シロコ*テラーが過去のトラウマを克服するまでの軌跡~そして、彼女は再び『青春の物語』を紡いでいく~ 作:やきそばVer2
原作:ブルーアーカイブ
タグ:最終編ネタバレ注意 シロコ*テラー 砂狼シロコ 先生(ブルーアーカイブ) 小鳥遊ホシノ 大人のカード ハッピーエンド 対策委員会 あまねく奇跡の始発点のその後 アビドス生徒会 シリアス
だが、彼女の心の奥底には、元いた世界での出来事が強いトラウマとして残っていた。
このお話は、この世界のシロコや先生たちによってシロコ*テラーが真の意味で救われ、彼女自身の『青春の物語』を再び綴りはじめるまでの軌跡。
※本作はpixivにも同じ内容のものを投稿しています。
【???】
「ホシノ先輩......ノノミ......アヤネ......」
「みんなみんな......いなくなっちゃった......」
「セリカ......どこに行っちゃったの......もう生きていないのかな......」
夜の砂漠を当てもなくさまよう私。
その身体は傷だらけで、片目も負傷している。
手にはボロボロになった三人分の学生証が握られていた。
他の何よりも大切だった対策委員会のみんな。
だが、彼女たちはもうこの世にいない。
今手に持っている学生証たちがその証だ。
度重なる悲劇により、私の心と身体は限界を迎えていた。
「先生もあんな状態だし......もう......私に残されたものなんてない......」
「私のしてきたことは、全部無駄だったんだ!」
絶望感に打ちひしがれる私。
そんな私の前に『ある存在』が接触する。
「これは......何?」
「もうどうだっていいや......好きにして......」
自暴自棄になった私は、その存在--色彩--に触れ......
【アビドス自治区:シロコ宅】
「ガハッ!」
「ハーハーハーハー」
夢の途中で飛び起きる私。
その身体は、暑さのせいではない汗で濡れていた。
そんな私を一人の少女が心配そうに見つめる。
「大丈夫?でかシロコ。」
「ハーハー......もう大丈夫だよ。ちびシロコ。」
「ん、もう落ち着いた。」
「また......あの夢だ......もう失うのは嫌......」
金髪の連邦生徒会長が帰ってきた頃、ちびシロコの提案で私は対策委員会に正式加入した。
住んでいた廃墟から出てきて、以前と同じアパートの一室に住むことにもなった。
ちびシロコのおまけ付きで。
「つらくなったらいつでも言って、でかシロコ。」
「大丈夫......私は大丈夫だから心配しないで。」
嘘だ。
本当は大丈夫なんかじゃない。
この世界に来て、しばらくの頃は問題はなかった。
だが、過ごした時間が長くなるのに従って、私の心の傷口が開いていった。
(私が居た世界にも......今いる世界のような未来があったはず。それを消したのは......私。この世界も滅ぼそうとしたのも......私。)
(この世界に居場所なんて本当にあるの?あの世界で消えていくべきだったんじゃないの?)
(駄目!今はそんなことを考えるべきじゃない。ちびシロコや対策委員会のみんなに......これ以上心配かけたくない!)
重い身体をなんとか動かして、アビドス高校の制服に着替える。
対策委員会に加入した時にもらったものだ。
着替え終わったのを確認したちびシロコは、私に話しかけた。
「今日のターゲットは『ロボ市民強盗団』のリーダーだよ。賞金額も高いから、頑張って捕まえるべき。」
「でも無理そうなら遠慮無く言って、でかシロコ。」
~~~~
【アビドス自治区:ロボ市民強盗団アジト】
「大きい方のシロコちゃん!そっちに敵のリーダーが行ったよ!」
「ん、任せて。すぐに捕まえる。」
銃を乱射して、ロボ市民強盗団の構成員をなぎ倒していく私。
そのままリーダーに飛びかかり、銃口を突きつける。
「これで終わり!」
勢いよく引き金を引いた。
だが、弾丸は撃ち出されなかった。
(弾切れ!私としたことが!)
以前の私なら絶対にしなかったミスを犯してしまう。
頭が真っ白になった隙に、ロボ市民強盗団 のリーダーが逃げ出す。
「へへへ、残念だったな。」
「一旦逃げ」
ドゴン!
