遅咲きのプロゲーマー~W杯優勝GK、36歳からeスポーツへ~   作:タイラー・カイマー

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第13話 Carry

 

【Carry(キャリー)】

大きな活躍によって、チームを勝利へ導くこと。英語で「運ぶ」という意味から使われる。

 

*

 

 BUSTERとの開幕戦、Game1。

 

 ドラゴンへ続く入口を塞がれ、ARCANAの5人がわずかに足を止める。

 

 その時だった。

 

 視界のない川の奥から、1本の長槍が飛んでくる。

 

ARAKI「っ!」

 

 ブラウン(Support)の身体へ突き刺さり、体力が削られた。

 

HARU「FROGの槍! 今度はARAKIに命中!」

 

 FROGの女狩人ニダリ(Jungle)は、まだARCANAの視界には映っていない。

 

 見えているのは、入口を塞ぐ岩石生命体のマルファ(Top)と、その斜め後ろで鎖を構える亡霊のスレイシュ(Support)。

 

NAGI「ARCANA、これは長く睨み合いたくないですね」

HARU「と、言いますと?」

 

NAGI「BUSTERは先に位置を取っています。ARCANAが入口で迷っている間にも、ニダリ(Jungle)の槍で少しずつ削られてしまう」

NAGI「下がってドラゴンを渡すのか、それとも今、強引にでも仕掛けるのか。判断が必要です」

 

 ARAKIにも、それは分かっていた。

 

 無理に戦わず、このドラゴンをBUSTERへ渡す。

 

 それも1つの選択だった。

 

 だが――。

 

 ここまで、何のために序盤の損を受け入れてきた。

 

 ここでも下がれば、ドラゴンを奪取され、すでに先行しているFROGを、さらに走らせることになる。

 

 分の悪い賭けかもしれない。だが、ここで下がれば勝機はさらに遠のく。

 

ARAKI「やるぞ! ZERO、入れ!」

ZERO「はい!」

 

 ZEROが操る重装の騎手、セジャニ(Jungle)が前へ出る。

 

 入口を塞いでいたマルファ(Top)へスキルが命中、集団戦の火蓋が切られた。

 

 岩石の巨体が動きを止めると、ARCANAの面々が後から続く。

 

 Pikaのワニ戦士レネクト(Top)が飛び込み、Shadowの機械少女オリアネ(Mid)も援護する。

 

 マルファ(Top)と、その近くにいた亡霊スレイシュ(Support)が巻き込まれる。

 

HARU「ARCANA、仕掛けたぁ! 先に陣形を作られていましたが、強引に正面から入った!」

 

 両軍の体力が削れていく中、Zarkのジンク(ADC)が銃撃を重ね、マルファ(Top)の体力を削り切る。

 

HARU「BUSTERはまずTopのTetsuが落ちた!」

 

 続いて、退こうとしたスレイシュ(Support)にも攻撃が集中する。鎖を振るいながら抵抗するが、逃げ切れない。

 

HARU「SupportのNeroも撃破! ARCANA、2人持っていった!」

 

 客席で、明美が思わず身を乗り出した。

 

明美「倒せたじゃん!」

 

 だが、隣のtakaは笑わなかった。

 

 大型スクリーンの端を見ている。

 

taka「いや……まだ後ろにいる!」

 

 そう……まだ3人残っていた。

 

HARU「BUSTER、生き残ったのはJungleのFROG、ADCのTrigger、MidのRAKU! 火力を担う3人が全員残っています!」

 

 しかも――。

 

ARAKI(くっ、冷静だな……!)

