習作:マブガル世界にTS転生した一般レイヴンのお話   作:ぱんそうこう

10 / 15
ちょっと遅くなりました。すみません。



※会長との会話、繋がらない部分あったので修正しました


一般レイヴンと仕事の時間

例の違法パイロットの話、いろいろ指揮官と話してみたけど、何も分からないということしか分からなかった。悲しいね。

 

あれからそれほどしないうちに指揮官はLOCに出張で行ってしまった。リバティの新型ジェネレーターのコンペにトレブル・クインテット側で参加するらしい。それ以来めるちゃんが物凄いぽんこつと化していたのでヤバいぜって感じ。やっぱあの子絶対手遅れだよ。

 

ちなみにコンペの競合相手チームは同じくLOCのトリニティ・ジュエル。

初戦では負けちゃったけど、指揮官がいるなら本番はここからだよ。技術屋謹製の新型ジェネレーター、完成するのが楽しみだよ。正式採用決まったら私にも使わせてほしいなー。なんなら没になった方もほしいなー。アマツはいい顔しないだろうけど実績出したら黙るでしょ。今から楽しみで眠れないよ!

 

私個人の考えとして、この2チームの実力は大差ないと思っている。いやまあ、3人な分どうしても戦闘能力においてトリニティ・ジュエルのほうが評価高くなるんだけど、トレブル・クインテットはとにかく戦術の流動性が高いのが強みだ。どっちがより戦い辛いかでいえば断然トレブル・クインテットだね。私が動けば動くほどそれに対応した戦術を打ち続けることができる、それは明確に私に対するアドバンテージになる。ついでにどこを落とせば瓦解するとか、そういうのが分かりづらいのもアドバンテージの一つだ。

もし私だったらチームの精神的支柱であるフルートちゃんを落とすけど、どうかな。それも有効打かと言われたら怪しいしね。

 

そういえばフルートちゃんにLOCに遊びにこないかって言われてたんだっけ。指揮官に言われてtweetyを始めたおかげで繋がったんだけど、双頭の斧の件でお礼がしたいんだってさ。いいね。対トレブル・クインテット5連戦なんて贅沢、まずそうそうできないよ。激アツすぎてテンション高まりすぎてスカラまで模擬戦しに行っちゃった。

柊だとみんなあんまり受けてくれないからね。シリウスシュガーはまだ「その時」じゃないし、カラフルブーケは最近やりまくってるし。その点スカラの生徒は雑に募集してもみんな喜んで受けてくれるから捗るよ。その代わり乱入者も山のように出るけど。やっぱ様子おかしいよ。

でもいっか。全員同じところに送ってあげたから。

 

ただ気になることはある。本当はユリアと「遊ぶ」つもりだったんだけど……断られちゃった。どうしたんだろ、こういう時は即答で手挙げてもおかしくないのに。明らかにおかしい。今までにない事態に震えてきたよ。翠蘭ママも言葉を濁してるし……。

おかしいのはユリアだけじゃない。カオスメイデンの皆も公式戦見てて最近調子悪そう。なんというか、らしくない。全体的に。前にあった個人技の美しい噛み合いから生まれる謎の連携が見えない。次はカラフルブーケとやるんだもんね。………片方だけに肩入れするのも、面白くないか。困ってるならどうにか手助けしてあげたい。

 

こういう時は本人たちに聞く。私だって学習するよ。

ちゆるちゃんの騒動の時はそれで危うく間違えそうになったからね。私が出るべき時と出るべきでない時がある。カオスメイデンもそうかもしれない。

とりあえず翠蘭ママに話を通そう。「最近みんな調子悪そうだけど大丈夫?何か手助けできることとかある?」……と、これでよし。

一応ユリアにも送っとこ。「どったの最近、らしくないね。窮屈そうだよ」……うん。こんな感じでいいかな。

 

 

よし、じゃあ返信待ちがてらお仕事に行きますか。

私、曲がりなりにも柊の最高戦力扱いされてるっぽいからね。メイズ探索以外にも、稀に行政のアマツから直接依頼が来ることもある。もちろん首輪付きになった覚えはない。あくまで依頼主と傭兵みたいな関係だ。

