## ――工兵隊ロボット部隊設立
工兵隊による試験が始まってから、なんやかんやで十日が過ぎた。
残すところ、試験期間はあと十日。
工兵隊の技術者たちは、ステラのロボットを前に、頭を抱えていた。
優秀なのだ。
それはもう、文句のつけようがないほどに。
いや、正確には、褒めるべきところが多すぎる一方で、手放しでは褒められないところも多すぎた。
まず、作業機械としての使い勝手がよかった。
たとえば、工兵隊の任務で頻繁に使用するスコップやハンマー。
通常の作業用機械であれば、専用のアタッチメントを取りつけたり、工具に合わせたマニピュレーターへ交換したりする必要がある。
しかし、ステラのロボットには、その手間がなかった。
人間が使うような道具なら、そのまま手に持たせればいい。
握る。
持ち上げる。
振る。
掘る。
叩く。
それだけで済む。
工具を交換するために作業を中断する必要もなく、現場の状況に応じて、即座に使用する道具を切り替えられる。
単純なことのように思えるが、実際の工事現場では、この差が大きかった。
人間が扱うことを前提に作られた道具を、そのまま使用できる。
それは、既存の工兵隊の装備や作業手順を大きく変更せずに導入できるということでもあった。
「これ、思った以上に便利だな……」
現場の隊員が、感心したように呟いた。
さらに、人間と同じような体型であることも、利点になっていた。
胴体の前後幅が狭いため、通路や建物の内部など、前後方向に余裕のない場所でも作業ができる。
もちろん、機体の全高は十五メートルもある。
普通の建物に入れるわけではない。
しかし、巨大な構造物の内部や、機械設備の間、あるいは人間用の通路を拡張した作業区画などでは、意外なほど取り回しがよかった。
脚の長さを生かして、障害物をまたぎ、段差を越え、狭い場所へ入り込む。
腕を伸ばし、手を差し入れ、人間では届きにくい場所の作業を行う。
その動きは、重機というより、巨大な作業員そのものだった。
もっとも、問題がないわけではない。
人間と同じ体型であるということは、人間と同じ体型であることによる制約も抱えている。
重いものを持ち上げる際の姿勢。
足場が不安定な場所での作業。
大きな荷重をかけた際のバランス制御。
そして、細長い脚部に負荷が集中する状況。
人間の身体に似せた構造は、必ずしも工兵作業に最適化されているわけではなかった。
「やっぱり、作業専用機には敵わない部分もあるな」
「そりゃそうだろう。こいつは、何でもできる代わりに、何か一つに特化しているわけじゃない」
「だが、現場で工具を持ち替えずに済むのは大きいぞ」
「そこなんだよな……」
技術者たちは、何度も同じ結論にたどり着いた。
万能ではない。
だが、使い方次第では、非常に優秀な機械になる。
そして、ステラのロボットには、もう一つ、見過ごせない特徴があった。
慣性中和装置と反重力装置。
この二つを同時に搭載していることだ。
*
慣性中和装置は、機体の加速や衝撃によって生じる影響から、内部の人間や機器を保護するための装置である。
反重力装置は、機体が地面へ与える荷重を軽減し、巨大な機械を運用する際の負担を抑える。
どちらも、現代の軍事技術としては特別珍しいものではない。
少なくとも、片方だけならば。
高価であることに目をつぶれば、慣性中和装置か反重力装置のどちらかを搭載した機体は、今ではそれなりに存在する。
しかし、両方となると話が変わる。
装置を二つ搭載するだけでは済まない。
それぞれの装置を適切に制御し、互いの動作を調整するための高性能な制御装置が必要になる。
そのうえ、二足歩行機械の場合、歩行や跳躍に伴う重心の変化まで考慮しなければならない。
結果として、機体価格は一気に跳ね上がる。
同じ予算を使うなら、より安価で、より頑丈で、より簡単に整備できる作業機械を何台も導入したほうがいい。
