STAR WARS: STAR DESTROYER   作:あーくわいてんず

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前進

 敵陣の奥へ!

 

 分離主義同盟に加わったアンバラへ、共和国軍が進撃! だが、闇に覆われた森と強力な防空網が、首都への道を阻んでいる。

 

 ケノービ将軍の地上部隊を前進させるため、ベイラン・スコール率いる増強150連隊は、敵陣深くの渡路と分岐、そして橋を空挺強襲で先取する。上空から支えるのは、ヴァラリアン打撃群。

 

 空から降りる兵と、地上を進む兵。二つの部隊が合流すれば、首都への道は開かれる。しかし、その間にはまだ、アンバラの闇が横たわっていた――

 

 *

 

C.R.C. 7956.244 アンバラ星系、銀河平面座標 P-10、グレート・キャッシーク・ブランチ、北部進出路上空

 

 リブは、乾いた靴下を二足持ってきた。

 

 一足は履いていた。もう一足は背負った装備の内側へ、二重の袋に入れてしまってある。降下艇の床に何が溜まるかは、モン・カラで覚えた。今度は海ではないと言われても、リブは袋を一つ減らさなかった。

 

 その袋を背中へ押しつけるように、艇が傾いた。

 

 扉の向こうを光が通り、すぐに次の射線が重なった。森の中から上がる青白い光の間を、僚艇の赤い灯りが横切っている。リブは前の席から立ちかけた兵の肩を引き、座席へ押し戻した。

 

『対空射撃。降下地点を変更する』

 

 操縦士の声と、別の艇の警告が重なった。

 

 すぐ横を飛んでいた機体の腹が光った。砲手のいる張り出しが見えなくなり、片側の翼が下がる。艇は高度を取り直そうとしたが、森の縁へ沈み、上がってこなかった。

 

 向かいのクラスプが、その艇の呼出符号を繰り返した。

 

『……接地。接地した。扉が――』

 

 そこまで聞こえて、音が切れた。

 

「記録したか」

 

「した」

 

 クラスプは表示を消さず、転送した。リブの膝に掛かっていた装備の紐が床へ落ちた。拾っている時間はなかった。銃へ引っ掛からないよう足で座席の下へ押し込み、扉の外へ目を戻した。

 

 予定していた林間分岐は見えなかった。

 

 艇は樹冠のすぐ上まで下がった。枝が扉の縁を叩き、装甲へ何かが砕けて当たる。衛生兵のフォイルが救護鞄を抱え直した。中へ枝が入ったらしい。口を開けかけた彼へ、リブは首を振った。

 

「降りてからだ」

 

「言う前に、止めるな」

 

「聞こえた」

 

 フォイルの返事は、艇の床を打った破片に消された。

 

 遠くの雲が裏から光った。二つの閃光が地表へ達し、通信塔の向こうから赤い土煙が吹き上がる。先ほどまで射線の起点だった場所が、その煙の中へ消えた。

 

『艦砲、着弾。今のうちだ』

 

 操縦士が告げた。砲撃で煙の上がった場所を越えると、別の砲座が光った。艇は残っている対空砲を避け、予定より南の空き地へ降りた。リブは脚が沈みきる前に飛び出した。

 

 足の裏が地面へ吸いついた。

 

 暗視装置を通すと、泥だと思ったものの一部が動いていた。踏まれていない所には淡い光が溜まり、そこを銃火が横切った。リブは根の張り出しへ伏せ、後ろの兵へ手を出した。肩を押さえ、同じ場所へ引き入れる。

 

「昼がない星は、嫌いだ」

 

「宇宙にもない」

 

「宇宙には泥がない」

 

 フォイルは言い返そうとして、膝を泥へ埋めた。頭上の幹が撃たれ、白い繊維が顔へ散った。

 

 リブは反撃し、部下二人を側面へ回した。艇の砲手が森の端を撃ち、地上の兵がその射線から外れる。敵はそこを離れたが、逃げていく先までは見えなかった。

 

 降下艇が上がると、今度は自分たちの呼吸が聞こえた。

 

 ここから分岐まで、歩かなければならなかった。

 

 リブは現在位置を確かめ、予定の着陸帯へは降りていないと送った。確保の報告にはしなかった。クラスプは中継用の荷を背負い直し、最初に撃たれた艇の位置を軍曹の地図へ重ねた。

 

「道から外れている」

 

「どれくらいだ」

 

「行けば、分かる」

 

 リブは後続の分隊へ分岐側の警戒を頼み、自分の班を墜落地点へ向けた。

 

 艇は太い幹を二本倒して止まっていた。後部の扉だけが開き、中から出てきた兵が負傷者を引いている。機首は土の斜面へ食い込み、操縦席を呼んでも返事がなかった。

 

