Q.ここから入れる保険はありますか?   作:様子のおかしい人

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本編って先生が来てからまだ4ヶ月くらいしか立ってないという話を聞いて戦慄してる自分がいる

それはそうと、ツムギが来るらしいですね(絶望)


第11話 幼馴染の涙ほど心を抉るものはない

 

 

 

───桜花祭、並ぶ屋台の道中にて

 

 

 

”ねぇ、イズナ”

 

「はい!なんでしょう?」

 

 

イズナと桜花祭を楽しんでいた時、かねてよりの疑問を彼女に問うた

あの刀を持った生徒のことだ

 

 

”イズナは、あの刀を差した生徒について何か知ってる?”

 

「ぇ…あっ……その…」

 

 

イズナに固執しているあの生徒のことを尋ねられたイズナは明らかに動揺した後、顔に影が差した

 

何か、あるようだ

 

 

”言いたくないなら、大丈夫だよ”

 

「………いえ…大丈夫です……」

 

 

そう言ったイズナはひとつ息を吐いて、語りだした

 

 

 

「イツコ殿は、イズナの友達なんです。友達というよりは幼馴染、と呼んだほうが正しいかもしれませんが…」

 

 

「ずっと一緒でした。遊ぶのも、学院に行くのも、笑うのも、夢を見るのも…」

 

 

”……そっか、イズナの夢は…”

 

 

「はい。イツコ殿と一緒に、キヴォトスで一番の、最高の忍者になるという、夢を見ました」

 

 

「みんなからバカにされましたが……でも、イツコ殿だけが、イズナのその夢を「良い夢だね」って、言ってくれたんです」

 

 

「……ずっと、一緒でした。修行をするのも、走るのも…お祭りに、行くのも……」

 

 

「………ですが、」

 

 

 

そこで話を一度区切ったイズナは、悲しいような、寂しいような、そんな感情を綯い交ぜにした目の色をしていた

 

 

 

「最近は、イツコ殿にずっと元気が無かったんです」

 

 

「聞いても、大丈夫だって返されて……」

 

 

”……何か、悩みがあるのかな”

 

 

「…多分、そうだと……」

 

 

 

イツコ

イズナにそう呼ばれた生徒は、何か悩みがあるかもしれない。それも、幼馴染であるイズナに明かせないような

 

……おそらく、そ(・)れ(・)はイズナを信用していないからではなく、イ(・)ズ(・)ナ(・)だ(・)か(・)ら(・)打ち明けられないものなのだと、私は感じた

 

 

”…なんか、しんみりさせちゃったね”

 

「───いえ、心配無用です」

 

 

そして、イズナは私を見た

悲しい顔を無理矢理笑顔に変えたような、顔をして

 

 

 

「先生も、イツコ殿の分まで、しっかり楽しみましょう!」

 

 

 

そう言うイズナは

 

ひどく、痛ましく見えた

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

「次こそ必ずこの手で先生を……!」

 

 

 

先生とお祭りを楽しんだ後、小さな見晴らしの良い舞台でそう息巻いていると、複数の足音が聞こえてきました

それを聞いたイズナが身を隠すより前に、足音の主が姿を出しました

 

 

「こんなところに魑魅一座?それに、横にいるのは………先生?」

 

 

足音の主は、ふたりの魑魅一座と、そのふたりに挟まれるようにして歩く先生でした

それは、一緒に遊んでいるという感じではなく、連れていくという感じがしました

 

だとしたら

 

 

「(どこへ、連れていくのでしょうか…)」

 

 

疑問でした

先生を連れていって、何をしようとしているのでしょうか

気になったイズナは、あの3人の後を目だけではなく、足でも追

 

 

 

 

 

「ここにいたんだ」

 

 

 

 

 

凛とした声が、後ろから聞こえました

 

その声が誰かなんて、聞くまでもありません

 

 

 

「イツコ、殿……」

 

 

「随分、手を焼かせてくれたね」

 

 

 

木製の手すりの上に立っていたイツコ殿は、目を細めた後、舞台に降り立ちながらそう言いました

 

 

 

「……君の思惑がどうであろうと、君がこの桜花祭の敵である以上、私は君を討つよ」

 

 

「!!」

 

 

 

イツコ殿は刀を抜き放ち、左手に苦無(くない)を逆手に持って構えました

 

…て、違います!

