雄英高校会議室にて
「実技総合成績出ました。」
「救助ポイント0で一位とはなあ!仮想敵は標的を捕捉し近寄ってくる。後半他が鈍っていく中派手な個性で寄せ付け、迎撃し続けた。タフネスの賜物だ。」
「対照的に敵ポイント0で8位。あれに立ち向かったのは過去にもいたけど...ぶっ飛ばしたのは久しく見てないね。」
「思わずYEAH!って言っちゃったからな」
「しかし自身の衝撃で負傷、まるで発現したての幼児だ。妙な奴だよ。あそこ以外はずっと典型的な不合格者だった」
「そして0ポイント敵に立ち向かったといえば、4位の彼女もそうです。先の彼の様に破壊とまでは行かずとも見事バランスを崩してみせました。」
「武器がバットで、そのバットが光を放っていたな。どういう個性だ?」
「個性届の内容は「開拓」。旅を続ける中で困難に打ち勝つ力に目覚める...とありますが、正直詳細不明です。」
「やけに抽象的な個性だな。」
「俺は彼女を支援するぜ!レスポンスくれたしな!」
「さて、次ですが...」
「星〜!雄英から封筒来てる!!」
私が家のリビングで寛いでいると、唐突に入ってきたなのが封筒を片手に騒ぎ出した。
「きっと試験結果だよ!早く見よ!」
「分かったから落ち着いて!なんで私より忙しないの...」
「だって気になるじゃん!試験結果だよ!?雄英高校だよ!?」
そこに騒ぎを聞きつけた姫子、ヴェルト、丹恒もリビングやってくる。
「あら、届いたのね。思ったよりも早かったじゃない。」
「懐かしいな...俺もこうして封筒ひとつで騒いだっけか。」
「星、開けてみろ。」
丹恒に促されて私は封筒を開ける。上手く開けられなくてぐしゃぐしゃになったけど、中に入っていたのが紙ではなく謎の円盤だったので安心した。これがUFOか。
「通知書とかじゃないのか?これは...」
『私が、投影されたァ!』
「わっ!?」
その時、円盤が唐突に光を放ったかと思えば、その光は最も人気のある有名なヒーロー、オールマイトの姿を作り出した。
『やあ無量塔少女、初めましてだね!なぜ私が投影されたのかって?それは私がこの春から雄英の教師として勤めることになったからさ!さて、それでは早速君の合否の発表だが...
見事合格だ!筆記試験は少々危ない教科はあったものの、何とか合格ラインに届いていた。
そして実技試験!敵ポイント31!
それに加えて我々がひそかに見ていたもの!他者を助けるその精神を評価して救助ポイント40!合計71ポイント!合格者の中でもトップクラスの成績だ!』
オールマイトの言葉に、なのが目を輝かせる。
どうやら無事に合格できたらしい。しかし筆記試験がギリギリとは...あんなに自信があったというのに、あの時の呪われたサイコロ鉛筆は捨てておくべきか。
『無量塔少女!あらためておめでとう!雄英で待っているぞ!HAHAHA!!』
そう言ってオールマイトが消え、リビングを少しの静寂が包む。そんな中、私は合格したのだという達成感を噛み締めていた。
「...星、合格おめでとう。あんたならやってくれると思ってたわ。」
「あぁ、さすがだな。これはお前の努力の成果だ。」
「星、これでようやくスタートラインだな。だが、お前ならこの先もきっと上手くいくだろう。俺は信じてるぞ。」
「星〜!合格おめでとう〜!まさか本当に合格するとは思わなかったよ〜!」
...なののノンデリ発言はいつものこととして、丹恒の言う通り、これでようやくスタートラインだ。
私はかの雄英高校に合格したんだという実感と共に、これからもっと頑張ろうと覚悟を決めた。
まず最初に、新しく呪われていないサイコロ鉛筆を買わないとね。
それから時は流れ、4月1日。
念願の雄英高校へとやってきた私は、玄関に張り出されていたクラス案内を頼りに、1-Aクラスへとやってきていた。
「扉でっか...」
私の目の前には私が三人いても届かないような大きな扉があった。
この扉超重いんじゃない?と思いつつ開けて見れば、予想外に軽く拍子抜けしてしまう。
