STAR WARS: STAR DESTROYER   作:あーくわいてんず

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大洋艦隊

 ヴェネター!?

 

 決戦編成のために発注された十一隻のヴェネター級は、誰も予想しなかった姿でカリダに到着した。

 

 全長一千六百四十八メートル。二十二基の重砲塔。それは本当に、ヴェネターなのか。

 

 一方、ネクサス・オルタイの宙域では、分離主義者の艦が、ひそかに、しかし確実に、その数を増やしていた。

 

 その中心に浮かぶのは、あの《マレボランス》の同型艦であった――

 

 *

 

C.R.C. 7955.342 《プライド・オブ・ザ・コア》、会議区画

 

 《ヴァリアント》がカリダの泊地に着いた翌日の朝、受領の会議が開かれた。

 

 卓の一方にグランド・フリートの艦政の担当官たちと、ホーンと、シーアがいた。その端にハロルド・タッグが座っていた。発注の書類に署名した国防相として、呼ばれていた。もう一方にサイブ・ドライブスの技術者が三人、座っていた。

 

 各席の端末に、性能の表が届いていた。

 

 全長、一千六百四十八メートル。幅、五百八十八メートル。高さ、三百二メートル。最大加速、三・六〇〇G。ハイパードライブ、Class二・〇。シールド、三千六百SBD。

 

 DBY-827型、重連装重ターボレーザー、二十二基。中型連装砲、八基。点防御の砲座、五十基。重プロトン魚雷の発射管、八基。トラクター・ビームの発生装置、八基。ドッキング・ベイ、三基。

 

 艦政の担当官の一人が表から顔を上げた。

 

「確認させてください。これは、ヴェネター級として発注したものですよね」

 

「はい」

 

 サイブの技術者の一人がにこやかに答えた。

 

「決戦編成用ヴェネターです」

 

「重い砲塔が二十二基あります」

 

「決戦編成用ですから」

 

「艦橋が一つですが」

 

「統合しました。艦の自動化を進めて、二つの艦橋の機能を一つにまとめています。乗員もその分、少なくて済みます」

 

「全長が千六百四十八メートルあります」

 

「決戦編成用ですから」

 

 担当官は表を見直した。それから、ホーンの方を見た。ホーンは何も言わなかった。口元が少しだけ動いていた。

 

 卓の端でKDYから立ち会いに来ていた技術者が、身を乗り出した。

 

「部品の八割が共通だと、書いてある。それなら、なぜ五百メートルも長い」

 

「同じ部品を同じ場所に置く必要はありませんから」

 

 サイブの技術者は卓の中央に建造の図を投影した。

 

 最初の頁には船体の外形が描かれていなかった。四角い箱が空間の中に並んでいるだけだった。反応炉。主機。格納庫。砲術の区画。艦橋。居住区。艦載機の整備の設備。箱と箱の間を構造材と通路の線が繋いでいた。

 

「必要な機能を先に配置します。配置を決めてから、接続して、最後に防御の構造で全体を覆います」

 

 KDYの技術者はその図を長いあいだ見ていた。

 

「……貨物船の造り方だ」

 

「大型船の造り方です」

 

 サイブの技術者はにこやかに答えた。

 

 サイブは、もとは通商連合の資本系列にあった造船所だった。企業向けの大型の輸送船や貨物船、武装した商船を造ってきた。その頃から、船の造り方は変わっていなかった。

 

 KDYは最初に一隻の軍艦としての船体を描き、その中へ反応炉と主機と格納庫と砲を収めていく。サイブは中身を先に並べ、それから船にする。同じ部品を使っても同じ艦にはならなかった。

 

 サイブの技術者は嘘を言っていなかった。

 

 調達の品目で数えれば、八割はヴェネター級と共通だった。機器もユニットも、ヴェネター級の工程から流れてくるものだった。サイブは戦争の前から、ヴェネター級を委託で造ってきた。その設計を隅から隅まで知っていた。そこへ国防省から、決戦の編成のためのヴェネターを、という発注が来た。

 

 決戦の編成のためなら、砲は多い方がいい。多くの砲を積むなら、船体は大きい方がいい。大きな船体を少ない乗員で動かすなら、艦橋は一つにまとめた方がいい。

 

 サイブの技術者たちは発注の文言を、文言のとおりに読んだ。読んで、造った。

 

 誰も、間違えていなかった。

 

「……受領します」

 

 艦政の担当官が最後に言った。

 

「ヴェネター級として」

 

「ありがとうございます」

 

 サイブの技術者たちは揃って頭を下げた。

 

 会議の後、通路でシーアはホーンと並んで歩いた。

 

「知っていたんですか」

 

「知らなかった」

 

 ホーンは言った。

 

「決戦編成用、とだけ書いて発注した。それ以上は書かなかった。書かなかったところを、サイブが埋めた」

 

 ホーンは通路の窓の外の、泊地に並んだ十一隻の艦影を見た。

 

「発注の文言は次から、もう少し丁寧に書く」

 

 通路の先でハロルドが待っていた。

 

「決戦編成用、とだけ書いたのは私の署名だ」

 

 国防相は言った。それから、窓の外の十一隻を見た。

 

「司法委員長だった頃、発注の文言を一語ずつ削られないように守ってきた。削られた語のせいで、欲しかった艦が来なかったことが、何度もあった」

 

 ハロルドは少しだけ口元を緩めた。

 