今は先生が魑魅一座に連れられているんです!

 

 

「い、イツコ殿!今、先生は魑魅一座に連れていかれているんです!」

 

「…何?」

 

「だからっ、一緒に追いましょう!」

 

 

イズナは後ろを指差してそう言いました

魑魅一座は何をしようとしているのか分かりませんが、先生の身に危険が迫るものだったら─────

 

 

 

「……誰も、居ないじゃないか」

 

 

「えっ…」

 

 

「詭弁は止してくれよ、イズナ」

 

 

 

後ろを向いて確認すると、3人は既に見えませんでした。まだそう離れていなかったはずなのに…

詭弁だと言ったイツコ殿は、イズナを久しぶりに「イズナ」と呼んでくれました。状況が状況なために素直に喜べられないのですが

 

 

 

 

 

「というより、君はそっち側だろう」

 

 

 

 

 

それはまるで、イズナとイツコ殿とで、立場が大きく違うような言葉で

 

イツコ殿は、いつになく冷たい目でイズナを見ていました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうして

 

どうしてそんな、冷たい目でイズナを見るんですか?

 

 

 

 

 

「……いっ、イズナは…っ」

 

 

 

「………」

 

 

 

「……にっ、に゙んじゃにな゙るっで……ゆめ゙を……っ!」

 

 

 

 

 

一緒に同じ夢を、見たのに

 

あの言葉は、嘘だとでも言うのですか?

 

 

 

 

 

そんな感情が溢れて、泣いてしまいました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………夢、か…」

 

 

 

 

ポツリ、と

イズナが泣いている裏で、イツコ殿は言いました

 

 

 

 

 

「なれるよ」

 

 

 

「…う…ぅぅ……………え……?」

 

 

 

「イズナならなれるよ、忍者に」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『イズナならなれるよ!忍者に!』

 

 

 

 

 

イツコ殿は、昔私の夢を応援してくれたように、そう言った

 

 

 

 

 

「……イズナは、忍者に、なれるんですか?」

 

 

 

「うん。君は忍者になれるよ、君(・)は(・)」

 

 

 

 

 

泣いていたイズナは、その言葉の意味がいまいち分かりませんでした

 

 

ただ─────

 

 

 

 

 

「…イツコ殿?どこに、行くんですか……?」

 

 

「………花火が、よく見えるところ」

 

 

 

イツコ殿は刀を収めて、イズナに背を向けてどこかに歩いていこうとしたため思わず聞いてしまいました

 

 

花火がよく見えるところ

 

それは、毎年イズナ達が一緒に花火を見る特等席ところ

 

 

 

「イズナも花火が見たいなら………そこで、ゆっくり話そう。静かに、色々と、ね…」

 

 

「…!」

 

 

「……先生も、呼ぶと良いよ。きっと」

 

 

「! はい!」

 

 

 

とても遠回しですが……今のは、イツコ殿の仲直りの誘い言葉です。人と喋るのが苦手なイツコ殿にとっての、精一杯です

 

その言葉でイズナは途端に元気(本調子ではないですが)になりました

 

 

 

「……先生が連れていかれたんだろう?」

 

 

「え?…あっ!?そうでした!!」

 

 

「早く、行くといいよ」

 

 

「っ! はい!!先に待っていてください!!」

 

 

 

そう言ってイズナは、先生を全力で追いました

これまでに、どこかで拗れてしまったイツコ殿との関係が直るのだと、正直浮かれていました

 

夜に紛れて消えていくイツコ殿を見て、何も思わないほどには

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………─────ただ、

 

 

あの時すぐにその言葉を問い詰めておけば、色々話しておけば、仲直りしておけば、良かったと思います

 

 

 

 

 

あのまま会えなくなるなんて、思ってもみなかったのですから

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

『やったな!?あの野郎転生者やりやがったッ!!』

 

 

 

