習作:マブガル世界にTS転生した一般レイヴンのお話 作:ぱんそうこう
とはいえ今回は入れておかないといけない回なので許してください。全部羽音がジュリーを誘拐させずに片付けたのが原因です。イレギュラーがよ…。
次回こそ、暴れます。
一度羽音と別れた俺は、フルートとエヴィの2人と共に生徒会長と面会していた。
無断利用されているらしき、会長のID。それに彼女が気付いていないとは思えない。それに羽音の話から垣間見える、会長への疑念。それが俺をこの場所へ導いていた。
二人は俺が何故ここに来たのか分かっていないようだったが、二人にとっても無関係なことではない。何も聞かないまま、というのは不義理だろう。だから同席してもらっている。
「単刀直入に聞こう。LOCでの開発試験のスキャンダル、お前は何か知ってるんじゃないのか?」
フルートが驚いた顔で俺を見る。まさに思ってもみなかった、という風だ。エヴィは薄々勘付いていたようだが……。
それに対して会長は初めからそう聞かれることが分かっていたかのように答えた。
「申し訳ありませんが、その件についてはお答えできません」
「えっ……」
知らないではなく、「答えられない」か。
あまりにもあからさま過ぎる。何かあることを分かった上で、話さない。
だがそれは悪手じゃないのか。それとも何かの意図があるのか?
「それだけですか?では私はこれで……」
「待ってよ四王天会長。レイヴェルたちが、なんの罪もない人たちが無実の罪に問われているんだよ?……何か知ってるんでしょ。話せない理由があるならちゃんと話して。他人の人生がかかってるの」
「エヴィちゃん……」
話を早々に切り上げようとした会長に、エヴィが食ってかかる。
無理もない。エヴィは他人に嵌められたことで親の借金を背負わされている。だからこそこういう濡れ衣を着せるやり方には強い嫌悪感があるのだろう。
会長は何も答えない。痛みを堪えるような表情を浮かべたまま、黙り込んでしまった。そして数秒か、数分か。長いとも短いとも取れる時間をかけてじっと考えて……一つ、息を吐いた。
「……申し訳ありません。そのような言葉を使わせてしまったことを謝ります」
そう言うと、自ら深く頭を下げた。
そしてゆっくりと顔を上げ、一つ一つ。言葉を選ぶようにしながら重い口を開く。
「……今回の一件には、とある人物が関わっています」
「それは誰?」
「……『コトハ』」
「まさかそれは、この写真の奴じゃないよな?」
俺が取り出したのは、「アークライト・ダイナミクス」の工場に出入りしていた不審人物の写真。一目見た時から誰かに似ていると思っていたが、こうして目の前で比較してみればよく分かる。会長によく似ているんだ。
「不正アクセスで窃取されたデータの送り先近辺でこの人物が映り込んでいた。……こいつが『コトハ』か」
「……ええ、そうです」
「学園内での移動には生徒会長のIDが使われていた。その痕跡にお前ほどの奴が気付いていないとは思えない。意図的に見過ごしていたんじゃないか?」
「見過ごしていた、つもりはありません。ですが……いえ、これは言い訳ですね」
自嘲するように儚く笑う彼女。
普段の冷静沈着な姿からは想像もつかない弱々しい表情で彼女は、ゆっくりと言葉を絞り出す。
「彼女は私の、妹、のような存在だと、そう思っていただいて構いません」
「もしくはコインの表裏。あるいは、光と影のような存在」
「その言い方だと、まるで双子の姉妹みたいに聞こえるね」
「あるいはまさかのクローンだったりしてな。顔を隠しちゃいるが雰囲気が似すぎている」
会長は何も言わない。もう少し何か引き出せるかとも思ったが、さすがにそうそう上手くは行かないか。だが今言ったどちらも正しくなさそうだ。他でもない、会長の目がそう言っている。
ここは話を次に進めた方がいいだろう。
「……そこまで近しいなら、その『コトハ』の行動をどうにかできないのか?レイヴェルたちの無実を証明するような……」
「私は、彼女に指示出しできる立場にありません」
「彼女の無法を黙認するのか?」
「そんなことは……ありません。彼女やその関係者の不法行為は風紀委員会に対応させています。ですが……」
「『ですが』?」
「コトハの闇も、抱える怒りも、私には痛いほど理解できてしまう。正直なところ、彼女になんと言えばいいのか。私には……」
それは生徒会長としての悩みではなく、四王天神楽という一人の人間としての悩みのようだった。なんというか、家族関係に悩む一人の姉のような。
……会長にもこういう側面があったのか。そうだよな、どれだけ優秀で、どれだけ有能で。誰からも信頼される超人のような人間でも、結局のところ一人の人間でしかないんだ。悩みもすれば、苦しみもする。
