昨日俺氏「え?何?カリンって1年生じゃないの!?(MADNESS)」
先生の姿か?これが……
───ミレニアムサイエンススクール、エンジニア部部室にて
「おや…どうやら始まったみたいだよ、ミレニアムプライス」
「さてさて、我々の叡智たる光学迷彩下着セットは優勝するかね?」
ゲーム開発部がC&Cにカチコミを入れられてから時は流れ、ミレニアムプライス当日、コトリを除く我々エンジニア部は、エンジニア部共用のテレビからミレニアムプライスを見ていた。理由は勿論、TSC2が受賞したかどうかを確認するためだ。正直、光学迷彩下着のことは気にして……いや、やはり気になる
ちなみにコトリが居ないのは、ミレニアムプライスの司会等に選ばれたためである
『7位はエンジニア部、ウタハさんの「光学迷彩下着セット」です!』
「はっや」
「出落ちじゃん」
「ふむ……何がいけなかったのだろうか」
「今現在進行系でコトリが着ても意味があるのかーみたいなこと言ってるよ」
「意味はあるだろう、合法的に下着の内側を見せられるんだぞ?」
「誰得なのさ」
まぁ、ハナコは喜ぶだろう。着るかは別だが
画面の向こう側のコトリ曰く、「露出症の患者が合法的に趣味生活を営める」という点を高く評価されたらしい。多様性も行き過ぎではないだろうか?ボブは訝しんだ
『そして6位!この製品は……』
それから、ミサイルが内蔵された護身用の傘だとか、ネクタイ型モバイルバッテリーなど、TSC2を除くものが2位まで発表され、そして1位発表手前でCMが入った
ここまでは原作通りだ。まだ焦る段階じゃない
「(おおおおおちおちちおちつきたまえよ、かっかかか唐沢フミエ。情は綻びだと、む、ムトンだって言っていただろう)」
感情に任せて動いて良いことなんてない。だからこそ冷静になって、周りを客観的に見るのだ。データキャラとは、そういうものだ
バカみたいに震える手で眼鏡をかけ直しながらそう思考を巡らせる
そんな折、
「……ゲーム開発部のことが、気になっているのかな?」
「………そりゃあ、気になるでしょうよ」
ウタハ先輩にそう問いかけられたため、咄嗟にそれっぽく返す
……見抜かれただと…っ!?
「…先輩は、後輩の考えていることが分かるので?」
「まさか。ただ、君がいつになく焦ってそうだったから、そこから少し考えての解答だよ」
「そんな、焦ってるって分かりやすいですかね?私」
「かなり分かりやすいよ」
「君は自分のその震える手と、滝みたいに流れる冷や汗に気付いていないのかい?」
「本気?」
ヒビキからもそう言われる
何のことやら…と、額の辺りを手で触れると、風呂上がりかと思うほど汗で濡れていた。それを自覚した瞬間、背中とか脇とかに猛烈な「汗」を感じた
……情が綻びならば、今の私はどれほど綻びまくっているのだろうか
そんなこんなをしているとCMも終わり、1位の発表が始まった
『待望の1位は、新素材開発部の───』
「……あ…」
「……」
「………」
やはりと言うべきか、原作通りと言うべきか、TSC2は7位入りを果たしていなかった
まぁ、正直2位までに新素材開発部が出ていなかった時点で、優勝作品がTSC2になるなんていう良い意味での原作崩壊はないと確信していたが
だが、これで終わったわけではない
「……フミエ」
「はい?何か?」
「その、あの子達は……」
「…先輩、あなたは───」
何やら気不味そうに、宥るように話しかけてくるウタハ先輩に、私は言う
「一体いつから、
「何……?」
まだだ……まだ終わらんよ!(確定演出)
そのことを知っている私と、テレビの向こうにいるコトリは、とっておきの隠し玉を披露するかのようにニヤリと笑い、そして、
*****
───ブラックマーケット、某所にて
「……ふぅぅぅ…」
私はテレビで、ミレニアムプライスでTSC2が特別賞を受賞したことを確認した。あのふたりがどのように動いてくれたかは分からない。だが、パヴァーヌ編1章は確かにこうして、大きな乖離がなく幕を下ろした
「乗り越えましたね」
「あぁ、なんとかな…」
いつの間にか後ろに居たミゾレに、そう返す
とりあえず、ひとつの山を超えた。アリス関連の話はキヴォトスの存亡に直結するため、私はかなり安堵していた
しかし、
「ただ、休んでもられないだろう」
「…そうですね」
同時に、私は不安だった
エデン条約編
不信、嘘、憎悪、悪意など、それらをごちゃ混ぜにした坩堝こそ、これから来たるエデン条約編である
そして原作の中でもかなりデリケートと言うべきか、乖離が起きた際に既定路線に戻すのが最も難しいであろう章であると推察している
「次が、ある意味一番の正念場だ。気は抜けん」
「……ムトン」
「なんだ?」
「貴方は、疲れないのですか?」
不意に、ミゾレにそんなことを言われた
ミゾレの顔を見ると、どこか心配するような目をしていた
……そういえば、原作が開始してから私は一度もマトモに休んでいなかったな
だが、問題はない
「……この身体は便利なものでな、寝ずとも食わずとも、疲れることはないのだ。心配は要らんよ」
肉体的には、だが