「今度は一語も削られなかった。そうしたら、頼んだよりも大きな艦が来た」

 

「困りますか」

 

 シーアが訊いた。

 

「困らない」

 

 ハロルドは答えた。

 

「予算はヴェネター級の枠のままだ。サイブはその枠の中で、あれを造った。部品の八割が共通だからだ」

 

 ホーンが小さく咳をした。笑いを隠したのだと、シーアには分かった。

 

 *

 

C.R.C. 7955.343 カリダ外縁、公試宙域

 

 公試は三日かけて行われた。

 

 シーアはリラと一緒に、《ヴァリアント》の艦橋に乗っていた。

 

 艦長はアデル・コーヴィンという、ヴェネター級で長く副長を務めてきた女性だった。サイブの工廠で、この艦の艤装の最後の半年を見届けてきた。艦橋へ上がってきたシーアに、少しだけ困ったような顔で敬礼した。

 

「ヴェネターの艦長のつもりで、受け取りに行きました」

 

 コーヴィンは言った。

 

「工廠へ着いたら、これが待っていました。半年、毎日、これはヴェネターだと自分に言い聞かせていました」

 

「言い聞かせられましたか」

 

「部品の八割までは」

 

 コーヴィンは艦橋へ上がる前の通路で、シーアとリラを案内した。

 

「こちらです」

 

 コーヴィンは右へ曲がった。

 

 三歩進んで、止まった。

 

「……失礼。こちらではありません」

 

 シーアは艦長を見た。

 

「半年、乗っていたんですよね」

 

「艤装を見ていました」

 

「違うんですか」

 

「違います」

 

 後ろから付いてきていたサイブの技術者が、平然と言った。

 

「その通路は先週閉鎖しました。第十一主砲の冷却管を増設しましたので」

 

 通路の扉も隔壁も案内の表示も、ヴェネター級のものだった。ヴェネター級に乗ったことのある者なら、この先は第二機関区画だと、見ただけで分かる扉だった。扉の先は第十一主砲の冷却区画だった。

 

「ヴェネターを知らない新人は案内図を見ますから、迷いません」

 

 コーヴィンは少しだけ疲れた顔で言った。

 

「ヴェネターを知っている者ほど、勘で歩いて、迷います。……私も含めて」

 

 全長はテクター級より長かった。それでも、乗員が使える艦内容積はテクター級より小さかった。二十二基の砲塔の台座と、その給電と冷却の設備と、大きな格納庫と、主機と反応炉が船体の中の大部分を占めていた。その隙間をヴェネター級の部品で作った通路が、階段と傾斜路と短い昇降機で繋いでいた。区画ごとに甲板の高さが少しずつ違った。

 

 公試の報告書には一週間後、一行が加わることになった。

 

 就役後七日間における乗員の所在不明の事案、十四件。全員、艦内で発見。

 

 一つにまとめられた艦橋は広かった。航法と、航空の管制と、戦闘の指揮と、艦内の管制。ヴェネター級なら二つの塔に分かれていた仕事の多くを、サイブの自動化の装置が引き受けていた。乗員はその分、少なかった。

 

 その代わり、艦の頭は一か所に集まっていた。この艦橋が潰れれば、代わりになる塔はない。自動化の装置はサイブの独自のもので、KDYの規格で育った整備員には、扱える者が少なかった。

 

 最初の日は推進と航行の試験だった。巨大な船体はヴェネター級より重かった。それでも、加速は悪くなかった。

 

 二日目に砲の試験があった。

 

「全主砲、最大の出力で射撃」

 

 《ヴァリアント》の艦長が命じた。

 

 二十二基の重連装の砲塔が一斉に旋回した。甲板の両舷に並んだ砲塔が標的の浮標の群れへ向けて、光を放った。

 

 浮標の群れが、光の中で消えた。

 

 艦橋の誰かが小さく口笛を吹いた。

 

「このまま、加速」

 

 艦長が命じた。

 

 機関の担当の士官が振り返った。

 

「主機の出力を落とします」

 

「落とす」

 

「全主砲を最大で撃っている間は、反応炉の出力の大半が砲へ回っています。加速に回せる出力が足りません」

 

 艦長は少しだけ眉を寄せた。

 

「加速を優先したら」

 

「射撃の周期が落ちます。二十二基を今の周期で撃ち続けることはできません」

 

 リラが機関の表示を覗き込んでいた。

 

「冷却の余裕も撃つたびに縮んでいます」

 

 リラは小さく言った。

 

「連続で撃ち続ければ、十分と少しで冷却の方が先に限界に来ます。ヴェネターの反応炉と冷却の系統を、そのまま大きくしたものです。砲のためだけの反応炉はありません」

 

 コーヴィン艦長がシーアの方を見た。何かを言われるのを待っているようだった。半年、これはヴェネターだと言い聞かせてきた艦が、ヴェネターとは違う形で、ヴェネターと同じ弱みを抱えている。それを、司令官がどう受け取るのかを待っていた。

 

 シーアは機関の表示を見ていた。

 

「撃てないんですか」とは訊かなかった。

 

「撃っている間は動かしにくい?」

 

 機関の担当の士官が頷いた。

 

「そうなります」

 

 シーアはそれで十分だった。

 

 撃つ艦と、動く艦を入れ替えながら戦う。この四か月、第3合同任務群の三つの任務群で、何十回も繰り返してきた。撃つ任務群が撃っている間、別の任務群が動く。撃ち終えた任務群は動いて、冷やして、次に備える。

