STAR WARS: STAR DESTROYER 作:あーくわいてんず
C.R.C. 7956.272 コルサント星系、銀河平面座標 L-9、パーレミアン交易ルート起点、元老院附属区画、連絡広場
モン・モスマの乗った車が、銀髪の下で止まった。
前方の交通が詰まっていた。塔の壁を使ったホログラムは、車窓からでは上半分が見えない。制服の胸元と肩章が、三つ上の交通層までを覆っている。モンが降りると、運転手は待機区画へ車を回した。広場を渡る人々の間を抜け、見上げられる所まで歩く。
『共和国は強く護られる』
灰色の目が、広場へ向いていた。
音声器は歩道に沿って並び、声の届く範囲には立ち止まる者がいた。昼の当直へ向かう作業員が、隣の者へ画面を指す。店先の子供は、持っていた食べ物を母親へ預け、両手を空けて投影を見上げた。
アレクシアール・ヴァラリアン。第3合同任務群司令官。その名の上に、共和国の守護者、と表示されている。艦隊広報を通じた放送局の要請による帰還声明だと、小さな字幕が告げた。
『共和国市民の自由を保障する。法に記された権利を、助けの届かない星にも届ける。それが、私たちの仕事です』
柔らかい声だった。可憐な顔の唇が動き、銀髪の下で目が上がる。モンは、初めて彼を迎えた夜にも、周囲の話し声が途切れたことを覚えていた。十歳の少年だった。来客の紹介には、継承順位第三位、学院へ特例入学予定とあり、その後に容貌の注記が続いていた。
注記が多すぎると、迎えの車でベイルに言った。
公王の半歩後ろから少年が現れると、彼女も、準備していた挨拶をすぐには言えなかった。顔を見た後で、年齢の欄をもう一度思い出した。広間の大窓を船が通るたびに、少年の視線がそちらへ動いた。
今、その顔が、建物一棟を使って首都を見下ろしている。
『共和国軍は敵を撃つ。決して揺るぐことのない、共和国の法と意思に従って』
店先の子供が手を叩いた。母親も続き、モンの後ろで誰かが声を上げた。像の中のシーアは正面を見ていた。言葉を置く間隔が揃っている。次の文を探す時に、身近な誰かへ目を向ける癖は出なかった。
『市民を攫い、売り、殺す者に、共和国の力が届かない場所を与えてはなりません』
投影が救護船へ替わった。
乗艇の途中で名前を呼ばれた男が振り返り、毛布を抱えたまま笑っていた。音声通信の向こうに家族がいるらしい。別の映像では、若い女が首に残った環の跡を手で隠し、帰る便はいつかと訊いていた。
解放作戦の受入れ、一万二千四百八人。公開回線からの追加退避、一千九百六人。二つの数字は別々に現れ、その下に、帰還と医療の窓口が付いた。
モンの事務所にも、家族の住所を探してほしいという照会が来ていた。そのうち一件は、昨日、受入れ先が決まった。担当者へ返事を頼まなければならない。そう思い、端末を出そうとすると、またシーアの顔になった。
昔、彼女はこの少年へ、世襲について訊いた。自分の進路を選べずにいる頃だった。六歳下の相手には、いくつもの道が並んでいるように見えた。質問の棘を、少年がどこまで感じたかは知らない。
命令する者は、守らなければならない。選ばれた人でも、同じでしょう。
彼はジュースのグラスを両手で持ち、そういう順番で答えた。助ける船が来ない所には、法律があっても共和国が届かない、とも。船の話になると、まだ答えの途中なのに、窓の外へ目をやった。
モンは歩き始めた。背中へ、最初の一文が戻ってきた。
『共和国は強く護られる』
事務所へ向かう階段の上から見ても、灰色の目は、広場の人々をまっすぐ見ていた。
*
元老院附属区画、モン・モスマの事務室
ベイルから届いた記録は、音楽も解説も付いていなかった。
聖堂から受け取ったルミナーラ・アンドゥリの報告。その添付として、艦隊が共有した回収艇と母艦の観測記録が入っていた。取得時刻と、元の記録番号が付いている。まず映像を見てほしい、とベイルは書いていた。
モンは事務所の扉を閉め、窓際の明かりを落とした。
最初に見えたのは、船の腹だった。
回収艇のカメラが艦の下を通っていく。船体が背を惑星へ向け、上側の砲塔を地表へ揃えていた。艇がその影を抜けると、何本もの光が海岸線へ届く。