 

 マルファ(Top)とスレイシュ(Support)を倒すため、ARCANAの5人は前へ固まっていた。

 

 その間に、BUSTERの3人はさらに距離を取っている。

 

 ARCANAが仕掛けるより前から、次の位置へ動いていた。

 

 そこへ。

 

 横から、またも長槍が飛び、ジンク(ADC)へ突き刺さる。

 

Zark「っ!」

 

ARAKI「ニダリ(Jungle)が横から来るぞ!」

 

 直後、獣へ姿を変えたニダリ(Jungle)が、一気に距離を詰めた。

 

 その時にはもう、Triggerのルシオン(ADC)も2挺拳銃の射撃を重ねていた。

 

 さらにRAKUの機械仕掛けの魔術師、ヴィクト(Mid)からも攻撃が飛び――

 

 ジンク(ADC)のHPは尽きた。

 

HARU「Zarkが落ちた!」

 

 FROGは止まらない。

 

 倒した瞬間には、もう次を見ている。

 

NAGI「ARCANA、陣形が崩れました! 反撃を合わせられません!」

 

 歓声が1段、大きくなる。

 

 Pikaも、ZEROも、ARAKIも倒れていく。

 

 残ったShadowも反撃を試みるが、3方向からの攻撃に押し切られた。

 

 やがて、オリアネ(Mid)の身体も地面へ沈んだ。

 

HARU「ARCANA、全滅です!」

 

 大型スクリーンに表示されたのは、ARCANA5人の死亡。

 

 一方のBUSTER。生き残ったのはFROG、Trigger、RAKUの3人。

 

 彼らはそのまま川のくぼみへ入り、ドラゴンの体力を削っていく。

 

 そして――。

 

HARU「ドラゴン獲得はBUSTER!」

 

 客席から歓声が上がる。

 

 明美は画面を見ながら、まだ少し納得できないように首を傾げた。

 

明美「ドラゴンは取られちゃったけど、こっちも2人倒せたし、悪くないんじゃないの?」

taka「FROGにたくさん経験値とお金が渡っちゃったのがヤバいんだ……」

明美「そんなに?」

 

 takaは、大型スクリーンから目を離さない。

 

taka「さっきより、もっと止められなくなる」

 

 復活を待つ灰色の画面を見ながら、ARAKIも同じことを考えていた。

 

 仕掛ける判断を、間違えたとは思わない。

 

 全員、指示どおりに動いた。

 

 それなのに。

 

 戦いが終わった時、致命傷を負ったのはARCANAだった。

 

 そこから先、ARCANAに立て直す余裕はなかった。

 

 ドラゴンを獲得し、大量の資金まで手にしたFROGは、さらに試合の速度を上げていく。

 

 ARCANAも食い止めようとした。

 

 だが、あの集団戦を境に差は一気に広がった。

 

 やがてARCANAの本拠地が破壊される。

 

HARU「Game1はBUSTER! FROG選手、見事なCarry(キャリー)でした!」

 

 歓声の中、明美が首を傾げた。

 

明美「Carry?」

taka「試合を勝たせることをCarryっていうんだ。勝利を運ぶっていう意味」

明美「へえ……」

 

 その隣で、陽菜が不安そうに大型スクリーンを見上げていた。

 

陽菜「パパ、逆転できるかな……」

 

 takaは画面を見たまま、答えなかった。

 

*

 

 Game1を落とし、ARCANAの5人が控室へ戻る。

 

 誰も、すぐには口を開かなかった。

 

 勝てると思っていた。

 少なくとも、ここまで一気に崩されるとは思っていなかった。

 

Zark「何でだ、何でだよクソ……いけると思ったのに……」

 

 自分たちは間違った判断をしたわけではない。

 それでも、戦い始めた時にはもう遅かった。

 

 ARAKIが加わり、ARCANAはようやく5人の判断を1つに揃えられるようになった。

 以前なら、自分たちの判断がまとまらないまま崩れていた。

 

 今は違う。

 揃えてなお、BUSTERに先を取られている。

 

 だからこそ初めて、王者との差がはっきりと見えた。

 

 そんな空気の中、Lemonが試合映像を巻き戻した。

 