 

 効力射の間だけ、猛烈に撃てばいい。撃ち終えたら、次の任務群に火力投射を引き継いで、射撃宙域を変換すればいい。

 

 この艦はそのために造られたわけではなかった。それでも、その戦い方にぴったりと合っていた。

 

 帰りの連絡艇の中で、リラが言った。

 

「テクターとは違う艦ですね」

 

「違う」

 

「テクターは撃ちながら走れる。あれは、撃っている間は撃つことしかできない。でも、砲塔の数は多い」

 

「一発は」

 

「比べない方がいいです。ハービンジャーの主砲はあれより一世代新しい。あの艦のDBY-827はヴェネターと同じ砲です」

 

 リラは連絡艇の窓から、遠ざかっていく《ヴァリアント》を見ていた。

 

「父が見たら、何て言うか」

 

「何て言うと思いますか」

 

「……よくできた、ヴェネターだ、って」

 

 それから、リラは付け足した。

 

「株の五一パーセントを買っても、設計者の頭の中までは買えなかったみたい」

 

 リラは少しだけ笑った。

 

 *

 

C.R.C. 7955.345 標準時一八時 《プライド・オブ・ザ・コア》、艦隊司令部区画

 

 三日目の公試が終わった、その日の一八時だった。

 

 十一隻の配属を決める打ち合わせは、短かった。

 

 艦隊全体の編成表と、第3合同任務群の編成表が並んで表示されていた。ほかの合同任務群のヴェネター級の欄には、合わせて十二と書かれていた。第3合同任務群の三つの任務群の欄には、三つの空欄があった。

 

「三隻、第3合同任務群へください」

 

 シーアは言った。

 

「何に使う」

 

 ホーンが訊いた。

 

「今までヴェネターがいたところです」

 

 シーアは編成表の三つの空欄を指した。

 

「第32、第33、第34任務群に、一隻ずつ」

 

 ホーンはしばらく編成表を見ていた。

 

「公試の記録は読んだ。撃っている間は動かしにくい艦だ」

 

「はい」

 

「任務群は撃って、動く」

 

「はい。任務群が火力投射を担う間だけ、あの艦が撃ちます。効力射の間、二十二基で射撃量を大きく増やします。効力射を終えたら、次の任務群に火力投射を引き継いで、射撃宙域を変換しながら冷やします。あの艦にずっと撃たせることはしません」

 

 ホーンは少しだけ口元を動かした。

 

「ヴェネターの代わりではなく、任務群の火力投射の時間を支配する艦として使う、ということか」

 

「そうです」

 

「残りの八隻は」

 

「ほかの合同任務群と、直轄の重戦列へ。合同任務群の戦列の中なら、火力投射を他の艦と分担できます」

 

 ホーンは表に書き込んだ。

 

 第1合同任務群、第2合同任務群、第4合同任務群、第5合同任務群と直轄重戦列。ヴェネター級、十二。決戦編成用ヴェネター、八。

 

 第3合同任務群。決戦編成用ヴェネター、三。

 

「持っていけ」

 

 ホーンは言った。

 

 十一隻が加わった時、艦隊の数字は九十八になった。四か月前、七十八隻で始めた艦隊だった。その間にヴェネターが十一隻抜け、それ以外の艦が二十隻加わり、そして、ヴェネターでもそれ以外でもない艦が、十一隻来た。

 

 その日の夕方、第3合同任務群に来る三隻の決戦編成用ヴェネターの艦長が、ハービンジャーの司令部区画に並んだ。

 

 《ヴァリアント》のコーヴィン。《アダマント》と《フォーティチュード》の艦長も、ヴェネター級の副長から上がってきた士官たちだった。三人ともヴェネターを受領するつもりでサイブへ行き、半年かけて別の何かに慣れて帰ってきた士官たちだった。

 

「三隻を三つの任務群に一隻ずつ入れます」

 

 シーアは言った。

 

「任務群の効力射の間、あなたたちの二十二基が、任務群の射撃のほとんどを担います。効力射を終えたら、次の任務群に火力投射を引き継いで、射撃宙域を変換しながら冷やしてください。ずっと撃つことは求めません」

 

 コーヴィンが少しだけ首を傾げた。

 

「効力射の時間は」

 

「公試の記録から、冷却が限界に来る前に終わる長さにします。十分より短く。その代わり、効力射の間は全部の砲で」

 

 二番艦の艦長が手元の表を見た。

 

「ヴェネターだった時は艦載機を出して、砲は脇役でした」

 

「今は砲が主役です。艦載機は任務群の他の艦が受け持ちます」

 

 三人の艦長は顔を見合わせた。

 

「それから、任務群の指揮について」

 

 シーアは続けた。

 

「ディム大佐が抜けた第32任務群は、コーヴィン艦長に。大佐の辞令は人事の審査へ回してあります。第33任務群はマドック大佐、第34任務群はヘイグ大佐が続けます」

 

 《アダマント》の艦長が、自艦の配置の欄を開いた。マドックの司令部が乗ることになっていた。《ヴェリタス》の艦長職は後任へ渡す。艦橋ではマドックが任務群を指揮し、その隣で艦長が艦を動かすことになる。

 

「ヘイグ大佐は《アクレイム》に残ります。《フォーティチュード》は、その指揮下へ。砲の多い艦へ、必ず司令部を移すわけではありません」

 