転生し、人間としての尊厳を幾らか失った代償に得たのは、そんな社畜のためにあるような身体であった。以前はこの身体に思うところはあったが、今では実に便利な身体だと思うようになった
「そうですか……」
「ミゾレも、休みたければ休むといい」
「私はここ1週間で休んだので大丈夫です」
そう言って、ミゾレはサムズアップする。空元気……というわけでもない。本当に大丈夫なのだろう
……そういえば
「カラスは、またイツコと模擬戦を?」
「はい。カラスは既にイツコを無被弾で倒せる程度にはなりました」
「……適応早くないか?まだ1ヶ月経ってないぞ」
「あと数日経てば、文字通り完封できるでしょうね」
「………そうか」
ここに来て、早速カラスの模擬戦相手にされたイツコに心の内で謝罪と合掌をする。個人的に、戦闘能力の1点だけならば、このキヴォトスでカラスを越える生徒は数少ないと───それこそ、臨戦ホシノや本気モードのヒナくらいだけだと思っている。……やはりイツコには荷が重すぎたか
そろそろ、カラスの謹慎を解除しても良いかもしれない。イツコを解放するために、そんなことを思う
まぁ、カラスと戦ってくれと言ったのはこちら故、イツコからすればマッチポンプも良いところだろうが
「エデン条約編での懸念事項は?」
「補習授業部の面子、ハナコの様子、セイアの夢、調印式襲撃での被害規模、ベアトリーチェ……そして、転生者」
「……やってらんないですよこんなの」
「だよね。私もそう思う」
ミゾレはエデン条約編での懸念事項を尋ねてきたため、軽く候補を幾つか挙げる。これで全てではないが、今後に深く関わる点としては、これらは特に重要なものとなるだろう
懸念事項その1、補習授業部の面子
補習授業部の4人以外に誰かが増えている、あるいはその4人が欠けているという懸念。増えているならまだしも、欠けているともなればもれなく破綻案件である。特にハナコ。しかし、これについては問題ないと推察している
懸念事項その2、ハナコの様子
トリニティ総合学園の叡智(色んな意味を含む)、浦和ハナコ。その彼女がティーパーティー入りを果たすと破綻待ったなしなので、ハナコのメンタルケアは非常に重要である。だが、これは原作通りハナコは水着でトリニティでほっつき歩くようになっているらしく、かつ受けるテストは(しっかり調べた結果)どれも赤点なので、おそらく問題はない。故に懸念事項その1でハナコが欠ける心配はないだろう
懸念事項その3、セイアの夢
ある種一番気になる部分であり、懸念だ
前提として、表向き、現在は不在とされているセイアは予知夢を見ることができる。問題は、その予知夢に、我々転生者が居るのかどうかということ
もし予知夢が、本来のキヴォトスの未来しか映さないのであれば、セイアは間違いなく我々の存在に気付くだろう
まぁ、仮にそうだったとて、我々に打つ手はないのだが……
懸念事項その4、調印式襲撃での被害規模
具体的には後遺症を患う者が出る、あるいは死人が出るか。アズサが人殺しにならずに済むか。そして、先生が生死を彷徨った末に生還するか
「死」の意味が故郷よりずっと重いこのキヴォトスで、もし死人が出てしまったならば、キヴォトスはアリウスを許さなくなり、そしてアリウスもまた自分達を許さなくなるだろう
特にサオリは、先生を殺しかけたということをオラトリオ編まで引き摺っていた。もし人を殺したならば、その自責は計り知れないものとなる
また、アズサが人殺しにならずに済むかはかなり怪しいところである。原作の時点でサオリを殺す手前までやり遂げたアズサは、最悪の場合、ヘイロー破壊爆弾で自爆特攻なんてする可能性もあり得る。その果ては、間違いなく破綻であろう
先生が生還するかどうかは、サオリの匙加減、そしてヒナの動き次第で大きく変わる。下手をすれば頭を抜かれて一発アウトの可能性だってある。逆に、アリウス最強格の実力者であるサオリが、なぜ頭や心臓などではなく脇腹を打ち抜いたのかが疑問なレベルだ
故に、万が一に備えてこちらでも手を打つ必要があるだろう。ゲマトリアからは何を言われるか知らんが……しかし、どれほど最悪でも、先生だけは生かさねばならない
懸念事項その5、ベアトリーチェ
あの耄碌BBAが匙加減ひとつ、気まぐれひとつ、キチゲ解放ひとつで色彩呼び寄せ→色彩即襲来→世界死亡なんてクソコンボを決めてくる可能性があるため、この辺りは黒服やゴルコンダ辺りにも協力を仰ぐべきだろう
懸念事項その6、転生者
一番の変数であり、最大の想定外。ある意味ベアトリーチェよりも行動が読めない故に、一番の懸念である
私はトリニティ、そしてアリウスにはチヨ以外にもまだ転生者が居ると想定している。根拠はなく、ただの勘に過ぎないが
まず、アリウスに転生者が居るかどうかだが、私はベアトリーチェが居る都合上、アリウス分校で転生者の有無を調べることは出来ずに終わった。それ故、アリウスに転生者が居るかも分からない
トリニティは、チヨのようにモブ生徒に扮された場合、転生者を見つけ出すのは不可能である。一応、ある程度の組織は確認して回ったが、それらしいものはなかった