今回の内容は新型機のテストパイロット。会長も一緒に参加する珍しいタイプの依頼だ。

 

なんでも、会長が推薦したらしいんだよね。新型の前身と言える黎明をあそこまで使いこなせるパイロットも加えるべきだって。会長からの信頼が厚くて胸が高鳴ってくるよ。

 

◇◆◇

 

『黒鉄さん。機体はあくまで試作品です。まずは80%程度の出力で回して、そこから徐々に上げていきましょう』

 

「了解だ。100%以上の力を引き出してみせよう」

 

『この前みたいなのはマジで本当にやめて下さいね……試験開始!』

 

了解!トランザム!はしない。この前やって機体を空中分解させかけたからな。あの時の会長はガチで怖かった。アマツの担当者も顔面蒼白、俺が死んでたらどうしようって顔に書いてあった。

 

まずは通常の機動。右、左、上、下。障害物を避けるように、跳躍と空中でのブーストを繰り返す。

前々から思ってたがかなりいい機体だ。黎明の良さを保持したまま高性能機として再構成した感じで、俺の手にしっくり馴染む。

次はもう少し複雑な地形。敢えて地上に降りて、走破性を確かめる。その瞬間、爆発する足元。そら来た。やっぱりなという感想が湧き出る。

あらゆる状況を想定するならこういうトラップは仕掛けられて当たり前だ。この地形はすでに地雷原。なら出力を上げて一気に駆け抜けるまで。

 

出力を90%まで引き上げ、速度を急上昇。だが飛ばないぐらいのスピードで。機体の限界性能は身体に叩き込んだのなら、それを引き出すまでもなく突破できて当然。難なく地雷原を突破する。

次は閉所。メイズを想定した地形で、飛んでも高度が得られない地点。このまま地を這うのは好きじゃないが……それはまあ、この後の楽しみにとっておこう。

 

機体を奔らせていると行く先々でバタバタと砲口がせり出して、こちらに弾幕を張ってきた。悪くない出来だが……その程度で止められるものか。

とはいえ普段の「飛ぶ」機動は使えない。であれば……これでどうだ?

出力を100%まで引き上げ、匍匐飛行へ移行。前方に面する機体の面積を減らしつつ、機体の向きを僅かにずらして弾幕を回避。加速と減速を繰り返し、弾幕の合間を縫うように機体を「置く」。それでもなお避けきれない豆鉄砲は装甲の厚い部分で受けるか、跳弾しやすい角度の部位で受ける。さしずめ人力ACSだ。人力だからスタッガーしないのが一番のポイント。これ、なんとか機体に学習させられないか?と思いながら全速力で駆け抜けたところで最初の試験は終了した。

 

『流石です黒鉄さん!今の姿勢制御、もう少しデータ取りたいんですが構いませんか?』

 

「ああ、是非そうしてくれ。なんなら完成品に自動版を実装してくれてもいいぞ」

 

『いやあ、流石にそこまではCPUの処理能力が足りないもので……ですがデータさえあれば簡易版なら出来るかもしれません。それでは午前中はそちらを中心に……』

 

トレブル・クインテットもトリニティ・ジュエルも今頃俺と似たようなことをしているに違いない、自分たちの勝利のために。特にトレブル・クインテットは一度トリニティ・ジュエルの技量に敗北を喫している。もう負けは許されない。確かスラスターステア、だったか。俺のクイックブーストの類似のようなものだが、高出力のジェネレーターの使い方としては最適だ。あれを見れば流石の技量だと舌を巻くしかない。とはいえ、指揮官なら俺の戦闘機動で散々見てきた分驚きはしないだろうがな。

 

さて、仕事の続きをしよう。向こうには向こうの、俺には俺の仕事がある。

 

『それでは先ほどの最終チェックポイントに戻ってもらって始めましょう。機動は同じように、ラップタイムを比較しますのでこれを複数回行います。よろしくお願いします』

 