 フォイルが負傷者の一人へ膝をついた。

 

 リブは動ける兵を集め、互いの部隊を確かめた。同じ連隊だった。予定では分岐の東側を取るはずの班で、その手前で一緒になってしまった。何人が撃てるかを聞き、負傷した四人を残す位置と、それを守る二人を決めた。

 

「置いていくのか」

 

 担架に寝かされた兵が言った。

 

「拾う場所を、先に取る」

 

 リブは彼の銃を受け取り、隣の兵へ渡した。

 

「ここへ戻る。呼出符号を変えるな」

 

 兵はリブの胸の識別を見た。それを覚えるまで、軍曹は立たなかった。

 

 分岐へ近づくと、道路管理小屋の窓から撃たれた。リブは木の陰で姿勢を変え、窓から顔を出す銃口を待った。側面へ回った兵の報告を聞き、短く撃つ。別の二人が小屋の裏口へ走った。

 

 アンバランの兵が奥の森へ下がった。

 

 リブは追わなかった。分岐の反対側がまだ取れていない。そこを越えてしまえば、後ろの班へ撃ち返す場所まで失う。

 

 クラスプが中継器を置き、先行していた別の分隊から返事が来た。東側の道路を押さえた、と言う。リブはようやく小屋の前を横切り、分岐全体を見た。

 

 広い道が、二つに分かれていた。

 

 図では一本の線が折れるだけだった。その角にある排水溝へ足を落としただけで、軍曹は部下に腕を引かれなければ上がれなかった。

 

「林間分岐、確保。予定の着陸帯は、これから確認する」

 

 そう送ってから、リブは墜落地点へ二人を戻した。

 

 *

 

アンバラ上空、《ハービンジャー》

 

 最初の射撃要請は、降下艇が撃たれる前に来ていた。

 

 航空隊の観測機が見つけた対空砲だった。担当する第34任務群が位置と射線を確かめ、降下便を待避させてから撃った。シーアが開いた時には、次の目標への許可を求める報告が来ていた。

 

 別の砲座だった。

 

 最初に撃った場所は、確かに黙っていた。だが、その隣で森の中から新しい射線が伸びている。ラセルは二つの反応を重ねず、確認した時刻をそれぞれの横へ残した。

 

「今の砲撃で、降下便は入れますか」

 

「一つ目の進入路は通れます。二つ目は、まだ射撃されています」

 

 シーアは輸送艇の印を見た。一機の高度が急に落ち、後続が広がった。母艦の管制から変更した降下地点が届く。通信主任セルトは、地上の受信が途切れた機体を、すぐに喪失の印へ変えなかった。

 

「現地から応答があります。着陸ではなく、墜落と報告」

 

「救難は」

 

「スコール将軍側が先遣班を向かわせています」

 

 シーアは頷いた。呼び戻して別の指示を出す理由はなかった。北へ向かう次の艇群が、まだ雲の外で待っている。

 

 この作戦では、地上を進む部隊と空から入る部隊を、別々に動かしていた。

 

 第212突撃大隊を含む第7空中軍団の地上主力は、ケノービ将軍の下で南から北へ進む。重歩行兵器と装甲車両、その後ろの燃料と弾薬を、一本の通れる道に集めていた。ベイランの150連隊は工兵と火力支援班の増強を受け、空中機動部隊の艇でその前方へ入る。

 

 渡路、分岐、橋。

 

 取った要点を後続へ渡せば、強襲部隊はまた先へ飛べる。地上の主力は車両を森へ分散させずに進める。どちらか一方だけでは、首都の北側へ十分な戦力を持っていけなかった。

 

 第501軍団は別の攻撃軸にいた。アナキンの部隊とは航空支援や輸送の枠を合わせ、北の橋へ向かう車列はケノービが率いていた。

 

 シーアはその二本の進出線を、一つにまとめなかった。

 

 ソーンから、外側の警戒交代が済んだと報告があった。第32任務群は到着する船団を受け持ち、第33任務群は内側の輸送艇受渡し空域にいる。十四隻の配置を記した表示へ、輸送艇の通過報告が加わっていく。

 

 《ヘラルド》と《コンスタンティア》は、まだ工廠の工程表の中にある。副司令官の声は《エンヴォイ》から来た。ベイランのヴェネター級《フォワード・ライト》と《セカンド・ホライズン》は別枠で航空機を出し、空いた格納庫では帰りの便を待っていた。

 

 艦隊は動いていた。シーアが見ている地表の小さな範囲だけを支えるためにも、その外側には艦が要った。

 

 北の橋へ先行した観測班から、要請が入った。

 

『斜面の砲座二か所。橋の南側からでは、撃ち上げられない』

 

