習作:マブガル世界にTS転生した一般レイヴンのお話 作:ぱんそうこう
【悲報】会長、テロリストと繋がってる疑惑。
マジなら流石にヤバい案件でしょ、裏でなにか目的あるっぽいけど。
とはいえまあ、結局は私の推測だしね。証拠があるわけでもないし、本人が喋るのを待つしかないのはちょっとばかり歯痒さを感じる。なので今は我慢の時。何かしらの材料が無いといくら問い詰めてもダメだろうしね。それにもしなにか不義理をかましたのなら……その結果は会長自身も分かっているはずだ。
それはさておき、本題に入ろう。リバティの新型ジェネレーターのコンペ、2回戦はトレブル・クインテットが勝った。やったねフルートちゃん。これで面目躍如だよ。
しかも嬉しいことに私がよく使う
とはいえ勝因にそこは関係ない。皆がトリニティ・ジュエルの戦闘技術に追い縋れたのはジェネレーターの性能を完全に自分たちのモノにしたからだ。パッと見た感じ、出力の底上げのためにコンピューターのフィードバック制御をカットしたのかな?出力の安全マージン部分まで使うことで最大出力を上げるやり方だ。私にも覚えがある。これを繰り返してるとそのうち機体が学習して通常時でもこれぐらい出せるようになるんだよね。
懐かしいなあ、昔一回これの出力調整ミスって機体おじゃんにしちゃったことあるんだよね。あの時はメイズにも潜れないせいで3食もやし生活するしかなくて本当に地獄だった。
でもそういう無茶によって得られた出力は、出力に優れたトリニティ・ジュエルのジェネレーターにも引けを取らない。高い出力によって生まれたパワーを捩じ伏せるのではなく、自分達の身体の一部であるかのように扱う……一朝一夕でできるものじゃないよ。余程の訓練をしたみたいだね。あの時のフルートちゃんと向こうのリーダー、レイヴェルさんのドッグファイトは鳥肌立っちゃったよ。早く戦いたいなあ!!!
トレブル・クインテット側のジェネレーター、公式発表だと反応速度に優れたタイプだったはず。あれぐらいできるなら、高機動戦を主とする私的にはこっちが採用されて欲しいかも。
3回戦は……途中で中継切れちゃったから最後の方はよく分かんない。ただ、トリニティ・ジュエルがかなり前に出ていたこと、そしてそれが原因かは分かんないけどかなりの数の敵に囲まれたこと、それをトレブル・クインテットが救援に来たことまでは分かった。これなら皆無事でしょ。後の評価は運営のみぞ知るってことで。
問題があるとすれば。
「データ流出、ねえ」
どこの誰かは知らないけど、派手にやるじゃん。トリニティ・ジュエルが容疑者?今風紀委員会で事情聴取中?だから何?
いやーナイナイ。5人チーム全盛期のこのご時世、わざわざ3人で組むような気合入ったチームが、そんなチンケな小遣い稼ぎみたいな真似しないでしょ。レイヴェルさんの野心?普段の言動?それで言ったら頭レイヴンの私の方が危険じゃない?知らないけど。
とはいえこれで一旦ジェネレーター試験は中断になってしまったという悲しいお知らせが届いてしまった。これ、見ないふりしてたらまだ続行中ってことになったりしない?しないよね……。
はぁ〜〜〜〜〜。でっかいため息も出るよ。
いまガチ萎えしてる。せっかくデータコレクションが増えると思ったのにぃ……。黎明に積む新しいパーツの検討とか、やりたいこといっぱいあったのにぃ……。でもやっぱ一番悔しいのは当事者だよね。あんなに頑張ったのに水の泡になりそうだなんて。
ともあれちょうどこっちも予定空いたわけだし、そろそろ行こっかな。
いざ行かん、LOC校舎へ。
◇◆◇
「なにこれ」
トレブル・クインテットの皆の居場所を求めてLOC校舎を歩いていたらなんか周りの視線がおかしい。
なんだろ、柊で感じる恐れを孕んだものじゃない。品定め、ってわけでもなし。なんというか、舐め回すような視線?
「見て見て。もしかしてあれ……」
「ウソ。黒鉄羽音?なんでここに……すっごいレアじゃん」
「あれがウワサの……やば、威圧感すご」
なんか居心地悪いよ、これ。首筋の辺りがむずむずする。
じろ、と睨むように視線を向けてもきゃいきゃいはしゃぐばかり。新鮮通り越して違和感感じちゃうよ。
「トレブル・クインテット凄いよね……あの人のコンバットパターン、チームでモノにしちゃったんでしょ?」
「戦闘試験だよね!?見た見た!何度見てもあの機動は芸術的だよ……本物、生で見てみたいよね?」
「黒鉄さんの機体何積んでるのかな……じゅるり」
「映像はさ、違うんだよ。あれは、そう、ろ過。ろ過されて薄まってボンヤリしたプーなんだよ。わかる?やっぱ本物をナマで見ないとね?ちらっちらっ」
ええいこの変態どもめ!ここもここでスカラと別方面で様子おかしいな!?