「やってみせるさ」

 

さあ、もう一仕事だ。

 

◇◆◇

 

「ふぅ」

 

午前の分が終わる頃には私も多少は疲労する。身体ではなく、脳の方が。

昼ごはんがてらちょっとだけ甘いものを買っておくのが長持ちするコツだ。チョコレートバーなんかあると最高だね。

というわけでパイロット用の休憩室でバーを齧る。これ食べ終わったら次、新型に合いそうな内装の検討とかしよっかな。個人的に作った各地区から出てたジェネレーターとかの各主要パーツをまとめた資料、持ってきてるんだよね。レドフカだけはガード固くてダメだったけど、他の公式に発表されてるやつは大体ここに揃ってる。開発競争さまさまだね。ここにリバティの新型が加わる日が待ち遠しいよ。

 

と、ドアの向こうでノック音。来客だ。パイロット用の部屋に来るなら会長かな。あっちも終わったんだろうか。

 

「おや、羽音さん。もう昼食ですか?相変わらず仕事が早いですね」

 

「会長も今から?」

 

「ええ。少し議論が白熱してしまい……羽音さんはまた前のように担当の方に迷惑かけていませんよね?」

 

「いやいやいやいや!私だって学習するよ!?」

 

「でも貴女反省しないでしょう?」

 

「するよ!?!?流石にあの時はまずかったなって思ったよ!?」

 

「その『あの時』に、先日の件は含まれてますか?」

 

「あー……」

 

柔らかく微笑む会長の表情に若干の圧が加わる。

その時、呆れた顔で私を見る小花さんが脳裏を過ぎった。会長まだその件擦るの!?もしかしてこのネタ会うたびにやる感じなの?

若干冷や汗をかいたところで、会長はくすくすと笑うと両手を上げてネタばらしをしてきた。

 

「冗談です。私も、終わったことを蒸し返すような真似はしませんよ」

 

「た、たすかった……」

 

「時々話のネタにさせてはもらいますが」

 

「蒸し返してるじゃん!!!!!」

 

くっ。いきなり会長が愉快キャラになってしまった。前からそうだっけ?メイズ潜航の時のセリフとか気合い入ってるもんね。本質的にそっち寄りの人かもしれない。

 

そんなくだらない事で笑っていると、会長が急に表情を引き締めた。

これなにかあるな。さっきまでのは話の前座だったってわけか。

 

「先日の『双頭の斧』の件で一点、お話があります」

 

おっとそう来たか。ちょうどこの前指揮官とも話してた話題だ。タイムリーで嬉しくなるね。

 

「あちらの目的ですが、どうやら月ヶ瀬さんの身柄を手に入れることで、その研究を続けさせないことだったようです」

 

「でもあの粗製連中は、ちゆるちゃんの研究の利益で釣ったんじゃないの?」

 

「ええ。ですのでそれはあくまで戦力を集めるための建前だったようです。貴女は彼女の技術がどう応用できるかはご存知ですか?」

 

「大体ね。重力制御でしょ?となると……あー、もしかしてブラックホール生成とかできる?」

 

スパロボOGの名物だよね、ブラックホールキャノンとかブラックホールクラスターとか。あとはヴァルシオンとかグランゾンの歪曲フィールドもその類かな。いやまあ、全部ヤバいのは変わらないんだけどさ。

 

「流石、鋭いですね。尤も、そこに至るのはまだまだ先の話です。ですが、どうやら彼女の研究が『悪意ある第三者』の手に渡ることを危惧していたとのことで、リーダーからは『地上までメイズのような重力異常地帯になるかもしれない』と。そう伝えられていたとの証言が得られました」

 

ふーん。テロリストの割に頭いいじゃん。第三者、ねえ。何か含みがある言い方だったけど、間違っちゃいないかな。まあ、ちゆるちゃんに追いつくだけの頭がそいつらにあればの話だけど。

だからそれで本人を押さえておこうって?無駄だよ。

 

「……『一度生まれたものはそう簡単には死なない』」

 