Lemon「見返しても、ARAKIさんの判断が遅いとは思えません」

ARAKI「ああ。俺もそう思ってる」

Shadow「ならば何故あれほどまでに先手を取られたのでしょう……」

 

 TopへのGank。Botへの圧力。そしてDragon前の集団戦。

 

 振り返れば、どの局面もFROGの動きが起点になっていた。

 

 FROGが動く。

 その直後には、BUSTERの残り4人も次の形へ入っている。

 

ARAKI「……FROGが、俺より先まで読んでたのか?」

ZERO「未来をですか?」

ARAKI「あいつが動く前から、その後に起こることまで考えて、4人に指示する……」

 

 自分の判断速度には自信があった。

 サッカーでも、SOLでも、相手より先に危険を見つけることがARAKIの強みだった。

 

 その自分が、何度も後手に回された。

 

ARAKI「そんなことができるのか……?」

 

 驚きより先に、悔しさが込み上げる。

 

 もし本当にそうなら。

 自分は、まだ王者の司令塔に追いつけていない。

 

Lemon「少なくとも、FROGが動いてからBUSTER全体が動くまでが、ものすごく速かったです」

 

 ARAKIは映像から目を離した。

 

ARAKI「なら、こっちも1手前から動く」

 

 4人を見る。

 

ARAKI「次に起こりそうなことを、先に2つか3つ伝える。起きてから考えるんじゃなく、先に答えを用意しておく」

 

Lemon「それ、ARAKIさんの負担が大きくないですか?」

ARAKI「問題ない。2つ先ぐらいまでならやれる」

Pika「……本気デスカ? かなり超人ですヨ」

 

ARAKI「やるさ。問題はお前らだ。俺の指示を受け取りながらプレイ出来そうか?」

ZERO「確かにこちらの脳処理速度も上げる必要があります」

Zark「やるしかねえだろ、勝つために!」

 

 ARAKIは立ち上がった。

 

 負けたまま、納得して終わるつもりはない。

 

ARAKI「よし、行くぞ!」

 

*

 

 Game2。

 

 ARAKIは、試合が動く前から声を出し続けた。

 

ARAKI「次、FROGがTopへ来たらPikaはすぐ下がれ。ZEROは逆側を取る。来なければ、そのままDragon側を見る」

Pika「了解デス!」

 

 ほどなく、FROGが上側の視界から消える。

 

ARAKI「1つ目!」

 

 今度は早かった。

 

 PikaはFROGの姿を確認する前から下がり始め、ZEROも同時に逆側へ動く。

 

 FROGがTopへ姿を見せた時には、すでにARCANAの対応は始まっていた。

 

HARU「ARCANA、早い! Game1より明らかに対応が速くなっています!」

NAGI「相手が動いてから考えるのではなく、次の展開を先に用意していますね」

 

 手応えはあった。

 

 これなら間に合う。

 

 そう思った直後だった。

 

ZERO「こっち、先に入られてます!」

Shadow「Botからも来ます!」

 

 ARAKIが視線を走らせる。

 

 FROGがTopへ姿を見せた、その裏側。

 

 RAKUとTriggerは、ZEROが資源を取り返すはずだった逆側の森へ、先に向かっていた。

 

ARAKI「なら次は――」

 

 指示を出す。

 

 ARCANAの4人も、すぐに反応する。

 

 ZEROは引き返す。Pikaは守れたが、反対側で取り返すことはできなかった。

 

 遅くない。

 

 Game1より、確実に速い。

 

 それでも。

 

ARAKI(……まだ、先にいる?)

 

 用意した分岐に従って動いても、BUSTERはその先に備えていた。

 

 先を読んでも追いつけない。

 

 分岐を増やすほど、ARAKIの処理量も増えていく。

 

 それでもARAKIは声を止めなかった。

 

 次はTop。

 その次はDragon。

 逆ならBot。

 

 考え、伝え、また次を読む。

 

 ARCANAも必死に食らいついた。

 

ARAKI(何が……何が足りない!?)