ただ、私は百鬼夜行でのイツコの一件を深く反省したため、トリニティをより詳しく、調べに調べ上げた
その結果、見つけたのだ
ふたりの想定外を
*****
───静かな夜
「………」
とても、静かだった
普段も静かであるが、この夜は特に静かだった
窓際から見える夜空は、何故かひどく冷たく感じた
そんな折、静寂を破る声が部屋に響いた
「───…さん?どうか、されたのですか?」
「……いえ、なんでもありません」
どうやら、呼ばれていたらしい
私はなんでもないと、暗い部屋の壁際に居る彼女に答える
「そう、ですか……」
「はい」
沈黙が流れる
どうにも、居心地が悪い
「………あの、キリコさん」
何か言おうか、そう思ったが、沈黙を破ったのは、またも彼女であった
私は、微笑みかけながら聞く
対して彼女は、意を決したように、しかし何かに怯えたように、問うてきた
「なんでしょうか」
「……あなたは、私の味方で…居てくれますか?」
その声は、震えていた
その目は、揺れていた
「えぇ、勿論です。ナギサ様」
私は月明かりの下から出て、ゆったりと彼女の前まで歩み寄り、そして跪く
忠誠なら、とうに誓っている
「私は、貴方の剣。どうして、剣が裏切れましょうか」
「……」
「貴方を守るのが、私の役目です」
彼女から私の顔は見えないだろうが、そう微笑む
彼女の息を呑む声から数秒経って
「……顔を、上げてください」
彼女にそう言われたため、顔を上げる
そこには、涙の跡が残る、笑んだ彼女が立っていた
「ありがとう、ございます……っ」
ひどく安心したような、声だった
それだけで、私がここに来た意味はあったのだろう
私は、貴方の心労を取り除きたい一心でここまで来たのだから
クソボケ
それは、肝心なことにだけ気付けない鈍感のこと
そして、本人がそのことに自覚のない馬鹿のこと
自身がナギサの心の大きな、大きな支柱になっていることに気付いていない剣を名乗った彼女もまた、どうしようもないクソボケのひとりである
*****
───ミレニアム、セミナーにて
「先生、ゲーム開発部がお世話になりました……」
”生徒の頼みだからね!全然大丈夫だよ!”
「……生徒の頼みなら生徒会を襲撃することも厭わない、と?」
”ウッ!”
現実とは、事象の連鎖である
事象は事象を呼ぶ。それは大なり小なり、影響力を持つ
偶然とは、事象の発端である
偶然は事象を呼ぶ。それも大なり小なり、影響力を持つ
”……あ、そういえば”
たったひとつの偶然から始まる事象の連鎖は、簡単には止まらない
故に、人はそれをバタフライエフェクトとも言う
”メイド部で思い出したんだけどさ”
「?」
そしてそれは、停滞していた連鎖を動かすこともある
”シャーレを奪還した日、シャーレの地下室にメイド服を着た生徒が居たことがあってさ”
「!?」
”だから、その子もメイド部なのかな〜って思っ、て?”
気付けば、
先生の両肩にはユウカの両手が置かれていた
置かれていた、というよりは、獲物を逃さぬ鷹のように、がっしりと掴まれていた
「その話、詳しく聞かせてくれませんか?」
拒否をする気は無かったが、おそらく拒否は受け付けてくれないのだろう、と先生は思った
もし、この場にメグミかフミエが居たらムトンに連絡を入れただろう。しかし、そうはならなかった
メグミは居ない
脱走したコユキを潰しにノアと追っていたからだ
フミエは居ない
壊れた愛銃の修理に勤しんでいたからだ
来る日も来る日も、物語は続いていく
倒れるドミノのように、続いていく
ということで、「Vol.1 原作崩壊対策委員会編」はこれにて終わりとなります
次回からはVol.2……ではなく、多少の番外編になります。閑話や転生者達のまとめみたいなものを出したいなと
では諸君、サラダバー
・唐沢フミエ : 2
エンジニア部のひとりであるフミエは、笑えることに固執している
幾ら悲惨な結果があったとしても、笑っていればそこに最悪はないと考えていて、そのためならばフミエは手を選ばない
原作が崩壊しても、笑えていればそれで良し
大切なのは、光を追い続けることだ
・安藤メグミ :
ミレニアムの生徒会であるセミナーのひとり
自殺の目前で友人に止められたことがある
かつて、ひどく疲弊し、どん底に居た彼女は、友人の言葉を信じ、縋り続けた
「脳に百合を得たまえよ」
それは、希望の言葉であった
【ア。〜 アンケートの使い方について 〜】ところで、読者の皆様は……
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1.曇らせるな───!!
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2.曇らせよ、晴れと共にあれ!
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3.世に曇らせのあらんことを!
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4.俺は、ただの熊になりたい