港の端に、砲台があった。そこへ落ちた光が、少し遅れて白く拡がった。次は、その奥の倉庫だった。屋根が沈み、隣の建物の列へ、続く斉射が落ちた。
モンは投影の下の時刻を見た。
光は道路を越えていた。町の中央に、四角い広場と、丸い屋根の建物がある。建物の脇に小さな影が動いた。拡大する前に、広場の縁が白くなった。画面に残ったのは、雲の裏まで届く光だった。
艦隊回線の復唱が続いていた。次の区画。回収船の位置。観測不能。短い報告の間にも、地表から上がる光が増えていく。
彼女は早送りへ指を寄せ、戻した。
次の記録は、日付が268日になっていた。
爆撃機の列が母艦を離れる。雲へ降りていく編隊の下に、砲撃で崩れた町があった。道路の一部がまだ形を保ち、貯水池の縁が見える。作戦図の都市区画へ、編隊の位置が重なった。
『核融合爆弾、投下開始』
灯りが帯になった。
貯水池も、道路も、その中へ入った。光が薄れ、熱で揺らぐ地表が見える頃には、次の編隊が通過している。モンは、映像が途中で繰り返しになったのかと思い、時刻を確かめた。秒は進んでいた。別の場所を、同じ幅の光が覆っていた。
最後に爆撃機が戻った。
映像には、発進した時と同じ列があった。給電、給水、交通、港湾設備。破壊を確認した項目が、航空回線で読まれる。艦が姿勢を戻し、惑星の縁が脇へ動いた。
モンはそこで、再生を止めた。
椅子の背へ寄りかかると、布が肌に貼り付いていた。窓の明かりを戻すために立ち、途中で机の角へ膝を当てた。いつもなら避けられる幅だった。手を伸ばすと、掌に汗が残っていた。
外の広告には、まだシーアがいた。
同じ美しい顔が、声を消した窓の向こうで話している。モンは音を戻さず、添付の報告を開いた。最高議長府の命令書。GF司令の実施指示。第3合同任務群司令官の発令。ルミナーラからの停止要求と撤回要請も、時刻を付けて並んでいる。
攻撃の対象には、都市と港、生産設備、交通網を含む、本星の地表全域とあった。
係員が扉を叩いた。モンは入るよう答え、先に、家族の住所についての一件を渡した。受入れ先が決まったことを、待っている本人へ知らせてほしい。係員は宛先を確認し、その後で、机の投影へ目を向けた。
「こちらも、照会を?」
「作戦前の住民登録を。軍と救護窓口、それぞれに求めてください。議長府には、命令の説明を」
彼女は別の頁を開いた。解放した者と、追加で退避した者の数はあった。惑星で暮らしていた者の数は見つからない。
「どの人数が、どこまで確認されたものかも付けて。回答は、そのまま受けます」
係員は頷いた。二日後の祝宴について、出席の返事も必要だと言った。
モンは招待を開いた。出席者の一覧に、アレクシアールの名がある。指を置くと、街頭の宣言へ通じる案内が出た。彼女はそれを閉じ、出席と答えた。
少し違うくらいなら、話せばいい。
初めて会った夜、シーアはそんなことも言った。あの時、自分がどう返したか、モンはすぐには思い出せなかった。
*
C.R.C. 7956.274 コルサント、最高議長府、迎賓区画
祝宴の壁には、艇へ乗る人々が映っていた。
投影の前に花が置かれ、給仕が卓の間を歩く。音楽は入口まで届いていた。モンが随員の受付を済ませる間にも、奥で拍手が起きた。誰かが共和国の守護者へ杯を上げている。
シーアは、まだ杯を取れていなかった。
一人と握手をすると、隣の者が手を差し出す。制服の襟はきちんと整えられ、銀髪も、モンが街頭で見たままだった。横にいる女が、相手の名を短く教えていた。名札には、リヴィア・セリンとある。
少し離れた所で、セレナが予定を確認していた。モンはその姿にも覚えがあった。公王宮で少年の半歩後ろへ立ち、彼が話し始める前に、グラスを渡していた人だ。
ベイルが入口の脇へ来た。
「記録は、見た?」
「最後まで」
モンは答えた。ベイルは奥を見た。壁の投影では、毛布を持つ女が、艇の中の者へ何か言っている。姿が替わると、シーアの声明の一文が出た。
「人口の照会には?」
「受領だけ。救護の一覧は来た」
「私の所も同じだ」
ベイルは給仕から杯を取り、もう一つを彼女へ渡した。モンは受け取り、シーアのいる方へ歩いた。