既に教室の机は多くが埋まっており、その視線が私に注がれた。この人達が同じクラスの仲間ってわけね。
「みんなよろしく!私は無量塔 星!銀河打者だよ!」
こういうのは第一印象が大事だと姫子が言っていた。私は声を張り上げて自己紹介をした。
そんな私の元にいつぞやの真面目くんがやってきた。彼も合格していたらしい。さすがは委員長だ。
「ボ...俺は私立聡明中学出身、飯田 天哉だ。無量塔君、君には実技試験説明会の時に迷惑をかけてしまったな。俺の無知が招いた結果だ。すまなかった。」
「いいよ、これからはちゃんとコールにレスポンスを返すようにね。」
「あぁ、気をつけるとしよう。...む、君!机に足をかけるな!!」
そう叫びながら飯田が向かった先に視線を向けると、そこにはいかにもすぎるヤンキーがいた。雄英にもこういうのっているんだなー。と思いつつ、私は自分の席を探して座った。
「ねぇねぇ、村田ちゃん、だよね?」
「私の名字はむらただけど、漢字は無い量の塔って書いて無量塔だよ。」
「へぇー珍しい名字だね...ってなんでわかったの?」
「だって台詞にそう書いてるし。」
「何を言ってるの?...と、私は芦戸三奈!よろしくね!」
私にそう話しかけてきたのはピンク色の肌に頭の触角?がある子だった。そういう異形型の子はこの世界では珍しくもない。ピピシ人みたいなものだろう。
...ピピシ人?
「お友達ごっこがしたいなら他所へ行け。」
私が謎の電波を受信していると、急に教室の入口から声が聞こえてきた。そちらに視線を向けると、なんと巨大な黄色い芋虫がおり、その芋虫を破って中からくたびれたおじさんが出てくるというとんでもなくグロい光景があったのだった。
「ハイ、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限、君たちは合理性に欠くね。」
合理性とか言うならわざわざ移動しにくそうなその芋虫で教室まで来る意味なんてないと思うんだけど...
「担任の相澤消太だ、よろしくね。」
なんとびっくり、くたびれたおじさんは担任だったらしい。何ともこれから先が不安になる事実だ。
そんなおじさんは芋虫の死骸の中から体操服を取り出して言った。
「早速だが、これ着てグラウンドに出ろ。」
「個性把握テストォ!?」
体操服に着替え、グラウンドに出た私たちを待っていたのは、入学式...なんかではなく、謎のテストだった。
そんな、初日からテストだなんて...!
「入学式は!?ガイダンスは!?」
「ヒーローになるならそんなに悠長な行事に出る時間はないよ。雄英は自由な校風が売り文句、そしてそれは先生側もまた然りだ。」
「...?」
「ソフトボール投げ、立ち幅跳び、50m走、持久走、握力、反復横跳び、上体起こし、長座体前屈。中学のころからやってるだろ?個性禁止の体力テスト。国はいまだ画一的な記録をとって平均を作り続けてる。まあ文部科学省の怠慢だよ。」
そう言って先生はさっきのヤンキーにボールを投げ渡す。
「爆豪、中学の時ソフトボール投げ何mだった?」
「67m。」
「じゃあ個性を使ってやってみろ。円から出なきゃ何してもいい。思いっきりな。」
ヤンキーが準備運動をしつつ円の中に入っていく。そして振りかぶったと思ったら...
「死ねぇ!!!」
ドカアァァァン!!!
巨大な爆発、物騒な言葉と共にボールは彼方まで飛んで行ったのだった。
「まずは自分の最大限を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的な手段だ。」
先生が手元に持っていたモニターには、705.2mと表示されていた。
「なんだこれ!すげー
「700mってまじかよ!」
「個性思いっきり使えるんだ!さすがヒーロー科!」
「ボール投げなら銀河打者たる私の出番だね!」
個性を使っていいという新鮮さと、700mという通常ならありえない記録に興奮した私たちが口々に言っていると、それを見た先生が視線を鋭くした。
「面白そう...か...
