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LC-394-Y/arieSta
2048.02.06-Thu 22:30
Location : 三鷹市 東京都
MoonAge : 22.1
Sectors : 2/88 fired
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二年前の同じ時刻、こぐま座へ二回目の光を撃った。
あの時は、七つ全部が揃っていた。
三鷹の観測室にはアリエスタ四人と村上、それから観測班が残っていた。屋外広場にも十人ほどいる。十一月にフェンスの外から入ってきた人の顔が、二つ、三つあった。
あのときほど多くない。でも、あの夜に何も見えなかったあとで、もう一度来た人たちだった。
ユキは窓越しにその中の一人を見つけた。三脚を持っていた若い男。十一月、門のところで一度だけ北の空を振り返った人だ。
向こうもユキに気づいて、小さく手を上げた。
ユキも上げ返した。
「あの人、また来たんだ」
「来るでしょ。今日は二回目の答えの日だから」とハル。
「うん。それより、今日、
「明日、朝から仕事だ」とダイチ。
「俺も。平日夜に秋田までは無理だよ」とハル。
「私は今夜、機構側の観測当番です」とタキ。
「だよね。だいたいそうだと思ってたけどさ……」
ユキは少しだけ口を尖らせた。
「じゃあ三回目。もし今日開いても、三回目の答えは男鹿で見ようよ」
「悪くないな」とダイチ。
「俺も賛成。三回目が初めてになる可能性が高いけど」
「タキも。予定空けられたら、一緒に行こう」
「はい。先に押さえます」とタキ。
二十二時二十八分。
ダイチが時計と二回目の照射ログを並べた。
「二年前、二十二時三十分。七星すべて基準値以上。光照射のみ。外部送信系なし」
「一回目と違うのは、全部揃ってたことだよね」とユキ。
「そうだ」
「三回目と違うのは?」
「電波も一緒に送ったことだ」とダイチ。
タキが記録画面を確認した。
「今夜は、星の数の方を切り分ける材料になります」
二十二時三十分。
「到達基準時刻」
肉眼。
ポラリスへの望遠鏡測光。
こぐま座区域全体の広視野スキャン。
三系統を同時に走らせる。
ポラリスの座標は暗いままだった。
広視野差分にも、新しく透けた点はない。
五分。
十分。
二十分。
ハクが足元で気温と湿度を読み上げる。機械の声だけが、時間を普通に進めていった。
「二十分時点、検出なし」とダイチ。
タキが同じ結果を別系統で確認した。
「区域内、新規透過点なし。平均透過率の上昇なし。連続して明るくなっている座標もありません」
ダイチは広視野系の差分画面を拡大した。
区域の端から端まで、明るさの変化を時間軸で重ねる。
「一部から広がる動きも、区域全体がゆっくり透ける動きもなし。少なくとも、予測してた数分スケールではゼロだ」
「欠損なし。時刻同期正常。二系統一致です」とタキが続けた。
誰も拍手をしなかった。
十一月と同じだった。
何も起きていない。
でも、十一月と同じではなかった。
ユキは画面と北の窓を交互に見た。
「七つ、揃ってたんだよね」
「揃ってた」とダイチ。
「じゃあ、足りなかったのは数じゃない?」
「少なくとも、今夜の観測範囲では『七つ揃えば光だけで開く』は消えた。時間経過系は残っているけどな」
ダイチはモニタ上の仮説一覧を一つ灰色にした。
ハルが椅子の背から身体を起こした。
「一回目と二回目に共通してるのは、外へ送る電波がなかったことだよ」
「三回目にはあったよね」とユキ。
「うん。あの時ダイチが気付いた石版が七つのスペクトルを解析して作る電波を、光と一緒に送った」
「差分として残る手段は、そこですね」タキが言った。
「まだ鍵だって決まったわけじゃない」とダイチ。
「三回目が開いて、初めて比較できるからね」
「定例スキャンは三回目まで続ける。遅れて反応したら、その時点で仮説を戻す」
「了解」とタキ。
屋外へ出ると、待っていた人たちは何も見えない夜空で結果を知り、ほぼ居なくなっていた。
三脚の若い男が、今度は帰らずにユキのところまで来た。
「今日も、見えなかったのは記録ですか」
十一月にも、誰かに似たことを聞かれた。
ユキは少し考えた。
「うん。でも今日は、前より一個わかった」
「何がですか」
「これじゃない、ってやつ」
若い男は北の空を見た。
「じゃあ、次があるんですね」
「あるよ。あと一ヶ月後に! 次は自信あるよ!」
「おい……。まあ良いか。三月八日。午前三時十五分だ」とダイチが後ろから訂正した。
「細か」
「二年前に撃った時刻だ」
「うちら、その時ここに居ないんだけどね」
「そうですか。残念です。でも必ず見届けに来ます!」
「寒いよ?」
「十一月も今日も来たんで。三回目だけここに来ない方が無理です」
若い男は笑って、畳んだ三脚を肩に掛けた。少し歩いたところで立ち止まり、スマートフォンを取り出した。
今度は誰も「春には」と言わなかった。
日付と時刻がある。
一回目は、欠けていた。
二回目は、揃っていた。でも今夜は開かなかった。
三回目だけが、光と電波を一緒に送った。
「なんかさ」とユキ。
「何も見えなかったのに、前より近くなった感じするよね」
「一個消えたからな」とダイチ。
「それで近くなるんだ」
「候補が減れば、答えには近づく」
帰り際、ハルが右目をこすった。
一回。
ダイチとタキが、同時に見た。