 映像には谷の縁が映っていた。上から見た図より、橋は低い所にあった。岸壁に沿う射線を、輸送艇が降りる高さへ向けている。

 

 シーアは味方位置と、残したい橋の表示を見た。

 

「橋には掛けないで。斜面の砲座だけ。地上の確認で始めてください」

 

 第34任務群のヘイグから受領が返った。実際に撃つ艦と射撃時刻は、彼の側で決める。コルヴェンはその報告と《ハービンジャー》の対空射界を照らし合わせ、味方機を通す間の制限を当直卓へ送っていた。

 

 雲の下の映像が白くなった。

 

 シーアには爆発の音は聞こえなかった。観測班の息が止まり、次に、砲座からの射撃停止を確認したという声が来た。

 

『入る』

 

 ベイランだった。

 

 シーアは受領を返し、動き始めた艇の印を見た。三つ目の目標へ向かっている。二つはすでに、味方が取ったと知らせていた。

 

 *

 

アンバラ地表、北の跨谷橋

 

 ベイランは、橋を見る前に、その上を走る車の音を聞いた。

 

 着陸地点は南側の林の中だった。艇が浮いているうちに兵が降り、最後の箱を滑らせてから離れていく。ジェダイは枝を避け、先に伏せたクローンの横へ膝をついた。

 

「向こうへ渡られる」

 

 兵が指した。橋の上を、アンバランの小型車両が退いている。その後ろから射撃が来た。こちらが追えば、同じ橋の上へ並ぶことになる。

 

 ベイランは対岸の建物を見た。

 

「管理所を先に取る。橋へはまだ出るな」

 

 テザーが分隊を分けた。コマンダー自身は南の橋詰めへ進み、ベイランは工兵二人と斜面を回った。靴の下で土が崩れたが、谷の底までは落ちなかった。工兵の一人が手を伸ばすと、ベイランはその腕ではなく、背負った装置の紐を引いて支えた。

 

「そこを掴むと、切れます」

 

「早く言え」

 

「いま、言いました」

 

 ベイランは手を離し、彼が自分で足場へ戻るのを待った。

 

 管理所の戸口からブラスターが撃ち出された。橙色の刃が点き、胸へ来る光を外へ弾く。ベイランは扉の中へ走り込まず、横の壁へ身体を寄せた。工兵の一人が裏側の入口を示している。

 

 別の方向から銃声がして、建物の中の射撃が止んだ。

 

 ベイランが入った時、守備兵の一人は手に持った銃を床へ置きかけていた。彼は刃を下げ、兵の手が離れるのを待った。奥の制御卓へ目を向けると、別のアンバランが操作を続けている。

 

「そこから離れろ」

 

 相手は振り向いた。まだ指が卓にあった。ベイランはその腕を引き、後ろのクローンへ渡した。

 

 工兵が卓へついた。

 

「封鎖の操作です。橋面の障害物を起こす。爆破ではありません」

 

「止められるか」

 

「こちらからは。向こう側は、まだ別です」

 

 橋へ出た車が、北の端で止まっていた。途中まで上がった防護板へ突き当たり、そこから銃を向けている。テザーは南側を取り、兵を橋の上へ散らしていたが、前へ走らせてはいなかった。

 

 ベイランは工兵を卓へ残し、外へ戻った。

 

「対岸へ降りる艇は」

 

『残り一機。予定地点は、撃たれています』

 

 テザーの声が返った。

 

 ベイランは北側の斜面を見た。砲座のあった場所には煙が残っている。それでも、管理所の窓から撃つ兵までは消えていなかった。ここへもう一度艦砲を落とせば、橋も使えなくなる。

 

「こちらから渡る。向こうの班には、今の位置を守らせろ」

 

 テザーは返事をし、橋面へ煙幕を広げさせた。北側へ降りた班が側面から撃ち、管理所の銃口がそちらを向いた。

 

 ベイランは走った。

 

 橋の中央で足元が撃たれた。欄干に触れず、身体を低くして通る。背後にはクローンたちの足音が続いた。刃へ当たった光が横へ飛び、谷の空間で消える。

 

 対岸へ着くと、ベイランは一度止まった。後ろの兵が壁へ入るまで、戸口を押さえた。最後の一人は肩の装甲を削られていたが、腕を動かして見せた。

 

 管理所の奥で戦闘が終わった。

 

 防護板が下がり、テザーの兵が橋を渡ってきた。工兵はまだ端を走らず、歩いて床を確かめている。

 

「通れる」

 

 コマンダーが言った。

 

「我々だけか」

 

「重量の検査が要ります」

 

 ベイランは頷き、工兵へ道を空けた。大型の車両が使えなければ、ここまで飛んできた意味が変わる。

 