百鬼夜行が見渡せる小さな舞台で例の生徒転生者がイズナと接触した後、ふたりが長時間の戦闘をする可能性を鑑みて、先生ら魑魅一座をニャン天丸もといニャテ・マサムニェの下へ行かせないよう、私は3人を『厚化粧』で妨害していた

 

『厚化粧』は、単なるステルスのみに使えるわけではない。一例だが、このように視界いっぱいに動き続ける歪んだ空間の映像を投影し続け、相手の平衡感覚を奪うことだってできるのだ

尤も、種さえわかれば猿でも対処ができるような簡易的なものに過ぎないのだが。そのことをフミエに言っても、オミットではなく改良の方向に走るあたり、あれは相当に脳を焼かれているのだろう

 

 

閑話休題今はどうでもいい

 

 

勝手な推測だが、何やら例の生徒転生者、あるいはカラスが何かをやらかしたらしい

普段なら後者だろうが、この現状ではおそらく前者だろう

 

 

「……今度は何をしでかしたんですか?先生と魑魅一座の足止めだって長くは続かないことぐらい貴方だって」

 

『端的に言うと野郎転生者がイズナを泣かせた』

 

「は?」

 

 

何をしている?……何をしている…っ!?

ネームド生徒の涙に思わず動揺してしまう

 

 

「……例の生徒転生者は原作を殺すつもりなんですか?」

 

『……いや、んー?…』

 

「…なんですか」

 

『…例の生徒転生者が、どこかへ行ったんだ』

 

「……?イズナとは戦わなかったのですか?」

 

『あぁ……何故か、な』

 

 

まさか戦わなかったのか?あの一触即発な雰囲気を出しておきながら、本当に?

甚だ疑問だが…まぁ、事実として受け取っておこう

 

 

「はぁ…そうですか」

 

『あ、ちなみに今そっちにイズナが全速力で向かっているぞ』

 

「は???」

 

 

は?????

あまりにも唐突すぎる言葉にガチトーンの「は?」が出てくる。せっかく小声で話していたのに、これでは意味がなくなってしまうではないか

イズナらの方角を向けば、イズナらしき人影が遠くに見えた

先に言ってくださいよそういうのは……!!

 

私は慌てて『厚化粧』を妨害モードからステルスモードに変更しつつ、その上で身を隠す

魑魅一座や先生は未だ混乱しているようだが、しかし意外とすぐに立ち直り、先生の連行を再開した

 

 

「………先生達は行かせて良かったのですね?」

 

『あぁ、構わない』

 

 

まぁ、ここで行かせないと色々困るだろうし、これで良かった

……後は

 

 

『……今、例の生徒転生者はひとりだ』

 

「…なるほど。では、つまり」

 

『あぁ』

 

 

通信越しのムトンは、どこか緊張したような───実際緊張している彼は言った

 

 

 

 

 

『これより、例の生徒転生者と接触する』

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

───百鬼夜行、ある裏路地にて

 

 

 

「(……泣かせるつもりはなかった、本当に。マジでごめん)」

 

 

届かないと分かっているのに……あるいは、届かないと分かっているからか、内心でめちゃくちゃ言い訳していた

予定では、あそこで思いの丈をぶつけて、イズナに負けて、舞台から落ちてそのままバイバイ……だったのだが

 

イズナの涙を見てガチ焦りした結果、ガチファイトどころか戦いファイト

にすらならず、居心地の悪さから言い出した仲直りへの道をこうして歩いていた

 

 

「(……私は、仲直りできても、君と同じ忍者には……)」

 

 

……例え、あそこで仲直りできたとて、じゃあそれで私が忍者になれるのかと言われたら、それは否だ

 

私のような非才に、忍者など叶わぬ夢なのだから

 

 

 

だからこそ、イズナの夢である「私と一緒にキヴォトス最高の忍者になる」の「私(・)と(・)一(・)緒(・)に(・)」の部分を折るために、こうして動いた

 

そうすればイズナも私も、各々縛られずに夢へ、先へと進めるのだから

 

 

なんて、

私がしているのは、一緒に同じ高校入試を受けると言って、私には才能がないだとか言って勝手に諦めるバカと同じなのだが

 

全く、笑えない

 

 

 

「………」

 

 

 