重い銃声が鳴り響き、敵のリーダーが倒れた。
「賞金首の制圧完了。」
「みんな、任務成功だよ!」
ホシノ先輩の声で戦闘を止める対策委員会の一同。
ショットガンの一撃で倒された敵をすぐに縛り上げる。
「おじさんたちは先に帰るね。」
「シロコちゃんたちは賞金首の引き渡しをお願いね。」
「「ん、任せて。」」
~~~~
【アビドス自治区:対策委員会部室】
「みんな、最近の大きい方のシロコちゃんについてどう思う?」
ホシノが対策委員会の面々に尋ねる。
最初に答えたのはアヤネだった。
「アトラハシースの箱船のときとは比べものになりません。」
「それどころか、私たちと合流した時よりも弱くなっています。」
アヤネの言葉を聞いたセリカが話し出す。
「私もおかしいと思うわ。なんかいつも心ここにあらずって感じだし。」
「そのせいで、まともに戦えなくなっているみたい。」
最後にノノミがつぶやいた。
「シロコちゃん......やっぱり元の世界でのことを気に病んでいるのでしょうか?」
「すごく心配です。」
「そうですね、私もそう思います。」
「私もよ!」
三人の返答を聞いたホシノ。
「みんなもそう思うよね。先生に相談してみようか。」
ホシノは、スマートフォンを取り出して電話を始める。
「先生ちょっと相談が」
~~~~
【アビドス自治区:ロボ市民強盗団 アジト】
「毎度ご協力感謝します。賞金はいつもの口座に振り込みますね。」
賞金首を護送車に乗せながら、ヴァルキューレの生徒の一人がそう告げた。
そのとき、モモトークの通知音が鳴った。
「あ、先生からだ。『シャーレまで来てくれ』か。」
シャーレへのポータルを開く私。
だが、足が止まる。
(先生はこんな私にも優しくしてくれる。)
(でも、先生に会うたびに『元の世界の先生』を思い出して辛くなる。)
「ん、早く行くべき。」
「ちびシロコ!心の準備がまだ......」
そういうと同時に、ちびシロコは私をポータルに蹴り飛ばした。
その直後に、ちびシロコもポータルへ飛び込んだ。
【シャーレビル:執務室】
「やあ、シロコ。よく来てくれたね。」
「さっそく」
「優しくしないでください!」
「先生がどんな生徒に対しても優しく接するのはわかっているんです! 前の世界でもそうだったから!」
「でも、でも......だから辛いの。」
「その優しさが、私が失ったもの全てを思い出させるから......私が『よそ者』で『この世界の敵』だということを想起させるから......」
先生の話を遮って、反射的に叫んでしまう。
大粒の涙を流しながら、その場にへたり込んだ。
そんな私に優しい声がかけられる。
だが、それは先生からではなかった。
「ん、それなら『失ったもの』を取り戻していけばいい。」
「でかシロコにだってそれができるはず。だって、あなたは『私』なんだから。自分のことだからよくわかる。」
「ちびシロコ......何も知らないくせに!」
優しさに対してつい怒鳴ってしまう。
だが、ちびシロコは続ける。
「確かに私は何も知らない。」
「元の世界がどういうところで、そこで何があったのか。そして、あなたが何をしでかしたのかも知らない。」
「でも......それは前を向いて歩かない理由にはならない。あなたも『砂狼シロコ』なら、前を向いて歩くべき。私なら何があってもそうする。」
「この世界にもあなたの居場所はもうあるし、生徒たちもあなたのことを恨んでもいない。」
「それに気づいてないのはあなただけ。対策委員会のみんなも認めてくれてるし、何より『私』があなたの存在を認めている。一人で悩み続けるのは止めるべき。」
「私は何があってもあなたを見捨てたりなんかしない。存在を認めないなんてこともありえない。」
「あなたを『この世界の敵』だと言うようなやつがいたら、私が懲らしめる!」
一呼吸空けて、ちびシロコは続けた。
「だから安心して暮らしていくべき。」
「一緒に進んでいこう、『もう一人の私』」
その言葉で、うつむいていた顔を思わずあげる。
対策委員会のみんなは、もうずいぶん前から存在を認めてくれていた。
他ならぬ『この世界のシロコ』も例外ではなかった。
私のことを『もう一人の私』と呼んでくれたのだから。
私のことを認めていないなかったのは、『この世界』ではなく、『自分自身』だった。
そのことを理解して、真の意味での救いを感じた。
頬を伝う悲しみの涙は、いつのまにか止まっていた。
暗い感情の濁流も、今は明るい感情の清流へと変わっていた。
~~~~
「落ち着いたみたいだね、シロコ。」
「今日君を呼んだのはこれを渡すためさ。」
先生は引き出しから一枚のカードを取り出した。
焼け焦げてボロボロになったカード。
それは、元いた世界の先生の『大人のカード』だった。
「これは君が持っているべきだ。」
「私も彼が元の世界でどう生きたのかは知らない。それに、何をしたのかもだ。でも一つだけ確かなことがある。」
「それは、『君にこの世界で幸せになってほしい』と願ったことさ。」
「私だったら絶対にそう願う。彼もその願いからこのカードと君を私に託したはずだ。」
「彼のためにも、君はこの世界で幸せになるべきだよ。もしかしたら、君をこの世界に連れてきたのは、彼による色彩へのささやかな抵抗だったのかもしれない。」
「同じことを繰り返しちゃうけど、君はここにいていいんだ。君は青春を取り戻していいんだ。」
「幸せになるべきなんだよ、シロコ。」
「本当は私が君を癒やしてから渡すつもりだったんだけど......シロコに先を越されちゃったよ。君たちにはかなわないな。」
話し終えた先生はカードを差し出した。
カードを受け取った私。
自然と悲しみではない涙が流れ出していた。
私は、この日の出来事を一生忘れないだろう。
「ありがとう先生......ありがとう......もう一人の私。」
「私は......失った青春を取り戻していくよ!」
【???】
私は傷だらけの身体を引きずりながら、夜の砂漠を歩んでいた。
手に亡くなった三人の学生証を握りながら。
そんな私に、あの存在--色彩--が近づいてくる。
その存在手を伸ばして......