費用対効果を考えれば、採用できる用途は限られる。
航宙艦のように、莫大な予算を投じてでも性能を追求する必要があるものなら、話は別だ。
だが、工兵隊の作業機械にそこまでの費用をかけるのは、普通ならば難しい。
「それなのに、こいつは両方とも積んでいる」
技術者の一人が、機体を見上げた。
「しかも、あれだけ自然に動く。制御装置はどうなっているんだ?」
問題は、そこだった。
通常ならば、二つの装置を制御するために、それぞれ専用の制御系統を設ける。
しかし、ステラのロボットには、その構成が見当たらない。
正確には、見当たらないというより、彼らの知識で理解できる形では存在していなかった。
内部の機械類を確認しても、見慣れない制御装置が一式搭載されているわけではない。
機体のバランス制御を担う機構に、別の制御が重ねられているようにも見える。
「……制御システムを、内部機械のバランス制御に被せているのか?」
「そんなことが可能なのか?」
「わからん。だが、そう考えないと説明がつかない」
「じゃあ、どうやって作っている?」
「それがわかれば苦労しない」
技術者たちは、黙り込んだ。
現状では、ステラ以外に理解できる者がいない。
分解しても、解析しても、動作を記録しても、肝心の制御原理がわからない。
そして、原理がわからなければ、複製はできない。
部品を同じように組み立てれば動くという単純な話でもなかった。
ステラの機体は、彼女自身が作り上げた独自技術の塊だった。
「……量産は、無理か」
「今のままではな」
「少なくとも、ステラ抜きではどうにもならん」
その結論に異論はなかった。
工兵隊がどれだけ優秀な技術者を集めようと、ステラの技術を再現できる保証はない。
そもそも、彼女自身が自分の技術を他人に説明する気があるのかどうかも怪しかった。
「なら、本人に作ってもらうしかないか……」
誰かが、ぽつりと言った。
*
工兵隊の担当者は、試験データを前に悩んでいた。
このロボットは、使える。
実用上の問題はあるものの、適切な任務に投入すれば、十分な成果が期待できる。
しかも、ステラの機体は、単なる作業用ロボットではない。
慣性中和装置と反重力装置を備え、機動性にも優れている。
災害現場での救助。
崩落した建物の内部調査。
重量物の移動。
危険区域での作業。
工兵隊の任務には、活用できそうな場面がいくつもあった。
もちろん、万能ではない。
どんな場所でも使えるわけではないし、既存の機械より優れているとも限らない。
しかし、選択肢が一つ増えるだけでも、現場の対応力は変わる。
問題は、導入費用だった。
「最低六機は欲しいな」
担当者が呟いた。
一機だけでは、整備中に運用できなくなる。
複数の現場へ同時に派遣することもできない。
最低六機を実戦的に運用するなら、整備や故障への備えも必要になる。
「十機は必要か……いや、余裕を持つなら十二機か?」
計算すればするほど、予算は膨らんでいく。
機体の製造費。
部品代。
整備設備。
操縦訓練。
予備パーツ。
そして、肝心のステラへの依頼料。
「……通るわけがないよな」
担当者は、深々とため息をついた。
それでも、申請するだけなら自由だ。
どうせ駄目だろう。
駄目でもともと。
まずはステラに相談し、仮の予算を組んでみよう。
そう考えた彼は、上司に申請書を提出した。
そして数日後。
信じられないことが起きた。
部隊設立の許可が下りたのである。
「……え?」
担当者は、決裁書を二度見した。
もう一度見た。
それでも、書かれている内容は変わらなかった。
工兵隊ロボット部隊。
設立承認。
必要予算、計上。
導入機数、計画に基づき調整。
「……通った?」
誰もが驚いていた。
当の申請者ですら、驚いていた。
いったい何が起きたのか。
答えは、申請書の外側にあった。
*
