

 

 ハックスは、通知を閉じた。

 

「ただ、君が動かす方へ行くことは分かっていた。あの議場が、自分から変わるのを待ち続けられる人間ではない」

 

 学院で聞いた時と同じ口調だった。それでも、あの時の失望はなかった。

 

 シーアは、それを否定しようとして、やめた。

 

 待っていられなかった。部隊へ人を戻すためにも、基地を造るためにも、設計試験を始めるためにも、自分から連絡した。断られれば次の相手を探し、条件が付けば直して持っていった。

 

 その間に、話を聞いてくれる相手が増えた。

 

「僕がいなくても、次は進むようにしたいんだ」

 

 言うと、ラックスは頷いた。

 

「君はそうするだろうね」

 

 反論されなかったことが、かえって気になった。

 

「でも、今、君を頼る者は増えている。制度が直るのを待つより、君へ頼んだ方が早いと知ったからだ」

 

 シーアの端末が震えた。

 

 スティアガードの連絡担当者からだった。先ほどヴァントが紹介した相手で、着任前に相談したい事項があるという。シーアは一度読んで画面を伏せたが、ラックスにはそれで十分だったらしい。

 

「次の勤務は?」

 

「スティアガード。TF-4B」

 

 ハックスは、そこでラックスと目を合わせた。

 

「首都から離すには、十分遠いな」

 

「向こうにも仕事はある」

 

「あるだろう。ただ、君をここに置いておくのは、誰かが嫌になった」

 

 シーアは答えなかった。ハックスは新しい階級章を見てから、顔へ視線を戻した。年明けに委員会の回廊で会った時には、まだ同じ階級だった。

 

「少なくとも、何もできない士官にする扱いではない」

 

「止められたことまで、褒めなくていい」

 

「褒めてはいない。君がどこまで動かしたかを見ている」

 

 ラックスは自分の端末を開いた。

 

「なら、向こうでも連絡を取れるようにしておいてくれ」

 

 ハックスも同じ連絡先を保存した。

 

 シーアは二人を見た。味方になったと言うには、考えていることが違いすぎる。それでも、以前より確かな期待を向けられていることは分かった。

 

 その期待を、受け取らないと言い切ることもできなかった。

 

 *

 

 邸宅へ戻る途中、シーアはエアスピーダーの中で、スティアガードから届いた照会を開いた。

 

 搭載艇の整備設備についてだった。既存の設備を使っているが、作業が重なると順番待ちが生じる。新しい部隊を受け入れる前に、補う方法を検討したいとある。

 

 シーアは、スカリフへ送るはずだった整備ユニットの予定を確かめた。前倒ししてもらった試験枠は、凍結によって宙に浮いていた。元の予定へ戻す調整を始めていたが、まだ輸送は実施されていない。

 

 カースの事務所へ連絡した。

 

 担当者に案件を伝えると、しばらくして本人へつながった。

 

『お帰りなさい。スカリフでは大変でしたね』

 

「はい。その件で、相談があります」

 

『再開ですか』

 

「試験先を替えられませんか。スティアガードです」

 

 カースは、向こうで何かを開いた。シーアは、施設の条件をまだ全て受け取っておらず、先方へ貸与を約束したわけでもないと伝えた。必要な確認を順に挙げると、カースは試験責任者の名を確かめた。

 

『こちらの技術担当者から、先方へ照会しましょう』

 

「僕の方でも、TF-4Bの担当者につなぎます」

 

『君も、そちらへ?』

 

「半月後には」

 

 カースは頷いた。

 

『では、現場で見てもらえるわけですね』

 

 窓の外で、元老院議事堂が後ろへ遠ざかっていった。シーアはカースとの通信を保ったまま、ヴァントへ送る確認事項を作った。誰が承認し、どの予算を使い、いつまでに決めれば輸送の予定を失わずに済むか。

 

 その順番は、もう分かっていた。

 

「カースさん。まず、今の出荷枠をいつまで残せるか、教えてください」

 

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