「もうどうでもいいや......」
(本当にどうでもいいの?)
(また大事な物を失っていいの?違うでしょ!)
「違う......違う。どうでもよくなんかない!」
「私には......対策委員会のみんながいる! 私には先生がいる!」
「......私は......もう何も失いたくない。 私は......大切なものをこれ以上失うわけにはいかない!」
私の手にはいつの間にか拳銃が握られていた。
「消えろ!忌々しい色彩め!」
ダアン!
一発の銃声がこだまする。
「もう私は以前とは違う。」
「ん、この夢ともおさらば!」
「私は......もう過去には囚われない!」
ダアン!
もう一発の銃声が鳴り響く。
その直後、世界がだんだんと崩れていき......
【アビドス自治区:シロコ宅】
ピピピ!ピピピ!
目覚まし時計のアラームが聞こえてくる。
「ふああー。もう朝か。」
これまでとは異なり、とても穏やかな気持ちで目覚めた私。
「ん、おはようでかシロコ。」
「ややこしいから『でかシロコ』に呼び方戻すね。」
「ん、わかった。私もあなたのことを『ちびシロコ』って呼ぶ。」
もうあの悪夢は見ることはない。
不思議とそう感じていた。
その感覚は正しかった。
この日を境にして、もうあの悪夢を見ることはなくなったからだ。
そんな私に、ちびシロコが告げた。
「今日の依頼も賞金首の拘束。」
「準備ができたらすぐに行くべき。」
【アビドス自治区:ロボ市民強盗団アジト】
「ホシノ先輩!お願いします!」
「了解、ノノミちゃん。おじさんに任せて!」
脱走したロボ市民強盗団のリーダー。
アジトに戻ってきたリーダーを捕縛して、賞金を手に入れるべく交戦中の対策委員会。
あと少しでターゲットを捕まえられるはずだ。
「おとなしくしててね。リーダーさん。」
「さーてこれでとど」
「これでも食らいやがれ!」
突然閃光がほとばしる。
ロボ市民強盗団のリーダーが投げたスタングレネードの光だ。
直撃を受けたホシノは、一時的に行動不能になった。
「こいつ!このままじゃ逃げられる!」
「ん、問題ない。私に任せて、ホシノ先輩。」
「逃がさない!」
数発の弾丸を撃ち出す私。
その弾丸は吸い込まれるように敵に命中し、ターゲットの動きを封じた。
その隙に素早く相手を捕縛する。
その動きは、初めてこの世界に来たときのような機敏な動きであった。
どころか、以前よりも遥かに素早い動きになっていた。
「ん、これで一件落着。」
「よくやったよ大きい方のシロコちゃん。おじさんが助けられる日が来るなんて、驚いちゃったよ。」
「元気も取り戻してくれたみたいでよかった。先生に頼んだおかげかな?」
「それにしても、制服じゃなくて黒いドレス姿だと違和感があるね?」
「これでいいの。これは私の決意と先生への追憶の証。」
「それに、制服だとちびシロコとキャラが被る。」
ジョークを交えつつホシノ先輩の質問に答えた。
自分の犯した罪は消えない。
それに消えていった者は帰ってくることはない。
忘れてはいけないし、この先も背負っていくべきだ。
しかし、それは『過去に囚われるべき』とは違う。
その全てを受け入れた上で、私の人生を歩むべきなのだ。
私はこの世界で失った青春を取り戻していく。
それこそが、失ったもの全てに対する最大限の手向けなのだから。
(もう一人の私......精一杯励ましてくれてありがとう。)
(私を救ってくれた先生。私を立ち直させてくれた先生。三人のおかげで、今の私がある。)
(これからもよろしくね。この世界の先生ともう一人の私。)
(私はこの世界で生きていくよ。見ていてね、天国の先生。)
感謝の気持ちを胸に、私は第一歩を踏み出す。
心の中には『もう過去には囚われない』という強い決意を。
懐には焼け焦げたカードを大事に忍ばせて。
「ん、仕事も終わったことだしカフェにでも行かない?」
「いいね。大きい方のシロコちゃんが提案するなんて珍しいね。」
「みんな、お茶しに行くよ。大きい方のシロコちゃんがおごるってさ。」
「おごるとまでは言っていない。でもいいよ。」
完