部隊設立の裏では、見学会で活躍した工兵隊の高級将校と、ステラ研究班の吉田チーフが動いていた。
二人は、ステラの公式ファンクラブと非公式ファンクラブ、その両方に働きかけていたのである。
もちろん、表向きの目的は、工兵隊の新型作業機械の導入促進だった。
ステラのロボットは優秀だ。
工兵隊の任務にも役立つ。
ならば、正式に購入して運用すべきだ。
筋は通っている。
少なくとも、表向きは。
しかし、二人が利用したのは、技術評価だけではなかった。
ステラ自身の人気である。
基地内では、あの見学会以来、ステラのロボットはちょっとした話題になっていた。
工兵隊の隊員たちは、あの巨人が再び動くところを見たいと思っていた。
学生たちは、ステラのロボットをもっと見たいと思っていた。
そして、ファンクラブの会員たちは、彼女のロボットが正式採用されることを望んでいた。
そこで、吉田チーフたちは、彼らの願いを後押しした。
工兵隊のロボット部隊が設立されれば、ステラのロボットは正式に製造される。
整備される。
運用される。
つまり、これからも動き続けることになる。
ファンにとっては、願ってもない話だった。
その結果、工兵隊のロボット導入を支持する声が、あちこちから上がり始めた。
技術的な評価に、現場の要望。
そこへ、基地内で高まった人気が加わった。
予算申請は、単なる一部署の希望ではなくなった。
そして、政治的な後押しまで受けることになったのである。
吉田チーフは、最後まで表情を変えなかった。
「技術的な価値は、十分にありますから」
その言葉は、嘘ではなかった。
ただし、それだけが理由でもなかった。
*
ある日、ステラが町を歩いていると、見知らぬ人から声をかけられた。
「ステラちゃん!」
「ん?」
「工兵隊に、ステラちゃんのロボットが正式に購入されるんだって? よかったね!」
「……え?」
ステラは足を止めた。
相手は、嬉しそうに笑っていた。
「これからも、あのロボットが見られるんでしょ? 楽しみにしてるからね!」
「……あ、うん。ありがとう?」
ステラは、曖昧に笑った。
別の場所でも、同じようなことが起きた。
「ステラちゃん、ロボットの量産が決まったんだって?」
「まだ、量産と決まったわけじゃ……」
「でも、工兵隊が正式に部隊を作るんでしょ? すごいね!」
「……まあ、そうね?」
さらに別の人からも声をかけられた。
「ステラちゃん、今度はどんなロボットを作るの?」
「いや、まだ何も決まってないんだけど……」
「楽しみにしてるよ!」
「……うん」
ステラは、曖昧な笑顔を浮かべたまま歩き続けた。
彼女は気づき始めていた。
これは、単なる予算申請ではない。
自分の周囲で、何かが動いている。
しかも、その動きは、彼女が断りにくい方向へと進んでいた。
普通なら、ここで疑うべきだった。
誰が仕掛けたのか。
何が目的なのか。
そして、どう対処すべきなのか。
だが、ステラには一つ、決定的な弱点があった。
自分の趣味を応援してくれる人間に、弱いのである。
正確には、弱いというより――。
彼女は、自分が好きなものを好きだと言ってくれる人間を、無下に扱うことが苦手だった。
その反応が、どこまで人間的な感情に由来するものなのかは、誰にもわからない。
ただ、少なくとも周囲の人間たちは、彼女が喜ぶと考えていた。
そして、その読みは、間違ってはいなかった。
*
もちろん、学校も例外ではなかった。
ステラのファンクラブが、学校内にまで広がっていたのである。
校内の掲示板。
廊下の壁。
展示スペース。
学校側が展示を許可している、ありとあらゆる場所。
そこには、ステラのポスターが貼られていた。
ロボットの前で、得意げに胸を張るステラ。
ロボットの製作現場で、作業員たちに指示を出すステラ。
工具を手に、機体の部品を確認するステラ。