 コーヴィンはしばらくシーアの顔を見ていた。

 

「ヴェネターの艦長のつもりで受け取りに行って、任務群の指揮官になって帰ってきた、ということですか」

 

「頼んだとおりのものが来なかったのは、お互いさまです」

 

 コーヴィンは少しだけ笑った。

 

 *

 

C.R.C. 7955.346 カリダ、グランド・フリート艦政部

 

 整備の部門からの正式な苦情は、配属の翌日に届いた。

 

 部品の多くは、ヴェネター級と共通だった。それは、確かに助かった。

 

 だが、船体の寸法が違った。電力の管理が違った。砲術の手順が違った。冷却の手順が違った。艦橋の要員の編制が違った。自動化の設備を扱うための資格も、違った。

 

 整備の記録は、ヴェネター級の管理の票に入れられていた。ヴェネター級、サイブ・ドライブス、決戦編成用。その票でヴェネター級の整備の手順を引くと、半分が当てはまらなかった。当てはまらない半分を整備員たちは、一つずつ手で書き換えていた。

 

 苦情の文書には表が一枚付いていた。

 

 ヴェネター級用の主機の部品――共通。反応炉の補機――共通。生命維持の装置――共通。艦載機の整備の機器――共通。

 

 ヴェネター級用の乾ドック――使用不能。理由、艦が大きすぎて入らない。

 

 表の下に、整備の担当官が入力ペンで書き込んだ一行があった。部品は同じです。艦が入りません。

 

 文書の最後に整備の部門の責任者の署名と、もう一行が付いていた。

 

 同じ艦級として管理する方が、手間が掛かる。

 

 艦政の部門はその文書を二日で処理した。

 

 分類の変更の通知が全艦へ配られた。

 

 旧分類。ヴェネター級スター・デストロイヤー、サイブ・ドライブス、決戦編成用。

 

 新分類。ヴァリアント級スター・デストロイヤー。

 

 一番艦の《ヴァリアント》の名を取った。

 

 サイブ・ドライブスからは特に異議は来なかった。技術者たちは通知を読み、自分たちの造った艦に新しい名前が付いたことを知り、次の十一隻の建造に戻っていった。

 

 整備の部門だけが、ほっとした。

 

 国防省では、ハロルド・タッグが、サイブ・ドライブスへの第二陣の発注の書類に目を通していた。

 

 決戦編成用ヴェネター、第二陣、十一隻。

 

 ハロルドは端末を引き寄せ、入力ペンでその文言の横を示した。それから、書き足した。

 

 ヴァリアント級として。

 

 随員がその書き足しを見た。

 

「艦級の名前を書き入れるんですか」

 

「書き入れる。今度は何が来るかを知っているからな」

 

 ハロルドは署名した。

 

「前の発注の文言は変えるな。記録に残しておけ。決戦編成用、とだけ書いたら、何が来たのか。次の国防相が読めるように」

 

 コルサントの統合作戦本部で、ケスティンはその通知を毎朝の一覧に反映させていた。着く順に並んだ艦名の数は変わらなかった。九十八のままだった。十一行の艦級の欄だけが、VENATORからVALIANTへ変わった。

 

 参謀がその十一行を見ていた。

 

「ヴァリアント級。……発注の時はヴェネター級でしたね」

 

「発注の時はな」

 

 ケスティンは一覧の並びを確かめた。十一行は着く時刻の順に、他の艦の間に散らばっていた。強さの順でも、艦級の順でもなかった。

 

「どの艦級でも、着く順に並べれば、同じ表に入る」

 

 ケスティンは言った。

 

「名前が変わっても困るのは整備の部門だけだ」

 

 *

 

C.R.C. 7955.352 カリダ外縁、訓練宙域

 

「3群、全艦。演習、開始」

 

 コルヴェンが回線に言った。

 

 十四隻が訓練宙域の中へ散っていった。

 

 第32任務群。ヴァリアント級《ヴァリアント》、プロヴォケイター《アウクトリタス》《ディグニタス》、ヴィクトリー《トライアンフ》。

 

 第33任務群。ヴァリアント級《アダマント》、プロヴォケイター《ヴィルトゥス》《ヴェリタス》。

 

 第34任務群。ヴァリアント級《フォーティチュード》、プロヴォケイター《フィデス》《グラヴィタス》、ヴィクトリー《アクレイム》。

 

 そして、三つの任務群の後ろに、ハービンジャー、《ヘラルド》、《エンヴォイ》。

 

「仮想の敵、前方。距離、主砲の射程の端」

 

「32、効力射開始」

 

 シーアは言った。

 

『32、了解』

 

 コーヴィンの声だった。

 

 第32任務群の四隻が撃ち始めた。

 

 その中でヴァリアント級の二十二基の砲塔が、順番に光を放っていった。艦首の方から艦尾の方へ甲板の両舷の砲塔が、一基ずつ、途切れることなく撃っていく。最後の砲塔が撃つ頃には、最初の砲塔が次の充填を終えていた。二十二基を一斉に撃てば、反応炉にも冷却にも瞬間の負荷が集中する。だから実戦の射撃の手順では、砲塔ごとに発射の時刻をずらしていた。一斉射の重い一撃ではなかった。途切れない光の列が、仮想の敵の印の周りの空間を埋めていった。

 

 ハービンジャーの艦橋の窓から、それが見えた。

 