 十分後、工兵が手を上げた。

 

 予定の重量なら通せる。だが、北側の接続部には修理が要る。重いものを続けて載せる前に作業を終えたい、と言った。

 

 ベイランは南側へ目を戻した。木々の間へ道が消えている。その先に、まだ味方の車は見えなかった。

 

「時間はある。いまのうちにやってくれ」

 

 言ってから、テザーへ報告を頼んだ。

 

 北の跨谷橋、確保。

 

 *

 

《ハービンジャー》、戦闘指揮所

 

 ケノービの投影像の後ろで、装甲車が動いていた。

 

 彼は通路の脇に立ち、通り過ぎる兵へ身体を寄せている。横にいるコーディは端末を開き、シーアへ最初の車列の位置を送った。もう一辺には、橋の北側からつながったベイランがいる。こちらでは兵が弾薬箱を運んでいた。

 

 南の渡路。林間分岐。北の跨谷橋。

 

 三つとも、共和国の印に変わっていた。

 

『予定より、北が早かったな』

 

 ケノービが言った。

 

『支援射撃があった』

 

 ベイランは答え、工兵の点検結果を送った。

 

「地上の観測が、早かったんです」

 

 シーアは受け取り、橋を使う車両の制限をコーディ側へ渡した。元の予定を消すほどの損傷ではない。修理が終わる時刻も入っている。

 

『こちらの車列が着くまでには済みそうだ』

 

 コーディが言った。

 

 ケノービは南から伸びる道を示した。前方の陣地を抜けば渡路へ届く。そこで先頭の部隊を交代し、次の部隊を分岐へ送る。ベイランは南の強襲部隊を引き揚げ、北へ回す準備をさせると答えた。

 

 話している間に、地上の印が動いた。

 

 シーアはそれを見て、いつもより深く椅子へ座った。ここまでは、取った場所が順に使えるようになっていた。撃つ艦、降りる兵、来る車列。それぞれの仕事が次の相手へ渡り始めている。

 

 セルトが新しい通知を出した。

 

「スカイウォーカー将軍が、コルサントへ召還されました」

 

「スカぴょんが?」

 

 ケノービが顔を上げた。

 

『……いま、何と呼んだ?』

 

 シーアは、開いている回線を見た。閉じるための表示へ指が動きかけ、途中で止まった。まだ三人で話している。今切れば、いよいよ何を言ったか分からなくなる。

 

「……アナキンが?」

 

『ヴァラリアン少将』

 

「アソーカが悪いんです」

 

 橋の投影像で、ベイランが口元へ手をやり、肩を揺らした。コーディは地図を見たままで、セルトは通知の続きを待っている。

 

 ケノービは髭へ指を当てた。

 

『それは、本人たちで話してもらおう。召還については、こちらにも通知が来ている』

 

 シーアは姿勢を戻した。耳が熱かった。ベイランの方だけは見ないようにして、通知へ視線を移した。

 

「後任は」

 

「ポング・クレル将軍です。第501軍団の指揮を引き継ぎます」

 

 セルトが答えた。

 

 シーアは正式な移管時刻を確かめ、連絡先の更新を頼んだ。北へ向かうコーディの車列の指揮は変わらない。ベイランの150連隊も、この三者で合わせた任務を続ける。

 

「スカイウォーカー将軍側へ、受領を返してください。輸送と支援射撃の連絡も、後任へ引き継いでもらって」

 

 セルトはいつもと同じ声で復唱した。

 

 地上から射撃要請が入り、ケノービが端末へ目を落とした。

 

『南の渡路の手前だ。この砲を止めれば、先頭が出られる』

 

 シーアは観測班と支援艦へつなぐよう頼んだ。少し前の呼び方を、もう一度訂正する時間はなかった。

 

 射撃が終わると、車列の先頭が動いた。

 

 ケノービの後ろを通ったクローン兵が、頭上を見上げた。シーアの所からは、その目線の先にある空は見えなかった。

 

 *

 

林間分岐、150連隊確保地域

 

 取った小屋には、共和国のものは何もなかった。

 

 棚にあった容器の文字を、クラスプが読もうとしていた。読めなかったので蓋を開けず、まとめて脇へ寄せた。その場所へ中継器の予備電源を置く。誰かが置いた食料まで、同じ所へ運ぼうとした。

 

「それは違う」

 

「形が同じだ」

 

「食べて動くなら、こいつにもやる」

 

 クラスプは中継器を叩いた。

 

 リブは自分の食料を受け取り、戸口の段へ座った。乾いた部分を選んだつもりだったが、腰を下ろすと水が染みた。もう立つのはやめ、包みを膝の上へ開いた。

 

