魔法少女リリカルなのは 星詠みのレゾナンス   作:物書きの成り損ない

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どうも初めまして

ガンブレを機に無印から見直しましたがやはりリリカルなのはは良い作品ですね…

気づいたら筆が動いていましたよ、ええ

そんな訳でプロローグをどうぞ~


プロローグ
プロローグ


何度目かも定かではない警告音が私に告げた。

 

 

『警告。リンカーコア損傷率、七十八パーセント』

 

 

私のデバイス、カデンツァの報告を聞きながら、震える手を制御盤へ押し当てた。

 

指先から流れ出した白紫の光が、聖王のゆりかごを走る無数の魔力経路へ侵入してい

く。

 

巨大な艦そのものが、生き物のように脈打っていた。

 

流れ込んでくるのは魔力だけではない。

 

怒り

 

恐怖

 

憎しみ

 

誰かに与えられた記憶

 

生まれるより前から決められていた役割

 

そして、泣きながら母親の名前を呼ぶ、小さな少女の声

 

 

『ママ……』

 

 

なのはの大切な少女——ヴィヴィオの泣いてる声だった。

 

実際に聞こえたわけではない。

 

ゆりかごに接続した私の意識へ、彼女の感情が直接流れ込んでいる。

 

怖い

 

痛い

 

一人にしないで

 

助けて

 

その声を感じるたび、私は焦りを隠せなくなっていた。

 

 

「ッ……カデンツァ、制限を解除して!」

 

 

『申し訳ありませんが拒否します』

 

 

即答だった。

 

長年の付き合い故に分かっていた展開に私は荒く息を吐いた。

 

 

「分かってるの?主砲の魔力供給を止めないと、クラナガンが射程に入る」

 

 

『外部部隊による動力炉破壊まで、残り百二十六秒です』

 

 

「それじゃあヴィヴィオがもたないかもしれないの!」

 

 

『それはあなたのリンカーコアも同様です!』

 

 

カデンツァの言う通り体は既に限界を迎えており、リンカーコアもこれまでの酷使によ

り、まともに魔力制御すらままならない状況だった。

 

魔力経路への直接接続に肉体が耐えられていないのも頭の隅では理解していた。

 

指先の感覚はすでになく、視界の左半分が暗くなっている上に意識も朦朧としている。

 

そんな中で主導権の取り合いをしている私はきっと大馬鹿なのだろう。

 

でも私が接続を解除すれば、ゆりかご内部のすべての主導権が戻り、ヴィヴィオに苦痛

をもたらしてしまう。

 

だから、ヴィヴィオが解放されるまではここを離れる訳にはいかない。

 

せめて、なのはが到着するまでは……

 

 

『救援要請を推奨します』

 

 

「通信は妨害されてるし、そもそもこちらに割ける人員は……」

 

 

私の言い訳じみた返答にカデンツァは否定した。

 

 

『通常通信ではありません』

 

 

カデンツァの紫色の光が、1冊の本を示した。

 

私はそれが何を示しているのか、確認するまでもなく理解した。

 

ロストロギア――紫天の書。

 

そして、この本とリンクしている四人の少女。

 

 

『彼女達との共鳴は維持されています』

 

 

「駄目!」

 

 

答えは考えるより先に出ていた。

 

 

『ユーリの共鳴能力で負荷を分散できます』

 

 

「ユーリの力は不安定……駄目だよ」

 

 

『ディアーチェによる外部管制が可能です』

 

 

「ディアには……まだ別でやってもらう事がある、でしょ?」

 

 

『レヴィはあなたの位置まで迅速に到達できます』

 

 

「まだ私が離れる訳にはいかないし、レヴィをここで待ちぼうけさせる程余裕はないで

しょう?」

 

 

三度による提案を却下されたカデンツァは、最後の少女の名前を告げなかった。

 

それでも私には分かっていた。

 

彼女……シュテルなら止める。

 

どれだけ私が頼んでも、今度だけは絶対に従わない。

 

シュテルは私の身体の状態を、誰より正確に把握している。

 

眠れない夜も

 

六課のみんなと衝突して泣いていた時も

 

無茶が祟り、魔法を使えなくなる未来を恐れ震えていたことも

 

すべて知っている。

 

だから、知られるわけにはいかなかった。

 

 

「彼女達とのリンクを切って」

 

 

『推奨できません』

 

 

「カデンツァ!」

 

 

『その命令は、シュテルとの約束に反します』

 

 

私の呼吸が止ったかのような錯覚に陥った。

 

いや、一瞬止まったのかもしれない。

 

約束した

 

もう一人では決めないと。

 

危険なことをする前には必ず相談すると。

 

何も言わずにいなくならないと。

 

シュテルの隣で、確かに約束した。

 

なのは達と衝突し、六課に居場所がないと思い込んだ夜。

 

自分だけは決して離れないと、シュテルは言った。

 