 

 そのわずかな遅れを、FROGは見逃さなかった。

 

 ARCANAの陣形に隙が生まれた瞬間、ニダリ(Jungle)が飛び込む。

 

 1人を倒せば、もう次の標的へ。

 

 客席で、takaが唇を噛む。

 

taka「……すげえよ。でも、今日くらい止まってくれよ……!」

 

 追いつこうとするほど、FROGはさらに先へ進んでいく。

 

 そして……最後までその差は埋まらなかった。

 

HARU「決着! Game2もBUSTER!」

 

 ARCANAの本拠地が崩れる。

 

HARU「FROG選手、Game1に続いてGame2でもCarry! 開幕戦から圧倒的な存在感を見せました!」

NAGI「ARCANAも昨季から見違えるような戦いを見せてくれましたが、FROG選手が更に上を行きましたね」

 

HARU「開幕戦はBUSTERが2対0! 国内王者がストレートで勝利です!」

 

 その瞬間、Zarkが拳を1度だけ机へ落とした。

 

Zark「……クソッ!」

 

 だがZarkはすぐに手を引き、荒く息を吐くと、ヘッドセットを外した。

 

 その横で、ARAKIは結果画面を見つめたまま、すぐにはヘッドセットを外せなかった。

 

 Game1より速くなった。

 

 間違いなく、速くなった。

 

 それでも――届かなかった。

 

*

 

 控室では、FROGのヒーローインタビューがモニターに流れていた。

 

 会場の歓声が響く中、ARCANAの面々は誰も画面を見ていなかった。

 

 ARAKIが口を開く。

 

ARAKI「……まず、謝らせてくれ」

 

 5人の視線が集まった。

 

ARAKI「今日の敗北の責任は俺にある……すまなかった」

 

Shadow「まさか、あの特約のことを気にしているのですか?」

ARAKI「そうだ。お前たちは指示に従ってくれた……その上で負けた。俺の責任だ」

 

Zark「今更何言ってんすか! 別にあのことは誰も後悔してねーでしょ」

 

 ARAKIが言葉を止める。

 

Lemon「それより……気付いた事があります。覚えてるうちにレビューしましょう」

ZERO「そうですね。記憶が新鮮なうちに」

ARAKI「……そうだな。頼む」

 

 Lemonがリモコンを操作する。

 

 FROGの姿が消え、モニターにはGame2の映像が映し出された。

 

Lemon「ここです」

 

 FROGがTopへ向かう場面。

 

 その姿が見えるより先に、RAKUが中央から動き始めている。

 

 Triggerも同じだった。

 

 ARAKIが事前に用意した分岐へARCANAが動き始めた時には、BUSTERの2人はすでに次の位置へ向かっていた。

 

ARAKI「FROGがTopへ出る前から、もう次に備えてる……」

Lemon「そうなんですよね……他にもあります」

 

 別の局面。

 

 今度はFROGから離れた場所で、Neroが先に位置を変えている。

 

Pika「離れた場所でも、同じように動きを変えてますネ……」

 

 ARAKIは黙って映像を見つめた。

 

 Game1で考えた。

 

 FROGが、自分よりさらに先の展開まで読み切っているのだと。

 

 だからGame2では、自分も先に分岐を用意した。

 

 それでも届かなかった。

 

Lemon「たぶん……FROGだけじゃないんですよ」

ARAKI「……何?」

 

Lemon「BUSTERは、全員が次に何が起こるか考えながら動いてるんじゃないですか?」

ZERO「局面ごとの可能性を、5人とも分かっている……」

Shadow「そうなら、FROGの声を聞いてから考える必要はないですね」

 

 ARAKIの中で、ようやく何かが繋がった。

 

ARAKI「……俺がもっと先まで読むんじゃない」

 

 モニターには、動き出すBUSTERの5人。

 

ARAKI「全員で先を読む事が必要なのか……」

 