ロジンが、数人の議員を連れてきていた。ヴェッロは卓の端に皿を置き、料理へ手を付ける前に、シーアから端末を受け取っている。
「守備に残す者が、まだ同じ行に入っている」
老議員は言った。
「港を使う部隊と、そこに残る部隊。その人数を一緒にすると、次の交代で予算を取り直すことになるぞ」
「分けた写しを送ります。動く方には移送費を、残る方には基地の費用を付けます」
シーアは、自分で端末を操作した。ロジンの後ろにいた議員が、給与の扱いも同じかと訊いた。
「共和国が引き受ける日を、先に決めたいです。派遣した後で、どの地方が払うか訊く形を変えます」
「地方に残す人員は、こちらが出す」
ロジンが言った。
「装備の費用もだ。そちらの要求が届けば、二つとも同じ日に出せる」
モンは卓の横で足を止めた。ヴェッロが彼女へ会釈し、シーアへ端末を返す。
「三日後を予定している」
老議員は言った。
「こちらで署名する者を揃える。君は、出る前に回答を寄越しなさい。定数の船が、そのまま海を渡れることにしてはいかん」
「実際に出せる数も、付けます。いまの戦列は十三隻です」
「その十三隻を支える分も、消すなよ」
ヴェッロの口元が動いた。シーアは頷き、次の議員へ顔を向けた。まだ紹介されていない相手へ、自分から名前を訊いている。リヴィアが隣から、地方の基地を扱う方です、と補った。
「回線を教えてください。次の任務へ出てからも、こちらから説明します」
シーアは言った。
モンは杯の位置を持ち直した。昔は、尋ねたことに、考えながら返事をした。船の話になると長くなり、やがて元の答えへ戻った。今夜は、誰へ何を頼むかを決めている。紹介された者の名を聞き終えると、次の用件が出てきた。
ロジンは彼女へ、受入れの追加費用にも賛同を集めていると言った。
「テルヴァーン、エイルン、ロスカ。救った後も、住民が待っている。そこへ次の軍を送れる形にする」
「受入れ窓口の継続は、必要です」
モンが答えると、シーアがこちらへ向いた。
「モスマ議員。住所の照会は、司令部にも写してください。艦上で聞き取ったものと合わせます」
「送ります」
リヴィアの端末が鳴った。彼女は画面を見て、エイルンの契約原本なら確認できる、とそばの議員へ言った。港の引渡しと、移転された住民の照合についての返事だった。モンは送り先の部署名を聞き、後で資料を求める相手として覚えた。
シーアの名が、奥から呼ばれた。
パルパティーンが卓の中央へ来ていた。マス・アメダは横で、挨拶の順を確認している。議長はシーアの手を取り、救出と後送の仕事を短く評価した。次の任務にも、共和国の支援を出す。声が通ると、近くの客が杯を上げた。
シーアは礼を言った。その後で、戻るよう求めた資料の担当を議長へ確かめた。パルパティーンはアメダへ目を向け、再編の要求も同じ窓口で受ける、と答えた。モンの所からは、議長の顔の半分が花に隠れていた。
「ジェダイからは、まだ抗議が来ていると」
隣の男が言った。国防関係の資料を扱う議員だった。モンが頷くと、彼はシーアの方へ杯を向けた。
「将軍たちにも、お考えがあるのでしょう。しかし、奴隷にされていた人々が戻る船へ乗った。共和国の意思が届いたことは、誰も否定できません」
男は話しながら、挨拶を終えたシーアへ近づいた。モンも隣を歩いた。リヴィアがシーアへ飲み物を渡し、彼はようやくそれを受け取った。
「お帰りなさい、ヴァラリアン提督」
「ありがとうございます」
目の高さは、昔より近くなっていた。モンは彼の杯を見た。両手で包んでいたジュースのグラスのことを、また思い出した。
隣の男が、解放者の数を話した。一万を超える人を、家族の所へ帰せる。二度と同じ目に遭わせないためにも、敵の力を徹底して断つ必要がある、と。
「帰還先の確認と、医療は続けています」
シーアは答えた。
「港へ着いた後の担当も、先に決めます。軍の任務が終わっても、共和国が受け持つ仕事は残るので」
男はモンへも同意を求めた。彼女は、受入れの継続には賛成すると答え、シーアへ顔を戻した。
「そういえば、ザイゲリアの人口は何人でしたか?」
モンは訊いた。
シーアの杯が止まった。