足を止める

考え事だとか、自己嫌悪だとかで足を止めたのではない

 

 

 

 

 

月明かりを挟んだ建物の影の中に、何(・)か(・)が、居たから

 

 

 

暗くてよく見えない何(・)か(・)は、何をするでもなくただ佇んでいて、それが無性に怖く感じる

 

 

「(あれは……大人か?)」

 

 

頭部は影に隠れてよく見えないが、そう思わせる背丈はしている。私は、何かあればすぐ斬り込めるように、刀赤楓の柄に手を掛けた

 

……ひょっとして、あれは百鬼夜行に伝わる怪談とか、そういった類のものだろうか……であれば、逃げた方が得策か

 

 

 

 

 

「嗚呼……そう、警戒するな」

 

 

 

目の前の何(・)か(・)はそう言った

低く、どこか嗄れたような、男の声だ

 

そして何(・)か(・)は、歩きだした

 

ゆらりと、

ゆったりと、

ゆっくりと、

月明かりが照らす下まで、着実に

 

距離はまだあるが、私はひどく警戒していた

 

 

そうして何(・)か(・)は月に照らされ、姿を現した

 

 

 

「…っ」

 

 

 

 

 

百鬼夜行には合わない洋風な執事服、

 

赤黒い柘榴ザクロの実を模したペンダント、

 

黒洞々たる眼孔、

 

捻れて歪んだ大きな角、

 

およそ人間のそれではない頭部羊の頭骨……

 

 

その姿はまさしく

 

 

 

「……ゲマ、トリア…」

 

 

「ふむ…」

 

 

 

そう言ってしまった後から、口を噤む

 

ゲマトリアという存在を知るのは、原作でもごく一部の人物に限られる。少なくとも、何でもない、ただの自分のような一生徒が、その存在を知るはずはない

だからこそ、こうして口を噤んだが、遅かったようだ

 

 

「ゲマトリアを、知っているのだな」

 

「………」

 

「なるほど……であれば、やはり…」

 

「……お前は、誰だ」

 

「…ふむ」

 

 

話を反らすため、そう言った

 

……私は、前世ではもっとブルアカをやっておくんだったなと、遅過ぎる後悔をした

そうすれば、この大人への対処法を知っていたのかもしれないし

 

 

「そう急かさずとも、こちらから来たのだ。名乗るのは道理だろう」

 

「………」

 

 

 

「私はムトン。ゲマトリアという組織のひとりだ」

 

 

 

ゲマトリア

観察者であり、探求者であり、研究者。アビドスで黒服は先生にそう説明していたはずだ

 

 

「ゲマトリアがどういう組織か……は、野暮だな。わざわざ語る必要もない話だ」

 

「…私に、何の用だ」

 

「……そう警戒するものではない、ただ君に個人的な質問があってな」

 

「……?」

 

 

ムトンと名乗った大人は、空を仰ぎながら、語り始めた

 

 

 

「この世界は歪んでいる」

 

 

「大枠は同じように見える。しかし、細部に目を向ければ、それは本来あるべき姿から乖離し、壊れている」

 

 

「その先に待つのは、誰もが望まぬ、悍ましい破綻だけだ」

 

 

「しかし、今ならば、この壊れた世界は本来の姿へ修正することが可能なのだ」

 

 

「乖離の原因たる部外者を、ただ取り除けば良いだけなのだからな」

 

 

 

何を言っているのか、よくわからなかった。だが、次にその大人から出てきた言葉で、私は現実に引き戻された

気がした

 

そこで一息吐き、視線を私に戻したムトンは、問うた

 

 

 

 

 

「単刀直入に聞こう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君は、転生者だろう?」

 

 

 




幼馴染の涙ひとつで戦闘を放棄するくらいにはいい奴なのか、それともただのヘタレなのか……



・イツコ
キヴォトスでは珍しい、刀を差した生徒であるイツコには、ある幼馴染がいた
一歩下がったところから見ていたかったイツコは、しかし天真爛漫な幼馴染の夢を断りきれなかった


いつからか、人より劣っていると知ったイツコは、人より秀でた幼馴染を見て、大きな劣等感を抱くようになった
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