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LC-100-Y/arieSta
2046.02.04-Sun 16:40
Location : 中野区 東京都
MoonAge : 28.1
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ハルが地図を広げた。いつものデジタル地図じゃなくて、紙だった。古い星座図と、手書きのメモが書き込まれた日本地図が重なって、机の上に広がっている。
「
「紙で?」とユキが聞いた。
「AIで整理すると、データの外側が見えなくなることがある。手を動かした方が気づくことがあるから」
ダイチが画面から顔を上げた。珍しく異論を唱えなかった。
ハルが星座図を指さした。こぐま座の区域だ。七つの星が
「北斗七星の形に似てるよね」とユキは言った。
「似てるというか。北斗七星って本当はおおぐま座の星なんだよ」
「「え」」
ユキが固まった。
ダイチも手を止めた。
「えっと……北斗七星ってこぐま座じゃないの?」
「おおぐま座の尻尾の部分。有名な七つ星はこぐま座じゃなくておおぐま座に属してる。こぐま座の方は
沈黙があった。
「……それ、もっと早く言ってほしかった」とユキは言った。
「言ったよ? 最初の設定整理の時に」
「聞いてなかった」
「自分も知らなかった」静かに言った。
「え、ダイチも?」
「恥ずかしくないよ。有名な話じゃないから」
少し救われた気がした。
「つまり」と気を取り直して言った。
「今うちらが進めてるのは、小北斗の方のこぐま座。北斗七星はまた別の話ってことかー」
「そう。おおぐま座は主要星が多いし一等星もある。今はこぐま座を優先してる。北天の基準点はポラリスだから」
「じゃあおおぐま座は後だね」
「後で」とハルが頷いた。
「北斗七星ごと取り戻す日が来るよ」
ユキは少し笑った。
「なんか燃えてきた」
「今は一個に絞る。
地図を眺めながら三人で話した。
問題は新潟で
フェルカド、とハルが教えてくれた。アラビア語で「二頭の子牛」って意味らしい。昔の船乗りが北極星を探す時に目印にしてた星だって。
「フェルカドか。うちが見つけてみせる。明日! 見つけ出してみせる」
ダイチがふと手を止めた。机の上に広げた星座図を見つめている。
「どうしたの?」とユキが聞いた。
「いや、石版(原盤)の加工精度のことを考えてた。あのくぼみの位置精度、今の自分たちの技術でも再現が難しい。誰が、どうやって作ったんだろう」
「ハルも前に同じこと言ってたね。設計者がいるって」
ダイチは何も答えなかった。
ただ、星座図の上に並べたクリスタルを、少しだけ丁寧に整えた。
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LC-101-D/arieSta
2046.02.05-Mon 08:55
Location : 秋田県 大仙市
MoonAge : 28.8
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秋田も雪だった。
「また雪か」とユキは言った。
「東北の二月だから、想定内だよ」とハルが言った。
「新潟の時も想定内って言ってたよね」
「想定内だったよ。対策してきた」
今回はスコップを持ってきていた。ダイチのリュックに入っている。
大仙市の採石場は、田畑の広がる平野の端にあった。空が広く開けている。その向こうに白い山が見えた。
採石場のオーナーは四十代の女性だった。
「クリスタルハンター、最近よく来るけど、何かあったんですか」と彼女は言った。
「スタークリスタルの研究が進んでて……。いろんな場所のを調べたくて」とユキは言った。
「星と関係があるんでしょう? 来た人がみんなそう言う」と彼女は言った。
「夜空、戻るといいですね。うちの子たちに見せてやりたいから」
ユキは少し止まった。
この人も、星を知らない子供がいる。
「絶対に戻します」
気づいたら言っていた。
女性が少し目を細めた。
「頼もしいですね」
夜、オーナーの小屋の裏手に出た。
雪が止んでいた。雲が切れていた。山裾の夜空は、東京とは全く違った。都市の光も月明かりもない。暗さが、白い雪原まで深く降りていた。
「空が近い」とユキは言った。
「都市の光がないからね。空気も澄んでるし、東京よりずっと暗い。クリスタルの反応が上がるかもしれない」とハルが言った。
ダイチが機器を設置した。雪の上にケースを広げる。息が白い。指先がかじかむ。
木箱から出したクリスタルを一個ずつ試し始めた。
反応なし。反応なし。
次。反応した。
「座標は、こぐま座
ユキは息を飲んだ。
「本当に?」
「本当に」
雪の上に膝をついて、クリスタルを見た。透明度は高くない。薄い曇りがある。でもダイチの機器は確かにこぐま座
原盤に残っていた、最後の弱い個体を交換できる。
「フェルカドが出た」とユキは言った。誰に言うわけでもなく。
北の暗闇の中に、こぐま座がある。見えない柄杓の形。その中でいちばん弱かった一個の代わりが、いま、手の中にある。
「言ったでしょ。見つけ出してみせるって」
雪の夜に、その声が白く消えた。