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LC-174-Y/arieSta
2046.05.21-Mon 09:15
Location : 中野区 東京都
MoonAge : 14.9
Sectors : 1/88 fired
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朝、マルイチで珈琲メーカーの電源を入れようとして、ハルからのメッセージに気づいた。
ハル: 急用で三日ほど連絡取れなくなる。詳細は後で話す。エルタニンの件はオーラフに確認を入れてある。返事が来たらユキに転送されるように設定した
それだけだった。ユキは三回読んだ。
ユキ: どこ行くの
返信は来なかった。
「急用って何だろう」とダイチに言った。
「わからない」と言った。画面を見たまま。
「心配じゃないの?」
「心配だ」
「でも連絡取れないなら待つしかない。ハルさんが急用と言ったなら急用だ」
「それだけ?」
「それだけだ」
ユキはスマホを置いた。
ハルがいないと何が困るか、改めて考えた。
エルタニンの情報収集。
ネットワークの管理。
オーラフやスウェーデンのハンターとの連絡調整。
星座の学術的な知識の裏取り。
全部ハルが担っていた。
ダイチとユキが二人でマルイチにいる。
「珈琲、作り方わかる?」
「わからない」
「うちも」
二人で少し沈黙があった。
「コンビニ行く」
「うちも行く」
三日経ってもハルから連絡は来なかった。
四日目の朝、オーラフからメッセージが転送されてきた。ノルウェーの古い採掘記録に、りゅう座
一九八〇年代の記録。
当時はスタークリスタルの概念がなかったから、ただの異常反応として記録されてそのままになっている。
ダイチがタキに共有した。機構のデータベースで一九八〇年代のノルウェーの採掘記録と照合できるかもしれない。
今まで情報の整理はほぼハルがやっていた。でもダイチが動いている。
「ダイチ、ハルさんの仕事やってるじゃん」
「やらないといけないから。自分には無理な部分もある。でもできる範囲でやる」
タキから返信が来た。
データベース照合の進捗について。
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LC-179-Y/arieSta
2046.05.26-Sat 23:02
Location : 中野区 東京都
MoonAge : 20.5
Sectors : 1/88 fired
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五日目の夜。ハルが帰ってきた。
マルイチの扉が開いた時、ユキとダイチはオーラフからの追加情報をタキと一緒に確認していた。
「ただいま」
疲れた顔をしていた。でも怪我はない。荷物を置いて、コートを脱いで、いつもの場所に座った。
「どこ行ってたの?」
「ちょっと遠くまで」
「それだけ?」
「今は話せないことがある。でも大丈夫だ」
ハルを見た。何かを抱えている顔だ。胸がきゅっとなった。でも無理に聞く顔でもない。
「わかった。話せる時に話して」
「ありがとう」
「それよりオーラフから情報が来てて」とダイチが言った。切り替えが早い。
「エルタニンの手がかりかも」
ハルが画面を覗き込んだ。一九八〇年代のノルウェーの採掘記録。エルタニン方向への反応の報告。
「これ」ハルの声のトーンが変わった。疲れが引いた。
「座標はわかってる?」
「オーラフが調べてる」
「俺も動く。このタイプの古い記録、ノルウェーの地質調査機関に問い合わせると原本が出てくる可能性があるかもしれない。俺の連絡リストにある」
ユキはふとハルの顔を見た。目の端が少し赤かった。
充血している。五日間の急用の後、疲れが残っているのだろう。ハル本人は気にした様子がない。
ユキは少し笑った。
「ハルさんが戻ってきた」
「うん。戻ってきた」
少し笑った。
「珈琲を飲みたい。誰か飲む?」
「「飲む」」二人同時に言った。
珈琲メーカーが動き始めた。マルイチにいつもの匂いが戻ってきた。居場所に、ハルが帰ってきた。
タキがオンラインで繋いだまま言った。
「ハルさん、お帰りなさい」
「ただいま、タキさん。ご迷惑かけました」
「いいえ。でもいない間にダイチさんが情報整理を全部やってました」
「そうなのか」とダイチを見た。
ダイチは画面を見たまま言った。
「必要だったから」
「ありがとう」
「次からは急に抜けないでくれ。珈琲の作り方がわからなくて困った」
「ほんと、それ」
ハルが少し吹き出した。
「それは申し訳なかった」
次の新月まで、あと十日。