だから私も、彼女を置いていかないと答えた。

 

 

「……分かってる」

 

 

『では、救援要請を送信します』

 

 

「駄目」

 

 

『奏星』

 

 

「シュテルだけは、駄目なの」

 

 

カデンツァの光が揺れる。

 

 

『理由を確認します』

 

 

「止めに来るから」

 

 

『それが救援要請の目的ですし誰であっても止めに来るでしょう』

 

 

「そんなの……分かってる、よ」

 

 

私は目を閉じた。

 

この場にシュテルが来れば、自分はきっと迷ってしまう。

 

あの手を取ってしまう

 

帰りたいと言ってしまう

 

そうなれば、まだ囚われのヴィヴィオを見捨てる事になってしまう。

 

だから呼べなかった。

 

シュテルを信頼していないからではない。

 

誰よりも自分を止められる相手だと、知っているからだった。

 

 

「リンクを切断して」

 

 

『命令の再考を要求します』

 

 

「カデンツァ……っ!!」

 

 

私は制御盤から片手を離し、胸元のペンダントへ触れた。

 

 

「……お願いだから」

 

 

短い沈黙があった。

 

 

『……命令を受理しました』

 

 

紫色の光が一つずつ消えていく。

 

ユーリとの共鳴が途切れて一瞬悲しみの感情が流れてきた。

 

今現在頑張ってるであろうディアーチェの管制経路が消えた。

 

さっきまで分かっていたレヴィとの位置が分からなくなった。

 

最後に残った光が、シュテルだった。

 

その光はほかの三つより強く、切断へ抵抗していた。

 

まるで、離れていく私の手をつかもうとしているようだった。

 

 

「ごめんね、シュテル」

 

 

光が消えた。

 

胸の奥に、大きな穴が開いたような感覚が残る。

 

だけど、これでいい。

 

シュテルは来ない。

 

ここは自分がすべて引き受ければいい。

 

 

『リンクの完全切断を確認』

 

 

「第三経路を開いて」

 

 

『……拒否権限が失われました』

 

 

カデンツァの声が、初めて苦しそうに聞こえた。

 

 

『最終確認。第三経路を開放した場合、リンカーコアの致命的な損傷が予測されます』

 

 

「そっか、生存率は?」

 

 

『算出不能です』

 

 

「ははっ……ゼロじゃないんだね」

 

 

『……その解釈は適切ではありません』

 

 

私は小さく笑った。

 

いつからだろう。

 

危険を数字として示されるたび、ゼロでなければ大丈夫だと思うようになったのは。

 

なのはなら怒るだろうか、それともいつものお話をするかな?長いから勘弁してほし

い。

 

フェイトはきっと悲しむだろう、彼女はいつも優しいから。

 

はやてはきっと、自分の責任だと考えてしまうだろう、ああ見えて責任感強いから。

 

ユーリは、自分が代わりになると言うだろう、彼女は私に似てるから。

 

そしてシュテルは……

 

何も言わず、当たり前のように私の隣へ立とうとする。

 

 

「……だから呼べないんだよ」

 

 

誰へ向けた言葉なのか、自分でも分からなかった。

 

私は両手を制御盤へ押し当てる。

 

 

「カデンツァ。オーバーリミット解放」

 

 

『……承知しました』

 

 

一瞬、音が消えた。

 

次いで、白紫の光が視界を埋め尽くした。

 

膨大な魔力が私の身体を通り抜ける。

 

私の中から、何か大切なものがひび割れた音がした。

 

実際に音が鳴ったわけではない。

 

それでも私には、はっきりと聞こえた。

 

幼少期から共にあった魔力。

 

カデンツァによって紡がれたなのは達のリンク。

 

なのは達と同じ空を飛ぶための力。

 

そのすべてに、取り返しのつかない亀裂が走る音だった。

 

 

『リンカーコア損傷率、九十一パーセント』

 

 

「この、状態を維持して!」

 

 

『奏星!これ以上は!!』

 

 

「なのはちゃんが、ヴィヴィオのところへ着くまで」

 

 

『生命維持機能に異常多数』

 

 

「まだ……聞こえるから」

 

 

ヴィヴィオの声が。

 

あの子が助けを求める声が聞こえる。

 

なら、まだ終われない。

 

目尻から血が流れていることにも構わず、私は接続を維持した。

 

その時、切断したはずの紫天の書とのリンクが強制的に接続された。

 

戦闘中なのかノイズの混じった、誰かの声が響く。

 

 

『奏星!』

 

 

聞き間違えるはずもない、シュテルだった。

 

どうやってリンクを回復させたのか分からない。

 

いつもの冷静さは消えている。

 

初めて聞くほど、激しく震えた声だった。

 

 

『直ちに接続を解除してください!』

 

 

私は返事をしようとした。

 

けれど、過負荷のせいか上手く声が出なかった。

 