そして、宇宙軍の月面基地で撮影された、何やら意味ありげな姿のステラ。
いずれも、これまで彼女が関わってきた出来事の中から、軍が保管していた資料をもとに作られたものだった。
もちろん、教育上問題のない写真が選ばれている。
そこは、学校である。
問題は、ポスターの構成だった。
どの写真も、ステラの自尊心を絶妙にくすぐるようにデザインされていたのである。
「天才ロボット技師、ステラ!」
「工兵隊の未来を担う、新たな可能性!」
「小さな技術者が生み出す、巨大な力!」
そんな文句が、写真の下に並んでいた。
本人が見れば、きっと喜ぶ。
いや、喜んでしまう。
そう確信できる程度には、計算されていた。
これは、ステラ研究班にとって、生存戦略の一環でもあった。
彼女の自尊心を適度に満たし、機嫌をよくし、こちらの頼みを聞きやすくする。
同時に、軍としてはステラの人気を高め、世論を味方につける。
ステラの能力を隠し続けることが難しくなっている以上、いっそ人々の前に出し、好意的なイメージを定着させてしまおうというわけだ。
研究班にとっては、ステラを刺激しすぎないための安全策。
軍にとっては、人気者を利用した広報戦略。
そして、ステラ本人にとっては、自分の功績を称える素晴らしいポスター。
それぞれの思惑が、奇妙な形で一致していた。
ただし、この計画には、ひとつ問題があった。
ポスターの評判がよすぎたのである。
学校で掲示されたポスターは、基地内の関係者へと広がり、やがて軍や警察の施設にも貼られるようになった。
そして、軍の広報資料を経由し、さらに外部へ。
気がつけば、ステラのポスターは、この星じゅうへと拡散されていた。
*
そもそも、軍と政府は、以前からステラの存在を隠し続けることに限界を感じていた。
銀行で発生した人質事件。
そこで彼女が見せた、あまりにも強烈な行動。
人質を救出した際、ステラは素っ裸だった。
その姿で事件を解決したという事実は、あまりにも印象的だった。
さらに、少し調べれば、似たような騒動がいくらでも見つかる。
本人にとっては大したことではないのかもしれない。
しかし、世間にとっては違う。
インパクトがありすぎた。
ネット上では、すでにステラの名前は知られていた。
「痴女」
「露出狂」
「残念美少女」
そんな単語で検索すれば、彼女の名前や関連映像が出てくるほどだった。
もちろん、本人にとっては不名誉な話である。
少なくとも、普通の人間ならば。
ジーミーは、何度も泣きながらステラに説教した。
「姉さん! 頼むから、もう少し自分のことを考えてよ!」
「えー? ちゃんと考えてるよ?」
「どこが!?」
「必要なことをしただけじゃないか♪」
「そういう問題じゃないんだよ!」
しかし、無駄だった。
ステラにとって、自分の行動が世間からどう見られるかという問題は、優先順位が低かった。
必要ならば、やる。
面白ければ、やる。
気が向けば、やる。
そして、結果として騒ぎになったとしても、本人が納得していれば、それで終わりだった。
学校でも、一部の素行のよくない生徒が、ステラの過去の騒動を持ち出して絡んだことがあったらしい。
しかし、その騒ぎはすぐに鎮火した。
ステラは、いつものように笑って答えたそうだ。
「ふふん♪ 下等生物には、言葉よりも力さ」
何をしたのか。
どこまでやったのか。
詳しいことを聞こうとした教師たちは、途中で質問するのをやめた。
少なくとも、問題は解決していた。
そして、学校側も、それ以上の追及を控えることにした。
*
ステラにとって、工兵隊ロボット部隊の設立は、悪い話ではなかった。
好きなロボットを作れる。
作ったロボットを、実際に動かしてもらえる。
しかも、製造や整備に関する仕事が続くため、当面は定期収入にも困らない。
趣味と実益を兼ねた、理想的な話である。
普通なら、喜んで引き受けるところだった。
実際、ステラも嬉しかった。