なら、そうであるならば、俺は助けになりたい。心の底から、そう思った。
「–———なら、俺を頼ってもいいぞ」
鳩が豆鉄砲を食らったような顔。
今の彼女の表情を形容するなら、そんなところだろうか。フルートもエヴィも、今までにない反応をする会長を見てくすりと笑っている。
「この学園の生徒をサポートするのが俺の仕事だからな。……生徒会長である以前に、お前だってこの学園の生徒だろ?」
どうやら、俺がどんな質問をするのかは読めても、こういう事を言われるのは読めなかったらしい。案外抜けてるんだな。
「いい提案なんじゃない?こう見えて結構役に立つよ?この人」
「うっせ。『こう見えて』は余計だ」
何言ってんだ。俺は真面目に話してるんだから余計な茶々を入れるんじゃない。
ほら見ろ、会長だって反応に困ってるじゃないか。
「…………ふふ、全く不思議な人ですね、あなたは」
帰ってきたのは、苦笑いだった。だがそれは反応に困ってのものじゃない。
あえて言うなら、なにか憑き物が落ちたような。あるいはどこか安心を覚えたかのような。少なくとも俺の目には、そう見えた。
そして目を閉じ、何かを考えるように沈黙する会長。その瞼がゆっくりと開かれるとともに、決意を感じさせる雰囲気で彼女は口を開いた。
「仰るとおりトリニティ・ジュエルの人生がかかっているのは事実。ですがそれでも、今は彼女との関係を表沙汰にする事はできないのです」
「ここまで言っても、か。理由は?」
「言えません。ですが、コトハの……いえ、世界の根幹に関わる……そのような事情だと思っていただければ」
……かなり、大きなワードが出てきたな。一体何だ?それ相応のものを隠しているのだろうが……。
「せ、世界の根幹……?なんだか、壮大にヤバたんな話ですね」
「冗談、ではないんですよね?」
エヴィの問いに、会長は静かに頷いた。パッと聞いただけでは突拍子もない、一笑に付されてもおかしくない内容だろう。だがそれを会長の表情が、引き締められた口元が否定する。彼女は本気だ。
「ですので、詳しい事情はあなた達にも伝えられない。どこで誰がこの話を聞いているか分からない以上、漏らせないのです」
どこかで。誰か。
———「コトハ」とも違う、俺の知らない何かが動こうとしている、そういうことか?
「……そんな無礼を承知でお願いします。どうかコトハを……止めてはくれませんか?」
「生徒会長……」
「あるいは、助けてあげてほしいのです」
「トリニティ・ジュエルの件に限らず、ルールの範疇であれば可能な限りのサポートもします。今はこれしか言えず、申し訳ありません……」
「分かった。引き受けよう」
この会合はとても有意義だった。彼女という人間のことが少しだけ分かった気がする。彼女が何かの「背景」を背負っていることも。
一つ確実に言えるのは、彼女がいろんなものを一人で抱え込みやすい、といったところか。だったら俺は少しでも助けになりたい。それが俺の仕事なのだから。
彼女は静かに笑っている。だがその時、予想だにしない言葉が彼女の口から発せられた。
「……羽音さんにも、よろしくお伝えください」
呟くように発せられた言葉にぴた、と俺の動きが止まる。ここで突っ込んでくるのか。……気付いているんだろうな。俺と羽音が繋がっていて、情報交換をしていることに。
フルートとエヴィは、何故ここで羽音の名前が出てきたか理解できていないようで、仲良く首を傾げて頭の上にはてなマークを出している。
だが考察は後だ。聞くべき事は簡潔に、ただ簡潔に。
「一つ聞かせてくれ。会長にとって、羽音は何なんだ?」
ここまで自分への追及には、出来る限り言葉を選びながら慎重に返してきた会長。
だが今度は違う。自ら羽音への関心を示している。煙に巻くでもなく、「答えられない」と拒絶するでもなく。俺と羽音の関係に気付いた上でそこに踏み込んできた。その反応でさえ彼女の耳に入るかもしれないというのに、そのリスクを恐れず向かってきた。
であるなら、応えてくれる可能性は十二分にある。
そして俺の期待通り、彼女は普段通りのしっかりとした語調で流暢に語り出す。
「……彼女は、全てにおける『例外』なのです」
「この世界で一番自由な人。決して敵に回してはならない人。ただ気ままに飛ぶだけで世界に波紋を起こす人」
「あるいは誰よりも高く、誰よりも遠く。例え世界の根幹を知らずとも、炎の翼を以てひとりでに穹へ飛び立つ黒い鳥」
「だからこそ私は、彼女に———」
◇◆◇
うおおおおおおおおおおおおお!!!!!!
待ってましたあああああ!!!
企業襲撃の時間だああああ!!!!!!