ハンドラー・ウォルターが刺さるよ、それは。

 

「……どういう意味です?」

 

「古い教訓だよ。力、技術、意志、想い。有形無形、善悪を問わず一度生まれたものはそう簡単になくなるものじゃない。一度消し去ったと思っても、必ず何処かに受け継ぐ人がいてまた同じことをやり始める。火種を消さない限り」

「そしてちゆるちゃんの研究は例え不本意でも世に放たれた。まして重力制御なんて人類の欲しいもの詰め合わせじゃん。何度消し去ったとしても絶対に同じ研究をする人は出てくるよ。だから『死なない』」

 

ん?ちょっと表情が固まったな。もしかして動揺してる?

 

「…………つまり、流れは止められない、と。そうお考えですか」

 

やけに口籠るね。ポーカーフェイスが台無しだよ。

……これ、ワンチャン黒……いや、グレーだったりしない?ちょっと揺さぶってみるか。

 

「まあね。これからどうなるかは『賽は投げられた』ってやつじゃない?でもよく分かったね。連中の口を割らせるの、大変だったでしょ?なかなか忠誠心高いから」

 

「(賽は投げられた……?)ええ。そこはなんとか、頑張って説得しましたから。証言を信じるなら、あちらは手段はともかくこの島の破綻そのものは望んでいないのではないか、とも考えられないでしょうか。貴女の意見も聞かせてください」

 

流石にこの程度は想定済みか。

「証言を信じるなら」ねえ。予防線張ってるように聞こえたけど気のせい?

 

ORCA旅団が実は人類の未来の為にアサルトセル破壊しようとしてました的な感じ?……まあ、反動勢力って部分は間違ってないか。

……もう少し、引き出せるかな?

 

「うーん。うーーーん……前に指揮官とお話ししたんだけどさ、イマイチ読めないんだよね、何がしたいのか。まだそんなに動きが見えないからアレだけど、でもちょっと気になるところはあったよ」

 

「なんですか?」

 

「あのリーダーが明確に動揺した時があった。私が『この空が狭いなら、あの星の向こうに行けばいい』って言った瞬間がそれ」

 

……見せたね、動揺を。今一瞬息を呑んだ。頑張って隠してたようだけど私の目は誤魔化せない。ていうか反応の仕方がそっくりすぎて面白い。実は姉妹でしたとかでも驚かないぞ、私。

決まりだ。会長はグレー。これ、後で指揮官にも共有しとこう。

連絡……はしない方がいいかな。直接会って、話す。なんかその方がいい気がする。

 

「そんなことが……その話、他の方には?」

 

「してないよ。指揮官だけ」

 

「であれば、重要な手掛かりになるかもしれません。くれぐれも内密にお願いします」

 

「……おーけー。そういうことなら、そうするよ」

 

会長が自分のロッカーに手をかけ、戸を開ける。私とは背中同士向かい合うような形で、幸いなことに表情は互いに窺えない。

 

ここまで聞いた限り、これは結構根が深そうだ。次に指揮官と会う時が楽しみだね。いっそLOCに足を運ぶのも視野だ。

とはいえ、このまま秘密主義されるのもそれはそれで気に食わない。一回釘だけ刺しとこ。

 

「ねえ会長」

 

動きが止まる。私の一挙手一投足を逃さないようにしているのか。

もうお互い分かってるでしょ?ここまでやって何もなしは無いでしょ。

 

「全部話すのはいつになりそう?」

 

会長は振り返る。こうなるって何もかも分かってたように。

 

「必ず……必ず話します。近いうちに。ですから、少しだけ待っていただけますか?」

 

「そう。じゃあ信じるよ。くれぐれも、裏切らないでね?」

 

「当然です。……貴女に、焼き尽くされたくはありませんから」

 

 

 

 




真面目な話してるけど、二人ともこの時例のパイロットスーツ着てたらいいよねって気持ちはあります。

感想・評価お待ちしてます。

精神的BLタグ要りますか?

  • いる
  • いらない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。