 《ヴァリアント》の甲板から、赤い光条が細かく、絶え間なく噴き出していた。一本一本を目で追うことはできなかった。光は束になって、仮想の敵の群れの上へ、シャワーのように降り注いでいた。降り注いだ光が消える前に、次の光がもう届いていた。

 

「撃つ、というより」

 

 コルヴェンが窓の外を見ながら言った。

 

「浴びせていますね」

 

 テクターの主砲は重い光を狙った一点へ叩き込んだ。《ヴァリアント》の二十二基は狙った空間を光で満たしていた。どちらが強いという話ではなかった。撃ち方が違った。

 

 訓練班から、回線に報告が入った。

 

『32、単位時間当たりの主砲の発射数、前回比二・四倍』

 

 その間に第33任務群が、第32任務群の脇を抜けて前へ出ていた。

 

「33、跳躍前進開始」

 

「32、効力射終了。射撃宙域変換」

 

 第32任務群のヴァリアント級が撃つのを止めた。反応炉の出力が砲から推進へ戻っていく。巨大な楔が向きを変え、次の位置へ動き始めた。動きながら、冷却の数字が少しずつ下がっていった。

 

「33、効力射開始」

 

 砲火が第33任務群のヴァリアント級へ移った。二十二基の砲塔がまた順番に光を放ち始めた。

 

 第34任務群が跳躍前進に入った。

 

 撃つ、動く、備える。三つの任務群がその三つを順番に回していた。効力射を担う任務群にはいつも、二十二基の砲塔が付いていた。

 

 その時、訓練班が仮想の敵の動き方を変えた。

 

「仮想の敵、右へ展開。予定の外です。第34任務群の側面へ回り込もうとしています」

 

 第34任務群は跳躍前進の途中だった。ヴァリアント級は、まだ効力射の姿勢に入っていなかった。

 

「35、右へ」

 

 シーアは言った。

 

 ハービンジャーが動いた。《ヘラルド》と《エンヴォイ》が続いた。三隻は撃ちながら、任務群の隊形を横切っていった。効力射でもない。射撃宙域変換でもない。跳躍前進でもない。どの周期にも属さない三隻が撃ちながら走り、第34任務群の側面の前に並んだ。

 

 仮想の敵の印が三隻の砲火に捕まって、止まった。

 

「34、効力射開始」

 

 第34任務群のヴァリアント級が二十二基で撃ち始めた。

 

「35、予備の位置へ」

 

 三隻のテクターが撃ちながら元の位置へ戻っていった。

 

 ヴァリアント級は火力投射の時間を支配する艦だった。テクター級はその時間に縛られない艦だった。第3合同任務群はその二つを別々の役に置いていた。

 

 《プライド・オブ・ザ・コア》の司令部の区画で、ホーンはその演習を大きな表示の端で見ていた。

 

 ほかの合同任務群と直轄の重戦列にも、八隻のヴァリアント級が入っていた。四隻のテクター級も。《プロクレイマー》《エミッサリー》《クーリエ》《ポーテント》。どちらも今朝の編成表で、それぞれの役の欄に振り分けられていた。火力投射の時間を支配する艦と、どの周期にも縛られない艦。

 

「第3合同任務群の使い方を戦列でも使う」

 

 ホーンは参謀に言った。

 

「十四隻でできることは九十八隻でもできる。任務群を合同任務群に合同任務群を戦列に置き換えるだけだ」

 

「少将にそう伝えますか」

 

「伝えなくていい」

 

 ホーンは表示から目を離さなかった。

 

「あの男はもう次の周期を数えている」

 

 *

 

 ハービンジャーの戦術表示の上で、十四の印が四つに分かれていた。

 

 第32任務群――射撃宙域変換。

 第33任務群――跳躍前進。

 第34任務群――効力射。

 第35任務群――機動予備。

 

 それぞれの印の横に、艦級の欄があった。プロヴォケイター。ヴィクトリー。テクター。

 

 そして、三つの任務群の一番上の欄に、受領の時にはどこの表にもなかった文字が並んでいた。

 

 VALIANT-CLASS。

 

 シーアはその文字には特に目を留めなかった。表示の隅の、任務群の周期の計時を見ていた。

 

「33、あと十八秒」

 

 シーアは言った。

 

 *

 

C.R.C. 7955.228 ネクサス・オルタイ

 

 カリダでグランド・フリートが最後の演習を終える、百二十四日前だった。

 

 共和国だけが四か月のあいだ、決戦の準備をしていたのではなかった。

 

 ネクサス・オルタイ。銀河平面座標Q-14。開戦の年、連合がこの星系へ侵攻し、共和国の艦隊が迎え撃った。共和国は最初の攻撃を退けたものの、グリーヴァス将軍の増援が到着すると、損傷した艦隊をまとめて撤退した。その後、共和国はこの地域の二十あまりの世界から後退した。連合の艦隊の士官たちはこの星系の名前を、共和国の艦隊を一度追い払った場所として覚えていた。

 

 最初に着いたのはプロヴィデンス級が一隻だった。

 

 修理のドックから出たばかりの艦で、前線のどこへも回されず、ネクサス・オルタイの外縁の泊地に、黙って錨を下ろした。共和国の索敵に掛かっても、修理後の待機にしか見えない場所だった。

 

 十日後にレキューザントが二隻。その半月後にミュニファスントが四隻。ルクレハルク級の司令艦が一隻。

 