指揮官、やってくれるな。まさかこんな平和な世界で企業の襲撃が出来るなんて思わなかった。しかも知らないだろうにオールドキングめいた誘い方まで……最高だろ!夢が一つ叶ったような気分だ。
そういえば指揮官はキッチリ会長とお話できたらしく、「コトハ」とかいう重要人物の情報を持って帰ってきた。会長も大変だよな、身内めいた奴がこうして騒ぎを起こしてるってなると、心労も後始末も大変だろ。
まあ頑張ってほしい。何せこれからもっと後始末が増えるんだからな。
これから始まる一大イベントにわくわくしながらコクピットで待機していると、指揮官から通信が入ってきた。……みんなお待ちかね、ブリーフィングの時間だ。
『それでは作戦内容を説明する」
『ターゲットはLOC校区工業地帯にある『アークライト・ダイナミクス社』の工場。現地ではトレブル・クインテットが陽動を行い、警備が出払ったその隙に俺とエヴィ、リリーの3名が別働隊として内部へ侵入、窃取されたデータの送受信記録を確保し、離脱する』
『なお、現時点では襲撃時に警備戦力の出動が予想されるが、それだけなら彼女たちだけでも十分対応できるだろう。問題はこれだけの事をやらかした後ろ暗い連中がこの程度の戦力で済ませるとは考え難いところだ。当然、口封じ用の追加戦力を用意しているだろう。羽音にはその場合の『イレギュラー』として待機してもらいたい』
「了解だ。連中を物理的に倒産させてやろう」
『そこまではしなくていいからな????』
「なに、相手は落ち目の企業だ。ここで企ての全てが露見すれば倒産は免れないだろ?だったらいっそここで楽にしてやるのも優しさだろうさ」
『だからなんでお前はそういう方向にばかり思い切りがいいんだ????』
そりゃそうだろ。このまま斜陽企業としてどこかに永遠にしゃぶり尽くされるぐらいなら、さっさと焼いてしまった方が救いになるんじゃないのか?知らんけど。
『なお、この件の主犯と考えられる『コトハ』という人物についても詳しい事を知っておきたい。こちらでも調査を進めるが、現場でもなんらかの手掛かりになるものは確保してもらいたい。いいな?』
「了解した。今宵は怖いもの知らずどもが集まってるからな。楽しい遠足になりそうだ」
本音を言えば一から参加したい。だが俺が初っ端から出ていると色々問題があるとかなんとか。
あくまで俺の出撃理由は、偶然居合わせた「善意の第三者」による武力介入、らしい。そのために現場の動きを見ながら自己判断で動け、だとさ。
こういうのが指揮官が言っていた「俺の影響力を考えろ」ってことになるのか?めんどくさいな。……まあ、裁量が俺にあるんなら、別にいいか。
作戦決行時間。予定通り、エヴィを除くトレブル・クインテットが工場を襲撃。警備ドローンが迎撃に出るが、いずれも彼女達を止めるには至らない。
一度レーダーでスキャンしてドローンの機影を確認してみると、やけに重い武装を施されている。ほーん、流石に想定済みだよな、襲撃ぐらいは。わくわくしてきたぜ。
とはいえ所詮無人機。安い動きしかできない以上、一人抜けたトレブル・クインテットでさえ止めるには遠く及ばないだろう。さあどうする?その腹に何を抱え込んでいる?
出せ。出してみせろ。企業がこの程度の戦力しか持ってないわけないだろ。
じゃなきゃとんだ肩透かしだ。退屈で仕方がない。
『みなさん!MGの反応です!でもエヴィちゃん達のものではありません!』
通信越しにフルートの声が響く。どうやら、MGの熱源反応を検知したようだ。他のメンバーも同じように確認したようで次々と疑問の声が上がっている。
サーチライトに照らされた影から続々と立ち上がる、見覚えのある機影。
両腕が武器腕、おまけに肩には重火器を装備している。
忘れもしない、前に仕留め損ねた奴だ。会いたかった、会いたかったぜ!
『重武装ドローンに、アークライト社のMG部隊?』
『しかもちゃんと武装してるね。開発企業だからってMGの武装は違法だったはず』
『でも……それだけ後ろ暗いことをやってるってことだよね』
ロージー・ヒューズが、レイラ・ジェンキンスが、シエナ・クラークが。
歴戦のトレブル・クインテットが疑問の声を上げる。アークライト・ダイナミクスの腹の中に隠れていた戦力。
その存在を俺は知っている。フルートは知っている。
『……いや、あれってよく見たら企業の戦力じゃないわよ』
『あのエンブレムは、まさか』
「双頭の斧!!」
フルートの声を引き継ぐように俺の歓喜の叫びがコクピットに響いた。
……まさかこんなところで会えるなんてな。それにここで出てきたってことは「コトハ」って奴はこいつらの関係者ってことになる。これで全て繋がった!ありがとう!出てきてくれて本当にありがとう!!
おまけに今回はかなりの数がいる。ざっと数えるだけでも20機は固いんじゃないか?前はたったの5機しかいなかったからな、激しい闘争の予感にさらに期待度が高まってくる。
ジェネレーターに火を入れ、炎の翼を広げて飛ぶ。ここに集ったパイロットたちの前に、見せつけるようにその姿を現す。
「こちら柊校舎の『スティールヘイズ』だ。違法パイロット集団『双頭の斧』を発見した、これよりこれを撃滅する」
————さあ始めよう。仕事の時間だ。
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