 墜落した艇の負傷者は、分岐まで運んできていた。四人とも次の便へ乗せる。操縦士二人は助からなかった。潰れた席から出した遺体は、別の場所に置かれている。フォイルはその二人へも記録を付け、同じ機体に乗っていた兵へ名前の読みを確かめた。

 

 隊に合流した者と、後ろへ返す者が分かれた。

 

 東側を取るはずだった班長は、自分の場所へ戻りたいと言った。リブは班を作り直した名簿を彼へ渡した。足りない四人を、空いた席のようには埋められなかった。隣の分隊から二人を回し、残りの範囲は自分たちで狭く持つことにした。

 

 フォイルが軍曹の横へ座った。

 

「食べているのか」

 

「見て分かるだろう」

 

「開けただけだ」

 

 リブは一口、口へ入れた。フォイルも同じものを食べ、顔をしかめた。

 

「温める物が、あるはずだった」

 

「艇にある」

 

「どの艇だ」

 

 二人とも、墜落した方へ目を向けなかった。

 

 クラスプは自分の膝の上で中継器の留め金を直していた。腰から外した工具をリブへ預け、両手で押し込む。軍曹が返す前に手を出したので、リブは工具の向きを変えて握らせた。

 

「見なくても、分かるのか」

 

「貸した物は、覚えている。返ってきたかも」

 

 昨夜借りた小さな接続具も、まだ返っていないと付け加えた。

 

「戻ったら、返す」

 

「そういう奴が、多いんだ」

 

 リブは自分の装備から接続具を外し、その場で渡した。クラスプは満足そうに収納し、通信の試験を始めた。

 

 南の渡路からは、車列を受け取ったと来ていた。

 

 だが、ここへ来たのは、小型の連絡車が一台だけだった。道の状態を確かめるために先行したもので、守備を代わる人数は乗っていない。橙色の標識を付けたクローンが降り、道路管理小屋の軒下へ入った。

 

「道は使えるか」

 

「ここは。北へは、まだ車を通していない」

 

 リブが答えると、相手は自分の通ってきた区間を図へ付けた。

 

「南の先頭は動き始めた。後ろも来る」

 

「いつだ」

 

「それを、知らせに来るはずだった」

 

 連絡兵は端末を見直した。更新される位置はあった。到着する時刻がなかった。

 

 リブは食べかけの包みを閉じ、道路へ出た。

 

 遠くでエンジンの音がした。後続だと思って耳を向けたが、音は近づかず、同じ所に留まっている。工兵が地面へ打つ杭の長さを確かめ、もう一本長いものを寄越せと言った。

 

 スプールなら、そう言う前に二種類とも持ってきただろう。

 

 リブは長い方を運んだ。受け取った工兵は礼を言った。別の者だった。違うやり方で、同じ所へ照明が立った。

 

 軍曹はその照明とは別の電源で動く標識も、帰りの艇から見える場所へ置いた。敵艦へ入る時にも、戻る入口には別の印を残した。照明が消えても、自分たちが帰る方を見失わないためだった。

 

 小屋の中では、クラスプが北の橋を呼んでいた。

 

 交代の到着予定を求める声が、小屋の外まで聞こえた。

 

 *

 

《ハービンジャー》、司令官室

 

 セレナが、シーアの後ろへ回った。

 

 彼女の手が端末を通り越して襟の上へ伸び、髪を押さえた。シーアは振り向こうとして、止められた。

 

「いま、動かないでください」

 

「何か付いてる?」

 

「寝た時の形が、そのままです」

 

 会議区画へ移る前に十分だけ、と言われていた。三者の通信が終わった後も射撃要請が続き、司令官室へ来た頃には、その十分をとっくに使っていた。

 

 ケレンが温めた布を渡した。セレナが髪を分ける間、シーアは腕の端末を上げたが、もう一方の手で下げられた。

 

「頭を動かさないでください」

 

「頭を使うのも?」

 

「それは、ご自由に」

 

 ケレンが戸口で笑った。

 

 机の隅には、エレナから届いた稽古の記録があった。再生装置の調子が悪く、昨夜は映像だけ見た。ケレンが音声の接続を直したので、今度は台詞も聞けると言う。

 

 シーアはその端末へ目を向けた。

 

「ベイランが戻ったら、見ます」

 

「では、消さずに置いておきます」

 

「消すつもりだったの?」

 

「机を片づけると、見えなくなりますから」

 

 ケレンは答え、他の書類用の端末から離して置いた。

 

 セレナの手が止まった。シーアはようやく鏡を見た。髪は直っていたが、眠そうな顔は変わらない。

 

「お姫様。食事も、ここにあります」

 

「知っています」

 

「知っている物を、食べてください」

 