楽器の低い音が、床を通ってきた。向こうで笑い声が上がり、給仕が新しい皿を置く。モンは彼の顔を見ていた。街頭では、言葉の間隔が揃っていた。今は、唇が開くまでに、その一つ分より長く掛かった。
「確認できていません」
「作戦前の登録も?」
「回収した記録では、揃いません。救護船の聞き取りと合わせて、照会を続けています」
シーアは答えた。杯を口へ近づけ、そこで止める。モンは、自分が記録で見た貯水池の縁を思い出した。
「その照会の回答も、お願いします」
「司令部から送ります」
隣の男が、作戦中に全ての数字を得るのは難しい、と言った。モンは言葉が終わるのを待った。シーアは杯を卓へ置き、彼女の依頼を端末へ入れていた。顔を上げると、灰色の目がこちらへ戻った。
「攻撃の実施記録も、付けます。僕の発令まで」
モンは頷いた。聞いたことを打ち消す言葉は、彼から出なかった。
ロジンが別の議員を呼び、シーアがそちらへ向いた。人数と給与、港と艦の話が、また始まる。リヴィアは隣に残り、話しかけてきた者の名を教えた。セレナが予定の端末へ、連絡する相手を加えていった。
モンは卓から離れた。
壁の投影が、シーアの宣言へ戻っていた。共和国は来る。人々が船へ乗る。背後では、三日後に出す文面へ誰の署名を加えるか、相談が続いていた。
*
C.R.C. 7956.277 コルサント、銀河元老院、議場
提出者の名前が、二つの法案に同じ順で並んでいた。
モンは自分の議席で、配布された文面を開いた。ヴェッロ、ヴァディム・ロジン。その下にも、三日前にシーアの周りへ集まっていた議員の名がある。提案理由を説明するため、ロジンのポッドが中央へ進んだ。
「十二艦隊法案、ならびに地上軍法案を、共同で提出します」
二つの受付番号が表示された。ロジンは用意した紙を置き、議場へ顔を向けた。
「分離主義同盟の支配する星々から、共和国に救援が求められています」
彼の背後に、星系の名が出た。
「テルヴァーンでは、武器を持たない市民が広場で撃たれた。エイルンでは、企業の警備部隊が、住民を家から運び出した。ロスカでは、海へ逃れた者が、故郷へ戻る道を失っている。そして、キロスの人々は、庇護を名目に連れ去られ、値段を付けられた」
資料の書式は、星ごとに違った。市民会館の映像、企業の移転命令、避難船の名簿。モンはそのうち一つを開いた。エイルンの港の記録だった。祝宴でリヴィアが口にした部署が、受領先の欄に入っている。
「私たちは、その声が途絶えてから、どの部隊を出すか相談していた。来るべき共和国が、その間、来なかったのです」
ロジンは、手を演台の縁へ置いた。
「この絶対悪を決して許してはならない!」
声が議場を通った。拍手が起き、ロジンは続きの資料を出した。共和国グランド・アーミーの配属表には、千隻以上が納入されたヴェネター級と、多数のアクラメイター級が載っていた。オープン・サークルの欄を残したまま、GFの下に、第一から第十二までの番号が開く。
「共和国宇宙軍に、十二の艦隊を置きます。スターデストロイヤー二十四隻を中核に、一個艦隊は総勢百隻以上。ジェダイ将軍の任務が終わっても、共和国はそこに残る。艦も兵も、その責任を受け持つ者もです」
モンは編制図を開いた。大きな艦の印の周囲に、クルーザー、フリゲート、補給艦が並んでいる。艦隊司令官の任命手続へ進むと、ジェダイ聖堂の欄はなかった。
配属を待つ空欄が、いくつも残っていた。第3艦隊の行だけは、中核二十四隻に優先配属の印が付いている。
モンがそこへ印を付けると、ヴェッロのポッドがロジンの横へ出た。老議員は、軍の表より先に、費用の表を開いた。
「艦を揃える費用と、その艦隊を働かせ続ける費用を、併せて審議していただきたい」
落ち着いた声だった。拍手が収まるのを待ち、同じ港の名が入った二枚を並べる。造船と配属。乗員、燃料、修理と基地。モンが合計を開くと、近くの議席でも資料を送る音がした。
「地上軍法では、各惑星の防衛隊と地方の守備隊を、共和国の地上軍へ統合します。共和国が命じるなら、共和国が払う。給与も、装備も、負傷した者の受入れもです」
クローン部隊の指揮系統を維持する条項の隣に、統合する部隊の引継ぎ欄があった。ヴェッロは、そこに地方から届いた費用の一覧を重ねた。