 どの艦も一隻か二隻ずつ、別々の方角から、別々の日に着いた。どの艦も着いた後、どこも攻めなかった。

 

 共和国の地図の上では、その同じ数か月、戦争は小さな戦いの積み重ねになっていた。ジェダイの将軍とクローンの軍団が、辺境の星系に降り、奪い、次へ移る。連合の側もそれに応じて、小さな艦隊を出しては引いていた。

 

 小さな艦隊を出しては引いている間に、大きな艦隊が一隻ずつ、ここへ集まっていた。

 

 *

 

C.R.C. 7955.301 ネクサス・オルタイ

 

 輸送船が来始めた。

 

 最初は燃料の船だった。泊地の外縁に燃料の貯蔵の船が並び、燃料が移し替えられていった。次に弾薬の船。工兵の機材の船。占領した星系を治めるための、行政の資材を積んだ船まであった。

 

 地表の平原にドロイドの軍が降ろされ始めた。

 

 一度に降ろしはしなかった。一個大隊ずつ、何日もかけて。平原に並んだ大隊の列が少しずつ長くなっていった。

 

 補給廠の倉庫の管理を受け持つ戦術ドロイドが、毎日、在庫の数を数えていた。燃料。弾薬。部品。資材。その数は毎日、少しずつ、計画の数量へ近づいていった。

 

 その日の集計が終わる前に、グリーヴァス将軍からの回線が入った。ゼーア提督が応じると、向こうの艦橋では損傷したドロイドを運び出していた。将軍は報告を求めず、こちらの泊地の表示を開いた。

 

『また増えたのか。ライロスでは封鎖をめぐって艦を求めている。ボサウイでは共和国に艦を撃たれた。貴様の泊地には、戦える艦が何隻いる』

 

「先週より九隻増えました。ここで集結を崩せば、セスウェナへ向かう攻略軍の上空を取れません」

 

 ゼーアは泊地の外を見た。燃料船と弾薬船の間を、到着したばかりのレキューザント級が曳航されていく。将軍の側にもその映像は見えていた。

 

『ライロスにもボサウイにも敵がいる。貴様の目の前には補給船しかいない。貴様は船を並べているだけだ』

 

「並べ終えてから動きます。出すたびに小さな戦いへ分けていれば、共和国の艦隊を破る数はいつまでも揃いません」

 

 グリーヴァスの喉で乾いた咳が続いた。収まると、将軍は並んだ艦の印を爪で一つ叩いた。

 

『ならば、並べた数だけ沈めてみせろ。結果を見てから、貴様の言葉を聞く』

 

 回線が切れた。倉庫の戦術ドロイドは中断した在庫の集計へ戻り、ゼーアも端末を閉じなかった。燃料の欄には、まだ空きがあった。

 

 *

 

C.R.C. 7956.036 ネクサス・オルタイ

 

 集結を始めて、半年近くが過ぎていた。ネクサス・オルタイの宙域は艦で埋まっていた。

 

 中心に一隻の艦がいた。

 

 サブジュゲーター級《エクスターミネイター》。全長、四千八百メートルを超える細長い船体。両舷に開いた、巨大な砲口。デヴァロンで沈んだ艦と、同じ形をしていた。ラクサスの附属書に、七一号として申告されていた艦だった。

 

 本来は七九五六年の就役を予定していた。開戦で日程を繰り上げ、前年のパーレミアン演習作戦に投入するはずが、公試でイオン砲の主母線が負荷に耐えず、取りやめになった。交換を終えた頃には《マレボランス》が失われていた。その戦闘記録を受け、発射の手順と冷却系統に小改修を加えて、ようやくここへ来た。

 

 その周りに戦列の艦が並んでいた。

 

 主戦列。ルクレハルク級の戦艦、六隻。プロヴィデンス級のドレッドノート、十隻。プロヴィデンス級の空母、八隻。

 

 前衛。バルワーク・マークI級のバトルクルーザー、六隻。それに付くレキューザント級、十隻。

 

 戦列の護衛と軽艦。レキューザント級、三十隻。ミュニファスント級、五十隻。

 

 《エクスターミネイター》を入れて、百二十一隻。カリダにいる共和国の艦隊より、二割以上多かった。

 

 どの艦も乗員の大半はドロイドだった。有機体の乗員を集めて訓練する時間は、要らなかった。艦さえあれば、数は揃った。共和国にはそれができなかった。

 

 どれも、この数か月の間に、各地の造船所から、一隻ずつ、目立たないように回航されてきた艦だった。前線の星系を攻めるために使えば、共和国の目に留まる。だから、どこも攻めずに、ここへ集めてきた。

 

 戦列の外側にさらに艦の群れがあった。

 

 数えきれない輸送艦。揚陸艦。ドロイドの兵員を詰め込んだ輸送船。工兵の機材を積んだ貨物船。燃料の船。弾薬の船。

 

 惑星の地表の平原にはドロイドの軍が並んでいた。バトル・ドロイドの大隊が列をなして、上空の輸送船へ積み込まれる順番を待っていた。戦車、砲、工兵の車両。補給廠の倉庫には燃料と弾薬と、占領した星系を治めるための資材が積み上げられていた。

 

 戦争の形が変わった、と共和国は見ていた。連合の大きな攻勢は止まり、戦争は小さな戦いの積み重ねになった。敵の主力はどこかに温存されている。

 

 その、どこか、が、ここだった。

 

 *

 