 シーアは腰を戻し、容器を開けた。今日は、セレナがここを離れるまで待たずに匙を取った。あの夜、食器を持った彼女の手が白くなっていたのを、まだ覚えている。

 

 全部を食べ終わる前に、コルヴェンから呼出しがあった。橋の南へ通じる道で、地上主力の先頭が止まっている。追加の射撃要請が来た、と言った。

 

 シーアが立つと、セレナは残りを閉じた。今日は、戻ってから食べるとは言わせなかった。ケレンが持っていくから、とだけ告げた。

 

 戦闘指揮所では、コーディからの映像が開いていた。

 

 進めなくなった装甲車を脇へ寄せる作業で、後ろの車が止まっている。歩行兵器なら森へ出られる場所もあったが、燃料車と弾薬車まで同じように進めるわけではなかった。

 

『迂回を確認しています。前方の対装甲砲へ、もう一度支援を』

 

 シーアは砲座の位置を開いた。先ほどまで射撃した場所とは違っていた。地上の部隊が前へ出た分だけ、次の敵が見える。

 

「観測班の確認で撃てます。近くにいる工兵へ、退避の連絡を」

 

 要請は第34任務群へ渡った。

 

 射撃の後、先頭がまた動いた。道路の端へ車体が寄り、一台ずつ脇を抜け始める。シーアはその映像を最後まで見た。

 

 砲撃は効いていた。

 

 それでも、北の橋へ向かう線は、途中で止まったままだった。

 

 *

 

北の跨谷橋、南側管理所

 

 橋の修理は、後続が着く前に終わった。

 

 工兵は点検用の装置をしまい、ベイランへ渡した。将軍は受け取った記録をケノービ側へ送った。これで重い車両を通せる、と伝える。

 

 返ってきたのは、受領と、新しい予定だった。

 

 ベイランは壁の時刻を見た。最初の予定なら、今頃は重歩行兵器の脚が目の前を通っていた。管理所の床には、その搭乗員へ渡すつもりで用意した水が置いてある。

 

 テザーが戻ってきた。

 

「南の渡路は引き継ぎました。第一陣の一部を、こちらへ回せます」

 

「艇は」

 

「負傷者を上げた後の便です。全員、一度には乗せられません」

 

「二回でいい」

 

 ベイランは北側の守備を見た。撃っている班と、銃を伏せて休んでいる班がある。取った直後には、前の方へ出たがっていた兵たちが、今は後ろの壁を欲しがっていた。

 

 新しい兵が入れば、休ませられる。弾薬も少し運べる。それは、地上主力が来る代わりにはならなかった。

 

 遠くの森で光が動いた。

 

 兵の一人が声を上げ、橋詰めの重ブラスターが撃ち始めた。ベイランは管理所を出た。北側の道路へ現れた敵歩兵が、欄干の陰へ走っている。大きな車両は出てこなかった。ここが橋であることを、相手も知っていた。

 

 橙色の刃を点けた。ベイランは守備の兵が弾薬を替える間、その前に立った。光が刃へ当たり、彼の足元を照らす。空いた箱が後ろへ蹴り出され、新しい箱の蓋が開いた。

 

「いいぞ」

 

 兵が言った。

 

 ベイランが脇へ退くと、重ブラスターが再び撃った。

 

 接近した敵は管理所の反対側へ入り、そこから射撃を始めた。上空の艦へ送ってあった目標の枠が、自分たちの位置に近すぎた。ベイランは観測班へ手を振り、そこへの艦砲射撃は取り消せ、と伝えた。

 

 相手を遠ざけるために、橋ごと撃たせるわけにはいかなかった。

 

 敵の最初の攻撃を退けた後、ベイランは南側へ戻った。新しい三者通信がつながり、ケノービの像が管理所の壁へ映る。

 

 今度は背景の車列が動いていなかった。

 

『先頭が渡路を越えた。だが、分岐の手前で止められている』

 

「森へ出る道は」

 

『工兵が見ている。装甲車一台が通れる所と、部隊の補給を通せる道を分けて調べている』

 

 ケノービは言い、顔を画面の外へ向けた。コーディから何かを受け取り、それも同じ図へ重ねる。

 

『先頭だけ送っても、君たちの交代にはならない。歩兵を下ろして道路の側面を取る。少し時間をくれ』

 

 ベイランは窓から橋を見た。

 

 敵が守っていた時には、南から来る共和国軍を止める場所だった。いまは共和国軍が、両側から来る敵を止めるために使っている。

 

「橋は渡せる。こちらは、まだ持てる」

 

『弾薬と後送は、艦隊側で続けています』

 

 シーアの声だった。映像の端に、食事の容器が置かれていた。蓋が閉まっている。

 

『ただ、全部の進入路を同時には開けられません。次の便は、南側の班の移動と補給を先にします』

 