くっ……どこだトレブル・クインテットの教室は!一人で来るんじゃなかったかも……!
「ん?あれ、もしかして羽音か?なんでLOCに?」
「あ!ホントです!羽音ちゃーん!おつぽよでーす!」
おつぽよー!!!た、たすかった……!ありがとう!ありがとう指揮官!フルートちゃん!あともう一人!えーと、多分エヴィ・レーナルトちゃんかな?それに一緒にいるのは……げえっ!風紀委員会!……ってなんだ、リリーか。じゃあいいや。
エヴィちゃんはトレブル・クインテットの参謀役。精神的支柱のフルートちゃんを戦術面で支えるチームの第二の柱だ。
リリー……リリー・ラヴォアは風紀委員会のなかでも割と私に理解がある方なので来てくれると安心感があるね。ヒーロー好きで正義感が強く、若干アホの子の気配を見せているけれど正義のためなら時に組織に背を向けるやり方も厭わないところがある。双頭の斧の件では一番私に理解を示してくれてたし。
「羽音さん!?もしかして今こっちに来たの!?」
「あっ羽音ー!元気してたー?」
「見ての通りだよリリー。エヴィちゃんははじめましてだよね?その通りだよ。ちょっと指揮官に報告することがあったからさ、せっかくだから直接来ちゃった」
「そういうことなんだ……実は私ら今ちょっとゴタついててさ。来てもらって悪いんだけど、ちょっとだけ後にしてくれると……」
「……いや、羽音も来てくれるか?その報告が何なのか気になる」
「指揮官!?」
おっと。なんか雰囲気的にダメそうな気配してたけど、これもしかしてバッドタイミングに見せかけたグッドタイミング?
(まさかまさか、羽音ちゃんも巻き込むつもりですか!?)
(まだそうと決まったわけじゃない。ただ、こんな時にわざわざ来たってことは大事な話なんだろ?おまけに端末も使わずに直接言う必要があるタイプの。それならいっそ着いて来てもらった方が手っ取り早い)
(むむ。タイパの問題かぁ……それなら分からなくもないけど)
(エヴィちゃん!?)
小声ですっごい話し合ってるよ。
うーん、もしかして指揮官、また何か大きな事案に巻き込まれつつある?だとしたら来るべきじゃなかったかなぁ。
まあでも大事な話なのはそうだしなぁ、どうしようか。
「いきなり来ちゃったのは悪かったね。とりあえず、私の話はそっちのが終わってからってことでお願い。都合悪いならいったん別室で待ってるぐらいはするよ?」
と、とにかくまずはこれぐらいはね。気配りは大事だよ。
まあそれはそれとして。
「……あとさ、ついでにちょっと匿ってくれない?なんかよく分かんないんだけど、私ここの生徒に狙われてるっぽい。こう、いろんなものの危機を感じるんだよ」
こっちはガチの本音。見なよ、だんだん周りの目が獣になってきてる。
フルートちゃんもエヴィちゃんもあー…………って心当たりがありそうな、微妙な顔になった。
なに?もしかしてこれがLOCの平常運行?そのうち球状の移動砲台とか浮かべて喜んだりしないよね?怖くなってきたよ……。
◇◆◇
まさか、こんなタイミングで羽音が来るとは。つくづく自由で予測不能だよ、お前は。
トリニティ・ジュエルが風紀委員会に捕まった件で、リリーの助けもあっていくつか分かった事があった。だがこれは俺たちだけでどうにかできるものじゃない。だからトレブル・クインテットの皆の協力を仰いだ。
分かったのは、データ流出には「アークライト・ダイナミクス」という業績低迷中の企業が関わっていること。その会社の工場に正体不明の不審人物が出入りしていること。そしてその人物は何故か生徒会長のIDで学園を出入りしていること。
状況証拠、心証証拠的にこの企業は黒と見てもいいだろう。何せここは今回のコンペに参加した企業にジェネレーターのシェアを奪われている。データを奪う動機としては十分だろう。尤も、現状ではそれを物的に証明する手段がないのだが。
そして特に重要なのはこの不審人物。トリニティ・ジュエルの無実を証明するには、この少女が何者なのかを知らなくてはならない。現状、会長が関わっていることしか分からない今、少しでも何か手掛かりが欲しい。
「すまん。待たせたな、羽音。しかしなんで今来たんだ?こっちがゴタついてるのは知ってただろ?」
「報告が急ぎだからだよ。……単刀直入に言うね。会長だけど、双頭の斧絡みで何か大きめの隠し事がある。最悪、繋がってる可能性まであると思う」
「!?……本当か、それは」
ちょっと予想外にデカい事案が来たな……!