モンは、地方の同意と費用の条項へ確認事項を入れた。ロジンの演説へ拍手した者が、ヴェッロの金額へ眉を寄せ、別の頁を開いていた。
提案理由の説明が終わった。
二法案は、それぞれの委員会へ付託される。十二艦隊法の施行予定は7957年の初め。採決の日はまだ入っていなかった。提出者の名が消える前に、モンは同じ名簿をもう一度見た。
アレクシアールの名は、そこにはない。
次の議題が始まるまでの休会で、彼女は議場の外へ出た。待合の画面には、もう提出の速報があった。
『アレクシアール派の議員ら、軍制二法案を共同提出』
ヴェッロとロジンの映像の横へ、シーアの顔が置かれている。記者は、提案に関わった議員たちが、ヴァラリアン提督の継続した説明と要求を受けていたと話した。ここ数日の個別の接触が、名前を付けて紹介されていた。
『ジェダイの作戦指揮によらない、共和国宇宙軍の十二艦隊。そのうち第3艦隊は、最高議長の意向で、発足と同時に中核二十四隻を揃える計画です』
中核艦の配属案が出た。テクター四、ヴァリアント四、ヴィクトリー四。プロヴォケイター六、ヴェネター六。四隻ずつの印が、六つの群にまとまった。クルーザー、フリゲート、補給艦が周囲へ並び、艦隊の総数の欄には、百隻以上と入っていた。
記者は、十二艦隊全ての発足と定数の充足には時間が掛かる、と続けた。議長府は、優先して配属する方針を確認している。第3艦隊の枠は、他の番号より大きく表示された。
モンの端末へ、係員から今日の照会回答が届いた。
救護船で本人を確認した者の一覧が、追加されていた。作戦前のザイゲリアの人口には、まだ回答がない。彼女は受領を返し、待合の椅子へ座った。
画面の声が、街頭で聞いた声に替わった。
『共和国は強く護られる』
モンは二つの法案を開いたまま、銀髪の下の顔を見ていた。次の議題を知らせる音が鳴り、彼女は端末を閉じた。
*
コルサント軌道、《ハービンジャー》、司令官室
リヴィアが来るまでに、シーアは卓の上を空けるつもりだった。
長距離作戦の準備文書は、GFから届いている。出航時刻は、整備と編成の審査後に通知。必要な照合を司令部へ渡し、再編の要求についても、ソーンが返してきた意見を読んだ。第3艦隊という名は案の上にあり、現有艦の表は、まだ第3合同任務群のままだった。
模型の箱だけが、置く場所を決められずに残った。
帰還してから取り寄せた港の部品だった。桟橋と小さな建物、人形の袋。建物の色を塗ろうと思い、箱から出した所で、元老院の報道が始まった。
私用の端末には、昼前の通話の続きが下書きにあった。
リヴィアにも会える、と話すと、エレナは台本を閉じた。二人で会った時は何を食べたのか訊かれ、答えるうちに、彼女が椅子の背へ身体を戻していった。
『私は、あなたにいつ会えるのかも決まってないのに』
エレナにも会いたい、と言うと、にも、を繰り返された。言い直して謝った後も、台本は開かれなかった。次の通話時刻を決め、最後までその顔を見ていた。
シーアは下書きの一行を直した。廊下から話し声が聞こえ、送信する前に端末を伏せた。
セレナが扉を開けた。
「お姫様。お客様です」
「その呼び方も、放送に入ってる?」
リヴィアが後ろから言った。セレナは、今のところは、と答えた。シーアは反射的に髪へ手をやり、二人が見ていることに気づいて下ろす。
リヴィアは手提げを椅子の横へ置いた。シーアが先に卓の部品を寄せると、彼女は畳んだ紙を出し、その空いた所へ広げた。法案の提出を伝える記事だった。
「あなた、こんなに大きかった?」
シーアの顔が、ヴェッロとロジンの二人を合わせた幅より大きく載っていた。共和国の守護者。その下に、アレクシアール派、とある。
「名前を使うとは、聞いてなかった」
「議員の方々も、自分の名前より先に出ていて、驚いたでしょうね」
リヴィアは椅子へ座った。シーアは記事を読んだ。話した相手も、送った資料も、記載されている。全部を同じ仕事として並べると、今朝までの予定より大きく見えた。
「これを、作るために会いに行ったの?」
彼女の指が、二つの法案を指した。
「うん。艦の要求だけでは、次も足りなくなる。どこへ艦を出して、誰を残すか。国の編制と予算に入れたい」