「それでいい」

 

 ベイランは答えた。

 

 ケノービはそれぞれの報告を受け取り、自分の部隊へ戻った。シーアも別の射撃要請へ向いた。通信が終わると、管理所には発電装置の音だけが残った。

 

 テザーが水を一本持ってきた。

 

「後続の分だろう」

 

「まだ来ていません」

 

 ベイランは受け取り、蓋を開けた。

 

 *

 

林間分岐、着陸帯

 

 リブは、小屋の北側から戻ってきた。

 

 借りていた重ブラスターを次の兵へ渡し、銃身の冷却を確かめてから受け取れ、と言った。道路の向こうへ押し戻した敵は、まだ森にいた。休憩の順番を一つ後へ送り、着陸帯の二本目の照明を消した。

 

 暗くなった所へ、艇が降りてきた。操縦士の求めたとおりだった。上から見ると、地面の光と味方の標識が重なり、広さを読み違える。誘導の信号だけを残し、脚が着くまで誰も前へ出なかった。

 

 ここへ降りた時は、もう別の場所へ飛んでいるはずの時刻だった。

 

 南から来た車両は、予備の電源と弾薬を少し置いていった。荷を下ろした兵は運転席へ戻り、車は南へ引き返した。リブは北の橋へ、その便をこのまま送ることはできないと伝えた。

 

 返事の後ろで、何かが壁を叩いていた。

 

 クラスプが中継器の位置を直していた。照明から離し、小屋の陰へ寄せたいと言っている。リブが手を貸そうとすると、先に担架を運べと言われた。

 

 頭上を、青白いものが通った。

 

「伏せろ!」

 

 リブは隣の兵を倒した。光は着陸帯の向こうへ落ち、荷を積んだ車の側面を切り裂いた。艇の砲手が空へ銃身を向ける。もう一機のアンバラン・ファイターが、森の上を滑るように回ってきた。

 

 脚を下ろしたばかりの艇は、すぐには上がれなかった。

 

 後部の扉に、担架が掛かっていた。

 

「先に、中へ入れろ!」

 

 リブは兵の背を押した。担架の脚が床の継ぎ目へ当たり、止まる。中から腕が伸び、外の二人が持ち上げた。艇の下へ光が走り、軍曹の頬へ熱い砂が当たった。

 

 周囲の音が一度遠くなった。

 

 次に聞こえたのは、操縦士が片側の推進を失ったと告げる声だった。機体は地面に傾き、閉まりかけた扉が止まっていた。

 

 リブは地面から顔を上げた。照明の柱が見えなかった。ついさっきまであった方へ目を向けると、白い装甲の肩が車の陰から出ている。

 

 その腕には、小さな工具が握られていた。

 

 クラスプだった。リブはそこへ這っていった。首の識別を読み、救護回線で名を伝えた。返事を待つ間に、胸へ手を置いた。動かなかった。

 

 艇の扉から、フォイルが彼を呼んだ。

 

「そっちは」

 

 リブは首を振った。

 

「三人、こっちへ。動かせる」

 

 軍曹は工具を手から外し、装甲の収納部へ入れた。戻ってこられる位置を記録し、艇へ走った。

 

 共和国側の戦闘機が上を通った。追われた敵機が高度を下げ、木々の間に消えた。砲火は遠ざかったが、艇の脚は折れたままだった。

 

 フォイルは傷の上へ手を置き続けていた。リブが横へ入ると、その手をどこへ替えるか指示した。手袋の表面が濡れ、装甲の下から熱が伝わってくる。兵は声を上げず、歯を食いしばっていた。

 

『こちらテザー。何人、乗せ替える』

 

「負傷者が増えました。いま数えています」

 

『人数が揃う前に、先の分を言え』

 

 リブは扉の内側に並んだ顔を見た。最初からいた者と、今ここで傷ついた者を分ける。フォイルが脇から補い、軍曹は伝えた。

 

 増えた三人は、ついさっきまで外周を守り、交代すると負傷者を運んでいた強襲班の兵だった。

 

 テザーは代わりの艇が向かうと告げた。護衛も付ける。それまでは、森へ散らさず車両の陰に集めろ、と続いた。リブは部下へ位置を渡し、落ちた照明を跨いで傷ついた兵を運んだ。

 

 別電源の標識は生きていた。クラスプの中継器からは応答がなく、リブは自分の送信器で、その位置と進入方向を代わりの艇へ送った。照明の倒れた側は使えない、と付け加えた。

 

 あれが見える、と操縦士が言った時、リブは初めて、自分の手が震えていることに気づいた。

 

 負傷者を載せ替えてから、クラスプを運んだ。

 