嬉しかったのだが――。
「……なんか、負けた気がする」
工兵隊からの正式な依頼書を眺めながら、ステラは不満げに呟いた。
自分の知らないところで話が進み、周囲から祝福され、気づけば断りにくい状況が出来上がっている。
まるで、周囲の人間たちにうまく乗せられたようだった。
事実、その通りだった。
だが、ステラは簡単には認めなかった。
「よし。決めた!」
彼女は、ぱん、と手を叩いた。
「製造責任者は、吉田チーフにお願いする!」
「……はい?」
突然名前を出された吉田チーフは、目を瞬かせた。
「私は、パーツの選別と選定を担当する。製造工程の管理や、工兵隊との調整はチーフに任せた!」
「いや、ちょっと待ってください。私は研究班の責任者であって、製造部門の責任者では――」
「大丈夫、大丈夫♪ チーフならできるって!」
「その根拠は!?」
「私がそう思ったから!」
吉田チーフは、天井を見上げた。
この少女は、いつもこうだ。
勝手に話を進め、周囲を巻き込み、最後には相手が断りにくい状況を作り上げる。
それでいて、本人は悪びれない。
「それと、製造に使うパーツは、私が選ぶからね」
「……それは構いませんが」
「余ったパーツは、私のものにしていいって契約に入れておいてね♪」
「……はい?」
吉田チーフが、ゆっくりと顔を戻した。
「余ったパーツ、ですか?」
「うん。規格外品とか、余剰在庫とか、使わなかった部品とか。そういうのは、私が自由に使えるようにするのさ♪」
「何に使うつもりです?」
「それは、乙女の秘密!」
ステラは、胸を張った。
吉田チーフは、嫌な予感がした。
非常に嫌な予感がした。
しかし、契約条件としては、それほど不合理でもない。
ステラがパーツを選定し、製造に必要な部品を確保する。
余剰分を彼女の所有とすることで、個人的な研究や試作に利用できる。
工兵隊にとっても、不要な部品を処分する手間が減る。
少なくとも、書類の上では筋が通っていた。
「……わかりました。契約に盛り込みましょう」
「やったー♪」
ステラは、満面の笑みを浮かべた。
これでよし。
工兵隊のロボット部隊は設立される。
自分は好きなロボットを作れる。
収入も確保できる。
余ったパーツは、自分のものになる。
周囲の人間たちにうまく乗せられたようで、最後には自分の欲しいものを手に入れた。
ステラにとっては、十分に満足できる結果だった。
そして、この契約こそが、後に生まれることになる、とあるロボットの遠因となった。
*
そのロボットは、後にこう評されることになる。
――ステラが作ったロボットの中でも、最も頭がおかしい。
何を考えたら、こんなものを作る気になるのか。
そもそも、どうして作ろうと思ったのか。
なぜ、そんな機能を搭載したのか。
そして、どうして本当に動くのか。
誰もが疑問を抱き、誰もが首をひねり、誰もが理解を諦めた。
その名は、飛行ロボット。
二足歩行型ロボットを作るだけでも、普通の技術者からすれば十分に奇妙だった。
それなのに、今度は空を飛ばそうというのである。
工兵隊の作業機械として、必要なのか。
費用対効果はどうなのか。
そもそも、飛行するなら人型である必要があるのか。
まともに考えれば、疑問しか出てこない。
だが、ステラにとっては、そんなことはどうでもよかった。
余ったパーツがある。
作りたいものがある。
ならば、作る。
それだけだった。
そして、誰も知らなかった。
工兵隊ロボット部隊の設立が、やがて軍の技術者たちを巻き込む、とんでもない騒動の始まりになることを。
ステラ本人だけは、最初から楽しみにしていた。
「ふふふっ……次は、空を飛ぶロボットだねぇ♪」
その笑顔を見た吉田チーフは、心の底から思った。
――やっぱり、余剰パーツなんて渡すべきではなかったのではないだろうか。
しかし、契約書には、すでに署名が済んでいた。