ヒーローになるための3年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?よし、トータル成績最下位の者は見込みなしと判断し、除籍処分としよう。」
「「「「はあああああ!?!?」」」」
「生徒の如何は俺たちの自由。ようこそ、これが雄英高校ヒーロー科だ。」
先生は髪をかきあげながら悪い笑みを浮かべ、私たちを挑発していた。
「最下位除籍って、入学初日ですよ!?いや、初日じゃなくても...理不尽すぎる!」
「自然災害、大事故、身勝手な敵達...いつどこから来るか分からない厄災。日本は理不尽にまみれてる。そういう理不尽を覆していくのが、ヒーローだ。
放課後マックで談笑したかったのならお生憎。これから3年間、雄英は全力で君たちに苦難を与え続ける。
こうして雄英高校に入って最初の試練が私たちに襲いかかったのだ。
第1種目、50m走
周りのみんなは個性を活かして走り抜けたり、個性の衝撃を後ろに向けて推進力を得たりしていた。
そうしてやってきた私の番。
私はスタートラインに着く前にゴールラインの判定ロボットが配置されている場所に来た。
そしてそこに開拓のビーコンを設置した。
「なんだあれ?どういう個性?」
「さあ?」
そして私はスタートラインへと戻り、スタートの合図と共に、開拓のビーコンの元へとワープをした。
『0.59秒!』
「「「はあ!?」」」
「よし、いい感じだね!」
第3種目、立ち幅跳び
「ジャンプボタンはどこ?」
「何言ってんだ。はよ飛べ。」
腕を前後に振り、足に力を目いっぱい入れて飛んだ。記録は196cm。
「私って飛べたんだ...」
「何言ってんだ。はよ次行くぞ。」
第5種目、ボール投げ
無限を出した人がいたり、私の前に投げた人が指を大怪我したりした。その過程で先生の正体が判明したりもした。イレイザーヘッド、知らないね。
そして私は指を怪我した人のところに近づく。
「指、大丈夫?」
「あ...うん...」
「私が豊穣の運命に目覚めてたら治してあげられるんだけど、実装はまだなんだよね。ごめんね。」
「う、うん?」
「おい、無量塔、次だぞ。はよ投げろ。」
おっと、先生に呼ばれてしまった。
私はソフトボール投げ用の線が書かれた場所に入り、円の中に立つ。
そして壊滅に運命を切り替え、バットを手に出現させた。
「バットが!?」
「ほんとにどういう個性だ?」
私は前方に手を伸ばし、バットを天に掲げる。いわゆる予告ホームランってやつだ。
「銀河打者の実力、見せてあげる!!」
「いいからはよ。」
私は手に持ったボールを上に放り投げるとバットを構え、思いっきり振りぬいた。
スカッ!
「えっ、空振り!?」
「だっさ!?」
なんということだ。私は急いでこれまでの全ての記憶を遡ったが、バットの先にあるのはいつも人間やらロボットやらだった。
そうして私は、ひとつの結論を導く。
私は野球をしたことがないのだった!!
「ソフトボール投げは2回、もっかいだ。また空ぶったら記録無しだぞ。」
私はその場でボールを拾うと、深呼吸をする。
もう一度ノック打ちを失敗すれば記録無し。記録を確実に付けるにはもういっその事その場で投げればいい。無理にバットにこだわる必要はないのだ。
しかしここでバットを手放してしまうと、私は銀河打者という称号を失ってしまう。*1銀河打者は他の誰かのものになってしまうのだ。そんなの許せるわけがない。それなら...
「...
私はもう一度バットを天に掲げた。そして自分の中にあるエネルギーのありったけをバットに込める。
するとバットは光を放ち、青い電気をその身に纏った。
「光った!?」
「そんなこともできんのかよ!」
それを確認した私は、もう一度ボールを放り投げ、バットを振りかぶる。
「いっっっけえぇぇぇぇぇぇ!!!」
カッキーーーーーーーン!!!
見事バットはボールの芯を捕らえ、ボールは遥か彼方へとその姿をくらませたのだった。
記録、956m。
このクラスでは上から2番目の記録だった。
全種目が終わり、私たちは再び先生のところに集まっていた。
「んじゃ、ぱぱっと結果発表。トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ。口頭で説明すんのは時間の無駄なので一括開示する。
...ちなみに除籍はウソな。」
「「「「...は?」」」」
「君たちの最大限を引き出す、合理的虚偽。」
「「「「はーーーー!?」」」」
まさかまさかの嘘宣言にほとんどの人が驚きの声を上げた。クラスメイトのひとりが「あんなの嘘に決まってる」と言っていたが、こんな初日でそんな嘘をつくような先生だなんて分かるわけがない。
私の結果はクラスで6番目だった。
描写のない種目は普通にやっただけです。
主人公のメタ発言については謎の信号を受信しているだけなのでそういうもんだと思ってください。