 彼の装備を外す時、収納部から小さな接続具が出てきた。リブが返したものだった。軍曹はそれを工具と一緒に艇の縁へ置き、装備袋を引き寄せた。

 

 別の兵が工具へ手を伸ばした。担架の留め具を外したいのだと言うより先に、リブの声が出た。

 

「触るな!」

 

 兵の手が止まった。フォイルもこちらを見た。リブは相手の手首を掴んでいた。自分の指が白くなっているのを見て、ようやく離した。

 

「……いや。使っていい。悪い」

 

 工具を持ち上げたが、相手はまだ受け取らなかった。リブは柄の方を向け直した。

 

「留め具だろう。使ってくれ」

 

 兵は頷き、担架の方へ戻った。フォイルも負傷者へ向き直った。いつもの作業の音が戻ってから、リブは接続具だけを装備袋へ入れた。

 

 返ってきた工具は、黙って掌へ置かれた。礼を言おうとして顔を上げた時には、その兵はもう次の担架を持っていた。リブは工具を装備袋へ戻し、艇の乗員へ渡した。

 

 艇は上がった。

 

 リブは外周の当直へ戻り、フォイルは次の担架を置く場所を空けた。

 

 *

 

《フォワード・ライト》、兵員区画

 

 ブラケットは、椅子を二つ並べていた。

 

 一つに座り、もう一つへ固定した脚を載せる。持ってきた端末は机に立て、中隊から届く降下地点と受渡し地点の記録を見ていた。本人は医務部から地上復帰を認められていなかった。

 

 南の渡路の引渡しは済んでいた。分岐と北の橋は、まだ150連隊が持っている。次の降下に使うはずの班を、別の場所へ移す欄は空いたままだった。

 

 地上から、クラスプの記録が来た。

 

 ブラケットは一つ前の予定を開いた。帰ったら、予備の中継器を返すよう書いてある。受け取りを忘れないよう、自分で入れた通知だった。

 

 大尉は、その予定を消した。

 

 代わりに何かを書くことはしなかった。少なくとも、これで本人を探す呼出しは鳴らなくなった。

 

 リブから追加の報告が来た。中継器の代替品が要る。軍曹自身の送信器を使っているが、離れた場所を同時にはつなげられない、とあった。

 

 ブラケットは物資の一覧を開き、予備を次の便へ回した。受取人の名を、クラスプからリブへ直す。

 

 足元には、別の工兵が置いていった工具袋と修理待ちの装置があった。大尉はそれを椅子の下へ寄せ、端末を持ち直した。

 

 橋からも、次の弾薬を求める更新が来ていた。

 

 *

 

《ハービンジャー》、戦闘指揮所

 

 シーアは三つの目標を見ていた。

 

 南の渡路は、後続部隊の所属へ変わっていた。分岐は150連隊のままで、その周りを示す線が、降りた時より狭い。北の橋にも共和国の印が付いている。

 

 三つとも、取った。

 

 地上をつなぐ線は、南から伸び、分岐の手前で途切れていた。

 

 ケノービから、次の砲撃要請が届いた。先ほどの射撃は実行され、観測班はその効果を報告している。敵は、その仕事が済むのを待たずに攻撃してきた。

 

 それでも、交代の部隊は届かなかった。

 

 新しい射撃要請を開くと、前の目標と同じ場所だった。近くに味方がいる、と赤い枠が付いていた。地上の観測班が、射撃を許可していない。

 

 シーアは別の攻撃手段の手配状況を確認し、その枠を消さなかった。

 

 セルトが、橋からの回線をつないだ。

 

 ベイランの頬に泥が付いていた。手袋は片方だけ外している。後ろではクローン兵が弾薬箱に座り、別の兵の肩から装甲を外していた。

 

「まだ持てる」

 

 ベイランは言った。

 

「交代は?」

 

「来ていない」

 

 シーアは地図を見ずに訊いた。

 

「いつまで?」

 

 ベイランは画面の向こうへ目をやった。誰かの報告を聞いてから、こちらへ戻る。

 

「それは、後続がいつ来るかによる」

 

 シーアは、最初に受け取った到着予定を閉じた。もう過ぎていた。代わりに新しい時刻を、自分で入れることはしなかった。

 

「次の便は、弾薬と水を持っていきます」

 

「頼む」

 

「ベイラン」

 

 回線を閉じようとした彼が、手を止めた。

 

「芝居の音、直りました」

 

 ベイランはシーアを見た。それから、泥の付いた口元を緩めた。

 

「戻ったら、見よう」

 

 シーアは頷いた。

 

 投影像が消えると、橋の印が残った。下からは次の砲撃要請が来ていた。シーアはそれを開き、地上の観測班へつなぐよう頼んだ。

 

 北の橋には、まだ味方がいた。

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