 

『聞こえているのでしょう!』

 

 

『返事をしてください、奏星!』

 

 

「……ごめん」

 

 

辛うじて、それだけが声になった。

 

 

『謝罪は求めていません!』

 

 

『ただ無事に!戻ってきてくださいと言っているのです!!』

 

 

帰りたい。

 

シュテルの声を聞いた瞬間、そう思ってしまった。

 

シュテル達と過ごした家へ帰りたい。

 

ユーリの穏やかな声を聞きたい。

 

ディアーチェに叱られたい。

 

レヴィの騒がしさに困らされたい。

 

シュテルの隣で眠りたい。

 

なのはとも、もう一度話したかった。

 

フェイトに、隠していたことを謝りたかった。

 

はやてに、勝手な行動を怒ってほしかった。

 

ヴィヴィオが救われたあと、みんなと一緒に笑いたかった。

 

死にたくない。

 

ようやく浮かんだその言葉を、私は口にできなかった。

 

今さら助けを求める資格などないと思った。

 

 

自分で一人を選んだ。

 

自分で安全装置を外した。

 

ならば、最後まで責任を取らなければならない。

 

 

「ヴィヴィオを、なのは達を……お願い」

 

 

『奏星?』

 

 

「私のことはっ!? ゴホッ…いいから」

 

 

回線の向こうで、シュテルが息をのむ。

 

次に返ってきた声は、ひどく静かだった。

 

 

『その命令には従えません』

 

 

同時に、遠くで巨大な魔力反応が生まれた。

 

熱を帯びた砲撃魔力が、ゆりかごの通路を揺らした。

 

ルシフェリオンの光だ。

 

シュテルが来る。

 

 

「来ちゃ、駄目だよ……」

 

 

『あなたが……回線を……ことは、後で追及します』

 

 

『約束を破ったことも……許していません』

 

 

『ですから、私も自分の判断で行動します』

 

 

シュテルの言葉がノイズで上手く聞きとれない、でも最後だけしっかり聞こえた気がし

た。

 

……なのはちゃん、もうヴィヴィオのところへ着いたかな。

 

私の視界が暗くなる。

 

カデンツァの警告も、ゆりかごの振動も遠ざかっていく。

 

最後に聞こえたのは、複数の声だった。

 

なのはが私の名前を叫んでいる。

 

フェイトが救出経路を指示している。

 

はやてが外部部隊へ命令を出している。

 

ユーリが涙声で私の名前を呼んでいる。

 

ディアーチェが勝手な真似をするなと怒鳴っている。

 

レヴィが今すぐ助けに行くと叫んでいる。

 

本当に最後に聞こえたのは……

 

 

『生きて、帰ってきてください』

 

 

私の視界がブラックアウトする。

 

何も見えない、身体の感覚もない。

 

それでも、意識だけはまだ暗闇の中に残っていた。

 

魔導師としての自分か。

 

六課の一員だった自分か。

 

シュテルが必要としていた、弱い自分か。

 

それとも……

 

何もできなくなったとしても、ただ生きているだけの自分なのか。

 

答えは分からなかった。

 

ただ、遠い昔に聞いた声を思い出した。

 

九歳の時。

 

傷ついた小さな異世界の少年が、助けを求める声。

 

あのとき私は、一人では行かなかった。

 

隣にいた少女の手を取った。

 

それなのに、いつからだろう。

 

誰かに助けを求めることが、できなくなったのは。

 

ちょっと、疲れたかも。

 

私の大切ななにかがに砕ける。

 

その直前。

 

私は、九歳の自分が初めてなのはへ呼びかけた日のことを思い出していた。

 

     

 

 

~ 十年前 ~

 

海鳴市

 

 

「ねえ、なのはちゃん」

 

 

十年前、小学三年生だった私は、下校途中の坂道で急に足を止めた。

 

 

「どうかしたの、奏星ちゃん?」

 

 

幼馴染の高町なのはが私の呼びかけに振り返る。

 

私は何かを辿るかの様に薄暗い林の奥へ視線を向けた。

 

 

~ 誰かの声が聞こえる ~

 

 

小さく、弱く、今にも消えてしまいそうな声。

 

 

- この頃の私は、まだ何も知らなかった -

 

 

そばにいる友人へ素直に手を伸ばした。

 

「誰かが、助けてって言ってる」

 

なのはにも聞こえた様子で頷いて私の手を握った。

 

「うん、一緒に行こう!」

 

 

- それが、すべての始まりだった -

 

 




プロローグ長くなーい?

なんならこれから無印なのにプロローグ回収までにどれだけ掛かるんだよ……

誰だよこんな構成にしたやつ(お前じゃい!!)

かなり久々の執筆になるんですがこんな感じの文章量で大丈夫かな?

  • もっと、いけるよね?(ニッコリ)
  • これがベスト!
  • ちょっと多いかな?
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