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LC-092-Y/arieSta
2046.01.09-Tue
Location : 中野区 東京都
MoonAge : 2.3
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「狙われた」
ハルがそう言ったのは、新月セッションから二日後の昼過ぎだった。
「え! 誰が?」とユキは即座に聞いた。
「オーラフ。ノルウェーでセッションの帰りに、確定クリスタルを三個持っていかれた」
「強盗?」
「スターハンターだと思う。プロの仕事だったらしい。セッション場所を事前に把握してた」とハルが言った。
表情が珍しく硬い。
「場所の情報が漏れてたか、尾行されてたか」
ダイチがキーボードから手を離した。
「自分たちも同じリスクがある」
「そう」とハルが頷いた。
「今まで運良く何もなかっただけで、アリエスタのセッション情報も外に漏れてる可能性はある。縮尺データの件で名前が出回りすぎた」
腕を組んで考えた。胸の奥がざわついていた。
善福寺公園での新月セッション。あの夜、三人で芝生に陣取って四十一個のクリスタルを試した。暗い公園の外れとはいえ、計測機器を広げて、ポーチを開けて、かなり目立つ作業だった。
もし誰かに見られていたら。
「次のセッション、場所を変えよっか」
「それだけじゃ解決しないよ」とハルが言った。
「場所を変えても、同じように尾行されれば意味なくなるから。根本的に、セッションの方法を変えないと」
「じゃー、どうする?」
「逆に考えてみたんだけど」とハルが珈琲を一口飲んでから言った。
「人のいない場所でやるから狙われる。人が多すぎる場所ではどうだろう」
ユキが顔を上げた。
「灯台下暗し」
「そう」とハルは笑った。
「大勢の人間がいる場所で、普通に作業してる。何をやってるかわからない。強盗も、悪意あるハンターも、動きにくい」
「でも夜の開けた場所じゃないとクリスタルが反応しない」
「屋上」とダイチが言った。
二人がダイチを見た。
「人が多いビルの屋上。営業時間内なら人目があって安全。閉館後は管理者と交渉して残れるようにする。開けた空と人の目、両方確保できる」
「池袋のサンシャインはどう?」とユキは言った。
「展望台の屋上部分、夜間に使わせてもらえるか機構経由で打診できる」とダイチが続けた。
「機構の施設として申請すれば通りやすいはずだ」
ハルが頷いた。
「あとセッション場所と日時を、直前まで非公開にする。ネットワーク内でも、信頼度の高い相手にしか教えない。オーラフのケースは情報の共有範囲が広すぎたと思う」
「村上さんに相談してみる」とユキは言った。
「護衛の話も含めて。協定の範囲を広げてもらえるか聞いてみる」
「機構に頼りすぎるのも」とダイチが少し間を置いて言った。
「わかってるよ」とユキは言った。
「でも、今は使えるものは使う。対等な関係なんだから。頼ることと依存することは違うと思うし」
ダイチは何も言わなかった。
肯定の沈黙だと、最近わかってきた。
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LC-093-Y/arieSta
2046.01.13-Sat
Location : 豊島区 東京都
MoonAge : 6.3
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村上との打ち合わせは四日後だった。
会議室に入ると、村上と田中の他に初めて見る顔の四十代くらいの男性がいた。
「光増幅器の担当、橋田です。三鷹施設の設計をしました」
「あの塔を作った人ですか」とユキは言った。
「はい。次回の夜、増幅施設なしでのセッションを観察させてもらえますか。石版なしでクリスタルがどう反応するか、データが欲しいので」
「いいですよ」
護衛については村上から前向きな返事が来た。サンシャイン60の屋上使用についても、機構経由で申請が通った。
なお、サンシャインシティにはプラネタリウムがある。星が消えた世界で、昔の夜空を映し続けている場所。小学校の遠足で一度行った。大人になってからは行ってない。
「アリエスタなら護衛を付けてもらえると思う」という村上の言葉が、田中から伝えられた。
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LC-094-AI/arieSta
2046.01.15-Mon
Location : 豊島区 東京都
MoonAge : 8.3
自動記録 / サンシャイン60屋上
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サンシャイン60の屋上。エレベーターを降りた。
「隣りの下にプラネタリウムがある」とダイチが言った。
「知ってるよ」とだけユキは返した。
「そうか」
橋田が観察に来た。ダイチが横目で橋田の機器を見た。
「良いやつ使ってるな」
「機構の予算だしね」
「それもあると思うが自作もしてる。改造の跡がある」
ユキはもう一度橋田を見た。スーツではなくフィールドウェア。機器を扱う手つきが、慣れている。
「仲間かもしれないね」
「どういう意味で?」
「機構に弾かれた組じゃなくて、弾かれなかったけど同じ方向を向いてる人って、いると思う」
ダイチは少し考えた。
「いるかもな」