 作戦会議の前に、ゼーア提督は、《エクスターミネイター》の艦長と、艦橋に立っていた。

 

 艦長はハイデン大佐という、五十代の男だった。この艦の艤装の最後の一年を造船所で見届けてきた。

 

「《マレボランス》の試験の記録は読んだか」

 

 ゼーア提督が訊いた。

 

「全部、読みました」

 

 ハイデン大佐は答えた。

 

「リュデク中将の最後の報告も。ラント大佐の射撃の記録も。それから、指揮官型のドロイドが最後に追記した、一行も」

 

「何と書いてあった」

 

「大型イオン砲の発射の後、艦の防御に空白が生じる。敵はその空白を観測した可能性がある」

 

 ハイデン大佐は艦橋の窓から、艦の両舷の砲口の方を見た。

 

「デヴァロンの後の小改修で、両舷を同時には撃たない手順にしました。片舷が撃つ間、もう片舷は冷却を終えて待つ。空白の時間を半分にしました。冷却の系統も外に張り出していたものを、船体の中へ収め直しています。《ポラリス》に割られた場所です」

 

 ハイデン大佐は少しだけ間を置いた。

 

「ただ、空白をなくしたわけではありません。左右に分けただけです。この艦はあの砲のために造られています。一撃で戦場を変える。その一撃のために、艦の全部が働く。それは、《マレボランス》の頃から、何も変わっていません」

 

「正面は」

 

「正面には置かせません」

 

 ハイデン大佐は言った。

 

「グリーヴァス将軍の言葉は正しかった。共和国の艦を正面に置くな。《マレボランス》は、それを守れなかった。舵を失っていたからです。本艦は舵を失う前に向きを変えます」

 

 ゼーア提督は艦橋の窓の外の、戦列の艦の並びを見ていた。

 

「デヴァロンであの艦を沈めたのは、テクター級の三隻だった」

 

「はい。先頭の艦はラクサスの交渉の頃から、我々の記録にあります。脅威度、七一号相当」

 

 ハイデン大佐は少しだけ口元を動かした。

 

「七一号相当、と分類されていた艦が七一号の同型艦を沈めました。今度は七一号そのものがここにいます」

 

 ゼーア提督は何も言わなかった。

 

 *

 

 《エクスターミネイター》の艦橋の後ろに、作戦室があった。

 

 壁の一面が星図だった。星図の上に一つの宙域が赤い枠で囲まれていた。

 

 SESWENNA SECTOR。

 

 エリアドゥ。スティアガード。スルイス・ヴァン。共和国の南の造船所と、補給の要と、艦隊の泊地。そこを落とせば、共和国の南は崩れる。南の側の連合の星系が一つに繋がる。

 

 作戦室の卓の端に、一人の男が立っていた。

 

 大洋艦隊司令官、ヴィクトル・ゼーア提督。

 

 ラクサスの艦隊で四十年、艦に乗ってきた男だった。白くなった短い髪と、深い皺の刻まれた顔。連合の艦隊の中で、グリーヴァスの下にいながら、グリーヴァスの戦い方をあまり好まないことで知られていた。

 

 卓の周りに参謀たちが並んでいた。有機体の士官が何人かと、戦術ドロイドが三体。

 

「攻略軍の準備は」

 

 ゼーア提督が訊いた。

 

「予定どおりです」

 

 兵站の参謀が答えた。

 

「地上軍の集結率、九十二パーセント。輸送船団は三日以内に全船が揃います。占領の資材、燃料、弾薬、いずれも計画の数量に達しています」

 

「よろしい」

 

 ゼーア提督は星図の赤い枠を見ていた。

 

「情報の参謀」

 

「はい」

 

「共和国はこれを見ているか」

 

 情報の参謀は少しだけ間を置いた。四十代の、痩せた男だった。

 

「見ていると考えるべきです」

 

「根拠は」

 

「この半年、我々の補給の経路が何度も断たれています。船団が消え、連絡員が消え、金の流れが止まった。デヴァロンの前には、《マレボランス》の補給の予定まで、共和国に読まれていた形跡があります」

 

 情報の参謀は手元の資料を開いた。

 

「連絡員たちの間では、呼び名があります。共和国の中に魔女がいる、と」

 

 作戦室の中が少しだけ静かになった。

 

「魔女」

 

 ゼーア提督がその語を繰り返した。

 

「誰なのかは分かりません。一人なのか、組織なのかも。ただ、我々が何かを動かせば、その何かは共和国のどこかに見られている。そう考えて、作戦を組むべきです」

 

 ゼーア提督はしばらく黙っていた。

 

「では、見せればいい」

 

 提督は言った。

 

「ここにあるものは全部、本物だ。攻略軍も輸送船も占領の資材も。我々は本当にセスウェナを取りに行く。共和国がそれを見ているなら、見ているとおりのことを我々はする」

 

 情報の参謀は何も言わなかった。

 

「嘘は一つもつかない」

 

 ゼーア提督は星図から目を離さなかった。

 

「共和国が読めるものは全部、本当のことにしておけ」

 

 ゼーア提督は星図の赤い枠の上に、手を置いた。

 

「セスウェナは取る」

 

 提督は言った。

 

「だが、セスウェナを取るにはセスウェナの空を、先に取らねばならない。攻略軍の輸送船が降りていく間、その上の空に共和国の艦隊がいてはならない」

 

 参謀たちは黙って聞いていた。

 