あいつら、ちゆるを狙ってきた単なるテロリストじゃないってことか?
「繋がってる云々はあくまで私の推測だけどね。けど、何か知ってる可能性はかなり高いよ。会長も私の口から『星の向こう』の話を聞いて動揺してた。この一致は偶然とは思えない」
「ついでにちゆるちゃんの件も上手いこと吐かせたらしくてね。どうも、ちゆるちゃんを攫うことでT2元素の研究を止めようとしたっていうのが目的だったんだってさ。最悪、地上までメイズのようになりかねないって言っててさ。……さて、どうやって口を割らせたんだろうね?あんなに忠誠心溢れる奴に」
……なるほど。確かに、言いたいことは分かる。
そうするとあの時の襲撃はちゆるの確保が第一、第二に他の生徒を人質にちゆるの身柄と交換を要求する、辺りが目的だったんじゃないだろうか。そう考えると企みが全部羽音の手で破壊されたのは幸いだったな。
そして口を割らせた方法、か。まさか拷問とかはしないだろうし、何らかの心変わりをさせるものを会長が持っていた可能性はゼロではない。
問題は、会長がこの話をわざわざ羽音に持ってきたことだ。……なんのために?言っては何だが、捕まえた本人程度の関係者にさえ伝えるというレベルで重要な話なのか?これは。風紀委員会と自分たちだけで共有すれば十分な話なんじゃないのか?
羽音は、会長にとって何だ?双頭の斧と交戦した、以上の何かがあいつにあるのか?
そうなると。俺が持つ会長への疑念も少しだけ形になる。
「……俺からも話がある。実は———」
だから俺は話した。今回の有力な容疑者である「アークライト・ダイナミクス」に出入りしていた、データ窃取の重大な秘密を握るであろう不審な人物のことを。そしてそこに会長が関わっているかもしれない、と。
———その人物は学園内を会長のIDで動き回っている。そして、協力している「ファルファッラ」というハッカーはこのデータ履歴を消さずに放置している。エヴィは罠の可能性を疑っていたが……。
正直、ここまでされて会長が気付いていないとは思えない。
「偶然だと思うか?」
「今の段階じゃあまだその線は消えないね。まだすっとぼけが効く範囲かな。……例えば、その不審者が『双頭の斧』なら私の話も含めて全部綺麗にまとまるんだけど」
「そうか。となるとやはり会長に直接聞くしかないか」
ここからの予定が一つ決まった。
他の面子は会長に全幅の信頼を置いているようだが、俺にはどうにも違和感を感じる。そしてそれは羽音の話を聞いてさらに大きくなった。
彼女がどの程度答えてくれるかは分からない。だがトリニティ・ジュエルの人生がかかっているんだ、せめて糸口だけでも掴めるなら……。
「指揮官」
「なんだ?」
「なにか迷ってるでしょ。———遠慮なく言ってみてよ」
羽音の透き通るような瞳がじっと俺を捉える。
俺の内心を見透かすように。
「私にしてほしいことは、なに?」
……その通りだ。もう一つ、ある。
今俺たちが掴んでいる証拠は不十分だ。
トリニティ・ジュエルの無実を証明するためにはリスクを取ってでも確実な証拠を掴まなくてはならない。そのためにやるべき事がある。
しかし、そこにたまたま来ただけの、何なら校舎まで違う羽音を巻き込んでいいのか?
かなり厳しい事になるだろう。何せバリバリの違法行為だ、おまけに証拠は全て現地調達、加えて建前となる大義名分もこちらには無い。
「いいのか?」
「もちろん。……これは指揮官という『友人からの私的な依頼』なんでしょ?」
誰もが予測し得ない「イレギュラー」。完全な伏せ札にして鬼札。……この間に続いて頼りっぱなしになっているのは少し気が引けるが、何が待っているか分からない以上予備戦力はあるに越したことはない。
無論、使わずに済むならそれに越したことはないのも事実だが。
「……羽音。今後の話なんだが」
「うん」
そして俺は彼女の手を取った。
「『アークライト・ダイナミクス』を襲撃する。付き合わないか?」
「……ふふふ、おーけー。愉快な遠足の始まりだ」
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