 考え込むARAKIに、Lemonが口を開く。

 

Lemon「そこまで悲観する事ではないと思いますよ」

ARAKI「なぜそう思うんだ?」

 

Lemon「昨季まではこの問題点に辿り着く事すら出来なかったので……ボクは大きく前進したなと感じてます」

Shadow「ARAKIさんが加入してようやくスタートラインに立てた、ということかもしれません」

 

Pika「小学生に負けるくらいでしたからネ!」

Zark「その自虐だけはダメでしょ!?」

ARAKI「ふっ……」

 

 重かった控室の空気が、ほんの少しだけ緩んだ。

 

 その時、控室の扉がノックされた。

 

マネージャー「失礼します」

 

 扉を開けて入ってきたのは、BUSTERのマネージャーだった。

 

 その後ろには、FROGとTriggerが立っている。

 

マネージャー「試合直後のところ、申し訳ありません。こちらの2人が、ARAKIさんと少しお話ししたいそうでして……よろしいでしょうか」

 

ARAKI「俺に?」

Trigger「はい!」

 

FROG「すみません。少しだけ、お時間いいですか?」

ARAKI「ああ、もちろん。入ってくれ」

 

マネージャー「この後も予定があるから、あまり長くならないように。私は外で待っているからな」

 

FROG「ありがとうございます」

 

 2人が控室へ入る。

 

ARAKI「お疲れ様だ。いや……完敗だった」

FROG「驚いたのはこちらです。ゲームを始めて数か月で、あの実力……しかも36歳で。正直、信じられません」

 

Zark「すげえだろ?」

Trigger「何でお前が威張ってんだよ」

 

 思わず何人かが吹き出した。

 

Shadow「それで、用とは? マネージャーの方が時間がないとか言ってましたが」

Trigger「あっ、そうだった!」

 

 Triggerが慌てて手元の鞄を探り、2枚の色紙を取り出した。

 

Trigger「あの……ARAKIさん。よかったら、サインもらえませんか?」

Lemon「この流れで!? 完勝後に!?」

 

ARAKI「俺に勝った直後に、相手の控室まで来てサインを?」

Trigger「いや、その……今日じゃないと、またいつ会えるか分かんないんで!」

 

 ARAKIは差し出された2枚の色紙を見る。

 

ARAKI「サッカー選手の荒木将として? それとも、ARCANAのARAKIとして?」

Trigger「え?」

 

 そこまでは考えていなかったらしい。

 

 Triggerが固まる。

 

ARAKI「2枚あるなら、両方書くか」

Trigger「えっ、いいんすか!? ありがとうございます!」

 

 1枚には、サッカー選手として。

 

 もう1枚には、プロゲーマーARAKIとして。

 

 書き終えた2枚をTriggerへ返す。

 

 その横から、FROGが覗き込んだ。

 

FROG「あとで1枚くださいよ」

Trigger「これは2枚ともオレのだ」

FROG「ひどい!」

 

 先ほどまで、手の届かない王者に見えていた2人。

 

 だがこうして目の前にいる姿は、どこにでもいる仲のいいチームメイトそのものだった。

 

ARAKI「ふっ……今度は勝つ。また、よろしく頼む」

FROG「はい。次も楽しみにしています」

 

Trigger「サイン、ありがとうございました」

 

 BUSTERの2人が揃って頭を下げ、控室を出ていった。

 

Pika「楽しそうでしたネ」

ZERO「彼らのあんな姿、初めてみたかもしれません」

 

Zark「ARAKIさん。オレもサインください。プレミアついたら売れるかも」

ARAKI「お前はtakaを越えてからだ」

Zark「それ、かなりきついっす……」

 

 ARCANAも笑いながら帰路へ向かう。

 

 敗北を忘れたわけではない。

 

 ただ、何が足りなかったのかは見えた。

 

 だから今は、前を向いて会場を出られた。

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