「共和国の艦隊はセスウェナを守りに来る。守りに来なければ、あの艦隊を作った意味がない。……空を取るとはそこへ来る艦隊を沈めることだ」

 

 ゼーア提督は星図から手を離した。

 

「それが、この作戦の最初の仕事になる」

 

 *

 

 作戦室の卓の上に、もう一つの表示が開かれた。

 

 共和国の艦隊の、推定の配置だった。

 

 カリダ。共和国の中央の泊地。そこに共和国が新しく作った大きな艦隊がいた。グランド・フリート、と共和国は呼んでいた。

 

 表示の上に艦の推定の数が並んでいた。九十隻から、百隻。マンデイター級。マエルストローム級。テクター級。そして、見慣れない艦級の名前が十一行。

 

「ヴァリアント級」

 

 戦術ドロイドの一体が平らな声で言った。

 

『四カ月前ノ観測デハ、存在シナイ艦級デス。ヴェネター級ニ類似シタ船体。全長、推定一千六百メートル以上。重砲塔、多数』

 

「共和国は四か月、何をしていた」

 

 ゼーア提督が訊いた。

 

『演習デス』

 

 戦術ドロイドは答えた。

 

『カリダノ外縁ノ訓練宙域デ、ホボ毎日。艦隊ノ出撃ハ、観測サレテイマセン。演習ノ内容ハ、遠距離ノ観測デハ、判別デキマセン。タダ、艦ノ動キ方ガ、四カ月前ト違イマス』

 

「どう違う」

 

『艦ガ、一隻ズツ動イテイマセン。塊デ動イテイマス。塊ガ、交代デ撃チ、交代デ動イテイマス』

 

 ゼーア提督は表示の上の、カリダの艦隊の推定の配置を見ていた。

 

「デヴァロンの艦隊とは別物だな」

 

『ソノヨウデス』

 

「デヴァロンの共和国は一隻の艦を沈めるために、五つの司令部の艦を寄せ集めた。寄せ集めたまま、撃ち、止め方も知らなかった。リュデクの最後の報告にもそう書いてあった」

 

 ゼーア提督は少しだけ間を置いた。

 

「今は違う。一つの艦隊になっている。一つの頭と、一つの手順で動く」

 

 参謀の一人が口を開いた。

 

「数では、我々が勝っています。百二十一隻に対して、多く見ても百隻」

 

「数では、な」

 

 ゼーア提督は言った。

 

「数で勝っていることをあてにするな。デヴァロンの共和国は数では勝っていた。五つの司令部の艦を寄せ集めて、一隻の艦を沈めるのに、何隻を失ったか。今のあの艦隊は同じ数であの時の何倍も働く」

 

 作戦室の誰も何も言わなかった。

 

 ゼーア提督は星図の上の赤い枠をもう一度見た。セスウェナ。それから、表示の上の、カリダの艦隊の印を見た。二つの間に航路の線が引かれていた。

 

「兵站の参謀」

 

「はい」

 

「我々の攻略軍がここからセスウェナへ着くまでに、何日かかる」

 

「輸送船団の足に合わせれば、十一日。中継の星系での補給と、船団の再編を含めて」

 

「共和国はその数字を計算しているだろうな」

 

「しているはずです。我々の輸送船団の数と、足の速さは共和国も見ています」

 

「よろしい」

 

 ゼーア提督は表示の上の、カリダの艦隊の印に、指を置いた。

 

「では、こちらだ」

 

 提督は言った。

 

「カリダから、セスウェナまで。何日だ」

 

 航法の参謀が表示を切り替えた。

 

「共和国の標準の航路なら――」

 

「違う」

 

 ゼーア提督は指を動かさなかった。

 

「《プライド・オブ・ザ・コア》が、一番遅い艦を連れて来る場合だ」

 

 航法の参謀の手が止まった。

 

「補給艦もですか」

 

「いや。戦闘艦だけだ。補給は途中までで切る」

 

 ゼーア提督は表示の上のカリダの印を見ていた。

 

「共和国がセスウェナを失うかもしれないと知った時、どこまで無理をするか。それを計算しろ」

 

 作戦室が静かになった。

 

 航法の参謀はしばらく何も言わなかった。それから、表示の上でカリダからセスウェナまでの線を、もう一度引き直し始めた。

 

 戦術ドロイドが、その線の上へ別々の到着時刻を置き始めた。速い群が先に着き、重い艦が後から続く。観測で分かるのは各艦の速力までで、共和国がどれほどの間隔を空けるかは、まだ仮定の欄にあった。

 

「先頭の群が、ここからさらに前へ出たら」

 

 ゼーアは最初の印を航路の先へ動かした。次に来る群の火力が届く範囲から、印が外れた。

 

『後続ガ加速スレバ、間隔ハ縮マリマス』

 

「先頭も進めば、どうなる」

 

 ドロイドは一つの答えを出さず、速度の違う線を三本並べた。ゼーアはそのうち、群と群の間に最も長く空白が残る線を指した。

 

「その間に、こちらの主力が何隻と戦うかを出せ」

 

 航法の参謀は艦隊全体の到着時刻を端へ寄せた。中央には、先頭の群が次の群の支援を受けられるまでの時間が残った。

 

 共和国はこの艦隊がいつセスウェナへ着くかを、数えている。

 

 大洋艦隊は共和国の艦隊がいつセスウェナへ着くかを、数えていた。

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