推しの奇妙な冒険 アクアマリンとルビーは砕けない ~幼少期編~ 作:MとPの天使
「ええ。彼とは懇意にしていますね。
「ボディーガードの男性?...ああ、彼のことですか。彼はルビーとアクアが小さかった頃からの仲でして。その頃から、よく一緒になることも多かったですね。何度も、助けてくれましたよ。本当に..」
「考えてみれば、最初からおかしかったのかもしれません。超人.....というのとは違うのかもしれませんが、なんでしょうね。二人の光に輝く『ダイヤモンド』と言うか、 二人を守ってくれる『守護神』っていうかぁ....」
ピーピ-
ピーピー
ピッ
「もしもし?」
『ミヤコさんやべーっす!ルビーが衣装に醤油こぼしちゃいました!』
「友人に呼び出されてしまいました!続きはまたいずれ!(汗)」
バタバタ
「ん~!」
朝―――仗助は、伸びをした。
今日は土曜日。学校の授業もなく、本来ならこの世界の情報を探るなり、ゆっくりと生活できる日だ。
「といっても、今日はこれを見に行くんだけどな...」
そう言いながら仗助は、右ポケットにしまっていたチケットを手に取った。
この前、同じアパートに住む斉藤ミヤコからもらったバンドのライブチケット。今日がそのライブの日であるため、仗助は外出する準備を済ませ、最後にヘアスタイルの身だしなみをくしで整え始めた。
敵スタンド使いとして戦った、音石明が記憶にあるくらいなので、仗助にとっては初の、バンドのライブ体験だ。
「音石のヤローの時は、曲にいちいち感心している暇はなかったし、今回はゆっくり、ライブを楽しむことができそうだな」
曲を聴いた康一は、音石のギター演奏に見惚れていたが、仗助は戦いの最中であり、尚且つ『テメェノ オフクロモ コロシデヤルゥ』と、親を狙った挑発をしてきた音石にキレていたため、曲への関心は向くことがなかった。
「さてと、行くか!」
外に出る準備を済ませ、仗助は、外へと駆け出した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
人通りの多い道路。
その道の片隅。ある二人組のバンドが、路上ライブをしていた。
一人はエレキギターを抱え、もう一人はベースギターを抱え、曲を披露している。
大勢の人が二人の前を通り過ぎていく。足を止める者はほんのわずかだった。
それでも、二人は演奏をやめなかった。
そして、二人が歌っていた曲が終わった。
「〜♪...俺らのオリジナル曲、『好調』でした。聴いてくれてありがとうございました!」
少し止まって、聴いてくれていた人もいたが、それでも微々たる数だった。
それでも彼は、感謝の意を込めて、その場でお辞儀をした。
「....兄さん、そろそろ」
「...それでは、本日の公演は、以上とさせていただきます。最後まで聴いてくれて本当にありがとうございます!」
ベースを持った男が、兄と呼んだエレキギターを持った男に小声で声をかける。
その言葉を聞いたエレキギターを持った男は、ライブを終了することを語った。
足を止めて演奏を聴いていた人たちは、最後まで彼らに拍手を送っていた。
一方で、何も言わず、その場から歩き去っていく人もいる。
「......」
エレキギターを持った男は、それを気にすることなく、ギターを下ろし、その場を去る。
「今日、何人聴いてくれてたか?」
「10人だね。最高記録だよ」
その質問に、
「10人か.....多かったな」
「うん。近くでやってる『みるくれーぷ』ってバンドよりかは」
「.....」
九九羅の言う『みるくれーぷ』は、自分たちの近くで活動しているバンドグループのことだが、如何せん知名度と人気がともになく、良くて5人が限度のバンドである。
「じゃ、次は11人来てくれるよう、頑張るか」
「...だね。兄さん」
そう言いながら、兄弟は次のライブの会場へと、足を速めていった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「えーっと。....ここだな」
仗助は、ライブの会場へと着いた。
「お!あれって....ミヤコさ〜ん!」
思わず仗助は、手を振りながら、ミヤコに近づく。
人混みの中にいるミヤコが、仗助に気づく。
「...あら。仗助くん。来てくれたのね」
「うっす。こんにちは」
仗助は、ミヤコがベビーカーにつれている、双子の赤ちゃんに気づいた。
それを見た仗助の顔がぱっと明るくなった。
「おお!この子たちが、ミヤコさんのお子さんっすか?」
「ええ、そうよ。こっちの短髪の子がアクアで、リボンを結んでいるのがルビー」
ミヤコが二人を順番に指しながら、仗助に紹介する。
「かわいいっすね♪」
「ほ~らアクア。ルビー。仗助のお兄ちゃんよ~♪」
ミヤコに声をかけられ、眠っていたアクアは目を開けた。
アクアの視界には、仗助の姿を捉えていた。
「お~。はは、こんにちは~♪」
仗助は笑顔で、アクアの顔を覗き込む。
(えっと......こういう時どうすればいいんだ....?)