「前は、聞かれてから話していたでしょう」
「聞いてくれる人を待っていたら、出航する。向こうから訊かれても、その人が扱える所だけで終わることがある」
シーアは記事の頁を進めた。リヴィアは彼が読み終えるのを待ち、街頭の宣言も見たと言った。
「共和国軍は敵を撃つ」
「その行は、僕が入れた」
「可愛い顔で言うから、皆、最後まで聞いてしまうのね」
シーアは紙の端を押さえた。リヴィアは笑っていた。彼は、どこまで真面目に返すかを決められず、次の頁へ指を置いてから、元へ戻した。
「ザイゲリアでは、必要だと思って命じた。いまも、必要だったと思っている」
彼は言った。リヴィアの笑みが収まり、こちらを向いた。
「議長へ頼めたから、正式な命令が届いた。GFも、実施する指示を出した。ジェダイの任務が終わっても、国が撃つと決めた時に撃てる軍隊が要る。命令する者と、実行する者と、続けるための人と物を揃える」
「その国を、元老院で作る」
「艦橋では、決められないことがあるから」
リヴィアは記事の横へ手を置いた。
「それで、あなたの周りに人が集まった」
「法案を出すのは、議員の方々だ。ロジン議員には地方の要求がある。ヴェッロ議員は、僕が見ていなかった支払いの所を読んでくれた。ほかの人にも、それぞれ頼んだことがある」
「名前で呼ばれる集まりになったのね」
シーアは記事を閉じようとして、見出しをもう一度読んだ。アレクシアール派。自分の予定の宛先に並んだ人々が、その呼び名の後ろへ置かれている。
「出航してからも、話す」
彼は言った。
「通話の予定は、セレナに入れてもらっている。資料は司令部から送れる」
「私にも?」
「リヴィアにも、港の契約で頼みたい所がある」
彼女は、にも、を繰り返さなかった。椅子を卓へ寄せ、シーアが伏せていた私用の端末に目をやった。
「それは、回線で送れるでしょう」
「今日は、ほかの用もあった?」
「あなたが、まだここにいるから来たのよ」
シーアは記事から手を離した。リヴィアの手提げは、椅子の脇へ置かれたままだった。仕事の端末を取り出す気配がなく、彼女は白い家を一つ拾い上げている。
「こっちも、まだ作ってるのね」
「色を塗る所」
「屋根が外れる?」
「外れる。壁の部品も、替えられる」
シーアは隣へ椅子を移した。屋根を外し、扉と窓の向きを説明する。港へ来た人を立たせる場所と、案内所の前の道。話し始めると、リヴィアが家を持ったまま見ていることを忘れ、部品を取ろうとして、彼女の指に触れた。
「言ってくれたら、渡すわ」
「……渡して」
リヴィアは家を彼の掌へ置いた。ケレンが入ってきて、空いた場所へ茶を二組並べる。シーアが菓子の皿を寄せると、彼は別の皿も持ってきます、と言って戻っていった。
セレナは、次の軍務の通話はソーンが引き受けたと伝えた。シーアは頷いた。彼女は記事が広がった卓を見て、端の模型箱だけを床へ下ろす。
「その紙は、あとで私がしまいます」
「まだ読んでる」
「お帰りになるまで、置いておきます」
リヴィアが礼を言った。扉が閉じると、茶の湯気が、二人の間で細く上がった。
「次は、いつ帰るの」
「まだ、分からない」
「出る日は?」
「そっちも、まだ」
リヴィアは人形の袋を開けた。一つ取り出して、白い家の入口へ置く。うまく立たず、壁へ寄せてから手を離した。
「じゃあ、決まった方から教えて」
「決まる前に、また来てもいい」
言ってから、シーアは妻への下書きを思い出した。自分の端末を引き寄せ、さっき直した文を送った。リヴィアは訊かずに、次の人形を袋から出していた。
紙の上のシーアは、正面を向いていた。窓から入る光が、共和国の守護者という文字を照らしている。リヴィアはその端へ肘を置き、家をどの色にするのか訊いた。シーアは塗料の蓋を一つ開け、彼女の方へ向けた。
艦艇、兵器説明は欲しい?
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いらない
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欲しい(文のみ)
-
欲しい(元ネタリンク含め)