アクアは、宮崎県で医者として勤務していた「雨宮吾郎」の生まれ変わりだ。
姿は0歳児だが中身は30代の成人男性。
そんなわけでアクアは「赤子」として、仗助にどう接すればよいのか、悩んでいた。
結果、何もせずに、ただ仗助を見ながら固まっている状態になっていた。
「初めて会ったから、緊張してるのかな?」
ミヤコが、アクアの様子を見ながら微笑む。
「こいつは、まだ起きてね―みたいだな」
「あら。そうみたいね...」
仗助とミヤコの言う通り、ルビーのまぶたは閉じたままだった。
傍から見れば、完全に眠っているようにしか見えない。
だが――。
(....よし)
ルビーは内心で小さくガッツポーズをしていた。
ルビーは興味もないライブに連れてこられた要因をつくった、仗助に興味は一切ない。
むしろ仗助のほうが、自分に興味を持たれることのほうが面倒だった。
そのため、起きていることがばれないよう、寝ていると思わせれるくらい、そっと目をつむっていた。
(早くどっか行け~。早くどっか行け~!)
仗助がこれ以上自分と関わらないよう、ルビーは心の中で念じていた。
「まあ、寝てるならしかたねーな...」
しょうがないと仗助は、立ち上がった。
「それにしてもミヤコさん。赤ちゃんをライブに連れてきて、いいんすか?」
「ええ。ライブハウスのオーナーさんには、話をつけといたから」
そして仗助は、ミヤコに聞こうと思っていたことを思い出した。
「そういやあ、ミヤコさん。この間聞き忘れたんですけど、ミヤコさんの芸能事務所の名前って、なんて言うんすか?」
「事務所?ああ、..有名じゃないから、知らないかもだけどね....」
朋子は少し間をおいた。
「『苺プロダクション』っていうんだけど....」
「『苺プロダクション』....?」
それを聞いたとき、仗助にはこの前のテレビで見たアイドルの姿が思い浮かんだ。
「それって、この前、テレビでやってた『B小町』の?」
「あら。見てくれてたのね」
「いやー。たまたまテレビつけたときに出てきてたもんで....」
その声に、目を閉じていたルビーとアクアの眉がほんの少しだけ動く。
((..B小町?))
母であり推しである『星野アイ』が属するグループ、『B小町』の名が聞こえると、二人は反応してしまった。
だが、すぐに思い直す。
(いやいや、今は寝たふり....)
「いやー、すごかったっすよ!俺、アイドルに興味なんてなかったんですけど、あんなに惹きつけられたのは初めてっすわ!」
「あらそう。そう言われるとこっちも嬉しくなるわ♪」
そう言いながら、ミヤコは、アクアとルビーの顔をちらりと見てから、微笑んだ。
「!ミヤコさん!来てくれたんですね!」
その時、ミヤコと仗助のもとに、ライブハウスに到着した百路池が走ってきた。
「あら、オロチくん」
「ミヤコさんの知り合いっすか?」
「ええ。私の事務所がプロデュースしているバンドメンバーの
ミヤコに紹介されたオロチ仗助に挨拶をし、仗助も「どうも」と挨拶をし返した。
「今日はあなた達のバンド、『spring』の初のライブハウス内でのライブでしょ?」
「はい!来てくれたりがとうございます!」
「兄さん!」
オロチが元気よく返事をしたタイミングで、九九羅がやってきた。
「九九羅!」
やってきたククラのことを、オロチは仗助とミヤコに紹介した。
「弟の、九九羅です!」
「お久しぶりです...」
「ええ、久しぶり」
「俺は、東方仗助。よろしくっす!」
「...どうも」
ミヤコが時計を見る。
「もうすぐ出番じゃない?」
四人は、改めて客席へ視線を向ける。
「「「「.....」」」」
ご覧の有様。
大したオーディエンスもおらず、クラブハウスには観客よりも空間のほうが広がっていた。
初めてのライブ。
それなのに、この観客数。
これには仗助とミヤコも、なんともいえない表情となり、二人のことが心配になる。
「オーディエンスは.....たったの11人か」
「じゃあ次は12人になるよう、頑張っていかないとね」
「だな....」
しかし、
むしろ今回の結果を次へ繋げようと、意識を向上させていた。
「さあ、そろそろ会場に行こうぜ!」
「うん!」
そう言って、二人は、出演バンド専用の待機場への入口へ走っていった。
「強いですね。あの二人」
「そうね....」
ミヤコも微笑みながら、二人の背中を見送った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ライブハウス、出入り口の扉側。
扉によっかかっている男がいた。
雨宮吾郎を赤い槍で刺した、街灯の男だ。
「.....」
街灯の男は、談笑していた仗助とミヤコ、ベビーカーの中にいるアクアとルビーを黙ってみていた....。
ゾ ゾ ゾ ゾ ....
「......」
そのとき、街灯の男のもとに、黄色いフードを被った男がやってきた。
「やれ」
黄色いフードの男は、無言で、出演バンド専用の待機場への入口へと向かった。
街灯の男は、ライブハウスの出口から、去っていった.....。